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75.筒抜けろ!ナイショのお話

 評価ポイント500超えありがとうございます!!

 お礼に、年末の連休には大みそかと元旦にも投稿します!


 戦いが終わって、何もできない調査隊にユリエルの自慢暴露大会!

 しかし、それを元凶に届ける仕掛けが仕組まれていて……。


 インボウズが、騎士もいないこの調査隊で必ず秘密を暴けると判断すると思いますか?

 負ける可能性があるなら、負けても……というのができる人間のやり方です。

 戦いが終わると、神官の一人がユリエルに尋ねた。

「それで、どうしてあなたには聖呪が効かないんですか?

 さっき、話すとしたら決着がついてからって言いましたよね。もう私たちは抵抗できないんだし、教えてくれてもいいじゃない」

 すると、ユリエルはニマーッと笑ってもったいぶるように言った。

「うふふ、聞く?聞いちゃう?

 聞いたって、もうあんたたちには何もできないのに。知ったところで虚しさだけが残るかもよ」

「……でも、何で勝てなかったかは気になるじゃないですか。

それがなければ、私たちはこんな所に来なくて済んだのに!」

 神官が悔しそうに言うと、ユリエルは得意げに胸を反らした。

「いいよ、それであんたたちの気が済むなら教えてあげる!

 知ってたっぷり絶望するがいいわ~」

 ユリエルの生命線に関わる話だが、ユリエルは言いたくてうずうずしているようだ。勝って気が大きくなっているのかもしれない。

 その様子に、神官は頭を垂れたまま密かに笑みを浮かべた。

(やった、これで任務を果たせるかもしれない!)

 ユリエルはそれに気づかぬ様子のまま、ウキウキした足取りで捕まえた者たちを連行していった。


 しばらくして、ユリエルと捕虜たちは美しい湖に囲まれた小さな神殿のような場所にやって来た。

 周りにはたくさんの桃の木が生え、たわわに実がなっている。

「まあ、これもさっきみたいな罠かしら?」

「ううん、ここのは全部美味しく食べられるよ。

 ここは神聖な場所だからね、毒で汚したりしない」

「なーにが神聖よ、破門されたくせに!」

 ミエハリスはちょっと回復してやると減らず口を叩いているが、これも今のユリエルには心地よい負け惜しみだ。

「神聖なのはロッキード様だけじゃないもん。

 あんたたちこそ聖呪も効かないし戦ったら負けて、加護が足りないんじゃない?」

「ぬふぅ~ぐぎぎぎ!」

 言い合いながら神殿のような建物に入ると、その奥には異国風の祭壇があり、凝った細工の足つき皿に大きな桃が乗っかっていた。

 中には、甘くみずみずしい桃の香りが満ちている。

「うふふふ~……これ、なーんだ?」

 ユリエルは、最高のドヤ顔でミエハリスたちに問う。だが当然ミエハリスたちに分かる訳もなく、首をかしげるばかりだ。

「ええっと……桃にしか見えないが?」

 魔物学の教師が、包帯だらけの手で眼鏡を上げて言う。

 ユリエルは、楽しそうに拍手して答えた。

「正解、これは桃以外の何物でもないよ。

 でも、ただの桃じゃない。東方の大女神、聖王母が天の桃園で育てた、ものすごい魔除けの桃でーす!」

 その言葉に、調査隊はぎょっと目を見開いた。

「ええっ東方!?聖王母!?」

 うろたえる調査隊に、ユリエルは自慢丸出しで告げる。

「いいでしょ~?予想できなかったでしょ~?

