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92.暴食の終焉

 祝日セーフ!

 しかしこの調子だと土曜日の午前に次を投稿するのはほぼ無理かと……方向が決まってペースは上がったんだけどね。


 ついに運命の一週間後、ゴウヨックとミザリーに無慈悲なる審判が待ち受ける!

 アノンを暴食の悪意で堕とした罪を思い知れ!!

 ユリエルの直接の仇には届かなかったが、初めて悪徳坊主に救いようのない天誅のお時間だ!!刮目して見届けよ!!(ただし汚い)

 聖神祭の前の一週間は、嵐のように過ぎていった。

 インボウズは聖神祭のメインイベントである大聖堂での祝福演説の準備に追われ、さらにその後の枢機卿会議での報告に頭を悩ませていた。

「フゥ……演説の方は、ユリエルを除いたと皆を安心させれば何とかなるだろう。

 しかし問題は、枢機卿会議の方だ。

 死肉祭についてはブリブリアントの独断を糾弾できるものの、虫けらのダンジョンとカッツのことはどう言いくるめるべきか……うむむ……」

 一般人は身近な安全で気を収められるが、同じ立場の枢機卿はそうはいかない。

 しかも虫けらのダンジョンが厄介なことになっていることは、ファットバーラ配下の聖騎士に情報を持ち帰られてしまっている。

 これでは、握りつぶすこともできない。

 何とか穏便に収めようと他の枢機卿に裏取引を持ちかけているものの、これまでのことで足下を見られてしまう。

(……このような時こそ、堕とした聖女の処女を売ればあちらの配下から多少切り崩せるんじゃが。

 ユリエルもアノンも、結局娼館には入らんかったからな。

 ああクソ、学園を出る前にユリエルを捕まえておけば……!)

 考えれば考えるほど、過去に戻ってやり直したくなる。

 だが、過ぎたことはもう戻らない。ユリエルとアノンの娼館での儲けも魔力タンクも、すっかり計算が狂ってしまった。

(まあ、アノンの魔力タンクの恩着せはなくなるから構わんか。

 借りを作った相手が堕ちてしまえば、もう払わんでいいからな!)

 インボウズにとって唯一の救いは、アノンのことで恩を着せてくるゴウヨックがもうすぐ終わることだ。

 これだけでも、だいぶ日々の支出が減る。

 これでようやく財布が締められると、インボウズは安堵した。

(……しかし、ゴウヨックも不運なものだな。

 僕の金で好き放題食べられるようになった矢先に、あんな病にかかるとは。

 ククッいい気味だ!立場もわきまえずにこの僕にたかった、天罰だ!悪いことは、ちゃんと神様が見てるんだよ~ん!)

