79.栄光の洗脳兵法ロード
カッツ先生の余裕の大進撃(笑)
ダメなのはいいが、ダメすぎてユリエルたちの作戦に支障をきたすのは困りもの。
カッツ先生の傲慢で何も考えてない本性が、さらけ出されていきます。
いくら神に与えられた力で洗脳していても、人が目にする事実は変わらない。そして、それで戦う相手が違う。
それでも深入りさせるためのユリエルの誘導で……超久しぶりな野郎が出てきます。
カッツ先生率いる討伐隊は、着々とダンジョンを進んでいた。
「うむ、やはり調査隊の開いた道はまだ安全だな!
これが聖騎士が来るまで待っていたら、また虫がわき出していたかもしれん。やはり兵法は、神速を尊ぶものだ!」
そう言いながら、カッツ先生はどんどん迷路を下っていく。
カッツ先生は今まで現場に出たことがなくて難路が苦手だが、ちょっと声をかければいくらでも冒険者が助けてくれる。
一方、セッセイン家の者たちは既に膝が笑ってきている。リストリア到着後に、カッツ先生が休ませなかったせいだ。
もっとも、セッセイン家と学園の討伐隊は別の部隊であるため、そちらの総大将が否と言えば別行動できるはずなのだ。
しかし、総大将のプライドンがついて行くと言い続けている。
「姉さんを……ハァッ……早く、助けなきゃ!
兵は……ハァッ……神速を、尊ぶ……僕はできる、優秀なんだから……」
体はもうガタガタになっているのに、何かに引きずられるように歩き続ける。そうなると、配下の兵士もついて行かざるを得ない。
「そうだぞ~、健全な精神は健全な肉体に宿るという。つまり気をしっかり持っていれば、体はついて来るのだ!」
カッツ先生はそれを労わるどころか、どう考えてもおかしい理論を振りかざして引きずりまわしている。
しかも、セッセイン家の誰もそれに異を唱えないのだ。
唯一違和感を覚えている騎士は、この状況に戦慄した。
(何だこれは……これでは、敵と戦う前に味方に殺されてしまう!
この教師は一体何なんだ!?兵法の大家という評判だったが、これでは自分の都合のいいように理論を振りかざすだけではないか!
なのに、若は……一体何をしている!?)
騎士が冒険者たちに厳しい目を向けると、レベルの低い者はあからさまな迷惑顔を、一部のレベルが高いベテランはすまなさそうな顔を向けてきた。
そのうち、セッセイン家の兵士の一人が岩につまづいて転んでしまう。
鼻血を出して何とか起き上がった兵士を、カッツ先生はゴミを見るような目でなじった。
「ねえ君~、協力する気あんの?
戦ってのはねえ、味方が力を合わせるのが何より大事なんだよ。なのに君のせいで、全体に迷惑をかけるって思わないの?
この僕が率いてあげてるんだから、ちゃんとついて来てよ、ねえ」
騎士は、たまらず割って入った。
「やめろ、疲れた味方に鞭打って何になる!?
こんな状態では、もし強敵と遭遇したらまともに戦えない。人の和が大事というなら、なぜ味方の状態に目を配らぬのか!
いや、それ以前に、なぜ休養を取って聖騎士と合流しない!?」
すると、カッツ先生はぞっとするような憎らしい目を騎士に向けた。
そして一口水筒の水を飲んでのどを潤すと、とうとうと声を張り上げた。
「兵士とは元々、国や家を守るために命を張るもの。自己都合で上官に逆らうなど、あってはならない。違うかな?
それに僕はきちんと、オトシイレール卿に許可を取って先行している。できれば早々に攻略を、難しそうな場合は聖騎士を待つことになっている。
その役目を果たすことが、人の和であり協力である!」
十分な休養なしでの疲労は自己都合などではないし、危なそうなら聖騎士を待ってもいいことになっている。
だがカッツ先生は、キラッと白い歯を見せて言い切った。
「もちろん、僕は早々に攻略してミエハリスちゃんを助けてあげたいよ。
僕に従えばそれができる!なぜなら、僕は天才だからね!」
騎士は、あまりの謎理論に開いた口が塞がらなかった。
しかしその開いた口から、反論は出なかった。
なぜここまで言い切れるのかという疑問が、底知れぬ器への畏れに変わる。囚われたミエハリスの姿が浮かんで、とにかく助けねばと気がはやる。
固まっている騎士の前で、カッツ先生が上官であるプライドンの背中を押した。
「ねえ、君も人の上に立つんだろう?
