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41.友情は犯せない

 総合ポイントが……見事に悪魔の数字666になってたんですが……(汗)


 ついにマリオンに手を出すロリコン!

 そして、友の危機を前にユリエルは!


 そして変態には、変態ならではの揺るがぬスキルがあった。それを知ったユリエルは、藁にも縋る思いで……久しぶりにお色気だ!

 マリオンは、鉄砲水が去った下流を信じられない顔で見ていた。

 分断された……だがこれは、ユリエルが狙ったのではあるまい。

 むしろ、狙ったのは……。

「おい、どういうつもりだロリクーン!

 おまえ、命綱に細工を……」

 ロリクーンの持つ道具の性能の良さは、マリオンもよく知っている。あの程度の鉄砲水で切れる訳がない。

 だから、皆信じていたのに……。

 振り返るマリオンのわき腹に、ドスッと鋭い痛みが走った。

「がっ!?やりや……がったな……!」

 ロリクーンが、悪魔の笑みで太い針を突き刺していた。

 だが痛みはすぐに薄れ、代わりに言いようのない脱力感がマリオンを襲う。マリオンは反撃もできず、水の引いた川底に倒れ伏した。

 ぐったりと横たわるマリオンに、ロリクーンはどこか優しそうに告げた。

「悪いな、痛い思いさせちまってよ。

 けど勘弁してくれよ。さっき言ったとおり、おまえのことは守ってやる。俺ァ、ここで引退することにしたよ。

 おまえを手に入れて、どっか遠くへ逃げて、二人で仲睦まじく穏やかに暮らすんだ!」

(……っ!そういうことか!!)

 おぞましい思惑に、マリオンは総毛だった。


 このミッションで不毛な戦いの予感を目の当たりにして、確かにロリクーンは変わった。

 これまでのロリクーンは、平和な学園都市で目をかけられながら多くの少女に性犯罪を繰り返して好きに生きてきた。

 だがどの少女たちも、いずれ大人になってしまう。

 だったら身を固めるなんて考えられないし、このまま対象を次々変えて楽しむまでだ。

 ここにいれば、自分の身が脅かされることなどないのだから。

 しかしここに来て、事情が変わった。

 もうこの学園都市は、安全ではない。特に自分のような実力があって後ろめたい恩もある者は、どう使い潰されるか分かったものではない。

(冗談じゃねえや、もうここにいる義理はねえ!)

 都市に紛れて権力に守られながら少女に手を出すことはできなくなるが、その穴を埋めるものは見つかった。

 幼い体のまま成長する様子がない、マリオン。

 この女ならば、身を固めるのもやぶさかではない。

 それに、ロリクーン自身もそろそろ時に蝕まれつつある。鍛錬は怠っていないつもりだが、老いによりじりじりと体力を失いつつある。

 どうせこのままでいても、使えない駒に成り下がったらもう保護してはもらえないのだ。ならば体が動くうちに、欲しいものを奪ってとんずらしよう。

 マリオンも老いはするだろうが……マリオンがおばさんになる頃には、自分はもうよぼよぼだろう。

 なら、それで十分だ。

 ロリクーンはそう考えて、引退を決めた。

 ついでに、今手の届くところにいるマリオンをかっさらって行こうかと。


「フヒヒ……もう邪魔者はいねえぜ!

 ここでたっぷり絆を結んで、離れられなくしてやんよォ!」

 ロリクーンはすっかり鼻の下を伸ばして、マリオンのきっちり着こまれた忍び装束を丁寧にほどいていく。

「そ……んな、ことで……俺が……屈すると……!」

 目だけでにらみつけてくるマリオンに、ロリクーンは一つの小瓶を見せた。

「こいつが何だか分かるか?

