109.籠城用ダンジョン
一時的に一週間のPVが3万とかいう夢みたいな数字になっていた!
読んで知ってくださった読者さんを、どれだけ定着させられるか。
久しぶりにダンジョン改造&各階層の紹介。
ダンジョンものの醍醐味だね!
前回までで魔族側でも危機を招いてしまったユリエルが、ダンジョンに帰って真っ先にしたことは……。
「ただいまー!
ちょっと今から、ダンジョンいじるわよ」
魔王軍会議から帰るなり、ユリエルはダンジョンの改造に着手した。
理由は簡単、このダンジョンで身を守る戦いがすぐには終わらないと、身に染みて分かったから。
神敵認定までされた以上、人間側がそう簡単に目を覚ますとは思えない。
そのうえ魔族側でも、美王に目を着けられてしまって、いつどこから攻撃されるか分かったものではない。
下手をしたら、人間との戦いが終わる前に美王派閥と戦うことになるかもしれない。
それに耐えるだけの、堅牢なダンジョンが必要だ。
そしてその間、自給自足で生きていけるダンジョンが必要だ。身も心も、ある程度満たせるようにしておかなければ。
かくしてユリエルは、ダンジョンに本格的に生活用のフロアを作った。
「じゃーん!水もあるし畑とか作りやすい草原フロアでーす。
人間の皆さんはここで、農業とかやって過ごしててくださーい」
ユリエルは、コアルームの一階層上にだだっ広い草原を作った。そして、そこを捕らえた人間の居住区画とした。
「まあ、これなら地上とほぼ変わりませんわ。
ダンジョンって、本当にいろんなことができますのね!」
「ありがとうございます、ここまでしていただいて」
はしゃぐミエハリスと感謝する神官たちに、ユリエルはずばりと言った。
「いや、あんたたちも……多分しばらく地上には帰れないからね。
いい、私が神敵になったってことは、そこから生きて放免されたらどんな目で見られると思う?
しかも、真実を自分で見聞きしてるってなったら、教会はどうすると思う?
とどめに罪状が邪淫だからね。地上で冒険者や衛兵に保護された途端に……どうなるか分かるわよね?」
途端に、ミエハリスたちの顔からさーっと血の気が引いた。
ユリエルを犯す用の免罪符が発行されたと聞いて、何て恐ろしい事をするんだろうと思っていた。
それは、ずばり自分たちにも適用され得るのだ。
魔物に捕まって帰って来た奴は、そのまま殺したり世の中から消し去ってしまっても戻らなかったことにすればいい。
そういう理由で冒険者や衛兵が強盗殺人犯になることは、ある。
そのうえ邪淫の神敵であるユリエルがあえて放ったと思われたら、分からせ用免罪符を持った男どもは強姦殺人犯まっしぐらだ。
「うん、一応……私が原因でこんな事になっちゃったのは事実だから。
あんたたちが暮らしていけるようにはするわよ。
それに……人間との戦いが終わっても、私と関わっちゃった以上しばらく出れなくなりそうだし」
「は……まだ何か?」
不穏な気配を察したミエハリスたちに、ユリエルは勢いよく頭を下げて謝った。
「ごめん、もしかしたら魔族の内戦に巻き込んじゃうかも!
私が助けた以上、あなたたちは私を倒すためにどう使われるか分からないから……」
「はーーーっ!!?何ですのそれは!?
あなた、一体何をやったのよおぉ!!」
ミエハリスたちは、目が飛び出しそうになって怪鳥のような叫び声を上げた。
人間との戦いですらいつ終わるか分からないのに、さらにその先も危険な戦いが待っているとは。
どうにか教会が過ちを認めればと思っていたのに、それでも帰れないなんて、泣きっ面にハチだ。
「いや、ごめんって!いい事したはずだったんだよ!
