88.暴食の横暴
何とか午前中には投稿できました(汗)
地上に帰還した二人の聖騎士と、その成果を待ち構えていた二人の悪徳坊主。
インボウズをアノンのことで手玉に取るゴウヨックは、完全に調子に乗って欲望のままやりたい放題です。
逆にインボウズは、聖騎士たちの報告に……びっくり仰天ざまぁ回!
ココスとアンサニーは、ほうほうの体で虫けらのダンジョンから逃げだした。
二人とも、食材の鮮度を落とさずに運ぶためすさまじい踏破力を誇る。それをフル動員して、来た時より遥かに速く出口へ戻る。
援軍の三人さえ追って来なければ、この二人を阻める者などいない。
しかし二人は、追い立てられるように足を止められなかった。
今にもユリエルと仲間たちの怨嗟が、ロドリコの断末魔が背中から迫ってきそうで。
そうだ、ロドリコのためにも、早く外に出なければ。ロドリコが生き延びているうちにユリエルの件で成果を出せば、許してもらえるかもしれない。
そう思うと、足を止めてなどいられない。
二人はただ友と世の無事を祈って、ダンジョンを駆け抜けて地上に戻った。
「おお、もう戻ったのか!
さすがに速いのう」
聖騎士たちの帰還の知らせに、インボウズは歓喜した。
インボウズの隣でボロボロとお菓子クズをこぼしていたゴウヨックも、目の色を変えて立ち上がった。
「それで、桃は!?」
「は、アンサニー様が持参してございます」
その報告に、ゴウヨックはその肥満体からは信じられないほど高く飛び上がって喜んだ。
「ぬおおお!!ついに、ついにあの伝説の桃が!!」
「うほおお!!これで、ついにユリエルも終わりじゃああ!!」
インボウズとゴウヨックはさっきまでの重い空気を忘れたように、子供のようにはしゃぎ回って手を打ち合わせた。
これでお互い、最大の願いが叶う。
二人はホクホク顔で、帰還した聖騎士たちを迎え入れた。
執務室に入ってきたのは、ココスとアンサニー二人だけだった。しかも二人の表情は、硬く険しい。
「……どうした、もう一人いたのではなかったか?」
インボウズはその様子に、ただならぬものを感じ尋ねた。
しかしゴウヨックが、だらだらと涎を垂らして割って入る。
「それで、聖王母の桃は!?」
「ここにございます」
やはり主家だからか、アンサニーはゴウヨックに応えて聖王母の桃を取り出した。みずみずしく甘い香りが、辺りに広がる。
「ふおおおぉ……これが!これが!!」
ゴウヨックはわなわなと震えながら、目を皿のように開いた。
そんなことよりと思っていたインボウズも、つい目を奪われてしまった。
それは、これまで見たことがないくらい立派な桃だった。丸々と大きく、皮の細かい毛並みは美しくビロードのよう、クリーム色から桃色の配色は芸術品に勝る。
見て嗅ぐだけで、頭がくらくらして生唾が湧いてくる。
「ま、まずは一口……何をする!?」
ついかぶりつこうとしたゴウヨックは、アンサニーに遮られた。
「我々は、ご当主様にもこれを持ち帰るよう指示されております。そういう契約で、我々は派遣されて仕事をしました。
なので、ゴウヨック様の分を今から切り分けさせていただきます」
そう、ゴウヨックの一存だけでこの実力派の聖騎士たちを動かせる訳ではない。ファットバーラ家当主の枢機卿もこれを望んだからこそ、この三人が来たのだ。
しかしゴウヨックは、悪賢い顔でアンサニーを制した。
「いや、その必要はないぞ。
ワシはオトシレール卿に、この桃全てを賜るのでな」
「……は?」
驚いたのは、インボウズだ。
ゴウヨックは、この聖騎士たちからファットバーラ家当主分の桃をも枢機卿の立場で召し上げて自分に与えろと言っている。
実家への不義理甚だしく、横暴極まりない。
しかしゴウヨックは、ニマニマと笑ってインボウズにささやいた。
