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64.大砂漠の姫様のお城

 新章に入り、ユリエルの物語に戻ります。

 時は少しさかのぼり、死肉祭が始まったばかりの頃。


 魔王軍の集会で気を失ったユリエルは、どこで何をしていたのでしょうか。

 そして、ユリエル不在のダンジョンの様子と魃姫の援軍は。

 ご想像の通り、魃姫様は中華風の人物です。そしてフランケン仙女も。

「ん……う……う……」

 瞼越しにぼんやりと感じる光に、ユリエルは身じろぎした。

「は……う……私、どうなって……?」

 体が重くて、ひどく喉が渇いている。唾を飲み込むこともできないくらい。ただ、柔らかい場所に寝かされているのは分かる。

 どうにか目を開けて周りを見ると、そこは見たこともない部屋だった。

(ここ、どこ……?

 そうだ、私、魔王軍の集会で……)

 意識がはっきりしてくると、これまでのことを思い出した。

 魔王軍の集会に参加して、処女を証明するためにたくさん血を提供して、四天王の魃姫がカルメーラから守ってくれて……。

 記憶は、そこで途切れている。

(……じゃあ、ここは、魔王城?

 そうだ、私……ダンジョンを守らないと!!)

 気が付くと、ユリエルは慌てた。

 自分は一体、どれだけ気絶していたのだろうか。自分がここで寝ている間、虫けらのダンジョンはどうなっているのか。

「くっ……フィジカル……ブー……」

「やめてっ!」

 ユリエルが自分を強化しようとすると、誰かがユリエルの手を掴んで魔法を散らした。

 その相手の顔を見て、ユリエルはぎょっとした。

「ひぃっ……あ、す、すみません!」

 青白く変色した肌に、瞼を切り取られたようなギョロ目。耳まで裂けて縫い合わせられた口。体中に走る、赤黒い傷。

 恐ろしくてびっくりしたが、知っている人だった。

「いいのよ、大丈夫……慣れてるから」

 フランケン仙女は、少し悲しそうに呟いてユリエルの手を下ろした。

「まだ、無理は良くないわ。

 あなた、あれから一週間も眠ってたのよ。あの造血剤のせいで、回復力が枯渇してしまっていたから。

 もう少しここで養生した方がいいわ」

「そうですか、ありがとうございます」

 どうやら自分は、魃姫に保護されたようだと分かった。こうして手厚く守ってもらえたということは、ダンジョンの方もひとまず大丈夫だろう。

 少なくとも、ダンジョンマスターの力は消えていない。

 安心すると、空腹と渇きがどっと押し寄せて来た。

「すみません……何か、飲み物をいただけますか?」

「まあ、失礼したわ。すぐ注いであげる。

 ついでに、軽く食事にしましょうか。そろそろ、お腹に何か入れた方がいいわ」

 フランケン仙女は器用に羽衣で水差しを取ると、いい香りのするお茶をくれた。それを口にして、ユリエルはようやく人心地がついた。


 程なくして、ユリエルはフランケン仙女と向き合って座っていた。

 ユリエルの前には上品な磁器のポットとカップが置かれ、さらに美しい絵付けの皿に粥が盛られている。

「身体の回復力を緩やかに高める、薬草茶と薬膳粥よ。

 食べられる量でいいから、召し上がってみて」

 優しくすすめられて、ユリエルはそっと粥を口に運んだ。

「うわぁ……!」

 口に入れた瞬間、優しい甘みと出汁が口の中に広がる。薄味なのになぜか満たされる、不思議な味だ。

「あなたの故郷のとはだいぶ違う味だけど、お口に合ったかしら?」

「ええ、とても美味しいです!こんなの、初めて食べました!」

「良かったわ、喜んでもらえて」

 フランケン仙女は、嬉しそうに顔をほころばせた。恐ろしい容貌のせいで子供が見たら号泣ものの笑顔だが、ユリエルはもう怖くない。

 この人は、中身はとても気遣いができて上品な女官だ。上っ面だけ聖衣で着飾ったクソ共より、ずっと信用できる。

