57.死屍累々の夜明け
実地の戦いが終わっても、ざまぁはまだ終わらない!
むしろここからが本番だ!
散々たる結果と被害に度肝を抜かれるインボウズですが、その原因にはもう何が何だか……認めるだけでも大仕事。
しかも、認めたとて、全力で有効な手を打てるかは……今教会が支持されているのがどんな前提の下でなのか思い出そう。
これまで他に押し付けた苦悩が、ついに自分に返って来始める。
夜明け前、まだ一番鶏が鳴く前に、冒険者ギルドに弾丸のように飛び込む者があった。
「おい、さっさとギルドマスターを出せ!
すぐ予備登録者を招集しろ!!」
一応死肉祭中ということで詰めていた職員の胸倉を掴み、マリオンが叫ぶ。
慌てふためいた職員がギルドマスターの家に通信の魔道具をつなぐと、マリオンは寝ぼけ眼のギルドマスターの耳元でぶちかました。
「おい、ユリエルの処女の血を使って強くなったって、ダラクが言いふらしてるぞ!
しかも本当に強え、味方は押し返されて潰走してる!このまま放っといたら、それを信じる奴が続出するぞ!!」
「な、何いいぃーっ!!?」
ギルドマスターは、一発で目が覚めた。そして、すぐさま出勤してきた。
身に覚えがあるからこそ、じっとしてなどいられない。
ギルドマスターは血眼になって職員と予備登録者を招集し、聖者落としのダンジョンに向かわせた。
折しも聖者落としのダンジョンでは、聖騎士と次期将軍たちが出口に防衛線を張り、出てくる者を皆殺しにしようとしているという。
ギルドマスターにとっては、冗談ではない。
真実を知った者を葬りたいのはやまやまだが、皆殺しにしたらリストリアから冒険者がほとんどいなくなってしまう。
そのうえ地方から来た冒険者が教会に殺されたと噂が立てば、もうこれから地方の冒険者を集められなくなる。
そうなれば、リストリアの冒険者ギルドは壊滅だ。
(くそっ枢機卿はそこまで考えてくれぬから困る!
人は、金さえまけば集まる訳ではないんだぞ!!)
ギルドマスターは空っぽの胃がキリキリ痛むのをこらえて、ダンジョン出口に生きた者を保護する検問ができるまで馬車馬のように働いた。
そして冒険者の損耗率と見舞金を計算すると、また気が遠くなるのだった。
日が昇るにつれ、街の人々は異様な空気に気づいた。
朝のお祈りに出かけると、教会に下働きしかいない。いつも人々の相手をしている神官たちが、次々と馬車に乗って街を出ていく。
「あれ……勝ってるんじゃなかったのか?」
「ダンジョン入口で、戦勝祝いでもするのか?」
これまでの教会の発表から、街の人々はそう噂した。
だが、どうも様子がおかしい。教会の様子は慌ただしく、しかし勝ったという雰囲気ではない。
街の人々は、言い知れぬ不安を抱えながら一日を始めた。
インボウズがようやく起きてくると、状況はひっくり返っていた。
昨夜は当たり前のように思っていた勝利報告は来ず、代わりにもたらされた報告は予想だにしない悪夢であった。
「は……い、古の聖者が、魔化?倒せたか、それは良かった!
だが聖騎士が……各家の筆頭しか、戻らなかった?え……え、三十人もいたんだぞ!そんな事が……あってたまるか……。
しかも、原因が……は?ユリエル?
その証拠映像を、奴らが見せつけて……何の?」
はっきり言って、何が何だか分からない。
情報量が多すぎて、予想外すぎて、脳がフリーズしてしまう。
いや、ちょっと聞いただけでも認めたくなさすぎる。耳には聞こえているはずなのに、脳が全力で拒否している。
(おかしい、僕は約束された勝利報告を聞くだけだったはずなのに。
一体全体、どうしてこうなったんだ?)
