120.聖歌手降臨
ついに今回、前から来る来るといっていた聖歌手が登場です!
教会が期待を込めて送り出した、聖歌手と教会正規軍。
そして、追っかけて熱狂する人々!
しかしいろいろな人物の話を聞くうちに、聖歌手の名声に違和感が出てきます。
タカネノラはユリエルたちの学園の先輩ですが、ユリエルたちがその活躍を知っていたかというと……?
リストリアには、様々な方向からどんどん人が集まってきている。
聖歌手とともに魔女討伐をしようとする貴族の兵や冒険者以外にも、多種多様な人間があらゆる街道からやって来る。
中には、とても戦えそうにない人々も混じっていた。
人が集まるのを好機と見た、馬車に荷物を満載した商人たちは、まだ分かる。
しかし明らかに仕事を探してという訳ではない、一般の旅行者や物見遊山な小金持ちまで集まっているのだ。
彼らの目的は、魔女討伐でも商売でもない。
彼らは、こんな時に散財して楽しみに来たのだ。
彼らのお目当ては、魔女討伐のためにここを訪れる聖歌手タカネノラ。人々を魅了する楽聖女たちの、現トップ。
その姿を一目見て少しでも声を聞きたいと、戦いに関係ない人々までもがリストリアに引き寄せられていた。
そんな人々の流れの中で、ひときわ長い行列があった。
教会の紋をつけた鎧の兵士たち、そして白に金縁の鎧に身を包んだ輝かしい聖騎士たち。
これは、教会の正規軍だ。
ユリエル討伐のために、総本山から派遣されてきたのだ。
その中央に、壮麗な馬車があった。
周囲を聖騎士が固め、厳重に守られている。窓はあるものの閉ざされ、中を伺い見ることはできない。
だが、そこに誰が乗っているかは一目瞭然だ。
なぜなら、その教会軍の周りには、人だかりができているからだ。
「聖歌手!!聖歌手!!」
「タカネノラ様ー!一言でいい、どうかお声をーっ!!」
教会軍の周りで、身分も身なりもバラバラな大勢が熱狂し、歓声を上げている。
人々は、皆同じ聖女のグッズを身に着けている。鉢巻、うちわ、バッヂ……ありとあらゆる手段で、情熱をアピールしている。
その対象こそ、聖歌手タカネノラ。
教会の花である楽聖女の頂点にして、今回のユリエル討伐の要であった。
それが近づいていることを、もちろんユリエルたちは察知していた。
ミツメルの目玉によって行列やリストリアの街を監視し、戦う前に少しでも情報を得ようとしている。
……しかし、それほどうまくいっていない。
「くそっ……タカネノラが出てこない!
これじゃ鑑定できないじゃないか!」
ミツメルが、行列の映像を見ながらぼやく。
さすがに警戒されているのか、肝心の聖歌手タカネノラは馬車から下りない。窓すら開けないため、姿を見ることができない。
その目に映すことができなければ、ミツメルの鑑定は通らないのだ。
「うーん、前ロドリコたちが来たりカッツ先生の恥映像ばらまいたりで、ここにミツメルがいるってバレてるからなー。
そりゃ向こうも、手の内見せたくなくなるわよ」
仕方なさそうにぼやくユリエルに、オリヒメは怯えたように寄り添う。
「……見えないまま、あの大軍と戦うでありんすか?
何がどれだけ来ても、とは思っておりんしたが……さすがに、壮観でありんす。ここまでまとまった大軍は、初めてですえ……」
「確かにこいつぁ、ゲリラ戦で狩り切れる数じゃねえな」
いつも血の気が多いレジスダンも、珍しく真顔になっている。かつて、教会の正規軍に敗れたことを思い出しているのか。
不安そうな仲間に、ミツメルは吐き捨てるように言う。
「フン、この程度の数、死肉祭ならいつものことさ!