「ありがとうございます、手厚くしていただいて。

 えっと……何とお呼びすればよろしいでしょうか?」

 ここでユリエルはようやく、フランケン仙女の名前を聞いていないことに気づいた。

 フランケン仙女は、待っていましたとばかりに名乗った。

「わたくしは、桃仙娘娘と申します。

 魃姫様よりあなたのお世話を仰せつかっておりますので、何か用がありましたら遠慮なく声をかけてね」

 名前から判断するに、この仙女も魃姫と同じく東方出身のようだ。

 それにしても、伝わって来るおとぎ話の仙女は花のように美しいことが多いのだが……どうしてこんな姿なのかは、聞かない方が良さそうだ。

 それに、今桃仙娘娘に聞きたいことは山ほどある。

「では……食べながらで失礼ですが、今の状況をお聞かせ願えませんか?

 私のダンジョンがどうなっているかと、ここはどこなのかを……」


 桃仙娘娘は少し席を外して、通信の魔道具を持ってきた。

「さあ、これで向こうのダンジョンとつないでお話ししよっか。これね、映像も送れるけっこういいやつよ」

「わあ、わざわざありがとうございます!」

「いいのいいの、お家が不安だと他のことなんか頭に入らないでしょ」

 何だか後に難しい話が控えているような言い方をされたが、今は厚遇に甘えてダンジョンの無事を確認するとしよう。

 桃仙娘娘が通信を繋ぐと、魔道具の上に映像が浮かび上がった。

 ……が、真っ先に映ったのはフランケン仙女だった。

「どうしたのお姉ちゃーん?

 あ、マスターの子起きたんだ!」

 桃仙娘娘に似ているが、少し違う。桃仙娘娘は着物と羽衣が桃色だがこちらは橙色で、言動が少し幼い。

「この子は杏仙娘娘、わたくしの妹よ。

 魃姫様があなたのダンジョンを守るために派遣したの」

「え……守っててくれたんですか!?ありがとうございます!」

 目を丸くするユリエルを横目に、桃仙娘娘は報告を促す。

「それで、何か変わったことはあった?そっちの配下とは、うまくやってる?」

「んー、変わったことは……あ、結構強めの騎士のパーティーが来たよ。一番強い奴はレベル60超えてたかな。

 でも大丈夫、きちんと倒したから!」

「うえええ!?」

 いきなり、とんでもない報告があった。

 ユリエルとしては、しばらく敵は来ないだろうと予想してダンジョンを離れたのだが、まさかそんな強敵が来たとは。

 杏仙娘娘がいたのであっさり討伐できたが、もし虫けらのダンジョンだけで防衛していたら負けていたかもしれない。

 青ざめるユリエルを見て、桃仙娘娘が質問を続ける。

「それで、奴らの所属と目的は聞きましたか!?

 その後、敵の動きは!?」

 すると、杏仙娘娘の目が泳いだ。

「えー……っと、き、教会の手下だよ!それで、成功したら聖騎士になれるとか何とか……。あ、あと、解毒剤をいっぱいと解毒のメダリオンを持ってた。

 そ、それからは誰も来てないから安心してよ!」

 どうやら、情報を抜く前に殺してしまったらしい。この不手際に、桃仙娘娘は頭を抱えている。

「ちょっと、情報くらい抜いてよ!

 この先の見通しが立たないじゃない!!」

「えー、守ったからいいじゃん!」

 どうも杏仙娘娘は、姉よりだいぶ頭が軽くて肝心なところが抜けているらしい。戦闘の実力は、十二分にあるのだが。

「いいえ、守ってくださっただけで結構です!」

 取ってつけたようなお礼を言いながら、ユリエルは思った。こいつが自分の看病に回らなくて、本当に良かったと。

 魃姫の采配は、とても正しかった。

 桃仙娘娘は、諦めて妹をどかせた。

「はぁ……あなたの報告はもういいわ。

 それより、そっちの子たちとユリエルに話をさせてあげて。ユリエルがとても心配しているの」

「あーい……」

 杏仙娘娘がそそくさとどくと、オリヒメが大泣きして飛び込んで来た。

「うわああーん!!ユリエル!!無事で良かったー!!

