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28.虫地獄の洗礼

 虫系キモ描写注意報!

 虫にキモく殺される様子が詳しく書かれています。苦手な方は読まないでください。


 一月の時間を与えられたダンジョンは、教会の知っているものと様変わりしていた!

 ユリエルの当初の構想、覚えていますか?

 空が夕焼けの色に染まり始める頃、教会軍の本格的な突入が始まった。

 ダンジョンが意外に深いと知って慌てた将軍の判断で、斥候の帰りを待たずに本隊を突入させることが決まった。

 狭い炊き出し場でとりあえず食事を摂った者から、小出しに突入させる。

 戦力の逐次投入が愚策であることは分かっているが、今はそれ以外にやりようがない。どうせダンジョンが細い道の迷路になっているのだから、大軍を一度に動かしたとて渋滞するだけだ。

 そんな訳で、アリの行列のような人間の群れがダンジョンへと続いた。


 入ってすぐの所で、兵士たちはさっそく毒づいた。

「畜生、もう報告と違うじゃねえか!」

 途切れた太い通路からは、六本の細い脇道が伸びている。帰って来た衛兵の報告によると、三本のはずなのに。

 それを外で聞いて、鑑定官と審問官はげんなりした。

(もう変わってんのかよ……うわぁ、入りたくねえ!)

 どうやら、ユリエルのダンジョンを操る手際は予想以上のようだ。

 いきなり隊を分けるしかない隊長の前に、わき道の一つから先に放った斥候が現れた。体中傷だらけで、目から光が失われ、顔は苦悶に歪んでいる。

「おい、どうした!!

 正解の道はどっちなんだ!」

 隊長が尋ねると、斥候は力なく答えた。

「正解なんか、分かりゃしねえ。

 ただ、こっちは行き止まりだって分かった。それを知るためだけに、俺以外の仲間はみんなやられちまった!!」


 斥候の話によると、こうだ。

 この分かれ道の先も、曲がり角や上がり下がり、分岐だらけの複雑な道になっている。見通しが悪く、おまけにところどころ狭くなっていて一気に進めない。

 その道は他のわき道から伸びる道とどこかでつながっているらしく、途中で別のパーティーが残した印を見つけた。

 それを見て自分たちは引きかえし、別の方向に進んだが……そこからが地獄だった。

 まず、一番後ろを歩いていた荷物持ちが消えた。上にも下にも進める分岐でどちらに進もうか悩んでいて、ふと振り向くとついて来ていなかった。

 呼んでも、返事はない。

 これで道具をかなり失って慌てたところに、アサルトビーが襲ってきた。

 解毒剤が少ない状況でまともに相手にする訳にいかず、下に走って逃げていると……いきなり広い空間を渡るところで橋が落ちた。

 いや、橋のフリをした岩ムカデだ。

 数メートル落下して地面にしたたかに打ち付けられたところで、四方八方から虫の魔物が襲ってきた。

 元からこのダンジョンにいたクモやムカデに加え、ミミズ、イモムシ、ヒル、ハサミムシなど……身の毛もよだつ虫地獄だった。

 しかもクモやムカデは元から毒を持っているし、ヒルは一度噛まれると長時間出血を強いられる。

 見た目と数の気持ち悪さに、パーティーの紅一点が喚き散らしてまともに戦えなくなってしまう。

 後はもう、数の暴力に潰されるだけだ。

 激痛の毒にやられて動きが鈍った仲間は、普段なら何てことなく倒せる虫相手に埋まって力を失っていった。

 パーティーの中で唯一本職の斥候であった自分だけは、どうにか壁を上って難を逃れた。

 そして知った……岩ムカデの橋の向こうは、ほんの少しで行き止まりになっていたと。

 その間に、アサルトビーが追い付いてきていた。斥候は仲間の悲鳴に後ろ髪引かれながら、自らもアサルトビーに刺されながら必死で逃げ戻って来た。

 それが、一つのパーティーの顛末である。


 隊長と周りにいる兵士たちは、固唾を飲んでそれを聞いていた。

 ただ進めばいいなんて簡単なものではない。ここはもう、れっきとした人を食い散らかす魔窟と化している。

 かつての進みやすいだけだった虫けらのダンジョンは、見る影もない。

 ……だというのに、外からは次々と兵が投入されて早く先に進めと叫んでいる。それどころか、物理的に後ろから押されている。

 中には、臆病者とか不忠者とか罵声を浴びせてくる者もいる。

 現場がどんなに嫌な予感を覚えても、逆らう選択肢はないのだ。

「……仕方ない、どのみち魔女を倒さねば終わらぬのだ。

 数でもって全ての道を探り、魔女の下にたどり着くのみ!