「ユリエルを、これだけで倒せるようにしてやったのは、誰だったかのぉ~?引き換えに、ワシの食い物は全てまかなう約束だったの~。
もし約束を破るようなら……ワシと娘の言葉を、審問にかけてみるか」
途端に、インボウズの顔色が悪くなった。
ゴウヨックが言っているのは、濡れ衣を着せて聖呪の生贄にしたアノンのことだ。インボウズはユリエルの後始末のために、ゴウヨックと取引してアノンを使わせてもらった。
もしここで言う通りにせず、ゴウヨックと娘のミザリーが真実を吐くようなことがあったら……。
インボウズは一瞬屈辱に顔を歪め、八つ当たりのように聖騎士たちに命じた。
「……ここの最高責任者は、僕だ。
ゆえに一時でも僕の指揮下で僕の支援を受けて行動したなら、その成果の配分も僕に権利がある。
分かったら、さっさと桃を引き渡せ!!」
この命令に、ココスとアンサニーは目を丸くした。
確かに指揮系統の話をされるとそうかもしれないが、それではファットバーラ当主に桃を持ち帰れないではないか。
歯ぎしりをして桃を守ろうとするアンサニーに、しかしココスはささやいた。
「やむを得ない、桃は渡してしまおう。
これはこれで、ファットバーラ卿を動かす力になる」
アンサニーに矛を収めさせると、ココスはうやうやしく言った。
「承知いたしました、ここの統治者は貴方様です。
しかしそれならば、その旨の命令書を我々に下さい。きちんと、貴方様の命令でこうなったのだと分かるように」
インボウズは、ひどく渋い顔をした。
自分の命令だと形に残さなければ、この聖騎士共の勝手だと言い張ることができる。しかし形に残してしまったら、自分が真っ向からファットバーラ卿の怒りを買うことになる。
だが後ろでは、ゴウヨックが面白がるように煽っている。
「おっかしいの~、そういう契約で、ワシの娘の大聖女への道を捧げたのにな~。
もらえるモンがもらえんのなら、全て枢機卿のせいにして構わんかの?」
「ぐっむっ……むううぅ!!」
ユリエルの件だけでもシャレにならない大打撃を被ったのに、このうえアノンの件をばらされてはたまらない。
いくらインボウズでも、そろそろ踏ん張れない崖が近づいて来る。
「わ、分かった!出しゃいいんだろ、出しゃ!!」
インボウズは、やけになって桃を渡せと命令書を書きなぐった。それを渡すと、アンサニーは素直に桃を差し出した。
「オーケー、後は上同士でよろしくやってくださいよ」
インボズウの手に渡った桃を、あっという間にゴウヨックが奪い取った。そして人目もはばからず、頬にスリスリして舌を這わせる。
「うほおおおぉう……ようやく、ワシのものに!
これでこの伝説の美味と加護はワシだけのものじゃ!」
「は?誰のおかげで手に入ったと思ってんだ!
僕にも少しくらいは……」
「ワシが全部食べたいと言ったら~貴公はまかなう約束じゃ~♪」
インボウズが少しは分け前をと求めても、ゴウヨックはどこ吹く風だ。完全にインボウズをなめて、自分だけの春を謳歌している。
それを改めて突きつけられ、インボウズは愕然とした。
(クッソォ~!!こんな、親の七光りで司教になっただけの無能豚に!!
何でこの僕が、いいように使われなきゃならんのだ~!!)
インボウズは枢機卿とはいえ、一人で好き放題できる訳ではない。他の枢機卿と手を取り合って甘い汁を吸うには、便宜を図るのが慣例なのだ。
リストリア女学園の理事長になった時、部下になった他の枢機卿の一族の娘を聖女にして魔力タンクを与えるのも、その一つだ。
だがインボウズは、ミザリーに魔力タンクを与えてやれなかった。
そのため枢機卿間の暗黙の規定で、ゴウヨックに報いなければならない。それをしなければ、何かの機会に他の枢機卿から袋叩きにされるだろう。
(……元はといえば、こうなったのもユリエルのせいじゃ!