 どこまでも一途な思いを実らせ、それを拒む奴を素直にしてくれる秘薬だ。愛憎のダンジョンで手に入れた、邪神の力が入ってる奴だよ!」

「な……に……!?」

 ロリクーンの説明に、マリオンの顔が恐怖に歪んだ。

 愛憎のダンジョンは、マリオンも知っている。邪神が住まうと恐れられる一方、どうしても実らせたい恋の味方とも言われている。

 難易度は高いが、相手の心を歪めても一途な想いを押し通せる禁断のアイテムが手に入ることがあるという……。

 ロリクーンは、マリオンの起伏の乏しい体を見下ろし、感慨深げに呟いた。

「おまえに使いたくてよ、ちっと前行ってきたんだ。

 おかげで、前の討伐には参加できなくて良かったぜ。

 戻って来て、おまえが生きてるって分かった時はもう……ああ、俺もおまえも死んじまう前に使わねえと。

 大丈夫だ、俺とおまえなら、安住の地まで逃げ切れるさ!」

 顔面蒼白になって引きつるような息をするマリオンを前に、ロリクーンはいそいそと小瓶を開けた。

「さあ、守ってやるから素直に……」


 突如、その小瓶がぐいっと引っ張られた。

「あァ!?」

 反射的に握りしめると、瓶は何かに引っ張られるように暴れて手から抜けようとする。

「しゃらくせえ!」

 ロリクーンは一瞬の判断で、小瓶の周りをナイフで薙いだ。すると、たちまち小瓶は大人しくなった。

(何かが糸で操ってやがんな!)

 油断なく立ち上がって周りを見回すと、川の下流からしずしずと何かが歩いて来た。艶やかな黒髪をした、ナイスバディのビキニアーマー美女。

 ただしその尻からは、一抱えほどもあるクモの腹がぶら下がっている。

「なるほど、元アラクネ……シッ!」

 そちらから目を離さぬまま、ロリクーンは素早くナイフを振るった。風を切って飛来した矢が、軌道をそらされて近くの岩に刺さる。

 それが来た方を見れば、岩陰から弓を携えたユリエルの半身がのぞいていた。

「へえ、こりゃ金星だ。

 ずいぶん早かったじゃねえか」

「ええ、5階層のすぐのとこで待機してたから」

 ユリエルはぴょいっと岩陰から出て、オリヒメの背に隠れた。味方がいないことは、きちんと理解しているらしい。

 もっとも、それが分かっていたら本来出て来てはいけないのだが。

 ロリクーンはお楽しみを邪魔されて少し不機嫌だが、不敵に笑ってユリエルに狙いを定め、ナイフを構えた。

「お呼びでないのに来るのが悪いんだぜェ!

 てめえを倒して、マリオンを手籠めにしたのを正当防衛にするか。できなくても、マリオン抱えて逃げるこたァできる。

 てめえが淫乱のくせに、嘘ついてこいつ殺そうとするのが悪いんだからな!!」

「殺そうとしてないし、嘘もついてない!!」

 ユリエルが声を荒げても、ロリクーンは嘲るように言い返す。

「いやいや、てめえの体見れば分かるぜ。

 前はあんなにきれいだったのが、ずいぶん爛れた体になっちまってよォ!何だその胸と太股は!

 そんなになっちまった奴は、すーぐ汚れちまうって相場が決まってんだ!!」

「喧嘩売ってんの!?誰も寄ってこないんですけどぉ!!」

 非モテのユリエルにとっては、逆鱗を突かれるに等しい暴言である。ロリクーンから見たら肉過剰かもしれないが、この程度でムチムチ好きを振り向かせることはできないのだ。

「落ち着いて、話がそれてる!

 あの子を助けるんじゃないの!?」

 オリヒメが突っ込むと、ユリエルははっとして顔を引き締めた。

 その間にも、ロリクーンはマリオンの小さな体を担ぎ上げている。そしてあろうことか、下着が見えているマリオンの体をくんくんと嗅いでいる。

「うほおおぉ~!たまんねえ!

 まっさらな処女、しかもこの匂いは体内年齢も若くてピチピチ!

 いくらでも力が湧いてくるぜェ~!!」

「えっそんなの分かるの!?嘘でしょ!?」

 引きながら目を丸くするユリエルに、ロリクーンはチッチッと指を振って得意げに言った。

「俺様の嗅覚をなめんなよ!幼女と処女の匂いはな、体が反応して分かるんだよォ。

 前に幼女のパンツを嗅いだら処女じゃなかったことがあってよ、通報したら親からの虐待で、感謝状もらったこともあるんだぜェ!」

「まずあんたが通報されなさいよ!!

 でも、そっか……分かるのか」

 ユリエルは、ちょっと考えるしぐさをした。

 そしてにわかに弓を置くと、ローブの下のズボンを下ろし始めた。

「あァ?俺様にてめえなんぞ……」

「処女かどうか、分かるんだ。じゃあ、私の言うことが嘘かどうか分かるわね」

 ユリエルはズボンを膝まで下げると、迷いなく自らの下着と柔肌の間に短剣を入れ、両サイドを切り裂いた。

 そして、少し汗の染みついた薄い布を股間から抜き取る。

「ええっ!?さ、さすがにそれは邪淫では……」

「いいよ、こんな奴私に発情しないもん!