 でも現に私にはこれがある。これがある限り、私に聖呪は届かない。インボウズの陰謀なんかに屈しない。

 ざまあみろ!アーハハハ!!」

 勝ち誇って笑うユリエルに、ミエハリスは愕然とした。

「はぁ!?聖王母って何よ……神はロッキード様とグラーニャ様しかいないのよ。結局、邪神から力を借りて……」

「いや待て、聞いたことがあるぞ。かつて神はたくさんいて群雄割拠の時代があり、今も砂漠の向こう側には別の強大な神がおわすとか。

 ……我々の教義とは、相容れぬ古い神話だがね。

 それに砂漠の向こう側のことは、異なる民の国があるくらいしか知らない。

 現にユリエルちゃんに聖呪は効いてないし、事実として考えるべきだろう。となると、問題はどうやってこんなものを入手したか……」

 さすがに、魔物学の教師は冷静だ。

 定説に囚われずに、現に目の前で起こっていることを分析しようとしている。

 ユリエルは、さらに圧をかけるように明かした。

「もらったのよ、魔王軍四天王の、魃姫様から。

 あの方は元々東方の大帝国の皇女様で、昔は国がメチャクチャになって王朝が変わるくらい暴れたんだって。

 その時に当地の神様ともドンパチやって、これを手に入れたんだって。

 だから魃姫様にお願いすれば、別の神様のお力をもらえちゃうのよ!」

 それを聞くと、ミエハリスはきょとんとした。

「魃姫……って、名前だけは聞いたことがありますけども……」

 はっきり言って、この辺りでは魃姫の知名度は低い。魔王軍で四天王最強とはいえ、砂漠の周辺国以外に害をなすことはほぼないからだ。

 しかし、魔物学の教師はもう少し知っていた。

「いやいや、魃姫を侮っちゃだめだ!

 確かにこの辺にゃ害をなさないが、一人で万軍に匹敵するとか、眠れる獅子とか言われてるんだぞ。

 考えようによっては、カルメーラよりずっと厄介だ!

 砂漠の周辺国が何度も協力して討伐しようとしてるが、ダンジョンも難攻不落でとても手が出せないとか」

「ええっ……何でそんなものが、いきなりユリエルに手を貸すんですの!?」

 驚愕するミエハリスに、ユリエルはなじるように告げた。

「魃姫様が、私の境遇を哀れんでくださったのよ。モテなくて純潔を守るしかないのに、それを弄ばれて可哀想って。

 ……魃姫様が、昔モテなさすぎて非業の死を遂げた結果あれだから。

 あんたが同じように破門されても、無理だったでしょうね。いつでもどこでも男に媚びる、尻軽のミエハリスちゃん!」

 しかしミエハリスは、キッとにらみ返して逆に嘲った。

「あら、わたくしは枕営業なんてしてませんわ!あくまで、節度を守って、純潔なまま人脈を繋いでいるだけですの。

 破門されるような邪淫に溺れ、こんなみだらな魔物の大将になるあなたに言われたくありませんわ!

 どうせこの支援も、股を開いてもらったんでしょう!!」

「いや、魃姫様は女だけど!?

 てゆーか、愛を誓うなら添い遂げるって言ってもオークにすら断られたんだけど!!」

「オークが拒否!?ちょ、あなたどんなモテなさしてるのよ!!」

 だいぶ話が脱線してきたが、魔物学の教師と神官たちはあんぐりと口を開けてユリエルの話を聞いていた。

 自分たちはカルメーラが祀る邪神とのつながりを探りに来たのだが、事態はそれどころではなかった。

 東方の大女神の力など、予想外もいいところだ。

 そんな中、神官の一人はこの暴露を一言も聞き逃さないように、ユリエルの様子を少しも見逃さないように目と耳を凝らしていた。

(こんな大変なことだったなんて……絶対に理事長に伝えなきゃ!

 ここまでのことを暴いたんだから、命乞いは許されるわよね?)