昨日の深酒のせいでまだ頭がぼーっとして、聞こえる言葉は夢見心地だ。もしかしたら、まだ夢の中なのかもしれない。
しかし、ふらついた拍子に壁にぶつけた頭は、憎らしいくらい痛い。
これは現実なのだと、遅ればせながら認識する。
「そ、そうか……で、ダンジョン攻略は?」
「最深部の三階層前までですね。そこで魔物化した古の聖者が現れ、多くの聖騎士が倒れたため撤退しております」
それを聞くと、インボウズはめまいがした。
あんなに戦力を集めて、今年こそ攻略できると意気込んでいたのに……これでは、逆に他家から損失を責められかねない。
(いや……魔に堕ちた古の聖者を倒したのだから、何とか格好はつくか。
しかし、何でそんなもんが今年に限っているんだよ!
僕の運は一体どうなってるんだ!)
インボウズは、ギリギリと奥歯を噛みしめた。
何もかもうまくいくと思っていたのに、そのために必要なものも手に入ったのに、何かが自分の邪魔をしているとしか思えない。
おまけに、思考をかき乱すように小憎らしい女の名が何度も耳をかすめる。
ユリエル、ユリエルと、こんな時に何なんだ。今はあんなどうでもいい奴より、考えて処理するべきことが山ほどあるのに。
「……うるさいな!
ユリエルのことなんか、後でいいだろ!!」
「……ですから、今回勝てなかった原因がユリエルの血にあると」
オニデスが眉間を山脈のようにして突きつけてきた一言に、インボウズはあっけにとられた。
「は……何の関係が?……証拠映像って、何だよ?」
今の状況と関係があるなら、聞かない訳にはいかない。インボウズは嫌がる耳を懸命にそばだてて、今度こそオニデスの報告を聞いた。
そして、内容を理解した途端、頭どころか体まで石化したように固まった。
自分たちの知らぬ間に、どうやらユリエルは魔王軍と接触していた。
そして魔族たちに大きな力を与える純潔なる聖女の血を捧げ、それで魔族たちが振るう力で自身の純潔を証明しようとした。
ダラクはその血を得て、これまで手駒にできなかった古の聖者を魔に堕とした。
それで多くの聖騎士を屠ったのみならず、ユリエルの純潔を吸血鬼の自らが認めた映像をダンジョン中に流した。
これまたユリエルの血で強化した配下たちに、人間を思いきり蹴散らさせながら。
さすがに、この意味が分からぬインボウズではない。
「ひょっ……そ、それじゃあ……これ、全部……ユリエルのせい?
ダンジョンに潜ってた奴らは、みんな……それ、知って……!?」
「あくまで、魔族がそう訴えているだけですが!!」
動揺して思わず罪を吐いてしまいそうなインボウズに、オニデスはきつく釘を刺し、周りにいた者たちをにらみつける。
「もう少しお休みください、枢機卿。
どうやら、まだ酔いが残っていらっしゃる」
オニデスは、有無を言わさぬ調子でインボウズに戻るよう促した。
今のところユリエルの純潔の証は、魔族の証言と魔族が見せた映像と状況しかない。まだ、魔族のせいにしてごまかせる。
だが、インボウズ自身が口を滑らせて決定的なことを言ったら終わりだ。
インボウズもそれに気づき、びくりと肩をすくめた。そして顔色の悪さを二日酔いのせいにし、そそくさと自室に戻った。
吐物より恐ろしいものが口から飛び出してしまわぬよう、必死で口をつぐみながら。
それからしばらく、インボウズは自室のソファーでぼんやりしていた。
口をついて出るのは、世を恨みユリエルを恨み、ただ不満を訴える愚痴ばかり。
「……な、何で……どうしてこうなるんだよぉ!
ふざけるなユリエルめ!!何の力もない……小娘のくせに!」
いくら言っても現実が変わる訳ではないと、頭では分かっている。
しかし、言わずにおれない。
だって、こんな現実が自分の身に降りかかるなんて、おかしい。これまでずっと同じように小娘を弄んできて、こんな事はなかったのに。
これは自分のような者が嗜んで当然の、ただの娯楽と権力の再確認なのに。それでこんな事になるなど、あるはずがないのに。
自分には、それが許されているのに。
ユリエルが身勝手にも、それを覆そうとしている。
(そ、そうだ、全部あいつのせいだ!!