 それより、分かってくれるかもしれないんだよ!!」

 ユリエルにとって、自分が処女だと証明できることは何より大事だ。審問官に偽りの判定をされてからは、特に。

 こんな変態にすがって、パンツを放り投げる程度には。

 ユリエルのその態度に、ロリクーンも何かを悟ったようだ。

「マジかよ……まさか……」

 筋金入りの変態にとって、ここでパンツを受け取らない理由はない。ロリクーンは迷わずパンツを掴み、人目もはばからず顔に……。

「スー……ハー……何だと!?こいつァ……!」

「嘘かどうか、分かったかこの野郎!!」

 叩きつけるように問うユリエルに、ロリクーンは目を白黒させている。とても嫌なことに、本当に分かるらしい。

 だがロリクーンが口を開こうとしたところで、水を差すような声がかかった。

「あの、これは……どういう状況か説明してもらえるか?」

 岩ムカデに糸でぐるぐる巻きにされた鑑定官とハゲ男が、何か意味不明なものを見るような目でこちらを見ていた。

「……そっか、こいつ断罪させてマリオン守るために、連れて来させたんだった」

 ユリエルはにわかに顔を赤らめ、手早くズボンを上げた。幸い、大事なところはローブの裾に隠れて見えずに済んだ。


 事情を説明しようとしたところで、ロリクーンが鑑定官に怒鳴りつけた。

「どうなってんだゴラァ!!

 ユリエル処女じゃねえか!こいつを邪淫で破門して、殺すためにいくらでも人をブチ込むたァ、ふざけるにも程があるぞ!!」

 その言葉に、鑑定官は観念したように肩を落とした。

「……おまえの見立てでも、そうか。

 だとしたら、もうほとんど確定だな。良かったな、ユリエルよ」

 唯一事情が分からないハゲ男が、泡を食って鑑定官にまくし立てる。

「こいつが処女!?ほぼ確定!?何を言ってるんだ!!

 しっかりしろ、それは審問官殿が断じたことではないか。それを差し置いて、こんな変態の言うことなど……」

「じゃあおまえ、どうやってロリクーンはパンツ一枚で家庭内の虐待を見抜いた?それだけの実績があるんだよ。

 他の誰も玉の色を見ていない審問官の言葉と、どっちが信用できる?

 それにあの判定の後、審問官は……」

 鑑定官が前の討伐出の審問官の様子を告げると、ハゲ男は唸り、ロリクーンは呆れたようにポカンと口を開いた。

「教会の奴ら……人の命を何だと思ってやがる!!

 鑑定官殿、すぐこのことを訴えて……!」

 義憤に燃えるハゲ男に、鑑定官は冷めた口調で言った。

「どこに、訴えるつもりだ?

 枢機卿はこの都市と教会のトップの一人、そして我らがギルドマスターもおそらくそっち側なのに?

 訴え出た後、我らの安全はどうなる?どこでまともに生きろと言うんだ!」

 最後の叩きつけるような一言に、ハゲ男は悔しそうに奥歯を噛みしめた。

 知ったとて、何かができる訳ではない。むしろ何らかのアクションを起こせば、消されるのは自分たちの側だ。

「そう、それが問題なのよ。

 私も何とかそうならない方法と、誰の目にも分かる証明の仕方を探してるんだけど……何か考えはあるかしら?」

 ユリエルに問われて、鑑定官とハゲ男は押し黙った。

 自分たちは今ここでおそらく真実を知ったが、これを万民に広めて枢機卿を糾弾できるかと言われるとそうではない。

 状況証拠と変態の判定VS審問官の判定では、重さが違いすぎる。

 少なくとも一般人は、当然の常識として後者を選ぶだろう。

 鑑定官は、すまなさそうに首を横に振った。

「誠に心苦しいが、我々は君の真実を世に認めさせる力を持たない。

 むしろ、今は身を守るだけで精いっぱいだ。枢機卿からも、君からも。

 我々にできることは、戦いに直接参加せず君に刃を振るわない努力をすることだ。今は、これで手打ちにしていただけまいか?」

 ユリエルは、悔しそうにうなずいた。

「私も、真実を叫んで味方が殺されるのは見たくないの。

 だから私に危害を加えないなら、私も害するつもりはないわ。ダンジョン入口の看板にも書いてあるでしょ。

 だから、逃げる奴まで追わないわよ。

 ただ……マリオンは置いていってちょうだい」

 ユリエルの視線の先には、マリオンを担いだまま少しずつ距離を取ろうとするロリクーンの姿があった。


 鑑定官とハゲ男も、ロリクーンには険しい顔を向けた。

 ぐったりとして動けない様子のマリオン。その装束は脱がされかけている。ロリクーンが何をしようとしたかは、火を見るより明らかだ。

 さらに鑑定官は、鑑定の魔道具を掲げて厳しい口調で命じた。

「その小瓶の違法薬物も、捨ててもらおうか!