だったら、部下が和を乱したらきちんと叱らなきゃ!」
プライドンは、ふらつく足で騎士に迫り、言い放った。
「作戦は決まってるんだから、きちんと従わなきゃだめじゃないか。しかも、こんなすごい人がわざわざ手を割いてくれてるんだぞ。
ねえ、おまえはそんな不忠者じゃないだろ?いつもの、安心して背中を預けられるおまえでいてくれ!」
騎士は、目が飛び出しそうになった。
騎士は普段プライドンの護衛兼指南役であり、プライドンは騎士を尊敬して師と慕い、全幅の信頼を寄せてくれていた。
そのプライドンから、こんな言葉が出るとは。
今すぐ違うと叫びたかった。大切な主を諫めたかった。
なのに……プライドンに不忠者と言われた心が、ひどく痛い。騎士として冷静でいる訓練は積んできたはずなのに、心が揺れるのを止められない。
カッツ先生はその反応を不満そうに眺めると、とてつもなく恩着せがましい顔で回復薬を取り出した。
「ま、どうしてもって言うなら、学園で作った回復薬をあげてもいいよぉ。
君みたいな薬をケチるダメ上司のせいでかわいそーな兵士が置いていかれたら、見るに堪えないからね!」
そう言って、相場の三倍はあろうかという値をふっかけてくる。
なのに兵士たちは天からの光を見たように、指をくわえて物欲しそうにしている。
騎士は、仕方なく自軍の回復薬の使用を許可した。
薬だって持ち込んだ量には限りがあるのに。きちんと休めば、それは使わずに済んだのに。
この消耗が、この先命取りになるかもしれないのに。
だがカッツ先生は、まるで薬切れを待っているかのように、目をギラギラさせていつでも買ってくれと言う。
それでも異議を唱える者は、誰もいなかった。
小休止を終えて再び歩き出すと、カッツ先生はさっき飲んだ水筒の中身を確認するようにチャプチャプと振った。
(クソッこんなに早く使うことになるとは!
やはり、もう一本持ってきた方が良かったか?……いやしかし、これができるのを待って聖騎士に手柄を取られては困るしな)
カッツ先生は、その原因となった騎士を恨んだ。
(全く、何であんなに優秀なのに、この僕を認めない?おまえみたいな生意気がいるから、勝てる戦も勝てなくなるんだ!)
カッツ先生は、元の世界でのことを思い出して胃が痛くなった。
(そうだ……あいつらのせいで僕は負けたんだ!
この僕の才能に嫉妬して引きずり下ろそうとする、醜い奴らのせいで!
元の世界でも、あいつらが僕の評判を落としたり邪魔をしたりしなければ、僕は勝てるだけの力を与えられていたのに。
将兵たちが疑いなく僕の言うことを遂行できていれば、必ず勝てたのに)
もう二度と、そんな事になりたくない。
だからこの世界の神々に、この加護を願ったのに。
(……どこの世界にも、自分の方が優れていると思いたがる馬鹿はいるものだ。しかも、そういう奴に限って中途半端に力があるから厄介だ。
元の世界の、僕の前任の頑固ジジイだって……あいつが僕の言うことを聞いてくれたら、百人力だったのに)
カッツ先生は、その時の無念を噛みしめながら、騎士の方をにらみつけた。
(今度は、おまえみたいなのに絶対負けないからな!!)
カッツ先生は水筒を握りしめ、一番心強い味方にごうごうと敵意を燃やしていた。
そして、そのうちにみなぎっていた力が退いていくのに気づき、慌ててどこへともなく高らかに叫んだ。
「魔女どもめ、震えて待っていろ!
この僕におまえたちが勝てる可能性など、万に一つもない!