僕が弱点を見抜いて指揮すれば、このダンジョンでもおそらく何とかなる。
ただし今回の場合……問題は楽聖女だ。奴らは単体では弱いが、集団の強化は時に圧倒的不利をも覆す。
聖歌手の能力を詳しく見ない限り、大丈夫とは言い切れんな」
そこで、ミツメルはバッとユリエルを振り返った。
「君は、何か知らないのか!?
街や学園の噂では、こいつは君の学園の先輩だそうだが」
仲間のすがるような注目に、ユリエルは目を泳がせた。
「えーっと、その……ごめん、気にしたことなかった!
先輩っつっても二つ上だし、私そういう芸能とか興味なかったし……一緒に戦場に出ることもなかったし」
その答えに、仲間たちは肩を落としつつも納得した。
ユリエルは、可愛いものや芸能にときめく普通の女の子ではない。こういうアイドルのような存在に、元々興味がなかったのだ。
「ああっごめんって!そういうのが戦いに出てくるとか普通思わないじゃん!
でも、そういう事ならミエハリスたちが知ってるかも。ちょっと呼んでくる!」
慌てて走り出すユリエルを、仲間たちは生温かい目で見送った。
……しかし、期待は二度裏切られることになる。なんと、ミエハリスもタカネノラのことをよく知らなかったのだ。
「ごめんなさい、わたくしもよく知らなくて。
学園にいた頃のタカネノラさんは、そこまで有名ではなかったように思いますわ。わたくしも、楽聖女のことはあまり詳しくありませんし」
神官たちも、だいたいそんな感じだった。
しかしそこで、ミツメルの眉がぴくりと動いた。
「君たちといる間は、さしたる活躍がなかったと?
今あれほどもてはやされているのに、例えば春の聖楽大会などで優勝したとか……それも、なかったのか?」
「ええ、二年前の優勝は別の方だったと記憶しております」
その言葉に、一同は違和感を覚えた。
歌や舞いなどの芸能は、急に花開くことなど滅多にない。特に、それを発掘し磨き上げられる環境に長いこといた場合は。
そんなに才能があったなら、学園時代に注目されていてもおかしくない。
だが、タカネノラが才覚を現わして注目されるようになったのは、卒業後のことなのだ。
「なるほど……それは、聞き捨てならんな。
もしその力に、何か秘密があるのならば……そこを突けば、あるいは……」
ミツメルは、何かのヒントを見つけてブツブツと呟き始めた。
役に立てなかったユリエルは、ぐーんと体を伸ばして呟く。
「あーあ、こんな事になるなら、楽聖女の方もきちんと気にしときゃ良かったな。楽聖女なんて、ほとんど知らないし。
あっでも、シノアは楽聖女の友達けっこういたっけ。聖楽の授業で他の学年と合同で演奏したとか言ってたし。
頭はお花畑だけど、もっと話聞いときゃ良かったなー」
後悔しても、後の祭りだ。
ユリエルは久しぶりに、ふんわりした髪と笑顔で銀の笛を携えた、シノアのことを思い出した。
学園は、熱狂の渦に包まれていた。
「キャーッ!!タカネノラ様!!」
「こっち向いて!ああっ素敵!!」
タカネノラが馬車から下りて手を振ると、集まっていた聖女や神官たちはこれでもかと黄色い声を上げる。
そんな後輩たちを、タカネノラは喜色満面の笑顔で見回した。
肩にかかる眩しい金髪が、動きに合わせてさらりと揺れる。くるくるとよく動く緑の目は、宝石のようにキラキラと輝いている。
目にするだけで心が躍るような、華やかな美貌だ。
しかし、集まった女の子たちが求めているのはそれではなかった。
「タカネノラ様、お歌を!一言でいいですから!」
全員が、目ではなく耳の穴を全力で開こうとして群がっている。なぜなら、タカネノラの名声の源はその歌声にあるのだから。
タカネノラがもったいぶるように周りを見回していると、馬車の中からもう一人、分厚いベールで顔を隠した女の子が出てきた。
楽士らしく、竪琴を持っている。
彼女がポーンと弦を弾くと、辺りは水を打ったように静かになった。
皆が口をつぐんで固唾を飲んで見守る中、タカネノラは大きく胸を張り、息を吸った。
「ラ~~~ア~~~♪」