でも、何かこうなっちゃって……仕方なかったのー!!」
ユリエルは、半泣きで事情を説明するしかなかった。
小一時間に渡る説明が終わると、ミエハリスたちは呆然としていた。
まず、情報量が多すぎて頭が追い付かない。魔王軍四天王など一般の聖女や神官には遠い世界のことで、考えたこともなかった。
しかし、今それがユリエルを通して自分たちに迫ってきているのだ。
地頭は悪くないミエハリスが、どうにかそれを分かりやすくまとめた。
「なるほど、つまり……ユリエルが魃姫の非モテをこじらせた悪行を改めさせたら、魔王軍の乗っ取りを企むモテ搾取女王吸血鬼の計画がひっくり返って、そっちの恨みを買ったと。
で、今魔王軍はモテ搾取美王派と反対派の対立が露わになって真っ二つ。
人間との戦いが終わって魔族に余裕ができたら、美王派が襲って来るかもってことね」
「うん、今すぐじゃないんだけど……いつ来るか分からないんだよなぁ」
すまなさそうなユリエルに、魔物学の教師がフォローした。
「ユリエルちゃんは悪くないよ、したこと自体はすごく正しい。
ただ、それで不利益を被る悪い奴があっちにもいたってことだ。そしてユリエルちゃんは、その脅威をまだ知らなかった。
でも、それで悪い奴が待ってくれるかは別問題だからね」
「正しい抵抗にキレて神敵認定する教会と、似たようなモンだろ」
レジスダンも、諦めたように言う。
「人間でも魔族でも、集まればそういうクズが幅を利かす。
でもってバカ正直でどこまでも素直な姉御は、そういう奴らととことん相性が悪い。姉御は、そういう奴らの天敵みたいなもんだ。
こいつはもう、諦めて身を守るしかねえ!」
その言い方に、ミエハリスたちは納得してうなずいた。
悲しい事に、世の中、正しいことをしても良い結果につながるとは限らない。特に、不正で肥える悪い奴が絡んだ場合は。
筋を通して世を正そうとした高潔な人物が疎まれて非業の死を遂げるのは、人間社会でもよくあることだ。
正しさを通すには、身を守らねばならないのだ。
ミエハリスは、はーっとため息をついてぼやいた。
「まあ、ユリエルがしたことは魔族にとって間違いなくいいことですわ。その魃姫とかいうののそこまでの非モテに寄り添えるのは、あなたくらいのものでしょうし。
ただ、巻き込まれる人間や捕虜のことは少し考えてほしかったですわ。
何もしてないのに巻き込まれる身にもなってちょうだい」
すると、オリヒメがうんざりしたような顔で突っ込んだ。
「何もしていないなど、どの口で?
インボウズの嘘ばかり信じて、ユリエルを殺しに来るからでありんす。そのうえ生かされたから巻き込まれているのに、恩知らずでありんすねえ。
痛い目に遭いたくなけりゃ、来なけりゃ良かったのでありんす!」
これまた反論の余地もないド正論である。
誤った正義でユリエルに手が届くほど深入りしなければ、ミエハリスたちは巻き込まれずに済んだのだ。
逆に深入りして巻き込まれずに済んでいる奴は、一部はロドリコの下で教会と全面戦争になり、他大多数はこの世からいなくなっている。
そう考えれば、ミエハリスたちの境遇は何と幸せな事か。
それを直視させられて、ミエハリスは頭を抱えながらも気を取り直した。
「……分かりましたわ、生きて帰るチャンスは自分で守ります!
皆さま、できる範囲でダンジョン防衛に協力しますわよ!」
こうなってしまったら、ダンジョンにいる者は皆運命共同体だ。
そもそも人間か魔族かに関わらず、これから大攻勢が来るのは確実なのだ。命を守るために、全力で守りを固めねばならない。
これからは、全員一丸となってダンジョンを守るのだ。
「だからね、まずは肉系の食糧も自給できるようにするのよ。それに、配下じゃなくて家畜なら増えればDPの足しになるからね。
あなたたちの食糧、いちいちDPで買ってるとそれなりの出費になるのよ」
防衛力強化のため、ユリエルはまずダンジョンの収支を見直すことにした。
人間界の籠城戦と違って、ダンジョンは落とされるまで食糧をDPで買うことができる。これは便利だと思うかもしれない。
だが、そのDPは抗戦になくてはならないものなのだ。
食料をDPで買うこと前提にしていると、命を守るためのDPが毎日のように流出していくことになる。
いざという時、もう少しDPがあったらと後悔しても、戻ってはこないのだ。
そうなるのを少しでも防ぐために、削れる支出は徹底的に削らねば。そして、少しでも自分たちの糧を蓄えねば。
DPにあまり余裕がない状態でワークロコダイル、レジスダン率いる野盗と連戦したユリエルは、DPの大切さが身に染みて分かっていた。
「なので人間の皆さんは、妖精さんたちと協力して作物や家畜を育ててね。
育てて収穫したものはもちろん食べていいし、好きなものがあれば元手はDPで買うから。
そして食べる以外にも、あらゆるものを無駄なく使おうね!