あいつさえ大人しく従っておれば、こんなひどい事には……!)
インボウズは、これまでもさんざん言ってきたことを繰り返す。
自分は何も悪くない、だから悪いのはユリエルだ。ユリエルさえ逆らわなければ、こんな不快で不名誉なことにはならなかった。
だから今すぐにでも、自分がかき集められる全ての力でユリエルを討ち、思いつく限りの拷問で身も心もグチャグチャに潰してやりたい。
……が、そう願うほど、鎖で縛られたようなもどかしさが膨れ上がる。
なぜなら今回の件は、絶対にそうする訳にはいかないから。
もしインボウズが今の怒りに任せてユリエルを糾弾し討伐に全力を注げば、それは逆に魔族とユリエルの言うことを肯定することになる。
ユリエルの純潔を、自ら証明してしまう。
ユリエルの血に力があると、認めてしまうことになる。
ユリエルの純潔が偽りならば、ユリエルが血によって魔族どもに力を与えることができないはずだ。
これまでインボウズが世に広めていたことが正しいならば、ユリエルは今回の件に大きな影響を及ぼせるはずがない。
処女の聖女の血による強化など、嘘っぱちでなくてはならない。
だからインボウズは、どんなに悔しくても腹立たしくても焦っても、表面上はユリエルなど取るに足らない扱いをせねばならないのだ。
他ならぬ、自分を守るために。
それに気づくと、インボウズは愕然とした。
(あれ……何で、悪い奴を悪いって言っちゃいけないんだ?
こいつは、確実にユリエルのせいなのに!!
この被害も犠牲も失敗も、間違いなくユリエルが原因なのに……なぜ本当のことを叫べんのじゃああぁ!!!)
インボウズにとっては、誠に不可思議な事態だ。
インボウズから見て、ユリエルが処女であるのは間違いないため、ユリエルの血で魔族が強化されたのは十分あり得る。
特にこれまでなかったことがこのタイミングで起こったのは、ほぼ確実にユリエルが絡んでいると思っていい。
だから、全責任をユリエルに被せてスケープゴートにすべきなのだ。
いや、相応の戦力を集めて仇討に行くべきだ。
なのに、表立ってそれができないとは。
インボウズはここで初めて、己の嘘を悔いた。
(あの時、邪淫の罪を着せたのが悪かったか?せめて他の罪なら、こんな風に奴の純潔を明かせなくなることはなかったものを!
あ~、しかしあの時は思いつきもせんかった!)
あくまで無実の罪を着せたことではなく、その内容がまずかったというだけだ。
しかしインボウズにとって、こんな風にしっぺ返しに遭うのは初めてだ。自分が吐いた嘘で、自分が縛られるなどと。
他ならぬ自分が、言いたくてたまらない本当のことを言えなくなるなどと。
インボウズがさんざん他人に味わわせてきた苦悩を、ようやくインボウズ自身が味わう時が来た。
インボウズの横暴で身勝手な嘘により、ユリエルも、偽りの判定をさせられた審問官も、真実を知りながら己を守ることしかできないギルドの鑑定官やマリオンたちも、みんなみんな味わって苦しみ続けていることだ。
だがインボウズにとって、他人などどうでも良かった。
高貴にして神聖な自分がこんな目に遭うことが、問題なのだ。
(驚いた……まさかこんな事になるとは。
しかし、今さら僕の口から濡れ衣を認める訳にはいかんな。そんな事をすれば、今回や前の討伐で死んだ奴の遺族にどれだけ騒がれるか。
ちょっと癒しがもらえんで教会に逆らおうとする不良冒険者共にも、大義名分を与えてしまう。
何としても、魔族の偽りということで通さねば!)