 神官の懐では、神官の体に針を刺した小型の魔道具が稼働し続けている。この神官が見たものと聞いたことを、離れた場所に伝えるために。


 この神官は出陣前、オニデスに呼び出されてこの魔道具を仕込まれた。

「さて、君はアノンのいた孤児院の出身だったね。

 アノンは自ら聖呪の生贄になった訳だが、アノンが実際に出した被害は誰かが償わねばならない。

 何なら、君たちの孤児院から何人か奴隷として売り払うか……」

 オニデスは、アノンが破門されたことで守りを失った神官を脅し、特別な任務を与えた。

「ユリエルの秘密を探るため、調査隊を派遣するが……はっきり言って、この陣容でユリエルの秘密を暴くのは難しいと思っている。

 だが、いかにユリエルの防備が固かろうと、必ず隙はある。

 調査隊に勝って、守り切ったと思う瞬間だ。

 だから君は戦いになって不利と見たら降伏したまえ。そして勝ちに舞い上がっている奴から秘密を聞き出して、この魔道具で伝えるのだ!」

 つまり、負けて捕えられること前提の密偵である。もちろん、負けて掴まるのだから帰ってこられる保証はない、捨て駒だ。

 それでも神官は、従うしかなかった。自分が従わなければ、孤児院の可愛い後輩たちが奴隷にされてしまう。

 自分一人でアノンの罪を雪げるならと、神官は悲壮な覚悟を胸に任務に加わった。


 そういう訳で、ユリエルの今の話はインボウズたちに筒抜けだった。

 インボウズたちは秘密が漏れないように三人だけで閉ざされた部屋に集まり、水晶盤に届く神官が見聞きしたものを見つめていた。

「ヒッヒッヒ、ユリエルめすっかり舞い上がっておるわ。

 そうだ、ユリエルが勝っても負けても探れるようにしとけばいいんだよ。これはお手柄だ、オニデス君!」

「光栄です。

 孤児院出の神官など、少し責めればどこへでも放り込めますから!」

 してやったりと楽しそうなインボウズとオニデスの隣で、ゴウヨックだけはつまらなさそうにチョコレートを貪っている。

「フゥ~……こんなことより、ワシは高級料亭のはしごがしたいんだがのう」

「おい、この都市の命運がかかった仕事だぞ!」

「そんなのは君がやって、お金だけ出してくれればいいじゃないか」

 アノンをインボウズに譲ったうえインボウズの権勢が落ちたことで、ゴウヨックはすっかり付け上がっている。

 それでも立場としてはまだインボウズの方が上であるため、何とか仕事に引きずり出してこの豚の食費を抑えているが……。

 今食べているこのチョコレートだって、王都の最高級菓子店から最高の保存条件で取り寄せた茶色い金貨なのだ。

(クッソ~!!どうにかこいつの口を塞げんものか。

 これだけ払って手に入れたアノンの聖呪も、効いとらんし……世の中どうなっとる!?

 いや、しかしこれでユリエルの秘密が分かれば……)

 インボウズは苛立ちを紛らわすように、神官が送ってくれる映像に集中した。すると、驚くべきことが分かった。

「東方の、聖王母の桃!?」

 ユリエルを聖呪から守っていたのは、カルメーラとそいつが仕える邪神ではない。

 ユリエルに手を貸している後ろ盾は、魔王軍四天王最強の魃姫。そしてユリエルを聖呪から守っているのは、この桃で間違いない。

 ならばこの桃さえ何とかすれば、ユリエルに聖呪は届くはずだ。

 ようやく憂いの種が分かって、インボウズは安堵した。

 ……が、その体がいきなり横から突き飛ばされた。

「聖王母の桃おおぉ!!」

 ゴウヨックが飢えた獣のような勢いで、水晶盤にかじりついていた。その体はわなわなと震え、口からはチョコレート混じりの涎がだらだらと垂れている。

「な、何と……あの伝説の食材がこんなに近くに!

