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73.毒々返しの防衛作戦

 学園の調査隊の一番の武器が毒なら、ユリエルの作戦の要もまた毒です。

 これまで敵が踏み入ったことのない、恐怖の毒沼が猛威を振るうぜ!


 そして思い出そう、この毒沼は元々何を転用したものだったかを。

 ……せめてここまで、鑑定官がいてくれたら……。

「あちゃー……5階層にも毒まいてるよあいつら。

 熱帯雨林の階層にワニさんたちうつしといて良かったー」

 ユリエルたちは、汚染されていく湿地をげんなりして眺めていた。

 侵入者が毒頼みで進むと分かった時点で、予想できたことだ。なので、急いでワークロコダイルの集落を下層の熱帯雨林に移した。

 5階層には、まだいると見せかけるため、旧集落の巣の周りに毒の予防薬を飲ませた戦士を立たせている。

「すみませんねシャーマンさん、お引越しが多くて」

「いやいや、守ってもらうんだから文句は言わないよ」

 5階層の集落がもぬけの空であることに、侵入者たちは気づいていない。先を急ぐため、相手にしないで進んでいる。

「あーもう、これだけまかれるとダンジョンが吸収するのも時間かかるのよね。

 代わりに、6階層の毒沼は広くできそうだけど」

「転んでもただでは起きないね、さすがユリエル」

 オリヒメが、若干引き気味に呟いた。

 ユリエルがまかれた毒を相手に返そうとするのは、前から分かっていたことだ。そして今回は、6階層がその胆となる。

 今敵がまいているのとほぼ同じ毒に汚染された沼地が広がる、6階層。あれで虫たちを蹂躙する侵入者には、ふさわしい報いだ。

「さて……さすがにこいつらが湿地を突破するのは時間がかかりそうね。

 私たちも、余裕をもって防衛の準備を始めましょう。

 ……そう言えば、マリオンが何か置いていったわね。あのパーティーの弱点でも書いてあるのかしら?」

 ユリエルは4階層にマリオンが残した手紙を回収させ、読み始めた。

 読み進めるにつれ、ユリエルの目が驚きに見開かれた。

「え……じゃあ、聖呪がこないのは……しかも、あちらは知らない?

 そっか……前の調査隊の人たち、本っ当にありがとう!!」

 書かれていたのは、ユリエルが喉から手が出るほど欲しかった情報。そして、元凶への反撃の足掛かり。

「うおおおぉ!!これは使わいでか!

 みんな、休んでる場合じゃない!