 あんたを知らない所に連れていかれて、でもあたしたちじゃ逆らえなくて!何されたのか心配で心配で!

 あんたが帰るまで守ろうと思ってたら、すっごい強い敵が来て!もうダメかって思ったら、あの仙女さんがぶっ飛ばしてくれて!

 こ、怖かったよおおぉーっ!!!」

 オリヒメは相変わらずだ。

 ユリエルのために留守を守ろうと気負って、しかし不安と恐怖に押し潰されそうになっていた。杏仙娘娘との力の差を思い知らされ、打ちのめされた。

 だが逆にその状態から守ってもらえたことで、杏仙娘娘のことは受け入れたらしい。

「うんうん、オリヒメちゃんが無事で良かった。

 他は、みんな無事?」

「ええ、名つきの幹部とワークロコダイル、前線に出てなかった妖精さんたちは大丈夫!仙女さんが、私に任せてって逃がしてくれたぁ~!」

 どうやら魃姫は、ユリエルが不在の内にダンジョンに大被害が出ないように取り計らってくれたらしい。

 これには、虫けらのダンジョンの全員が感謝している。

 次に代わったシャーマンからは、もう少し詳しい話を聞くことができた。

「今のところ、外の人間たちがこっちに来る動きはないよ。あたしが妖精を、レジンが小虫を使って探ってるが、人間は今死肉祭にかかりきりだ。

 それと、倒された奴らはどうも、裏で動いてて他に知られるとまずかったらしい。戦闘中、そんなことを口にしてたよ。

 実際、あいつらが帰らなくても、捜索も来ないし警備が厚くもならないからね」

 シャーマンは、さすがにしっかり状況を把握していた。

 元々ワークロコダイルの集落では参謀の役目を果たしていたため、戦った杏仙娘娘よりもよく敵を観察している。

 聞けば、レジンが杏仙娘娘と騎士たちとの戦いを記録しておいて何度も見たため、付き合いながら敵の言うことを拾い上げたようだ。

「まあ、あちらに状況分析が得意な方がいて良かったわ。

 これなら妹の頭が至らなくても何とかなるわね!」

 桃仙娘娘が、ホッと胸をなでおろしている。

 それに、杏仙娘娘がムキになって言い返す。

「私だって、戦い以外も仕事してるもん!