いかにインボウズといえど、バレたら自分の身が危ういことは分かっている。
だがこれまでは全て金と権力でもみ消せていたため、やっても何の問題もないと思っていたのだ。
それが自分の首を絞めることになると、初めて思い知った。
(……とにかく、教会への信用を維持して立て直さねば!
ユリエルの純潔を……僕が間違っているなどと、信じる輩がいてはならんのだ。
幸い、オニデスがよくやってくれている。後は不穏分子が各地に散る前に、何とか口を封じれば……)
インボウズは痛む頭を抱えて立ち上がった。
自分が危機にあると分かったのに、放心してなどいられない。その図太さと行動力で、インボウズは政敵の攻撃を跳ね除けて生き残ってきたのだ。
幸い、ダラクがダンジョン外まで攻めてくる様子はない。
この戦いの総責任者にして総指揮官は自分だ、まだ事態は自分の手の内にある。
戦いは終わったのだから、これ以上悪い事など起こらないはずだ。
であればやる事は一つ。各地から来た将兵や冒険者がまだこちらにいる間に、自分の望む線で片づけてしまうことだ。
インボウズはやり場のない怒りに悪鬼のような顔をして、作戦本部に向かった。
それから行われた事後処理は、悪辣の一言だった。
まず、聖騎士の団長に回収されてきた聖杖を出させ、人々の前で事の次第を説明し終戦を宣言する。
もちろん、ユリエルの本当のことは言わない。
「勝利という皆の期待に応えられなかったこと、誠に申し訳ない!
だが我々は、かのダンジョンの底で魔の最終兵器にされていた古の聖者を解放することができた。
聖騎士たちの犠牲は大きかったが、あれが地上に出てくる前に察知し潰したことで、多くの人々を救うことができた!
我々は、邪悪なるダラクの企みに勝ったのだ!!」
古の聖者が魔化したのは、ダラクが時間をかけて準備していたことにした。
そしてユリエルの血により力を得たうんぬんは、関係ない強化をそれっぽく見せて人間を混乱させる陰謀だと非難した。
「奴らはユリエルの純潔なる血で強化されたなどとほざいておるが、あれは真っ赤な嘘だ。
奴らはユリエルの偽りをネタに、人間を惑わそうとしておるだけだ。
諸君はそんなものに惑わされず、罪深き者たちに鉄槌を……」
街の人々は少し落胆したが、遥か昔に失われたはずの聖杖を証拠としてみせると納得し、特大の脅威を取り除いてくれた教会に感謝した。
実際に戦っていない者は、ある意味穏便に済んだのだ。
問題は、生きて帰ってきた冒険者と一部の兵士だ。
元々素行が悪かった不良冒険者だけではない。
経験豊富で勘の鋭いベテランやアンデッドの知識が豊富な者たちが、状況から考えてダラクの言うことが正しいのではないかと騒ぎ出したのだ。
「あいつらの言ってることが、嘘だって証拠はあるのか?