 すぐ魃姫様に連絡とって、奴らが来る前に準備を整えるわよ!」

 何かを思いついたユリエルは、飛び上がって慌ただしく準備を始めた。

 手を出してきたその手を掴んで地獄に引きずり込んでやると、ユリエルの目はらんらんと光っていた。



 一方、調査隊は湿地に足を取られて進軍が滞っていた。

「ふぅ……ひ、広い湿地だねえ。

 上の階層と同じで、ユリエルちゃんは徹底的に時間を稼ぐ気だな」

 魔物学の教師は、額の汗を拭いながらぼやいた。それから、立ったままパンをかじり、水筒の水を飲む。

 この湿地はぬかるんだ地面と沼で構成されており、座って休める固い地面はない。そのため、休憩も基本的に立ったままだ。

 ……濡れてもいいならシートや寝袋で座ったり寝たりもできるのだが、周囲に違法殺虫剤をまいたせいでそうもいかない。

 濡れた分だけ、自分たちが汚染されるのだ。

 それに、ここは虫を殺しても完全に安全ではない。

「おい、ヒルだ!よっと!」

「ありがとよ、助かったぜ」

 ここには虫だけでなく、水中に住むヒルや貝の魔物がいて時々襲ってくる。こいつらは、虫特攻の毒では効きが悪いようだ。

 強い訳ではないのだが、傷つけられるとそこから自分たちのまいた毒が入る。それを防ぐために、いちいち倒さねばならない。

「大丈夫ですの?お怪我があれば、すぐ神官が治療しますわ」

 襲われかけた冒険者の背中から、ミエハリスが声をかける。

 そもそもこの冒険者は、背中で休憩するミエハリスのせいで反撃できなかったのに。

 ぬかるみに足を取られながらの行軍でミエハリスは疲れてしまい、座って休憩できないのも相まって、当然のように冒険者におぶさった。

 しかも湿地が広く、広範囲に殺虫剤をまいて空も警戒しなければならないため、ミエハリスの魔力は切れてきている。

「むむっ……魔力回復薬と殺虫剤の消耗が思ったより激しいな。

 ここまで湿地が広いとは、想定外だ」

 道具の在庫を確認して、魔物学の教師は顔をしかめた。

 これまでの坑道や峡谷なら、自分たちが通るルートだけ殺虫すればよかった。しかしこの開けた空間では、そうもいかない。

 どうしても、通らない場所まで殺虫剤が広がってしまう。

 かといって足場が悪く、素早く通り抜けることができない。そのうえ自分たちがまいた毒で、腰を下ろすこともできない。

「先生、ちょっとキツいですが、早く進んじまいましょう。

 ここじゃ、休むに休めませんぜ」

 冒険者に言われて、魔物学の教師は渋々うなずいた。

 魔物学の教師だって、もうひざが笑いかけている。しかしここを抜けるか殺虫剤をまくのをやめなければ、まともに休めもしないのだ。

(くそっ……地形を使うのが上手い子だ!)

 魔物学の教師は神官に癒しをかけてもらうと、また歩き出した。こういう地形責めは自分の専門外だから仕方ないと、心の中で言い訳しながら。


 そしてようやく次の階層につながる階段を見つけ、下りた先にあったのは……ギラギラに油膜の張った異様な湿地だった。

「ひぃっ……何ですの、ここは!?」

 一目見てヤバいと分かる光景に、ミエハリスが小さな悲鳴を上げる。

 沼地の水は黒く濁っており、浅くても底が見えない。生えている草は弱弱しく、形が歪んで変色している。

 おまけに、息をするだけで胸が悪くなる。

「こいつは……毒沼だ!

 皆、広く毒を予防する薬を飲むんだ」

 魔物学の教師が、大慌てで毒の予防薬を皆に配る。

 違法殺虫剤用の拮抗薬は、それ以外の毒を防ぐことができない。ここの毒が何かわからない以上、汎用の予防薬を使うことになる。

「むむぅ……これは予想外だな。

 虫系の魔物の常道として、魔物による奇襲と数の暴力でくると思ったんだが。

 しかし、この環境では虫は生きられまい。ここにいる間は少なくとも、虫の心配をしないでいいだろう」

 魔物学の教師はそう判断し、ここでは殺虫剤の散布をやめ、拮抗薬を飲むのもやめるよう指示した。

「薬学の先生も言っていたが、薬はたいてい毒にもなる。

 予防薬や拮抗薬も、中和すべき毒がない状態で飲み続けるとそれ自体の成分が悪さをするらしいからな。

 あまり重ねて大量に飲むものじゃない」

「ええ、薬は身の毒と言いますものね」

 だが、この状況で予防薬を飲まない訳には行かない。見るからに歩くだけで毒に侵されるし、虫はいなくても……。

「ぎゃあああっ!!」

 いきなり、冒険者の一人が悲鳴を上げて倒れた。

 バシャバシャとヘドロをとばしてもがく冒険者に絡みつく、長いもの。

「ハードバイパーだ!」

 固い鱗を持つ毒蛇の魔物が、水中から奇襲をかけてきた。油膜と水の濁りのせいで、近づかれても気づけなかったのだ。

「ぐっぬううう!放せ、この……ぶべっ!」

 冒険者は必死で振りほどこうとしているが、もがけばもがくほど体が沼に沈んでいく。おまけに、全身に油膜がまとわりつき、目や口にも毒水が入る。

 他の冒険者がどうにかハードバイパーを倒したものの、絡みつかれた冒険者は全身毒まみれになっていた。

「あ、危ねえ……予防薬がなかったら死んでたぜ!」

「ああ、こういう環境には毒に適応した毒を持つ魔物がいるのが定石だからね。

 ……ほら、他にもおいでなすったぞ!」

 ガサリと近くの草むらが揺れて、イボだらけの醜いカエルが飛び出した。体長60センチほどと魔物としては小さいが、全身のイボから白い脂が出ている。

「あれの脂に触れるな、猛毒だぞ!