 皆の者、神を信じて、進めーっ!!」

 隊長の号令の下、兵士たちは残りの五本の道になだれ込む。未だ、斥候として放り込んだ冒険者が戻らぬ道へ。


 先行した冒険者たちは、ほとんどがその命を刈り取られていた。

 斥候といっても、本職の斥候など一握りだ。斥候という案内役を引き受けた者は、様々な職種の手柄にはやる者たちである。

 もっと言えば何割かは、アイーダの愛を妄想して脳が下半身に押さえつけられた男どもである。

 慎重で冷静な動きなど、できる訳がない。

 むしろ、冒険者としてあるべき用心が抜け落ちてすらいる。

 そういう輩は後ろを省みないため、後方にいる荷物持ちや魔法使いが急襲されるのを防げない。

 いや、気づかない事すらある。

 今このダンジョンには、大人数が入って方々で暴れているのだ。その音が迷路に反響し、虫が立てるわずかな音をかき消してしまう。

 閉所に大人数を投入した時の難点が、討伐隊の危機対応力を削いでいた。

 悲鳴も、方々から反響してくるせいでそのうち慣れてしまい、いざ味方が少し離れた所で上げても構うのが遅れる。

 逆に、過剰に反応してもそれはそれでまずい。

 見えないところから聞こえてくる悲鳴は、恐怖をかき立てる。それに気を取られると、その隙に本物の脅威が襲ってくる。

 中には、悲鳴の主を助けようとして地獄に誘われる者もいる。

 リスクが高い真っ先に突入する役目を引き受けた連中は、アイーダの気を引こうと下半身に引きずられた者が多い。

 そういう者がダンジョン内で女の悲鳴を聞くと、ついそちらに引き寄せられてしまう。

 他の味方から引き離され、助けが来ない状況でゆっくり虫の餌になるのだ。

 ダンジョンの細道の奥は、早くもそんな死体であふれていた。


 衛兵たちも、少し進むとその現実を目の当たりにした。

「うわっ虫が!!」

 通路の途中で、たくさんの虫が冒険者の亡骸に群がっていた。ムカデやクモに加え、普段何気なく潰しているゴキブリまで人の死体を貪っている。

 それを目にした衛兵たちは、言い知れぬ嫌悪感を覚えた。

「どけよ、この!」

 武器を振るってかけつけると、虫たちはさっと逃げ出した。壁を上り天井を這い、狭い穴や岩の隙間に逃げ込んでしまう。

「くそっ逃げ足の速い!