あいつさえ素直に折れてくれれば、この僕がこんな目には遭わなかったものを!)
原因を思い返して頭から湯気を出すインボウズに、アンサニーが面倒くさそうに告げた。
「で、魔女とカッツ先生のことで報告があるんですけど……聞きます?」
ユリエルのことと聞いて、インボウズの復讐心が反応した。
ユリエルにはこれまでいいようにやられてきたが、ようやくこいつらのおかげで引導を渡すことができた。
ならば自分もその話を肴に、一杯やって心を落ち着けよう。
自分にはもらえなかったが、聖王母の桃を楽しんでいる間、ゴウヨックは大人しくなるはずだ。
久しぶりに、落ち着いて今後のことを考えられる。
「よし聞こう、僕の部屋に来い」
インボウズはゴウヨックから逃げるように場所を変え、自分も勝利の美酒に酔うことにした。
……が、二人の語った報告は、とても楽しめるものではなかった。
「な……に?四天王の支援が切れておらんじゃと。
それに、カッツは醜態を晒したうえに死んだ!?」
インボウズは聖呪でユリエルが死ねば一件落着と思っていたが、二人の報告内容はそれとは程遠かった。
ユリエルの生死に関係なく、魃姫は虫けらのダンジョンを支援し続けている。そのうえ、聖者落としのダンジョンからミツメルも派遣されている。
10階層に置かれた桃を一月守る、魃姫がユリエルに課したのはそれだけ。
聖騎士たちが11階層に入った途端、圧倒的な強さを誇る魃姫の配下に襲われて逃げ帰る破目になった。
「……オトシイレール卿、頼むから正確な情報をください。
魃姫がダンジョンを守らないとか、誰も言ってないじゃないッスか。勘違いで聖騎士を使い潰すとか、マジ無理なんですけど」
「そうです!そのせいで、ロドリコが戻れなくなったんですよ!
魃姫の配下三人を相手に、ロドリコは僕たちだけ逃がして……うう!」
アンサニーはぶーぶー怒って、ココスは半泣きでインボウズを責める。
聖王母の桃を持ち帰るというミッションには、成功した。しかし虫けらのダンジョンとの戦いは、とても勝利とは言えない。
たとえこれでユリエルが倒れても、魃姫が支援する虫けらのダンジョンを攻略するのは容易ではない。
虫けらのダンジョンなどには過剰戦力だと思った聖騎士三人でも、11階層に入った途端に一人失われて逃げるのがやっとだった。
そんなものが、これからもリストリア近郊に居座り続ける。
「……それに、虫けらのダンジョンに元からいた奴らも強くなってますよ。
元々糸を採ってたアラクネだっけ?あいつは、花魁蜘蛛に。それから、不赦のレジスダンの魂を使ったブラッディヘッドがボスです。
ユリエルが倒れたら、このどっちかがマスター継ぐんじゃないッスか?」
「何!?もうそんな上位種になったのか!!」
予想だにしない敵の強化に、インボウズは面食らった。
所詮下位の聖女がお山の大将をやっているだけと思ったら、この短い間に虫けらのダンジョンでは強敵が育っている。
夏までは、底辺冒険者のレベル上げ用だったのに……一体何がどうなっているのか。
目を白黒させるインボウズに、ココスがその原因を告げた。
「戦闘中に、いきなり進化したのを見ました。
確か、ユリエルの流した血に群がっていたような……」
「あっれぇ~、ユリエルの血で魔族が強化されたのってデマじゃねえの?だったら、なーんでこうなったんだろうなー?」
わざとらしく問うアンサニーに、インボウズは鳥肌が立った。
原因など、元凶のインボウズには分かり切っている。
教会がこれまで、さんざん人々を犠牲にしながら隠してきたことだ。当たり前のことだが、ユリエルが体内に持つものであるからして、ユリエルはその冤罪の証が力を発揮するところを簡単に見せることができるのだ。
それに気づくと、インボウズは戦慄した。
だが、インボウズはぐっと己の震えをこらえて、尊大に言った。
「そうか、それは難儀だったのう。