生活用でも防衛用でも、試せそうなことがあったらどんどん言ってね!」
「うーん……薬草を植えてもらって薬を作るとか?」
「それはもう7階層から10階層にあるから、安全な隙を見て採りに行って」
「そこまで自分で身を守るんですか!?」
神官たちは目を丸くしたが、これからは人間たちも遊ばせておく気はない。ダンジョンと共に生き延びるため、働かせるのだ。
「うちはさ……ダンジョンの広さの割に人手が少ないのよ。
だから、やれることは自分でやってもらわないと。
私がそんな細かいところまで手を回して、他のところに手が回らなくなって滅んだら嫌でしょ!」
ユリエルが言うと、ミエハリスは渋々うなずいた。
「はいはい、分かりますわ。
少ない指揮官の手は重要な仕事にこそ割くべきことも。……まだ有事とは言えない今下手に人手を増やすと、かえって維持費で食いつぶされることも。
人間の籠城だって、平時から備えるためにやることは同じですもの。
しっかり生活を効率化して、ここを守る資源を浮かせて見せますわ!」
ミエハリスは元より、将来領地経営を補佐するための教育を受けている。後は魔物学の教師の生物知識があれば、それなりに農地を経営してみせるだろう。
「……でも、わたくしたちに働かせるのであれば、きっちり守ってくださいな。
わたくしはともかく、神官たちや先生は、攻め込まれて狙われたらひとたまりもないんですから」
代わりに、ミエハリスは総大将たるユリエルに精一杯懇願した。
自分たちはここで長期戦に備えてDPを浮かせる。しかし籠城戦の成否は、ユリエルがそれをどう使うかにかかっているのだから。
そう言われると、ユリエルは楽しそうにニカッと笑った。
「もちろんだとも!
節約するのは、使う先があるからだもの。これからは多少DPがかかっても、本気で敵を阻むフロアを作っていくわよ。
いい機会だから、10階層より下の情報をあなたたちとも共有しておくわ」
そう言ってユリエルは、上層よりさらに凶悪な下層の紹介を始めた。
11階層(10エリア)12階層(5エリア):命ある砂漠フロア
干天の輝石をまいて維持費を軽減した砂漠フロア。進むだけで体からも荷物からも激しく水分を奪われる。端の方には近づく者を感知して棘を飛ばすサボテンと、毒ヘビや毒トカゲ、サソリ等の砂漠に適応した魔物がいる。
11階層は地面が固いが、12階層は流れやすい砂の海なうえ、アリジゴクの魔物がはまったら抜けられない巣を作っている。
端っこに一つずつ美しい池があるが、もちろん本物ではなく分荼離迦。
13階層(3エリア)14階層(6エリア):熱帯雨林フロア
虹色甲爵にもらったジャングルの種からできた、蒸し暑く毒虫と有毒植物に満ちたフロア。
13階層に入ったところにあるきれいな水の池は、毒泉である。でも毒生物系の魔物は普通に水を飲んだり泳いだりしているので、毒と分かりづらい。上で喉が渇ききった人間どもを手ひどく裏切り、地獄へご招待。
14階層には、ワークロコダイルの集落がある。水は普通だし熱帯の果物がたくさん採れる……が、それに気を取られるとワークロコダイルの奇襲を食らう。
さらに、9階層で寄生菌に取りつかれていた場合、ここの気候で一気に増殖して病状が進む。
15階層:(2エリア):凶悪妖精の城
石造りの古城のような場所を攻略しなければならない。落とし穴(もちろん底に槍つき)、壁から出る槍、崩れる天井などの罠が目白押し。それらに加え、レジスダン配下の凶悪妖精レッドキャップ系が襲ってくる。当たり前のように石の隙間から、虫の魔物も大量に襲ってくる。なお、ここに配置された虫は人間と同じくらい殺虫剤に耐える。
最後は、手下を10体くらい率いたレジスダンとのボス戦。手下をほとんど倒してからのレジスダンの狂化は、絶望の一言。
16階層(5エリア):暗闇の峡谷、蜘蛛のおもてなし場
4階層の峡谷と似ているが、ずっと星一つ見えない夜が続く。敵の視界を奪ったうえで目に頼らない魔物を配置し、足場の悪さとの相乗効果で敵を叩き落す。