 しかも、これではいつどこから襲われるか分からん」

 衛兵たちは舌打ちしたが、どうにもならない。

 虫たちが逃げ込んだ隙間に、人間は入れない。魔法を撃ち込んでも当たるか分からないし、何より穴や隙間は無数にある。

 虫たちは神出鬼没に人間を襲い放題だが、人間たちは虫が出て来た時しか攻撃できない。

 しかも、何がどんな手段で攻撃してくるか分からない。

 必然的に、衛兵たちは緊張を強いられ歩みが遅くなる。

「くっ……これじゃ、どれだけ時間がかかるか分からん!」

 ただし、ある程度入口から離れれば渋滞の心配はなくなる。

 夥しい分岐で、どうしても少人数ずつに分かれてしまうからだ。先行した冒険者がやられたので、正解の道はまだ分からない。

 そして少人数に分かれて進めば、警戒や助け合いが覚束なくなってくる。虫の不意打ちに遭い、怪我をしたり毒を食らったりする者が増える。

「ぐわっあ、足が!!」

「ぎゃあああ痛えよおおぉ!!」

 足切り虫に足首をやられた者は回復しないと歩けないし、アサルトビーやムカデやクモに刺されると激痛で動きが鈍る。

「は、早く解毒剤を!」

「ほら……まずいな、もう残りが少ないぞ」

 これらを回復するために、回復役や解毒剤はどんどん減っていく。

 命には関わらないが、満足に戦えないし動けなくなる怪我と毒だ。治療しなければ進むも退くもままならない。

 しかし無計画にとにかく投入されたため薬の手持ちは少なく、後方と連絡がとれないため補給もままならない。

 ダンジョンがこんなに長く、魔物がこんなに多いと想定していなかったため、薬をそれほど多く用意していなかったのだ。

 だから外の拠点に不足を伝えても、すぐ在庫が尽きてしまう。

「何てことだ……すぐ街から薬を取ってくるんだ!」

 将軍は大慌てで補給の指示を出したが、もう遅い。

 すでに日はとっぷりと暮れて、街の薬屋やギルドは閉まる時間だ。それに街へ荷車を向かわせる間にも、負傷者は出続ける。

 その状況に、現場は非情な決断をせざるを得なくなった。

 すなわち、満足に動けない者をその場に残して進むのだ。

「大丈夫だ、すぐに助けが来る。

 いや、こんな浅いダンジョン、攻略する方が早いかもしれん。魔女は元々後衛だ、たどり着きさえすればすぐ倒せる。

 それまで待っていてくれ!」

 苦しむ仲間に別れを告げ、先へ進む。

 だがそれは、残された仲間には死の宣告だ。

 戦える仲間がいなくなると、どこからともなく虫が現れて残された者に迫る。元より、虫はどこからでも現れるのだ。安全地帯などない。

 ある者は、顔面をかじられて壮絶な苦痛の末息絶えた。

 またある者は、同じく残された仲間と談笑していたところ、後ろからカミキリムシの化け物に首を狩られた。

 別の者は、小さいが異様に力のある甲虫に鼻や口に潜り込まれ、内から食われた。

 さらに別の者は、いきなり地面に穴が開いて引きずり込まれた。

 とある隊が行き止まりから戻ってくると、残された者は顔じゅうにスベリナメクジが張り付いて窒息死していた。

 その凄惨な死体を見つけるたび、兵士や冒険者たちは息をのんだ。

 簡単に攻略できると思っていたのに、これは何だ。

 こんなに危険だなんて聞いてない。

 虫けらなんて、簡単に潰して遊べるものじゃなかったのか。虫如きにこんなに人が殺されるなんて、一体どうなってるんだ。

 それでも、今さら戻る事はできない。

 戻っても、薬もなく放置されるか、鞭打って働かされるだけだ。

 討伐部隊は仲間の死に様に怯えながら、これがユリエルの全力だと信じて終わらせるために進むしかなかった。



 その有様を、ユリエルは三階層の元コアルームで眺めていた。

「うんうん、いい調子だね。

 さっすがアラクネちゃんと虫たちの迷路!」

 ダンジョンの一階層から三階層は、当初の予定通り進みにくい迷路にしてある。賊の襲撃があった後、一月かけて掘り抜かせた。

 細い上にがたがたで大きな荷車は通れず、侵入者の補給を制限する道。それが立体的に複雑に入り組んでいる。

 さらに、人道の各所に虫用通路の出口がある。

 人と違って小さかったり細長かったりする虫は、人が通れない狭い通路網を通ってどこからでも奇襲をかけられる。

 小さな体で機動力を生かし、ヒット&アウェイで被害を抑えて戦っている。

 対する討伐部隊は、迷路で足止めされて被害が増える一方だ。既に、侵攻が始まってから数十人が命を落としている。

 まずは、順調な滑り出しだ。

「ワニさんたちにやったのと同じ、相手が多いなら足止めと分断が基本だよ。

 疲れさせて苛立たせて、毒を浴びせて機動力を奪って、行ける場所を多くして敵が少数にバラけるようにする。

 そうすれば、弱い虫たちでも歯が立つようになる。

 この調子なら、虫たちもどんどんレベルが上がるわね」

 上機嫌のユリエルに、ワークロコダイルのシャーマンも感慨深そうに呟いた。

「ああ、そう言やあんたが息子を倒した時、あんたにゃほとんど仲間がいなかったね。

 それでもあれだけやれたあんたのことだ。これだけ仲間が増えた今なら、この程度退けるのは訳ないだろうよ」

「えへへ、ありがとうございます!

