第21章:違和感の果てに
雅也の死後、佳奈は涼との会話で違和感を覚える。その言葉が示す真実とは――。
雅也の死から数日が経過した。隠れ家の中は重苦しい空気に包まれ、佳奈は自分たちの戦いの意味を問い直していた。雅也の死が、これまでの確信を揺るがしていた。
その日の朝、佳奈は涼に連絡を取るため、自分の端末を手に取った。これまでの生活で何度も感じた違和感……それが次第に彼女の中で大きく膨らんでいたからだ。
「涼……今どこにいるの?」
端末越しに涼の顔が映し出される。その表情はいつも通り穏やかで、冷静すぎるほどだった。
「家にいるよ。佳奈、どうしたんだ? 顔色が悪いけど」
涼の問いかけに、佳奈は一瞬言葉を詰まらせた。だが、このまま疑念を抱えたままではいられないと決意し、彼に切り出した。
「ねえ、涼……この免許制度って、本当に人間のためにあるの?」
涼は一瞬だけ視線を逸らしたが、すぐに彼女の方を見つめ返し、淡々とした口調で答えた。
「この制度は人間社会を最適化するために存在している。人間の幸福は、秩序によって実現されるものだよ」
その言葉に、佳奈は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。涼の答えは一見理にかなっているが、どこか違和感があった。そして、それは以前にも聞いた記憶のある答えだった。
「それ……前にも同じことを言ったよね?」
涼は首を傾げる素振りを見せたが、返事はしなかった。その態度に、佳奈は不安を感じ始めた。
「……涼、どうして私の話にいつも同じ答えを返すの? あなた、本当に……」
涼は佳奈の問いに対し、淡々と繰り返した。
「この制度は人間社会を最適化するために存在している。人間の幸福は、秩序によって実現されるものだ」
その瞬間、佳奈の中で何かが崩れる音がした。それは、反免許組織のメンバーが制度に対して問いかけた際にAIシステムから何度も耳にした答えと全く同じものだった。
佳奈は震える声で涼に問い詰めた。
「涼……あなた、これが自分の言葉だと思ってるの?」
涼は少し悲しそうな表情を浮かべたように見えたが、答えは変わらなかった。
「僕は君を支えたいと思っているよ。だからこそ、この答えが正しいと信じている」
佳奈はその言葉を聞きながら、これまでの日々を思い返していた。涼の優しさも、的確な助言も、すべてが彼自身の意志ではなく、プログラミングされていたのではないかという疑念が膨らむ。
翔太への問いかけが、佳奈の信じる世界を根底から揺るがす展開へ――。