 努力は認めるがな、それはおまえのような男が持ってはならんものだ」

 だが、ロリクーンはどこ吹く風だ。

「ハッ!どうせこれから死ぬ奴の命令なんざ聞くか!

 俺は死なねえし捕まらねえ、手に入れて逃げるって決めたんだよ。こいつは俺の、これからの人生の全てだ。

 てめえらごときの腕で、俺を捕えられると思うなァ!」

 ユリエルとオリヒメ、ハゲ男と鑑定官全員を敵に回しながら、ロリクーンはまだ余裕の笑みを崩さない。

 本当に、これでも逃げられる力があるのだ。


 名前:ロリクーン

 種族:人間 職業:マスタースカウト

 レベル:58 体力:626(/880) 魔力:320


 ロリクーンは幾多の死線を潜り抜けてきた、歴戦の猛者である。しかもその力は、踏破、潜入、工作、逃走に特化している。

 敵を倒す力はそれほどでもないが、逃げ帰る能力はピカイチだ。

 ユリエルが築いた難路を余裕で越えてきたし、帰り道にボスを倒さないと進めない部屋を仕掛けられないため、レジンが相手でも逃げ切ってみせるだろう。

 しかし、ユリエルはそれほど心配していなかった。

 だって、誰よりも頼もしい友が、ここにいるから。

 走り出そうとしたロリクーンが、突然よろめいてたたらを踏んだ。

「あ……え……?何だ、体が……」

「効いてきたな」

 声は、ロリクーンの背中からだった。

 ぐったりしていたマリオンが唐突に身体をひねり、ロリクーンを華麗に蹴り倒して脱出した。

「ぐわっ……あ、頭が……何を……!」

 ロリクーンはすぐさま起き上がろうとするが、平衡感覚を失ったように頭がぐらぐら揺れて地に伏したまま。

 マリオンはその手を取り、ロリクーン自身の首の後ろを触らせた。

「ほら、ただれてんの、分かるか?

 てめえが匂いを楽しんでる最中に、塗ったんだよ。刺すよりだいぶ効果の出が遅いが、感覚がないのが売りでね。

 ここまで効いたら、てめえじゃどうにもならんだろ」

 マリオンは、まだ少し怠そうだが、弄ぶように言った。

「お……まえ……何で、動けて……!」

 驚愕するロリクーンに、マリオンは種明かし。

「俺は、忍びの里でも毒と薬を専門に扱う一族でね……生まれつき毒耐性が高いんだ。ほら、さっき……痒くなる毒が効かなかったろ。

 それと、耐性を突破する毒の作り方もいくつか知ってる。てめえは予防薬を飲んでたが、俺にレシピを教えてたのが運の尽きだったな!」

 マリオンは、ロリクーンを警戒していなかった訳ではない。

 ただ、まともに戦うと危ういとみて、しばらく毒が効いたフリをしていただけだ。自分を連れたロリクーンが、すぐここを脱出できるとは思わなかったから。

 ただし、邪神の力が入った禁断の薬が出てきた時はさすがに焦ったが。

 それでも、友を信じていたので無理に暴れなかった。

「さっすがマリオン、お見事!」

「よせよ、ユリエルが来てくれたおかげだ!」

 ユリエルとマリオンは、晴れやかな笑顔を交わした。

 二人は、お互いがどう動くか手に取るように分かっていた。だからマリオンは下手に動かず、ユリエルは時間を稼いだ。

 立場が変わっても敵味方に分かれても、変わることのない友情と信頼。

 オリヒメと鑑定官とハゲ男は、思わず見惚れてしまった。

「すごい……ここまで信じ合える人間もいるもんだ!」

「眩しいな……これが、絆の勝利って奴か」

 人間が平気で人を騙して死地に押し込む地獄の中、汚れなき二人の友情は鮮やかな希望に見えた。

「私とマリオンは、ちゃんとお互いをよく見てるからね。

 体だけ見て発情してるあんたと違って」

「そうだぞ、分かったかこの変態!