何の力を借りようとどう足掻こうと、僕の兵法の前で全ては無意味。おまえたちは、虫けらにふさわしく踏み潰されて死ぬのだ~!!」
そうして時々放たれる言葉を、ユリエルたちは代わる代わる聞いていた。
「どうだ、ユリエル。おまえはどう感じる?」
「うーん、何か……何とも言えない圧迫感っていうか、戦いたい気持ちが押し潰されるっていうか……。
でも、されたことを思い出せばまだ抵抗できます!」
ユリエルたちはミツメル立会いの下で一人ずつカッツ先生の言葉を聞き、その効き具合を調べていた。
結果は、こんな感じだ。
ユリエル、レジン→影響を受けるが、意識すれば抵抗できる。
シャーマン→素のままでは従わされる、頭骨の冠装備で抵抗できる。
オリヒメ、ワークロコダイルの戦士たち、ミエハリス、神官たち、魔物学の教師→もろに思考を捻じ曲げられてしまう。時間が経てば正気に戻る。
ミツメル、桃仙娘娘→無効。
この結果から、大まかな傾向は分かった。
レベルが高いほど、精神力が強いほど、効きが悪くなる。だいたいレベル30くらいが、すぐ従わされるかどうかの境目のようだ。
だがカッツ先生の魔力が一時的に高まっている時に長時間しゃべられると、それ以上でも一時的に抵抗できなくなる。
ミツメルは、それがどういう時かも分析していた。
「どうやら、あの強い騎士を従わせるときに魔力をブーストさせているな。そしてその前に、必ず水筒から一口飲んでいる。
あれの中身はおそらく、魔力強化剤兼回復薬だろう。
学園のベテラン冒険者の意義を却下する時は、魔力が減るだけだ」
「そう言や、騎士と言い争った後に、私たちにも呼び掛けてきてるわね。
ブーストしてるうちに私たちの心を折ろうとしてるのかしら?」
「だろうな。そういう小手先の頭はよく回る」
カッツ先生の能力は、戦闘において無力ではない。
敵の闘争心を削いで集中を乱せば、敵にいつも通りの戦いができないようにして、勝利を導くことができる。
カッツ先生も、その使い方は分かっているのだろう。
……が、今それは味方に使った後のついでになっている。カッツ先生は、それで優秀な味方を黙らせるのに一生懸命なのだ。
本来敵に使うためにとっておくべき限りある薬を浪費して、味方のためになる諫言を全力で潰しにいっている。
もはや、何のための能力なのか分からない。
「敵なのに……すごく、もったいない。
それに、本人が真面目にレベルを上げていれば、本当に無敵に近くなったのに」
「それがあいつの性分なんだろう。
だが、おかげで我々は助かった。願わくば、このまま味方を敵視して魔力強化剤をもっと浪費してほしい所だが……。
いや、ここに来る前になくなると、さすがに聖騎士との合流を待ってまずいか?」
「どうでしょうね。あの先生、自分の失敗を全部他人のせいにしてますから。
かえってキレて配下に無茶ぶりして、全滅が早まるんじゃないですか?ああ、でもそれだとミエハリスの弟は別行動で聖騎士と合流して、捕縛が難しくなりそう」
カッツ先生のダメ具合は見れば見るほど分かるのだが、あまりにダメすぎて先が読めないのが難しいところだ。
「ちょっと自信をつけさせた方がいいかしら?