 不老長寿を司る女神が育て、天上の美味と滋養にあふれた幻の果実!ずっと憧れておったが、実物が転がり込んでくるとは!!」

 ゴウヨックは、聖王母の桃そのものに心を奪われていた。

 暴食で知られるファットバーラ家の一員であるゴウヨックは、世界中の美味に関する情報をかき集め、教義に反するものでも手に入れて食いたいと欲を燃やしていた。

 そのうちの一つ、砂漠の西側では決して手に入らぬと思われていた東方の神秘の果実が、手の届くところにあるのだ。

 求めぬ訳がない。

 インボウズはしばし呆然としていたが、利害が一致したと分かると小狡い顔で持ち掛けた。

「へえー、それは良かったじゃないか。

 じゃあ、あれを手に入れるために君ん家から聖騎士を派遣してくんない?うちの出せる戦力だけじゃ、ちょっと厳しいかなー」

「おう出すぞ!出すとも!あの桃は、ワシのものじゃ!!」

 思わぬところで、ファットバーラ家からユリエル討伐の戦力を引き出すことができた。インボウズは初めて、ゴウヨックの食欲に感謝した。

 だが、予想外はまだ止まらない。

 今度はユリエルがミエハリスたちに、不可解な出来事を告げて何か知らないかと聞いてきたのだ。

「死肉祭中に、騎士が来たって?」

 これはインボウズたちも知らなかった、そして無視できぬ情報だ。インボウズはどうにかゴウヨックをどかし、送られてくる映像を覗き込んだ。


 ひとしきり言い争いが済むと、ユリエルはミエハリスたちに気になっていたことを尋ねた。

「ところでさ、死肉祭中、私が造血剤の反動で寝込んでる間に、どこの奴か分かんない強い騎士が攻めて来たのよ。

 幸い、魃姫様の配下が倒してくれたんだけど、倒しても教会に何の反応もないからかえって不気味でさ。

 あんたたち、何か知ってる?」

 ユリエルにとって気にかかるのは、不在の間に攻めて来た所属不明の騎士パーティーのことだ。

 ユリエルには調べるのも大変だが、若い貴族に広く媚びまくっているミエハリスなら何か分かるかもしれない。

 ユリエルが事情を話して騎士の遺品を並べると、ミエハリスはすぐに反応した。

「この紋章……確か、ブリブリアント卿に仕える騎士家だったと記憶しておりますわ。そこの長男が、聖騎士候補であると。

 それに、大量の解毒剤と解毒のメダリオン……ブリブリアント家から届くはずのものが届かず、現場が苦戦していたと」

「そう言や、参加予定の高位鑑定官が来なかったなんて話もあったな」

 ミエハリスと魔物学の教師によると、そいつらは本来死肉祭に解毒アイテムを届ける役目の騎士たちだったようだ。

「ちょっと、それが何で私のところに攻めてくるのよ!

 インボウズが立入禁止にしてたんじゃないの!?」

「わたくしだって存じませんわ!ここで何かあったなんて、聞いてませんし。

 というか、まさかあなたの指示でダンジョンの外で襲ったんじゃないでしょうね?あなたみたいな、平気でうそをついて人を踏みにじる女は……」

 またも、不毛な口論が始まろうとした時……。


「ねえ、その戦いはわたくしの妹がダンジョン内で迎え撃ったものよ。

 あなたは、わたくしの妹を侮辱するのかしら?」

 静かな怒りを秘めた声と共に、コツンコツンと足音が響いた。

 その主の方を振り向いて、ミエハリスたちは息を飲んだ。

 そこにいたのは、美しい桃色の着物と羽衣をまとった女。しかしその顔は、目はまぶたが切り取られたようにまん丸く、口は裂けて無理矢理縫い合わされ、肌は青黒く傷だらけの見るもおぞましい有様。

 その存在に気づいた途端、ユリエルが素早く平伏した。

「魃姫様の臣下の方よ、みんな頭を下げて!」

 ミエハリスはそれに逆らって毅然と睨み返そうとしたが、逆に一睨みで体中の力が抜けて床に伏してしまった。

 他の人間も全員が、圧倒的な恐怖に縛られて動けなくなっている。

 女はしずしずとユリエルに歩みより、幼児にするように身を屈めて頭を撫でた。

「あら、今回は自力で勝ったのね。偉いわ」

「は、桃仙娘娘様のお手を煩わせることはありません!」

 しかしそう報告したユリエルの頬を、桃仙娘娘はいきなり打った。床に転がって怯えるユリエルに、桃仙娘娘は冷たい目をして言う。

「冗談はよして!探られてるのにも気づけないのに」

 桃仙娘娘はつかつかと神官の一人に近づき、その胸倉を掴んで勢いよく服を引き裂いた。神官の控えめな胸と、その間にくっついている小さな魔道具が露わになる。

「ほら、やっぱり通信の魔道具だわ。

 あなたごときじゃ気づけなくても……わたくしには、お見通し!