満を持して放たれる、歌声。
その瞬間、そこにいた者は皆鳥肌が立つような感動を覚えた。
タカネノラはいかにも派手なお嬢様といった美貌で、聖女服もフリルとレースたっぷりのミニスカートである。
しかし、歌声は真逆。
タカネノラの歌声は、どこまでも澄んだ清らかな水のよう。汚れを知らぬ光が、そのまま音として紡がれたよう。
その外見とあふれ出る内面のギャップに、聞く者は魂を奪われる。
「ア~~~私の歌は~あなたのために~♪
ラ~~~この世を清め~神に捧げて~♪」
歌いながらタカネノラは体を揺らし、軽快なステップを踏み始めた。
歌に勢いがつき盛り上がるにつれて、ダンスもキレのある激しいものになっていく。衣装のレースやフリルが揺れる、魅惑の舞だ。
しかしそれだけ動いて体幹まで激しく揺れているのに、その歌声にはしっかりと芯が通ってブレることがない。
目を奪う舞いと魂に響く歌声の、合わせ技だ。
「輝く道は~止めさせないの~♪私の歌で~道を開いて~♪
どんな悪でも怖くない!だって私にはみんながいるから!
私を邪魔するおバカさんには、私のファンが黙ってないよ♪」
ちょっと聞くと傲慢で鼻につくような歌詞もあるが、タカネノラの無垢な声で歌うと全くいやらしくない。
むしろ純粋に心を束ねてくれる人の力を信じているように思えて、心が洗われて力を貸したくなる。
これが、稀代の聖歌手タカネノラ・ブロディウェズ。
一つの体に美と舞いと歌の粋を集めた、まさしく教会の宝だった。
タカネノラが歌い終えると、学園を揺るがすような拍手と歓声の嵐が起こった。
その音量は、歌う前とは比べ物にならないほどだ。
単に感動しただけではない。心も確かにたまらなく高揚しているが、体の方も力が溢れんばかりに強化されているのだ。
叫んでいないと、跳ねていないと、どうかなってしまいそうな昂り。
普段の貞淑さなど吹っ飛んでいる学生たちに、タカネノラは一言。
「さあ、私の役目は果たしたわ!
あなた方も、この力でできる限りのことをなさい。私程でなくても、やれることがあるでしょう!」
号令をかけられた聖女や神官たちは、一斉に駆け出した。
タカネノラの言う通りだ、この強化を無駄にしてはならない。
今なら、いつもは治せない傷だって治せるかもしれない。いつもの何倍も、聖水や薬が作れそうな気がする。
タカネノラは、自分たちのこともできる子にしてくれたんだ。
あのまさに神に祝福されたような力を、自分にも分けてくれたんだ。
圧倒的な高嶺の花に微笑んでもらえて、天使のような歌声に包まれて、その恵みを受けた者たちはそう思った。
普通のお嬢様が言うと上から目線のようなセリフも、タカネノラだと健気に聞こえる。
いつもは気取っているけれど、あの澄んだ歌声に映る心はみんな分かる。少しでも強く見せるように、頑張っているだけなのだ。
あの清らかな歌声は、疑うのもおこがましい。
学生たちはその残響とみなぎる力に酔いしれて、自分の仕事に突撃していった。
しばらく後、タカネノラは学園の聖楽室でくつろいでいた。
「タカネノラ様、こちらをどうぞ!」
「長旅お疲れさまでした、腰をお揉みしましょうか!?」
聖楽室には、楽聖女とそれを目指す後輩の神官たちが集まり、タカネノラを丁重にもてなしていた。
タカネノラは本来重役が審査の時に使うフカフカの椅子に身を預け、神官たちに足や肩を揉ませている。
その側には、香りのいいお茶と高級なお菓子が差し出される。
何も言わなくても、至れり尽くせりだ。
当たり前だ。ここにいる楽聖女や聖楽を磨いている神官たちにとって、タカネノラは己の理想像だから。
それに、もっと現実的な望みもある。
もしタカネノラに気に入られて側に置いてもらえたら、自分の名声も爆上がりだ。そんな下心が、彼女たちを突き動かしていた。
たとえタカネノラがそんなそぶりを見せなくても、彼女たちはやめられない。
ただし、お付きの楽士に後輩たちが話しかけようとすると、それだけはタカネノラは激しく制止した。
「ちょっと、その子はそっとしといたげて!