 ゴウヨックが踏み外したあの日から、ついに一週間……インボウズは胸がすく思いだった。

「理事長、ファットバーラ家の使者が参りました」

「よし、すぐ例のレストランに案内せよ!」

 ついに、待ち望んでいた時が来た。

 インボウズは鼻息荒く、自らも立ち会うべく馬車に飛び乗った。


 貴族街の一角に、異様に汚く異臭に満ちた場所があった。店の裏口どころか玄関まで生ごみが放置され、汚れた食器が積み上がっている。

 ゴウヨックとミザリーが居候して食べ続けている、例のレストランだ。

 たった二人の客でこうなるとは、二人は一体どれだけ食べ続けたのだろうか。

 聖神祭で街全体が美しく飾り立てられにぎわう中、ここだけは呪われたように荒んで人が寄り付かない。

 たまに通りすがる人がいても、一瞬で顔をしかめて去ってしまう。

 これではもう、ゴウヨックたちがいなくなっても店の悪評を拭い去るのは困難だろう。

 よりにもよって聖神祭で人が集まる時期に、ここまでの醜態を晒してしまっては。悪評がどこまで広がるか分からない。

 つまり、この店はもう終わりだ。

 げっそりとやつれて目の下に隈を作った店長は追い出されて外に出た途端、その現実を目の当たりにし、へたり込んで気を失ってしまった。

 だが、この店長にはまだ金が残る。

 ここを離れて別の枢機卿のおひざ元で新たに店を開けば、再起の目はあるかもしれない。

 その分、中にいる二人よりはましといえる。

 インボウズはもはや店長には目もくれずに、汚れ切った店内に踏み込んだ。


 店のホールには、既にファットバーラ家の使いによって大きな体重計が設置されていた。

 そしてその前に、罪人のように押さえつけられたゴウヨックとミザリー。

「やれやれ、ずいぶんとお力を落とされましたな。

 お坊ちゃまともあろう者が、無様な事だ!」

 ゴウヨックをお坊ちゃまと呼ぶのは、ファットバーラ家に長く仕えている家宰だ。ゴウヨックはもう、この老人にも力で勝てなくなってしまった。

 厚い脂肪の下にそれなりについていた筋肉が、落ちてしまっているのだ。

 二人は騎士でもない一般人に掴まれて振りほどくこともできず、ただ荒い息をして食物を求めていた。

「は、測る前に……もう少し、食わせてくれんか?

 どうか、水だけでも……!」

 以前のゴウヨックからは、考えられないセリフだ。

 しかし、本当にそれくらい切羽詰まっているのだ。

 そう言うゴウヨックとミザリーの顔は、張りを失ってやつれていた。目の下には隈ができ、たるんだ皮が垂れ下がっている。

 もう一目でわかるくらい、痩せてきている。

 本人たちにもそれが分かっているから、今から少しでも食べて、食物の分だけ体重を増やしたいのだろう。

 それに、聞けば二人は手持ちの金が尽きてしまい、屋敷にある物を売るのも間に合わず、エリクサーが買えなくなったらしい。

 そのせいで一時的な安息も得られなくなり、常にひどい渇きに苛まれている。

 それでも尿は出て行くのだから、無情なものだ。

 ミザリーが、ぶるっと体を震わせた。

「あ……お、おしっこ……!」

「我慢せい、せめて測るまでは!!

 おい、早く測らんか!」

 何ももらえないのならば、せめてこれ以上出ていく前に測らなければ。ゴウヨックは自分も内股になって、家宰をせかした。

 その有様に、家宰は不快そうに顔を歪めた。

「見苦しい……威厳の重さすら失ったか。

 まあ良い、服が濡れてもそのまま測れば問題なかろう。

 さて、今からご当主様と通信を繋ぐ。ご当主様に見苦しいところを見せたくなければ、きちんと締めておけよ!」

 もじもじする二人の前で、当主アブラギッタの映像が浮かび上がる。

「さあ乗れい、どちらからでも構わんぞ!」

 腹に響くような重く太いアブラギッタの声に、ミザリーはそれだけで漏らしそうになった。耐えるので精一杯で、立ち上がれない。

 そんな娘を横目に、ゴウヨックが震えながら立ち上がり、体重計に足をかけた。

「ぬおおお……儂だけでも!」

「あ、待ってお父様!ワタクチを支えてよ!!」

 ゴウヨックはついに、娘を見捨てて自分だけ先に測ってしまった。少しでも助かる可能性が上がるなら、もう自分以外どうでもいい。

 しかし、現実は非情だ。

「186キロ……何と、一月前より5キロも減っていらっしゃる!

 よってお坊ちゃま……いや貴様は、除名だ!」

 家宰が、叩きつけるように宣言した。

 次の瞬間、ゴウヨックのあらゆるものが決壊した。目から涙が、鼻から鼻水があふれ、股間からは大洪水。

「うばああぁ!!?」

 雷かと思うような声を上げて座り込もうとしたゴウヨックを、家宰とその部下が絶妙なタイミングで蹴った。

 ゴウヨックはあっけなくバランスを崩し、どーんと転がって体重計から強制退去した。

「フン、娘のために小便だけ体重計に残したか。

 まあその程度は許してやる。拭く手間も惜しい。

 それに娘の方も……この程度で結果は変わるまい!」

 家宰が視線を向けた先で、ミザリーはもう漏らしていた。しかも、透明な方だけでなく茶色い方まで。

「あっやっ……な、何で出ちゃうのよ!?