 敵が来てない時はねー、ワークロコダイルやレジン君を鍛えてあげてたんだから。いやー、レジン君、すごい根性だねー!」

「俺も井の中の蛙だって思い知ったぜ。

 それに、姐御の教えてくれる戦い方は新鮮で面白えな。東方の格闘術だったか?こっちの騎士共が知らない動きは武器になりそうだ!」

 ダンジョンボスにして武闘派のレジンは、杏仙娘娘の強さを慕うようになり、今では毎日教えを乞うている。

 きっとユリエルが帰る頃には、一段と強くなっているだろう。

 力こそ正義のワークロコダイルたちも、杏仙娘娘に畏敬の念をもって従っている。

 つまり、虫けらのダンジョンと杏仙娘娘はうまくやっている。この様子なら、もう少しユリエルが留守にしても大丈夫だろう。

「ありがとうございます!皆も、もう少し待ってて。

 私も、早めに帰れるように頑張るから」

「そうじゃないだろ、今はきちんと休みな。

 姉君殿、どうかうちの主をよろしくお願いします」

 なぜかシャーマンが代表のように、こちらに頭を下げる。頭の出来と気遣いと統率力を考えたら、仕方ないのかもしれない。

「分かりました、しっかり回復させて戻しますわ。

 杏仙、やりすぎてそちらの子たちの心を折らないように」

「あーい!」

 こうして、ダンジョンの現状確認は終わった。


 映像を消すと、唐突にどこからか声が響いた。

「用は済んだのかえ?」

 耳にした瞬間、ユリエルは鳥肌が立った。この独特な落ち着き払ったやや低い声……忘れもしない、四天王、魃姫の声だ。

 ユリエルは素早く部屋の中を見回したが、姿はない

 だが桃仙娘娘が入口の方を向いてかしづいていたので、慌ててそちらに平伏した。

 すると、入り口近くの空気がゆらりと歪み、そこに魃姫が出現した。魃姫はユリエルを微笑んで見下ろすと、声をかけた。

「そこまで恐れずとも良い、面を上げよ」

「は、恐れ入ります」

 ユリエルが顔を上げると、魃姫はいつの間にかベッドの側の椅子に腰かけていた。

 その佇まいは凛として、姫という呼び名にふさわしい気品を感じさせる。しゃんと背筋を伸ばし、足を揃えて手は膝に。姿勢を正して、微動だにしない。

 その威圧とはまた違った圧に、ユリエルは息を飲んだ。

 こうして近くで見ると、まるで演劇か何かの登場人物のようだ。素顔が分からない程の白塗りと隈取りの厚化粧が、違う世界の人間のような隔絶感を与える。

 衣装も、実用とは思えぬほど豪華絢爛だ。朱色を基調に色とりどりの刺繍で飾られ、頭の冠には羽飾りとポンポンがついている。

 ゆったりとした長い袖と裾が、より優美さを際立たせていた。

 ユリエルのつい無遠慮になる視線など気にしないかのように、魃姫は言った。

「ユリエルよ、そなたは大切な客であり、半病人である。

 楽にせよ。食べながら聞けばよい」

 だが、魃姫が姿勢を正したままではユリエルも動きづらい。

 それに気づいた桃仙娘娘が、柔らかく進言した。

「ではまず、姫様が楽になさってくださいませ。目上よりも非礼に走れるほど、客人は命知らずではありません」

「おお、そうか。では失礼するぞえ」

 魃姫はゆったりと姿勢を崩し、わざと足を組んでみせた。

 ユリエルに、緩めてもいいぞと言外に言っているのだ。

「では、お言葉に甘えまして。こちらこそ失礼します」

 ユリエルは緊張をほぐす意味でも、席に着くとまた食べ始めた。むしろ何か別の刺激がないと、魃姫だけに集中してしまい石になりそうだ。

 ユリエルが食べながらも視線を向けていると、魃姫は言った。

「突然このような所に連れて来てしもうて、すまぬのう。心労をかけた。

 しかし、そなたをそのまま元のダンジョンに帰すのは危険であったゆえ、わらわのダンジョンにて保護することにした」

 魃姫は、賞賛半分呆れ半分の何とも言えない顔をした。

「そなた、見かけによらず豪胆よのう。

 それとも、そんなに教会が憎かったか。

 見ず知らずの魔族がひしめくあの場で、得体の知れぬ薬をよう一気にやったものじゃ。わらわも久しぶりに驚かされたぞよ。」

「そ、それは……それ以外に、純潔を証明する方法がなくて焦っておりまして……」

 ユリエルが赤くなりながら言い訳すると、魃姫は心配そうに続けた。

「それよ、何でもやろうという心意気じゃ。

 しかし利己的で悪しき魔族にとって、それは付け込む隙となる。現にヒュドレアの協力も、善意のみではなかったであろう。

 それに、そなたの血は本当に使える。