私に合わせて完璧に演奏するの、結構神経使うのよ。
それに、この子すっごい内気なの。あんまり人と関わるの得意じゃないから、怖がらせないであげて!」
タカネノラは、その楽士をかばうように肩を寄せた。
それに、後輩たちは不服そうに顔を見合わせた。
「確かに、技術は認めますけど……その人、少し前にタカネノラ様の悪い噂を流そうとしたとか聞きますけど?
私たちなら、そんな事しませんよ!
だから、そんなのより私たちを……」
「ううん、ちゃんとこの子も謝ったし、赦して和解したからいいの。
その時にね、赦しの聖女様に言われたのよ……まだ正式に聖女じゃないけど。きちんと改心して償える者は、赦して大事にしなさいって。
ま、この子のやった事なんか、今から討伐する魔女と比べたらホコリみたいなもんだし」
傷があることを持ち出されても、タカネノラは優しく楽士の子を赦した。
それを見て後輩たちは、残念に思うと同時に、タカネノラの人徳と懐の深さに脱帽した。これほどの人だから、きっと神に愛されるのだと。
楽士の子は、肩を震わせながらタカネノラにぺこぺこと頭を下げている。
天から与えられたような芸術の才だけではない、この人としても完璧にできた美しい心あっての、憧れの高嶺の花であった。
そこに、息を切らして駆け込んでくる楽聖女がいた。
「ハァ……ハァ……タカネノラ先輩、もういらしてたんですね!」
ふわふわの髪を振り乱し、それでも主に尻尾を振る子犬のような笑顔で声をかけてきたのは、シノアだ。
それに、タカネノラはわずかに不快そうに眉をひそめた。
「あらら、シノアじゃない……せっかく帰ってきたのに、何でこんなに遅くなったの?
今日着くって、予定は伝わってたはずよね?」
「す、すみません……最近炊き出しやってて、自分だけ抜けるのも悪いかなって」
「ふーん、まあちゃんと来たから許したげる!」
シノアの話を聞いて、タカネノラはあっさり許した。しかしその眼差しには、見下すような優越感が宿っていた。
「あんたみたいなのが、炊き出しねえ……それ楽聖女の仕事なの?
もしかして、うまくいってない?もっと自分に自信を持ちなさい」
タカネノラが励ますと、シノアは悲しそうに目を伏せた。
「そう言ってもらえるのは、嬉しいです……でもあたしは、先輩ほどできませんから。
先輩みたいに、たくさんの人の心を動かして、世の中を動かすなんてとても……。先輩なら、こんなことしなくても、歌うだけでたくさんの人を救えるのに。
あの頃は、一緒に奏でていられて楽しかったですが……先輩は、すっごく高く飛び立ってしまって……あたしもついて行けたらなぁ」
シノアは、懐かしそうに聖楽室と楽聖女仲間を見回した。
シノアは一年生の頃、タカネノラが舞うための曲を演奏したことがあった。今ここにいる同学年の楽聖女と神官も、一緒にだ。
その頃のタカネノラは、舞いと美貌はあったけれど、シノアたちと同じ所に立っていた。
なぜなら……その頃のタカネノラは、歌わなかったから。
「本当、懐かしいなぁ……ちょっと前の先輩は、舞踊は音楽あってのものだから一緒に奏でてねって言ってくれたのに。
こーんなに歌が上手くなっちゃうなんて、信じられなーい!