処女の血がなくてもできるなら、もっと前にやっててもおかしくない」
「そうだ、例の魔女が純潔じゃないって、鑑定か審問を皆に見えるようにやって見せろ!」
「のう、教会の面子が立たんのは分かるが、もし本当に奴らの言う通りなら、同じことが他でも起こるかもしれんのじゃぞ。
そこをはっきりさせるだけでも……」
教会がいくら信じろと言っても、前線の兵士や冒険者は常に命懸けだ。
教会の隠し事や出し惜しみで予想外の危険が降りかかってきたら、シャレにならない。仕事のために、正当な訴えだ。
しかし教会はそんな兵士や冒険者たちを……厳罰で無理矢理従わせた。
教会の言うことに従わない、聖職者の言うことを信じないのは背教であるとして、徹底的な取り締まりと教育が行われた。
少しでも文句を言ったら治療が中断され、踏み絵のように信仰を試される。
それでも言い返す者には、容赦なく罰が下される。他の負傷者の前で鞭で打たれ、針を刺され、重石をのせられる。
それに耐えかねて逃亡や反乱を起こす者がいれば、それこそ教会の思うつぼだ。
魔族に惑わされた裏切り者と断罪され、戦いで手柄を立て損ねた次期将軍たちの獲物として狩られ、火あぶりにされる。
しかも、全てをダラクのせいにされて同情を買う道具にされながら。
こうして死んだ者の数は、しれっと戦死者に加えられた。死者を数え発表するのも教会の仕事だから、数字の操作はお手の物だ。
このやり方に、他の兵士や冒険者は戦慄した。
教会を信じるのは危険かもしれないが、逆に逆らえば死はすぐそこにある。
しかも、世論は完全に教会の味方だ。
この戦いで不良冒険者にひどい目に遭わされた神官たちが、涙を流して癒しきれなかった傷を見せて大衆に訴えるものだから。
彼らの中では、今人々のために疑問を訴える冒険者と不良冒険者の区別がついていないのだ。
だから、逆らう奴は全て世の敵の不良冒険者だ。
インボウズはこれを利用し、口をつぐまない奴を全て不良冒険者として処分することで、訴えを封じてしまった。
……が、しゃべる口を封じられて別の口が開く奴もいた。
教会の強硬な対応に閉口した冒険者の中には、毒と呪いに侵されたまま救護所から逃げ出す者があった。
しかし教会に頼らずそれらを癒すあてはなく、野垂れ死んでアンデッドになってしまう。
そうして、ダンジョン外でアンデッドが発生した。
「おお?怪我人か……あんた、大丈夫っぎええええ!!」
そういうアンデッドが郊外の村に現れると、もう戦いは終わったと思っていた村人から噛まれる者が出た。
折しも解毒剤と聖職者の手が足りていないため、噛まれた者の対処が間に合わず、数か所で十数人の犠牲が出た。
ここ数年間なかった惨劇に村人たちは慌てふためき、教会への不信を募らせる。
そのせいで、インボウズのせっかく守ったと思った評判に傷がついてしまった。
「のおおぉ!!郊外にゾンビじゃと!?
どういうことだ、ダンジョンからアンデッドは出していないと報告が来とるのに!
こんな事は今までなかったぞ!ええい、誰のせいだ!?どうしてこうなった!?おかしいだろおおぉ!!」
原因の根本が自分であることも思い至らず、喚き散らすインボウズ。
だが、この不名誉の口封じをすることはできない。
アンデッドによって被害に遭ったのは、この学園都市に食糧を供給する農民なのだ。これを、文句を言うからと虐殺する訳にはいかない。
「ぐぎぎぎ……どうしてこうもうまくいかん?なぜこんなに問題が湧いてくる?
世の中、どうなっとるんじゃああぁ!!」
インボウズはまだ、分からない。
当たり前が通らない世の中にしたのは、他ならぬ自分だということに。それが今ようやく、インボウズ自身に届いただけだ。
しかし己の正しさを盲信するインボウズは、ただ理不尽な不運に頭を抱えるばかりだった。
それでも、インボウズはまだ大丈夫だと思っていた。
事がこの学園都市に留まっている限り、自分の権限でいくらでも隠ぺいできる。結果など、自在に操作できる。
だからここで何が起こっても、ユリエルや魔族どもの思い通りにはならないと。
そして都合のいい事後処理の打ち合わせをしようと、他の枢機卿と通信しようとしたところで……向こうから通信が入った。
ちょうどいいとつないだ途端、向こうから浴びせられたのは……。
「どういうことだあァ!!
貴様が追放した元聖女の血で、我が領に被害が出たぞおお!!」
事態はとっくに、インボウズの手の中からすり抜けていたのだ。
インボウズはこれまで、全てを自分の思い通りにできるつもりでした。
しかし、その身勝手が災いして思い通りの対処ができなくなるという因果応報。
大元を最初に否定してしまったからこそ、今それを肯定する動きすらままならないという。
だがこれでもまだ、氷山の一角です。
ユリエルは魔王軍のパーティーで、他の魔族にも血を……。
次回もざまぁが続きます!