 それをあのように大々的に言いふらせば、欲に囚われる者も出よう」

「あ……!」

 その指摘に、ユリエルは今さらながら、自分がひどく不用心だったと気づいた。

 最高の触媒を採れる処女の元聖女だと宣伝することは、ここに宝石鉱山があると大声で叫ぶに等しい。

 そんな事をすれば、自分のものにしていいように使おうと思う者が必ず出る。

 カルメーラなどは、あからさまにその意図が透けて見えた。一勢力だったので撃退できたが、いくつもの勢力が手を組んで来たら……。

 いや、それよりもユリエルが守る強者のいないダンジョンに帰ったところを、強襲されたら……。

 魃姫が言いたいのは、そういうことだ。

「今回はうまくいったが……豪胆と無謀は紙一重と心得よ。

 真実も名誉も、命あっての物種じゃぞ。

 あの時気を失ったそなたを放置すれば、欲に囚われた者により何をされるか分からなんだ。

 そなたも、そなたのダンジョンもな!」

「はい、恐れ入ります!」

 魃姫の指摘に、ユリエルは空恐ろしくなった。

 あの時は何でもやってやると無我夢中だったが、下手をすれば真実と引き換えに命や尊厳を奪われていたかもしれない。

 それに気づいて守ってくれた魃姫には、もう頭が上がらない。

 だが魃姫は、そんなユリエルに面白そうに告げた。

「しかしまあ、その勇気と筋を通す志は気に入った。

 よって、それを通せるよう、しばらくここで療養しつつダンジョンのことを学ぶが良い。そなたの気骨に期待しておるぞ!」

「はい、精進します!」

 危なっかしいとはいえ、魃姫はユリエルの豪胆さを長所と認め、目をかけてくれているらしい。

 ユリエルは、この圧倒的強者の温情に心から感謝した。


 粥を食べ終わると、ユリエルはリハビリがてら居住区画を案内された。

 相当消耗しているうえにしばらく寝たきりだったため、思った以上に身体が重い。しかし見るもの全て珍しすぎて、ユリエルの足は止まらなかった。

「すごーい、砂漠の国ってもっと違うのイメージしてましたけど……まるで砂漠より向こうに旅行に来たみたいです!」

「ええ、それはもう。

 魃姫様は砂漠の東側出身ですので」

 ユリエルとしては、東方の砂漠の国といえば、砂漠の西側にあるオリエントな文化の国である。

 だが魃姫の城は、魃姫の出身地であるさらに東の大国、中華の様式だ。

 それがユリエルには物珍しく、楽しかった。

「うふふふ、じゃあもっと雄大な景色を見せてあげるわ!」

 桃仙娘娘がユリエルの手を引き、城のてっぺんにある展望台に案内した。

 そこから見渡す景色に、ユリエルは目を丸くした。

「うわぁ……!!」

 街と見紛うような広い城を囲んでいるのは、全方位が果ての見えない砂漠。城が立つ真っ赤な岩肌の山と、ふもとに広がる砂丘ばかりの大地。

 ユリエルにとって、見るどころか想像したことすらない光景だった。

 雲一つない晴天の下、魃姫が誇らしげに言う。

「ホホホ……わらわの広大なる灼熱のダンジョン、魔王様以外に抜かれたことはない!ここは安全じゃ。

 そなたは安心して、真実を白日の下に晒す力を蓄えるがよい!」

 たとえ仲間となる勢力がいなくても、単独勢力でこの強大な力と広大なダンジョンである。

 その誰にも頼らず凛と立つ姿は、ユリエルに憧れを抱かせた。

「はい!少しでもあなた様に近づけるよう、いろいろとご教示願います!」

「ホホホ、愛い奴じゃ!わらわも久方ぶりに楽しめそうじゃのう」

 素直に頼って来るユリエルを、魃姫は微笑ましそうに見つめた。純粋で幼気なユリエルとの出会いは、孤独な魃姫の城を太陽より明るく照らしていた。

 魃姫が傘下の勢力を持たないのに四天王最強なのは、本人の力もさることながら広大かつ超高難易度のダンジョンがあるからです。

 しかもここは大砂漠にあるため、地表にどんどん拡張しても他の勢力とぶつかりません。

 ひたすら地獄のような環境で旨味も割に合わないため、積極的に攻め込んでくる者がいないので弱ったところを横取りも狙えない。

 ここはユリエルにとって、最高に安全なシェルターでした。


 なお、この大砂漠を挟んで人の居住地が大きく分かれているため、神の勢力図もここで大きく分かれています。

 美の女神グラーニャがまず砂漠の西側だけ掌握しようとしているのは、東からの攻め込まれる可能性が低いからというのもあります。

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