 今飲んだ薬では防げん!!」

 ヒキガエルが魔物化した、ポイズンフロッグだ。全身のイボから猛毒を垂れ流し、触れた者の心臓を侵す。

 ちなみに猛毒とは、一般の解毒剤や解毒魔法が効かない強い毒のことで、治すには高価な万能薬や聖女の癒しが必要となる。

 そんなものが、複数の方向から飛びかかってくる。

「しゃらくせえ!」

 冒険者たちが、ミエハリスと魔物学の教師を守るように迎え撃つ。

 幸い、ポイズンフロッグはカエルの中では動きが鈍く、舌もそこまで長く伸びない。長柄武器を持つ冒険者たちが、次々と仕留めていく。

 だが、大槌を持った冒険者がそいつを勢いよく叩き潰した途端に、そいつの体液と脂が飛び散った。

「きゃあ!」

「しまった……ぐ、うう……!」

 それが神官の目に入り、冒険者一人の顔面にかかる。二人はたちまち寒気に身体を抱き、ふらつき始めた。

「くっ……手間がかかりますわね!

 我らが主よ、どうかこの者たちに癒しの祝福を……ゴッド・ブレス・キュア!」

 すぐにミエハリスが祈りを捧げ、神の力を借りた癒しを行使した。ミエハリスの胸の聖印章が輝き、二人を温かく清浄な光が包み込む。

 恐るべき猛毒も、聖女の癒しの前にはきれいに消え去った。

「ハァ、ハァ……た、助かりました!」

「構いませんわ、これがわたくしの仕事ですもの」

 このありがたい力に、皆がミエハリスを敬い、心から感謝した。移動ではお荷物でも、聖女としての実力は確かだ。

 つんとすましてはいても、言い換えれば力を誇示したり欲のまま報酬や評価をがっついたりしないということ。

 本当に、この人がいて良かったと思った。

 だが、ゆっくりこの空気に浸ってはいられない。

「感動の所悪いが、すぐこの場を離れるぞ!