 でも、息子さんの(お肉の)おかげであの子たちの力が上がってるのも大きいよ」

 ユリエルは、シャーマンと亡き息子に感謝を述べた。

 魔物化はしたがろくにレベルが上がっていない虫たちがあそこまで戦果を挙げられるのは、タフクロコダイルガイの肉を食べさせて力を上げたおかげだ。

 本来、あのレベルの虫の魔物にそこまでの攻撃力はない。

 だから兵士や冒険者たちは、虫ごときとなめていたのだ。

 ユリエルはその裏をかいて、強化した虫たちを最前線に一気に投入した。結果、兵士や冒険者たちは対応できず、次々と命を落としている。

 さらに、その虫たちを助ける妖精たちの働きも大きい。

「シャーマンさんが連れて来てくれた皆さんも、頑張ってくれてるよ!

 ちょっとした幻惑も、迷路では効果絶大だぁ!」

 主に虫用通路にいるのでまだ敵には見つかっていないが、迷路には妖精たちも展開している。

 ミストスピリットは侵入者の方向感覚を狂わせて間違った道に誘導し、ピクシーやパックは人の声で惑わしたり幻術で虫を他のものに見せたりしている。

 岩ムカデが橋に見えたり、天井や壁にいる虫を見落としたり。

 どこからか響いて来る女の悲鳴も、十中八九こいつらのしわざだ。

 そもそも、斥候を引き受けた冒険者や衛兵の中に女はほぼいない。冷静に考えたら分かりそうなものだが、それでも反射で動くのが頭の弱い男だ。

「……ひどいけど、ゲースたちのこと思い出すと納得できちゃうな。

 きっとあいつらでも、同じように引っかかったよ。

 しっかし冒険者の男って、みんなあんななのかねえ」

 呆れるアラクネに、ユリエルはぼやいた。

「みんなじゃないけどね……ああいうのが多いのは確かよ。

 私だって冒険中にいやらしい視線を感じたことはある。でも、そのくせして結婚とか子供とか将来の話はうまく答えられないんだよ!

 私は愛してくれるならって思ってしっかり未来図を立てたいのに、ひどくない!?」

 ……そう、これが男たちがユリエルに手を出さなかった理由である。

 ユリエルは男が自分に女として興味を持っていると気づくと、金の使い方から未来の目標、生活習慣までグイグイ聞きこもうとする。

 そして、自分のしっかりした未来図をとうとうと語った後、一緒に頑張ろうねと手を差し出す。

 ユリエルとしては、契りを結ぶならしっかり分かり合って将来像を固めてからと、どこまでも真面目に考えている。

 ……しかし男からすれば、自分はとにかくヤりたいだけなのに、重い。

 結果は、今の純潔が物語っている。

「だから、これでそういう奴らに仕返しできるのはスカッとするわね!

 そんなに女の中身が要らないなら、声だけに命かけたって変わらないでしょ」

 ユリエルは、恨みのこもった目でやられていく冒険者たちを見つめる。

「こんな時でも、最期に呟くのがアイーダだなんて。アイーダなんて、一人の男に尽くす気なんかないくせに!