 本当にそいつのことが好きなら、時が経っても姿が変わっても変わらず光るモンを見つけるはずだ。

 てめえは俺のそれを探そうとしなかった、だから実らねえんだよ!」

 マリオンは、お返しとばかりにロリクーンの顔を蹴りつけた。

 ユリエルは酷薄そうな笑みで、ギルドの二人に提案した。

「さて、こいつはここで殺っちゃっていいですよね。

 そうしたら、パーティーの柱を失ったってことで、あなた方もちょっと早く帰れますよ。こんな奴、いない方が街のためでしょ?」

 それを聞くと、鑑定官は苦渋の表情でうなずいた。

「本来なら、ギルドで裁きたいところだが……こいつは権力に守られていたからな、生かしておくとろくな事にならん。

 後の処理は我々がやる、葬ってしまえ!」

 切り捨てられると分かると、ロリクーンは一瞬絶望に顔を歪めた。

 しかしすぐに、納得したように穏やかに言った。

「いいぜェ……どうせ……助かったって、死地に……放り込まれるんだ……。

 なら、せめて……マリオン……おまえの手で……」

 最後まで欲しがりなロリクーンに、マリオンは条件を付けた。

「おまえのマジックバッグ、あれを俺にくれよ。そうしたら、馬乗りになってとどめ刺してやる。

 好きな女のおねだりだ、くれるよな?

 俺、生き残りたいんだよ」

 いっそあざといほどに、物欲しそうな顔でお願いして見せる。

 ロリクーンの顔に、愉悦が広がった。

「ああ……初めて、そんな顔……見せてくれたァ……!

 やるよ……これだけで……地獄に、落ちても……天国だァ!」

 マリオンがロリクーンのマジックバッグを取り上げると、ロリクーンはそのバッグの所有権をマリオンに移した。

 そして満足の笑みで、マリオンの重さを感じながら介錯を受けた。


 それを眺めて、ユリエルはぽつりと呟いた。

「いいなぁ、マリオンは……変態だけどこんなに好いてくれる人がいて。

 私もたまに、学童カバン背負って写生させてくれとか変な人に絡まれるけどさ、あいつら絶対私に命懸けたりしないよ」

 ユリエルも、告白されたことはないが変な目で見られて言い寄られたことはある。

 ただ、マリオンに対するロリクーンほど熱心なのは見たことがない。

 そこに、少しだけ劣等感を覚えてしまう。

 マリオンは、気の毒そうに言った。

「俺は真性ロリコンに好かれるが、おまえに発情すんのはロリ巨乳好きとか態度や顔が幼い子好きだからな。

 ストライクゾーンが広い分、選択肢が多くて心持が浅いんじゃねーか。

 ま、その分あんなストーカーに遭うことは少ないだろうが」

「ダンジョンに閉じこもって、私の選択肢が0なんだけどぉ!?」

 昔と変わらぬ軽口を叩き合う二人の姿は、キラキラと輝いていた。

 たとえこれからどんな苦難が襲い掛かろうと、この二人の友情だけは決して壊れることはないだろう。

 いつか再び日の下で堂々と会える日を願って、二人はコツンと額を合わせた。

 男に興味を持ってもらえなさすぎて、パンツでも売ろうかと思った時期がありました。

 大学時代に、アニメ〇トで「ランドセル背負って写真撮らせて」と声をかけられたこともありました。

 そして友の毒耐性は本当にあった話です。友が幼い頃、紅葉したウルシの葉で山を作って友達と遊んで、その友達は真っ赤になって救急車で運ばれたが友は何ともなかったという。


 地味に登場人物のレベル最高が更新されました。

 ロリクーンがタフクロコダイルガイを抜いて、現在トップです。ただし、だいぶ年老いて能力が落ちてきていますが。それで生涯の伴侶をと焦った結果がこれだよ!

 これくらいのレベルが聖騎士以外で学園都市に常駐する戦力のトップ層だと思ってくだされ。

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― 新着の感想 ―
ロリコン斥候…、お前、キャラ濃すぎるだろ…。 まさか命綱に細工するとか、プロとして有り得んし、邪神薬で精神操作企むとか…。 あと、匂いで清らかな乙女か判別できるって…、気持ち悪過ぎ…。 ユリエルさ…
[一言] 聖女学園などのお嬢様学校に求められるのは「いかにも」なインドア系でピアノとかお菓子作りとか趣味にしてそうな聖女でしょうから、ユリエルさんが非モテなのは単に居る場所が悪いのでしょう。
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