 猛毒の脂が、油膜に溶けて広がり始めている。こいつが体や持ち物に着く前に、さっさと先に進むのだ」

 魔物学の教師が、二次被害を出さないように指示を出した。

 ポイズンフロッグの猛毒脂は水に溶けないので、普通の水場なら塊で浮いているだけだ。しかし、油膜のあるここでは話が違う。

「全く、憎らしいくらい魔物を使いこなすな、ユリエルは。

 ……学園に残っておれば、いくらでも働き口はあったものを。ただ悪に堕ちたその心根が憎いわい!」

 魔物学の教師は、内心舌打ちして呟いた。

 彼をして優秀と評価する教え子に、本当は憎むべき罪などないことを、今の彼には知る由もなかった。


 幸い、毒沼の階層は上の湿地程広くなかった。

 数々の毒蛇や毒蛙の魔物の襲撃をしのぎ、調査隊はついに7階層に到達した。

「まあ、きれいな所……!」

「ああ、いかにも虫の親玉が好みそうなところだ」

 7階層は、広々とした森だ。といってもそれほど深くはなく、通れる道はあり、ところどころに草が生え花が咲き乱れる広場がある。

 これまでの階層と比べ、豊かでのどかに見える。

 だが森とは本来、虫の巣窟である。ここもちょっと見ているだけで、大きな蝶や蛾が舞い、蜂の魔物が花の蜜を集めていた。

「……ミエハリスちゃん、一回みんなを水で洗おうか」

「ええ!?わたくしに、洗濯女のような真似を……」

「黙れ、毒を被ったまま進めっていうのか!?水だっていくらでも補給できる訳じゃないし、君がまとめてやるのが一番なんだよ。

 それに、君ならその毒水をうまく周りにまけるだろう」

 暗に君にしかできないと言われて、ミエハリスは少し気を良くした。

 魔物学の教師の指示は、実に理にかなっている。

 自分たちを洗った水には毒沼の成分が含まれるから、虫の魔物にもある程度効くはずだ。

 それを、安全地帯作りに利用する。

「皆、座って休めないところが続いて疲れただろう。

 ここで一旦休憩にしよう」

 自分たちを囲むように毒水をしみこませ、空中にも少し殺虫剤をまいて、一行はようやく落ち着いて腰を下ろした。


 冒険者たちの荷物をほどいて、調査隊は食事を始めた。

 鉄砲水の4階層から毒沼の6階層まで休憩も立ったまま、荷物を下ろすこともできなかったため、皆かなり疲れが溜まっている。

 久しぶりの腰を下ろしての食事で、一行はようやく人心地がついた。

「ふう~……座って休めるのが、こんなにありがたいとは!」

 特に、元々体力のないミエハリスと魔物学の教師にはひとしおだ。顔には出さないが、ここまでミエハリスを背負ってきた冒険者も。

「7階層……ここでようやく、中間地点ですのね」

「ああ……まあ我々の役目は攻略ではないがね。

 しかし、ユリエルもなかなか尻尾を出さんな。

 ここまでに出現した魔物は皆、虫か元々近くの湿地にいる生物がベースだ。見た所特に異質な奴はおらん。

 これでは、もっと下に行かんと分からんかもしれんな」

 攻略は順調だが、魔物学の教師は少々焦って来ていた。

 所詮学生の運営するダンジョンなど、防衛は支援者頼みですぐボロが出るかと思ったが、どうもそうはいかない。

 このままでは、インボウズに課せられた使命を果たせないかもしれない。

「7階層……本来ここが最下層だと思って準備をしてきたんだ。

 4階層までは予想より遥かに速く進めたのだが、5階層と6階層は逆に思った以上に時間を食われた。

 この階層も広いようだと、食糧と水が心もとないな」

 魔物学の教師は、手の中のかじりかけのパンを未練がましく見つめた。

「え、そんな……ではわたくしたちはこの先、何を食べれば……!」

 ミエハリスも、干し肉と干し野菜のスープを見て青くなる。ダンジョンなんて冒険者が日頃から行っているし、戦場より甘いだろうと思っていたが……そうではなかった。

「ちょっと、水と食糧無しで仕事ができる訳ないじゃない!

 あんたたち、何とかしなさいよ!」

 ミエハリスが喚くと、神官の一人が発言した。

「あの……あそこの茂みに木イチゴがなってますけど、食べられませんか?こういう森の中なら、他にも食べ物が見つかるかも」

 見れば、茂みに美味しそうなラズベリーやブラックベリーがたわわに実っている。それを見て、冒険者たちもごくりと唾を飲んだ。

「確かに、ダンジョン内でも自然豊かなフィールドなら、食糧や薬草が採れることはあります。それで自給して進むのは、ダンジョンではよくあること。

 なのでここは、毒をまいて汚染する前に、少し探索してみては」

「ううむ、止むを得ん!

 水と食糧を探してこい!」

 魔物学の教師は、ついに毒をまかずに探索を許可した。

 安全のためには毒をまいた方がいいのだが、それをやるとここで得られるものが食べられなくなる。

 苦渋の決断だった。

(ぐううぅ……状況のせいで、私自慢の作戦が実行できんとは!)