シャーマンさん、ワークロコダイルの皆さんにお願いしていい?」
「ああ、あいつらにも経験が必要だろう。
蘇生してもらえるなら、文句は言わないよ」
カッツ先生をさらに突っ込ませるため、ユリエルはついにワークロコダイルに命懸けの囮指令を出した。
今いくら本人がダメダメでも、万が一取り逃がしたら大変なことになる。
復讐に燃えてあの弁舌で世論を動かし、有力者のところから強力な戦力を引き連れてきたら、本人はダメでも強者に潰されるかもしれない。
この能力は、本人が前線に出さえしなければ強いのだ。
むしろ今回逃げ帰って胆を冷やしたら、再びここに来るまで討ち取れず延々と強敵を送られ続けてしまう。
それができる力を、カッツ先生は持っているのだ。
「ハァ……私がインボウズだったら、カッツ先生にそういう指令を下して、非公式に強者を集めてここを攻めさせるのに。
本当、もったいないな~」
「あるいは、インボウズも惑わされているか……。
いや、それはないな。それができるならとっくに地位を乗っ取っている。
枢機卿に与えられる加護に阻まれてインボウズを操れなかったから、国に活路を見出してミエハリスを狙った。そう考える方が自然だ」
カッツ先生の能力は使い方によっては強力だが、やはり万能ではない。
レベルが高い相手や神の加護のある相手には効きづらく、効果時間も短くなる。そしておそらく、相手に嫌な思いをさせるほど抵抗されるようになる。
カッツ先生がそれを理解したうえでうまく使っていればいいが、カッツ先生はあまりの自己中心思考で自ら弱点に飛び込んでいる。
それでも深く潜るまでパーティーが崩壊しないように、ユリエルは餌をくれてやることにした。
カッツ先生率いる討伐隊は、ぐんぐん攻略を進めていた。
途中、4階層の峡谷で(カッツ先生が疲れて腹が減ったので)一泊休憩をとっており、それでセッセイン家の部隊もだいぶ持ち直した。
それでも、疲れ気味には違いないのだが。
そのうえアスレチック迷路に入ると、汗が出て手元が狂う者が続出した。中には、それで墜落死する者も出た。
「何やってるんだよ、この僕の下で見苦しい事をするな!
ん、でもこの狭い場所なら……せめて有効に使ってやるぞ」
カッツ先生はあろうことか、狭い難路で使えないと判断した者や別パーティーの冒険者を惑わし、わざと落としたのだ。
「ハハハッ落とし穴や上向きの槍は、先に何人かはまれば無力化するからな!
これで、あいつらを足場にまあまあ安全に渡れるぞ」
人を人と思わない、悪魔の所業である。
レベルの低い冒険者や兵士たちはそれを正当化されて称えていたが、自責と恐怖に耐え切れず皆涙を流していた。
騎士はたまらずプライドンを連れて逃げようとしたが、そのプライドンが自らの喉に剣を当てて拒むのだ。
これでは、騎士は屈するしかない。
せめて兵士たちの体調不良を把握し、解毒剤を飲ませてみた。すると兵士たちは回復し、この症状が毒によるものと分かった。
それを見て、カッツ先生も慌てて冒険者たちに解毒剤を与えた。
自分だけ持ち込んだ贅沢な食事をしていたカッツ先生は魚を食べなかったため、毒に侵されなかった。
それで自分が大丈夫だから、他も何ともないと思っていたのだ。
呆れるような思慮の浅さである。
だがカッツ先生はそれすら魔力を込めた弁舌で、この毒は役に立てるものとそうでない者の選別だったと言いくるめてしまった。
そして、惑わして犠牲にした冒険者の荷物をちゃっかり奪った。
そこまで無道を押し通したため、カッツ先生はますます魔力を消耗した。
そのうえ冒険者や兵士たちも時間がたつにつれ、不安と後悔が湧き上がってくる。もはや、カッツ先生が刺されるのは時間の問題かと思われた。
そうこうするうちに、討伐隊は5階層の湿地に入った。
そこでは、ワークロコダイルの戦士たちが道を塞ぐように待ち構えていた。数は、わずか十体。
「グヘヘヘ、カ弱イ人間ドモ、ココデ終ワリダ!」
「怯むな!知なき獣など敵ではない!!」
対する討伐隊は90人ほど。それでも蛮勇に任せて向かってくるワークロコダイルを、包むように迎え撃った。
「まずは、魔法で先手!
一体に槍持ち三人でふすまを作り、その間から剣持ちが仕掛けろ。動きを封じることに重点を置け」
カッツ先生は、てきぱきと指示を出す。
カッツ先生も兵法家を自称し兵法学を教えている以上、基本的な戦い方は頭に入っている。余裕があって落ち着いていれば、局所でそれなりの指揮はできるのだ。
こういう、負ける方が難しい場面であれば。
さらにカッツ先生は、味方がワークロコダイルを止めると水筒の中身を一口飲み、ワークロコダイルの心を折る罵倒を浴びせた。
「蛮勇の獣よ、おまえたちは僕たち人間に決して勝てない!