 つまりあなたは、情報が筒抜けになってるのも知らずにしゃべってしまったのよ。ちょっと勝ったからってすーぐ舞い上がって、お粗末ね!」

「ええっ!?す、すみませ……へぶっ!」

 桃仙娘娘は神官を片手で吊り上げたまま、ユリエルに蹴りを入れた。

「もう、せっかく助けてあげたのに、こんな不用心だなんて。

 これからも助けてほしかったら、せめて自分の不始末くらい自分でけじめをおつけなさい。

 これから一月、桃はこの10階層から動かさない事。それで守り切れたら、あなたの努力を認めてあげるわ」

「で……でも、今回ので虫がたくさん死んで……」

「それはあなたの都合でしょ。

 いくら従ってくれても、おんぶに抱っこの寄生虫は嫌いよ!」

 桃仙娘娘は敵に聞こえるのも構わずそう言い放ち、腹いせのように神官からはがした魔道具を握りつぶした。

 こうして、せっかくインボウズたちが仕込んだのぞきの目は失われた。


 だが、インボウズたちの作戦が失敗した訳ではなかった。

 インボウズたちは今の会話から、ユリエルを倒す超重要な情報を入手した。

「なるほど……つまりユリエルは、これから一月の間、あの桃を10階層から動かせんのか。その間に10階層まで攻略しさえすれば……!」

「ええ、ユリエルに聖呪を浴びせることができる!」

 桃仙娘娘はユリエルに試練を与えたということだろうが、インボウズたちにとっては好機以外の何物でもない。

 ただし、一月という時間制限つきだ。

 となると、やる事は一つだ。

「よし、すぐ使える全てに呼びかけて戦力をかき集めろ!

 今回の調査隊は、無駄ではなかった。ユリエルは多くの虫を失い疲弊しておる。

 このまま休ませずに削り続け、ファットバーラ家の聖騎士を突入させて何としてもあの桃を奪うんだ!

 分かったな、ゴウヨック!?」

 ゴウヨックはまだ夢見心地だが、深くうなずいた。

「おほおぉ……ついに、本物の仙女を見たぞ!

 呪われて醜くなっておるが、元はたいそう美しい女で、それは美味い桃を実らせるという。

 聖王母の桃もあの女も、魔女なんぞにはもったいない!父も兄も知らぬ美味、必ずワシが手に入れてやろうぞ」

 こうして、調べ上げた目標に向かって悪意が動き出した。


 しかし、その情報が正しいという証拠はあるのか。

 通信の魔道具を壊すと、桃仙娘娘は神官を放り出してユリエルを抱き起し、ぎゅっと抱きしめて撫で始めた。

「ごめんね、ひどいことして!

 でも、向こうに信じさせるのが一番大事だから」

「いえいえ、こちらこそお付き合いいただいて、ありがとうございます!!」

 囚われた調査隊は、ガタガタ震えながらその光景を眺めていた。

 情報が筒抜けになっていることに、ユリエルたちは始めから気づいていた。むしろそれを利用して、自分たちに都合よく相手を動かす情報を流したのだ。

 知ったとて、もう調査隊には何もできない。

 この戦いは、インボウズたちの完敗で幕を閉じた。

 ユリエルと桃仙娘娘は、わざと誤情報と演技をインボウズの下に届けさせました。

 ユリエルが審問のコツを知っているため、二人ともかなり言葉を選んでいます。


・聖王母の桃があれば聖呪は効かない→聖呪自体が来てないとは言ってない、来れば桃はその役目を果たすので真。

・10階層から桃を動かさず一月守れば認めてあげる→守れなくても見捨てるとは言ってない。

・虫がたくさん死んで→たくさんが実際どれくらいの数かは言ってない、3桁は死んでいる。ただし全体から見れば一割に満たない。


 これは、魃姫に言われた一撃で決着がつくかもしれない攻撃の下準備です。

 しかも世の春を謳歌して欲望マシマシのゴウヨックが、桃の美味に取りつかれてしまったせいで……この人は基本的に食べることしか考えてません。

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〉筒抜けろ! 凄いパワーワード…。この上なく伝わるぅ…!!
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