 屈辱のせいか、魔物学の教師の目からぽろりと涙がこぼれた。しかしユリエルの言った通りと認めるのはあまりに癪で、魔物学の教師はがむしゃらに涙を拭った。


 しばらくすると、安全地帯から出た冒険者と神官が果物をどっさり持ってきた。

「運が良かったですぜ、杏がこんなに実ってたんですよ!」

 籠の中で宝石のようにツヤツヤと主張する杏と木イチゴに、冒険者のみならずミエハリスも思わず涎を垂らした。

「あら、わたくしとしたことが、はしたない!」

「いやいや、それだけ疲れてお腹が空いてたんだよ。

 しかし杏は多少日持ちがするし、ありがたいな。もっと採れるなら、少しここで腹に入れてしまうとするか!」

 調査隊の一行は、さっそく木イチゴと杏を食べ始めた。

「おっ美味いな!毒とかはなさそうだ。

 そうだ、どうせ飲むなら拮抗薬をくれよ。あれ結構えぐみが口に残るんだが、これだけ口直しがあるなら……」

「名案ですわ!」

 とある冒険者の提案で、一行は殺虫剤の拮抗薬を飲んでから果物を食べることにした。

 苦い良薬の後に口直しがあるかないかは、地味に大違いだ。特にこういう、持ち込んだ食糧を無駄にできない状況下では。

「それでは、いただきますわ。あ~ん……」

 皮をむいて出てきた、みずみずしいオレンジ色の果肉に白い歯を立てて……。

「むぐっ!……ん?

 んおぅっむぶううっ!?ぶえええっ!!」

 次の瞬間、ミエハリスはせっかく食べた杏を噴き出した。

 口の中に広がったのは、薬とは比べ物にならないほどの苦み。果肉を吐き出すだけならず、胃までひっくり返ってしまう。

 ミエハリスは我慢できず、食べたものとせっかく飲んだ薬まで吐き戻してしまった。

「あっ何するんだ!?ばっちい!

 それに、貴重な食糧と薬を!」

 魔物学の教師は憤慨して叱りつけたが、その側で他の冒険者や神官にも嘔吐する者が現れだした。

「な、何だ!?さっき食べた時は平気だったじゃないか!」

「ぐええっ……この、杏……すっげぇ苦いのが……おぶっ……混ざって……おべええぇ!!」

 どうやらこの杏は、甘くて美味しいのと苦くて毒があるのが混じっているようだ。そしてどちらかは、味わってみるまで分からない。

「何てこった……これじゃ、うかつに食べられんぞ。

 せっかくの食糧と薬も、こんなに無駄になってしまった」

 魔物学の教師は、唖然とした。

 一度吐いたものは、もう食べられない。残り少ない食糧と拮抗薬が、この罠でさらに奪われてしまった。

 そして拮抗薬がなくなれば、もう自分たちは毒をまけなくなるのだ。

「あああ、どうする……どうすればいい!?」

 うろたえるも、この場で指揮を取るのは自分だ。ミエハリスは涙と涎を垂らして呆然としていて、使い物にならない。

「おい、しっかりしろミエハリス!

 この杏……魔法で解毒すれば何とかならんか?

 ほら、毒が抜ければ……ぐえっおぼぼぼ!!」

 ミエハリスを叱咤して杏を解毒させてみたが、すさまじい苦みは抜けず、魔物学の教師も吐かされてしまった。

 その騒ぎを聞きつけて、虫の魔物たちがざわりと遠巻きに集まり始めた。


 調査隊たちはそちらに構って、気づいていなかった。

 虫より杏の毒よりもずっと厄介なものが、静かに自分たちの体を侵し始めていることに。


 杏仙娘娘の置き土産が炸裂しました。

 この杏は一口かじるだけで胃の中のものをぶちまけるくらい苦く、おまけに毒を食らわせます。しかも、解毒しても苦みは抜けないという鬼仕様。

 でも全体としては甘いのが多いので、そっちを信じて被害が拡大しやすいです。

 薬なら、吐かせてしまえホトトギス。


 毒沼には、元々地上の湿地にいた毒系魔物がいます。

 ユリエルが序盤に湿地から連れて行ったヒキガエルは、無事猛毒生産装置になりましたとさ。

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「同じ感染力なら、致死率100%のウィルスよりも、致死率10%程度のものの方がトータルの死者数で甚大な被害をもたらす。」理論…!!
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