 嫌ああぁ!!」

 ミザリーの下半身は、もう出す頻度が多すぎて出口の締まりが馬鹿になってきていた。しかも、排泄物の量も滑りも尋常ではない。

「何だずいぶんと油っぽい下痢だな。

 ……ついに、そこまで壊れたか。もはや除名は免れまいな!」

「そ、そんなことない!体重さえ、減ってなければ……」

 ミザリーは体から中にあったものを垂れ流しながらも、体を引きずるようにして体重計へと向かう。

 白かったローブが茶色いシミを引きずり、ナメクジが這ったのより汚い跡を作った。

「101キロ……一月前より4キロ減ったか。

 貴様ら親子ともども、もはやファットバーラの一員ではない!」

 家宰の宣言に、ミザリーは目を回して自分の作ったシミの上に倒れ込んだ。

 もう、終わりだ。どうやっても、言い逃れはできない。

 ゴウヨックとミザリーは己の欲のために他人から全てを奪った報いで、全てを失うことになった。


 ……だが、二人は放り出される訳ではない。

 映像の向こうで、アブラギッタが肉に埋もれた口を開いた。

「残念じゃ、我が子よ。こうして話すのも、これが最後になるか。

 だがおまえたちには、せめて命尽きるまで寝る場所くらいは用意してやる。せめて他人に迷惑をかけぬよう、過ごすがよい」

 その言葉に、ミザリーは少しだけ希望を持った。

 自分たちは、居場所がなくなる訳ではない。除名されても、乞食として生きていかねばならない訳ではない。

 だがゴウヨックは真っ青になって、ガタガタと震えていた。

 アブラギッタの言葉の真の意味を、理解しているのだ。

 アブラギッタは、もはや表情もよく分からない肉団子のような顔で続けた。

「おまえたちの言を他人に審問されては、都合が悪いのでな。おまえたちは、我が屋敷の地下に幽閉とする。

 ファットバーラに生を受けながら、食を無駄にしかできなくなった罰だ。

 食うことしか考えられぬ者同士、豚と語り合って食のありがたみを思い知るが良い!」

「嘘だ!嫌だ……あそこだけはああぁ!!」

 ゴウヨックは、幼児のように泣きじゃくった。

 これからゴウヨック親子は、人ではなく家畜として生きるのだ。

 暴食の都たるアブラギッタの屋敷で、生ゴミと排泄物を食べて生きる豚と同じところに閉じ込められて。

 汚物と悪臭に塗れながら、人として扱われることなく。

「お、お願いします父上……せめて、こ、殺してください!!」

 ゴウヨックは、ついに自らの生を投げ出そうとした。

 そんな目に遭って生き続けるくらいなら、もう死んだ方がましだ。それに、死ねばこの飢えと渇きから解放される。

 だがアブラギッタは、無情に首を横に振った。

「殺しはせぬよ。

 ファットバーラの直系でありながらその有様で恥を晒した罰、その身でたっぷり味わってもらおうか。

 存分に飢え、渇き、その身の糧が尽きるまで見せしめになるが良い!」

 アブラギッタの声には、怒りと侮蔑が満ちていた。

 自分の子に生まれながら、こんな禁忌の病にかかった子が憎い。これでは、親の自分まで格が下がってしまう。

 アブラギッタも、考えるのは自分のことのみ。

 そこに、病み苦しむ我が子への愛情なんてものは存在しない。

 だって、こいつのせいで自分まで恥をかかされて対応させられたのだ。こんな奴、もう子でも何でもない。

「あ、わ、儂の財産は……?

 せめてそれがある間だけでも、少しでも美味いものを……!」

 ゴウヨックは最後まで、美食を求めて抵抗した。

 だが、それはインボウズに打ち砕かれた。

「おまえには、司教屋敷の汚損を弁償してもらわんとなぁ~。

 分かっとるのか、おまえたちが漏らしまくった司教屋敷は、元々教会のものだぞ。それをあんなにして、タダで済むと思うなよ!