しかし惑わされるでないぞ、これこそ魔女の悪だくみじゃ。奴は、ダンジョンの力でいつでも味方を強化できるからのう。
おまえたちも聖騎士なら、正義を見誤らぬように!」
一見、もっともらしい説明である。
しかし限定的だが鑑定能力を持ち『純潔なる神器の血』という結果を見てしまったココスには、通用しない。
……もっとも、ここでココスがそれを突きつけることはなかったが。
「そうですね……真実がそうであるならば。
ところで、カッツ殿の方はそちらでどうにかしてくださいよ。
どうもカッツ殿は、精神系の能力で他者に無理筋を押し通していたらしく……亡くなったことで効果が切れ、騒ぐ者が出るやもしれません」
「そうそう、ダンジョン内でのやらかしをミツメルに撮られて放映されてるぜ~。
今頃、攻略中の冒険者は大騒ぎじゃねえかな?」
二人は話題を変えると、ダンジョン内でのカッツ先生のことを語り出した。
そのあまりのひどさに、インボウズはひっくり返った。
カッツ先生の能力は兵法ではなく、口先でそれっぽい理論を信じさせる洗脳。それで振りかざした兵法とやらは、味方の害にしかなっていない。
自分の部隊が罠を通過するために無関係な冒険者を犠牲にし、共に行動したセッセイン家の実力者を一方的に敵視して的を射た諫言を全て却下し遠ざけ。
おまけに自分が必殺兵器として持ち込んだ火砲と殺虫剤のことをよく知らず、大事故を起こし。
結果、学園の実力ある冒険者たちとセッセイン家の兵をことごとく道連れにしてしまった。
もはや、戦争犯罪レベルである。
そのうえ捕らえられると命乞いをし、ユリエルを不当に貶めたことを認め、インボウズの指示だというところまで吐いてしまった。
その全てをミツメルに記録され、ダンジョン中に放映されてしまっているのだ。
「ま、まさか……そこまで、ひどい奴だったのか……!」
これには、インボウズも開いた口が塞がらない。
自信満々で弁のたつ有能な転移者を手に入れたと思ったら、実戦に出した途端にここまでやらかすとは。
もはや、期待外れとかそういう言葉では語り尽くせないレベルだ。
「まあ、とにかく……早急に対処されることをお勧めします」
「ああ、下手すっと教会と神の威信にすら響きますよコレ。
お宅で囲ってた転移者なんで、責任もって対処してください!」
聖騎士二人は、これ以上ない迷惑顔で言い放った。
だが実際、カッツ先生のしたことは迷惑以外の何物でもない。学園にも教会にも、共に戦ってくれた貴族家にも。
このことが広まれば、インボウズは方々から恨まれるだろう。
そしてインボウズにとっても、家を爆破されるくらい大迷惑だ。まさかこんな所で、ユリエルの真実に近い情報をゲロする奴が出ようとは。
もしこちらから真実を探られたら、一大事である。
「至急、カッツの映像の情報を集めろ!
衛兵を投入して、冒険者共の口を塞げ!!」
インボウズは一息つく暇もなく、ものすごい勢いで保身に奔走する破目になった。
聖王母の桃を望み通りにしてやったゴウヨックがしばらく横槍を入れてこないことが、今は何よりの救いであった。
ゴウヨックは、胸を最高に高鳴らせてテーブルについていた。
彼の前には、珍しく何も並べられていない。いつもは食事の時間でなくても、常に何か飲み食いしているのに。
それ程の欲を打ち負かすほど、これから出る食材への期待は大きかった。
「おお、お父様……ワタクチ、夢みたいですわ……!」
隣で、娘のミザリーが興奮に声を震わせて呟く。
ゴウヨックは、娘のミザリーにだけは桃を分けてやることにした。
食の幸せを何より重んじるファットバーラ家は、最高に可愛がる身内にだけはそれを分け与えて至高の愛情表現とする。
ただし、その範囲はとても狭い。
たとえ身内でも自分のライバルとなる者には、一片たりとも与えようとしない。ゴウヨックにとっては、自分を後継者にしなかった父……当主だってそうだ。
「グフフ……これで、ワシと娘の立場は確固たるものに!