なぜなら、獣は人間の役に立つ運命だからだ!
おまえたちの皮、爪、牙、全ては人間に奪われるためにある。おまえたちが勝つためでは断じてない!
獲物は獲物らしく狩られろ!それがおまえたちの役目だ!!」
魔力をブーストさせて放たれる洗脳弁に、ただでさえ耐性の低いワークロコダイルはひとたまりもない。
あっという間に怯えて守りに入り、防戦一方となって傷ついていく。
この変化に、冒険者や兵士たちはカッツ先生を見直した。カッツ先生の魔をも制する弁舌は本物だ、この人がいれば勝てるかもしれない。
この人の頭脳と舌は剣より強い、この人の言うことは全部正しいから何も心配ない。そんな安心感と高揚感が、討伐隊を包んだ。
カッツ先生を信用できない騎士も、こればかりは目を奪われた。
ただし同時に、どう考えても兵法ではないと確信したが。
これで弱体化したワークロコダイルたちは、次々と討ち取られていった。
しかし、その中の一体が絶望のあまりヤケを起こした。
「ウオオオ!!ドウセ死ヌナラ、酒飲ンダッテ一緒ダ!
オマエ、酒ヲ持ッテイルナ!」
このワークロコダイルは他でもない、ユリエルのヘビ捕獲罠に酒がないと逆ギレした、酒好きで短気なあいつである。
そいつは傷つきながらも持ち前の耐久力で、大きな荷物を持った冒険者に近づき、荷物を引きちぎって酒瓶を奪った。
「僕の高級ブランデー!!」
血相を変えて叫ぶカッツ先生の前で、最期の楽しみとばかりに一気にそれをあおる。
蒸留酒の強烈な酒精が、ワニの体中を駆け巡る。
そいつの目が据わり、口からカァーッと酒臭い息が漏れた。
「フゥ~……人間ガ、何デエ!口先ガ、何デエ!
俺ァ、ヤリテエヨウニ、ヤルンダヨ!!ガアアア!!」
酔っぱらったワークロコダイルは、猛然と討伐隊に襲い掛かった。その動きには、怯えも迷いもない。
カッツ先生が罵倒を浴びせても、お構いなしだ。痛みすらも忘れたように、暴れ狂う。
しかしさすがに多勢に無勢、さほど被害を出すことなくそいつは倒れた。
「ハァ……ハァ……驚かせやがって!
おまえらは、僕に勝てないって決まってるんだよ!!」
カッツ先生の言う通りの結果には、なった。カッツ先生はこれでやっぱり自分なら勝てると思い直し、腹いせのようにそいつの皮をはぎ取って先に進んだ。
驚かされたのは、見ていたミツメルとユリエルだ。
「何と……酔いでさらに知能を下げて洗脳を無効化したというのか!?
確かにあの能力は言葉に依存しているし、精神の状態異常は高度なものが軽いものに押し出されやすいが……」
「ええー……お酒飲んだ方が、いつもより強くない?
こいつ、むしろ戦う時は飲ませた方がいいのかな」
極限の状態に追い込んだことで、弱みが強みに化けるところを見ることができた。
こうしてユリエルたちの手元に、カッツ先生の能力に対抗する手札がまた一枚積まれていくのだった。
カッツ先生の能力は、カッツ先生のレベルとその時の魔力消費、相手にとって納得しやすいかによって効果が変わります。
だいたいレベル25~30まではストレートに洗脳される、レベル50までは抵抗できるけど強力長時間だとねじ伏せられるイメージです。
桃仙娘娘はレベル約90、ミツメルは約60なのでここまでくると効きません。
ミエハリスちゃんはレベル20台前半ですが、神の加護と、嫌な思いをさせられすぎて効きが悪くなってきています。
ユリエルたちは虫けらのダンジョン幹部が戦うとなると、人選がかなり限られてしまいますが、果たして……。
次回、決着です!