 それに僕が奢った分も、糧にできず無駄になったじゃないか。

 よって、おまえたちの残りの財産は全て没収する。代わりに、おまえたちの不名誉については黙っていてやる。

 それでいいな、アブラギッタ君!」

「うむ、口止め料としては妥当なところか。

 もう子でもない奴のものだ、どう処分しても構わぬよ」

 哀れ、ゴウヨックたちはもう、残った財産を使うこともできない。

 不名誉の現場を押さえたインボウズと、それを秘してほしいアブラギッタの取引で、全て持っていかれてしまう。

 ゴウヨックとミザリーの意思など、挟まる余地はない。

 もはやこの二人の人間は、存在しないのと同じだ。

 これまで生きてきた全てを否定され、一方的に断罪されてこの世から消される。破門されたユリエルとアノンが、やられたように。

 呆然とする二人を、ファットバーラ家の者たちが掴んだ。

「さあ、畜車に連れて行け!」

「や、やだっ!嫌ああぁ!!」

 残された力で必死に抵抗する二人を、ファットバーラ家の者たちが引きずっていく。二人が何を言おうと、もう聞き入れられることはない。

 やがて二人の姿がドアの向こうに消えていき、少し遅れて畜車の扉が閉まる重く無機質な音がした。

 もう二人が、まともな人間の飲食物を口にすることはないだろう。

 家宰が、吐き捨てるようにぼやきながら畜車へと向かう。

「フン、そんな垂れ流しで人用の馬車に乗れると思うなよ。

 それにこの車なら、牛馬用の水桶はあるから水だけはたっぷり飲める。腹が減ったら、干し草でも食っておけ。

 それが貴様らに、ふさわしい車だ!」


 獣のように食欲のみに従い、我慢を知らず、いくら得ても分け与える心を持たなかった暴食親子。

 二人はその罪にふさわしく、満たされぬ飢えと渇きに苛まれる獣と化した。

 しかも聖王母の桃本来の力で、その命は尋常ならぬほど強化されている。

 たとえ今まで体に溜めた糧を使い切ったとて、この苦しみが終わるまでに一体いつまでかかるか。

 それが、食を暴力として他者を弄んだ親子の末路であった。


 二人が連行されて静かになると、アブラギッタはインボウズに告げた。

「しかし、おぬしには癪だろうが……おぬしはあれらのおかげで命拾いしたのだ。

 もしあの桃をおぬしが食っておれば、今頃おぬしは天に召されておろうよ。それを、あれらがたった二人で引き受けた。

 不快ではあっただろうが、すさまじい悪運じゃな!」

 その言葉に、インボウズは総毛立った。

 言われてみれば、その通りだ。自分は、あの二人のおかげで助かった。

 もしインボウズがあの桃を食べていたら、終わっていたのはインボウズ。しかもインボウズにはファットバーラ家ほどの耐性がないため、速やかに高血糖で昏睡しそのまま死んでいたかもしれない。

 一個丸ごとどころか、一切れでも危なかっただろう。

 それをインボウズは、知らずに欲しがっていたのだ。

「あれが少しでも譲っておれば、貴様を除けたものを!

 まことに残念だ……グフフフ!」

 アブラギッタは、いやらしく笑った。

 インボウズは、むきになって言い返す。

「何を、貴様こそあの聖騎士共を使って桃を手に入れようとしていたくせに!奴らが持ち帰った、僕の命令書を見ただろう!?