あたしも、そんな風になれたらなぁ……」
シノアはおっとりと夢見がちに言うが、タカネノラの眉はぴくぴくしていた。
「うふふ……努力と祈りの賜物よ。
何なら、私が出した発声法の本でも買って読んでみる?あんたが笛だけのままで良ければ、要らないかもだけど……もしかしたら、もしかするかもよ!」
「すごーい!じゃあ買わせていただきますね」
あっさりと不要な本を買うとはしゃぐシノアに、タカネノラは機嫌を直した。
しかし、親し気に肩を寄せて耳元でささやく。
「憧れてくれるのは嬉しいけど、他人のできなかった過去を言いふらすのは感心しないな~。今でもそういう風に思われたら、どうなの?
そういうの、悪い噂を流したって思われたらさあ……」
ここで、タカネノラの声が恐ろしく低くなった。
「私のファンが、黙ってないよ!」
その圧力に、シノアは思わずびくりとした。
しかしすぐに、自分が悪かったと思い直した。親しかった先輩が自分を脅す訳がないし、もう一つ聞いておきたいことがあったからだ。
「そうだ、悪い噂と言えば……先輩は、それをやった人を赦されたとか。その時の裁判で、赦しの聖女様にお会いしたとか。
あたしも今、赦せたらって思うことがあって……でもみんなに叱られて。
先輩や赦しの聖女様だったら、どうなさるのかなって」
シノアは、若干面倒くさそうにしているタカネノラに懸命に自分の苦悩を話した。この人なら、もしかしたら共感してくれるかと思って。
しかしタカネノラは、呆れたように首を横に振った。
「あんたねえ……確かに許すのは徳の高いことだけど、場合ってもんがあるでしょうに。
いい?赦していいのは、本人が反省してて償える場合なの。私の場合、この子はすぐに反省したし、私の評判だってそれで元に戻ったから。
でも魔女は全然違うじゃん。同じ嘘ついたにしても、それを押し通すために人を殺しまくったのは完全にダメ!
そこんとこ、しっかり覚えときなさい!」
「はい……うう、ミザトリアと一緒だ」
信頼できる有名人に二度同じような答えを突きつけられて、シノアはがっくりと肩を落とし、すごすごと去っていった。
古巣でのひと時が済むと、タカネノラはラ・シュッセ親子の屋敷に赴いた。タカネノラはオニデスの兄の派閥だが、一応同族なのであいさつに行かねば。
そこで、タカネノラはワーサの懇願を受けた。
「お願いですタカネノラ様、どうかお力をお貸しください!
私を聖楽大会で優勝させていただくか、邪魔をするミザトリアをどうにかしていただきたいのです!」
「ふーん、ミザトリアか……(あの調子に乗った天然物が!)」
タカネノラは、公共の場では決して見せない醜悪な笑みでうなずいた。
「いいわよぉ、魔女を倒して英雄になった私に、逆らえる奴なんているもんですか。
た・だ・し、オニデス様とワーサ様は身内を裏切ったことを謝ること。償いを約束すれば、私の力を使う許可が下りるでしょう」
悔しそうに歯噛みするラ・シュッセ親子を、タカネノラは実にいい気分で眺めていた。
(あはっ!名声と権力サイコー!この歌がある限り、世の中なんて思うままよ。
……この地位を脅かしそうな奴は、さっさと排除しないとね)
清純な花弁に毒を隠した高嶺の花は、上ってくる天賦の華を煩わし気に見下ろした。
ユリエルは、私は、ファッションや芸能に全く興味がありませんでした。今もかなりそう。
男にモテるための理想像を研究することがなかった、女を磨いて自分を見せる方法の必要性すら考えなかった……その結果がこれを書けるほどの非モテだよ。
なので、ユリエルが知らないのは仕方ない。
しかし、ミエハリスが知らなかったとなると話は違ってきます。
ミエハリスは人脈を繋ぎ情報を集めることにこだわっていたので、学園時代に興味を持たなかったということは……。
でもその違和感に、めっちゃ近くにいるのに気づかないシノア。素直で危なっかしいけど、騙されやすいので逆に権力者にそれほど警戒はされません。
でも人望があって人を惹きつけ、能力も確かな聖歌手。
このままではユリエルもミザトリアも危ない!どうする!?