聖王母の桃を食べて加護を受けた者など、歴代の当主にもおるまい」
ゴウヨックは、太り果てて潰れたような顔をさらに醜く歪めて笑った。
ファットバーラ家では、どれだけの美味を口にして食の幸せを享受したかが支配者の素養として問われる。
だから皆、美食入手に長けた者を聖騎士にして、神の力すら美食のために使うのだ。
そのファットバーラ家において、東方の伝説でしかなかった聖王母の桃を口にしたらどれほどのステイタスになるか。
自分が当主になることも、夢ではない。
そしてミザリーはこの世で最も価値のある女になり、それを手に入れようとする男からさらなる美味が捧げられ続けることだろう。
「しかも、聖王母の桃には若さを保つ効果もあると聞く。
これでワシは、永久にファットバーラの頂点に立つんだ!」
「ウフフフ……ワタクチも、ずっと若く美しくいられますわぁ!」
脂肪の塊のような顔で、ミザリーも欲望しかない笑みを浮かべた。
この親子の考えることは、どこまでも食べることのみ。そしてそれをいつまでも享受するのが、二人の願い。
その最高の実現にして輝かしい未来への鍵が、運ばれてきた。
「聖王母の桃の、スライスとジュースでございます」
ピッカピカに輝く白金の皿と杯。しかしその輝きは、載っている桃が放つ芳香の前ではくすんで脇役に成り下がってしまう。
「ふおおぉ……嗅ぐだけで、口の中が甘くなってくる!」
「ワタクチ、涎が止まりませんわぁ!」
二人の目はもう、桃しか見えていなかった。たちまち大量の涎が流れ出し、真新しいナプキンをびしゃびしゃに濡らしていく。
二人は、吸い寄せられるように杯を手に取った。
「グッフフフ……ワシらの栄光に、乾杯!」
杯を掲げる時間も惜しんで、二人はジュースに口をつけた。
次の瞬間、五感の全てを焼き切らんばかりの美味が炸裂した。
「~~~~!!!」
二人とも、もはやその悦びを語るだけの言葉を持たなかった。
二人の口の中で、桃の圧倒的な甘さと香り、ほのかな酸味が限りなくあふれ出す。自分の口が桃の海になり、溺れているようだ。
味わっても味わっても味が衰えず、湧き出る唾が全部特濃のジュースに変わって喉を滑っていく。
二人はしばらく、魂を持っていかれたように呆けていた。
「お……おふっ!か、果汁だけでこれなら……果肉は、どれほどの……!」
どんな快楽でも知ってしまえば、さらに上を知りたくなる。
二人はこの世を向いているかも怪しい目で、スライスされた桃を見つめた。
果肉が金属に汚されるのすらもったいないと、二人は魅惑のクリーム色の果肉を手づかみで口に運んだ。
途端に、二人の意識は桃に塗りつぶされた。
口の中でどんどん果汁があふれてきて、それを柔らかい果肉が舌に擦りこんでくれる。食感も加わって快楽の質量が跳ねあがり、二人の心を遥か天上の世界まで連れ去ってしまう。
その極上と言うのもおこがましい美味に、二人はこれからこの世の天国を生きるのだと確信していた。
……二人は知らない。この桃が、聖王母以外の神の力も受けていることを。
この桃が、ユリエルの仇への必殺兵器として放たれた代物だということを。
甘い天罰は美味と滋養の皮を被って、二人の体にしみ込んでいった。
ついに、魃姫がユリエルに渡した必殺兵器が悪徳坊主に届きました。
しかし、坊主側の事情により天罰を食らうのは……。
ココスとアンサニーはユリエルの真実に対するインボウズの出方を伺い、ここでは追求しませんでした。
その代わり、彼らはこれから忙殺されるインボウズの視界外で……政敵配下の聖騎士を使うと、一筋縄ではいきません。
インボウズもゴウヨックも、本当の地獄はここからだ!!