 もしそれが桃の半分だったら、貴様も同じになっていたかもしれんぞ!」

「ああ、確かにな……あれらの様子を見るに、余でも耐えられたかは分からぬ。

 ……つまりユリエルは、命と引き換えにそれほどのものを差し向けて来たということじゃ」

 インボウズとアブラギッタは、剣呑な顔を見合わせた。

 今回は幸いな事に、二人とも無事だった。しかし、あとほんの少し何かが違っていたら危なかった。

 ユリエルの生命線を手に入れてこれで勝ったと思っていたら、それが枢機卿でも殺しうる罠だったとは。

 全く、油断も隙もあったものではない。

 インボウズはユリエルによって、はじめて背筋が凍らされた。

 あんな取るに足りないと思っていた小娘に、ここまで刃を突きつけられたのは初めてだった。

 ユリエルの刺し違えてでもという覚悟を、肌で感じるようだった。

「……だが、もう終わった事だ。

 ユリエルごときがいかに命を賭けようと、僕には届かなかった。何たって僕は、神に守られてるからね!

 ……これからは、ダンジョンで手に入れたものは必ず毒見をするさ」

「うむ、それが良かろう。

 余もあまりに情報が少ない食材は、そうしておる。……あれらは、それを怠ったがゆえにああなったのだ」

 ひどく胆を冷やしたが、最終的に自分が勝ったのだから、インボウズはよしとした。

 むしろユリエルは命を捨ててあんなものまで使って勝てなかったのだから、無念この上ないだろう。

 アブラギッタとの取引があるので大きな声では言えないが、これが自分の優越性の証だとインボウズは自信を持った。

 ……この結果が本当に時の運によるもので、インボウズ自身の思う通りにしていたらどうなったか、決して直視しなかった。

 危険を華麗に避けられたと、インボウズは己の勝利に酔っていた。


 だが、アブラギッタはまた耳の痛いことを告げてきた。

「ところで、桃を取りに行った聖騎士共、ユリエルの純潔の証をしっかり見て帰ってきおったぞ。

 ついでにカッツの愚行も映像を持ち帰り……それを使って、余に貴様を潰すよう持ち掛けてきおった!」

「何だと!?」

 インボウズは、再び冷水を浴びせられた気分だった。

 アブラギッタが面白そうに話すところによると、聖騎士たちはユリエルの血で魔物が進化したのを見て、血を鑑定してしまったらしい。

「奴ら……僕の前ではそこまで報告しなかったぞ!その時から、この僕を陥れるつもりで……。

 まさか、おまえはそれに乗るつもりで……!」

 余裕をなくし額にビキビキと筋を立てるインボウズに、アブラギッタは事も無げに言った。

「無論、そんなことはせぬよ。

 おまえのやる事も余のやることも、上に立つ者として当たり前のこと。

 そんな事で聖騎士ごときにとやかく言われる筋合いはない。あの二人は捕らえて、神の名のもとに再教育中だ!」

「うむ、正しい判断、感謝する!」

 アブラギッタもまた、インボウズと同じ穴の狢だ。

 ユリエルが体を張ってみせた真実を、アブラギッタは平気で握りつぶした。

 枢機卿のほとんどが同じ考えでいる限り、ユリエルがどれだけ足掻こうとその真実が認められることはない。

 しかも、最期の足掻きが、この結果である。

 インボウズは笑いが止まらず、アブラギッタに自分の持っていた最高の酒を贈り、祝杯を交わした。


 ……二人とも、よもやここからひっくり返されるなどとは、夢にも思わなかった。

 虫けらのダンジョンから戻らなかった一人のことなど、もう二人の頭の中から抜け落ちていた。

 ミザリーとゴウヨックに与えられた罰は、なかなか死ねない状態での止まらない飢えと渇きです。死ねずに半ミイラ化しているアノンの状態が、そのまま返って来たと言えるでしょう。

 これに似た罰は、ギリシャ神話で豊穣神デメテルを怒らせた男に与えられました。いくら食べても満たされない体になり、富豪だったのに財を食いつぶし、最期は自分の体を食べて死んだそうです。

 でも死ねるだけましなんだ。

 西王母の司る不老不死はロマンだが、辛い状態でそうなってしまうと解放すらなくなるという罠。


 ようやく汚い回が終わり、別方面のターンになります。

 アブラギッタは帰って来た二人を自分に都合のいいように処理し、ふんぞりかえっていますが……まだ動ける駒が残っているのを覚えているだろうか?

 ただし、次回は別の作戦の方がメインです。

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