 私じゃなくて、あんな女を信じた報いだよ!!」

 自分がこんなに不当に攻められているのに、男たちがアイーダを慕うのを見せつけられて、ユリエルの胸にドス黒い嫉妬がメラメラと燃え上がる。

 そんなこじれた乙女心が、侵入者たちを容赦なく痛めつけていた。


 しかし、そんな余裕のある時間ももうすぐ終わりだ。

 方々で犠牲を出しながらも、討伐部隊は数に任せて着実に歩を進めている。複雑な迷路を人で埋め尽くし、進める方向を見つけている。

 それに、罠は一度発動させたらそのエリアから侵入者がいなくならないと再設置できない。

 虫が掘る落とし穴も、そう何人も収納できる訳ではない。

 敵も、衛兵は冒険者と違って規律を叩きこまれた集団行動のプロだ。妖精が女の悲鳴を聞かせても、引っかかってくれない。

 幻惑が効きにくく罠もあらかた使い潰されて、進むのを止められない。

「……奴ら、二階層もだいぶ進んで来たわね。

 私はそろそろ迎撃ポイントに行くけど、アラクネちゃんとワニさんたちはそのまま待機してて」

 ユリエルは腰を上げて、いつもの岩ムカデにまたがった。

「ああん、あそこか。

 でも敵に姿を見せるんだから、やられないように気を付けてよ」

「うん、ちゃんと強化はかけるし護衛も連れてく。

 しっかりここに逃げ帰って……奴らを調子に乗らせてくるわ」

 ユリエルは、聖女に似合わぬうろこの皮ベルトをしっかり締めて、自ら出撃した。

「だって人間、先が見えなくて辛いだけだと進めないものよ。この辺で私という飴を見せて、しっかり深入りさせないと。

 次の襲撃が少しでも遅くなるように、敵の選択肢が少しでも減るように、できるだけここで戦力を削らなくちゃ」

 ユリエルは、戦略上の自分の価値をしっかり分かっている。

 だから、必要とあらばためらわずに前に出る。

 もう冒険者と衛兵の被害は、一割を超える勢いだ。このまま戦果が得られそうになければ、討伐隊は引き揚げてしまうかもしれない。

 そうなっては、敵に余裕を残すことになる。

 この戦いでできるだけ深入りさせ、討ち取れるだけ討ち取らねば。

(……だいたい、まだ七階層中の二階層までしか来てないんだもの。

 地獄は、まだまだこれから。罪なき人を理不尽に貶めた罰、もっともっと分かってもらわないと。

 すごい数入って来てるし、これまで死んだ分のDPだけでもかなりの儲け!何ならあと二階層くらいはすぐ作って下がれるわ)

 衛兵や冒険者たちには既に地獄だが、ユリエルはこれで済ます気はない。

 人間の中で孤立無援にした自分を寄ってたかって叩くなら、おまえらも孤立するまで仲間をはいでやる。

 翻る純白のローブが、弔いの旗のように、さらなる地獄の蓋を開いた。


 開戦から数時間、討伐部隊はようやく二階層の広場に到達した。

「やった、最初の報告にあった広場だ。

 すぐ後続に正しい道を伝えて、物資を運びこめ!」

 ようやく正解の道と思しき証を見つけて、兵士たちはホッと一息ついた。……が、そこに矢が飛んでくる。

「来たわね、冤罪の処刑人が!

 さっさと退かないと、もっと痛い目を見るわよ!」

 その声のする方を見上げて、衛兵たちは目を見張った。

「ユリエルだ、本当にいたぞ!!」

 憎むべき魔女にして討伐対象が、そこにいた。

「チッ……俺たちだけで突破は難しいか。早く援軍を!数で押すんだ!」

 たちまち、兵士の数人が伝令に走った。

 それを眺めて、ユリエルは薄く笑った。これであいつらは、ますます獲物に執着してダンジョンの糧を連れてくるだろう。

 それがみんな押し込み強盗なんだから、世から排除することにためらいはない。

「進むのね……どうなっても知らないわよ」

 この先のさらなる地獄を思って、ユリエルは酷薄そうな笑みを浮かべた。

 虫に迷路を掘らせてダンジョン作成の省力化をするのは、「アリの巣ダンジョン」と同じです。

 ただし、あちらはアントたちが割と大きいので隠し通路などが看破されると逆に奇襲部隊が先手で倒されてしまうということがありました。

 なので、こっちは虫は人間よりだいぶ小さい設定です。小さければ人間が入れない専用通路で行き来できて、退避も防御も容易いという。


 虫は元から、小さな体で自分の何倍もの重さを持ち上げる力があります。

 なので、無理に人間並みに大きくしなくても十分強いんじゃないかなと。

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