そこを抜けるとオリヒメが蜘蛛の魔物を育んでいる洞窟に入り、オリヒメとボス戦。蜘蛛や糸を出す魔物が大量にいて、糸で視界も体の自由も奪われる。オリヒメの魅惑のボディに抱かれて、食糧として吸われるがよい。
17階層(10エリア):白昼の砂漠フロア
上とは逆に、ずっと真昼間の砂漠。しかも地面に光を反射する雲母や干天の輝石が大量にまいてあり、ひたすら眩しい。地形は平たんで、隠れる場所もない。
そのうえ見えない天井が地上わずか3メートルと低いところにあり、地下は1メートルも掘れば破壊できない岩盤に当たる。おまけに、干天の輝石から作った光属性の地雷が大量に埋まっており、掘りあてると爆発する。
……実は対人ではなく、対吸血鬼に特化したフロア。美王の手下どもが美しいままここを抜けるのは至難の業だろう。
18階層(5エリア):大群の草原フロア
人の膝~背丈くらいの草が一面に生えた、単調なフロア。
だがここは虫の魔物たちの繁殖場であり、特にバッタ系とアリ系の大群が潜んでいる。数の暴力で敵を迎え撃つフロア。ただし今はまだ作ったばかりで数が少ないため、時が経ち増えるまでは守らねばならない。
19階層(2エリア):農耕フロア
囚われた人間が生活するフロア。8階層にあった妖精の集落も、大部分はここに移転した。
どうしても侵入されてしまった場合に備え、ダンジョンの配下でない者のみが入れる堅牢なシェルターがある。
20階層(2エリア):最後の楽園フロア、コアルーム
コアルームと、そこにつながる花畑と果樹園の庭園。ユリエルが思い描く美しく豊かな世界を体現した場所。
最後はここで、残ったDPで復活できた全員での決戦となる。
この美しい花がユリエルたちの弔いにならないように、頑張ろう。
「……とまあ、こんな感じかな。
まだまだ作りたい場所はあるけど、ひとまずこれくらいで様子を見るわ。前の支援でもらったDPはだいぶ使っちゃったし」
ユリエルが誇らしげに言うと、レジスダンは嬉しそうに口笛を鳴らした。
「ヒュー!思い切ったじゃねえか姉御。
俺としちゃ、まだ残虐さと厳しさが足りねえ気がするが、いろいろ試して敵に合わせてくのも大事だしな。
とりあえず、吸血鬼対策はよくできてると思うぜ」
「うん……かなり維持費がえぐいし、結局また魃姫様に輝石を大量にもらうことになっちゃったけどね。
外の時間に関係なく昼ばっかり夜ばっかりっていうの、けっこうDP食うなぁ。
でも昼ばっかりと夜ばっかりを対にして、一方の光をもう一方に移すことにしたから少し軽減できてるけどね」
今回の改造では、大量の維持DPを食う階層を惜しまず作った。
特に、白昼の砂漠が一番ひどい。
元々のこの土地の環境から最もかけ離れているうえ、一日中昼間を維持するのに他の階層とは比べ物にならないくらいDPを食う。
しかし、ここは今から必須の階層なのだ。
吸血鬼の女王である美王が攻めてくるならば、敵の中にアンデッドが多い事は想像に難くない。
そしてアンデッドはだいたい、体がすでに死んでいるので生身より圧倒的に高い耐久性を誇る。
食料を断つとか水分を奪うとか消耗させるとかが、通用しない。
有効なのは、太陽の光や光属性の攻撃だ。
白昼の砂漠には、それがあふれている。隠れる場所のない砂漠で、地面からの反射も合わせてこれでもかと陽光を浴びせる。
特に美王配下の美貌を重視する奴らに、肌と目を焼かれながら進むのはきついだろう。少しでも嫌がらせをして、お帰りいただける確率を上げるのだ。
「……まあ、最悪ここが落ちそうになったら魃姫様に受け入れてもらうわよ。
でもあっちはここよりずっと環境が過酷だし、そうなっちゃったらもうここには戻ってこれないと思って。
人間のみんなも、そうなりたくなかったらしっかり協力してよ!」
それを聞いて、ミエハリスたちはごくりと唾を飲んだ。
これまでユリエルに突拍子もない話ばかり聞かされていたが、こうして防衛設備を具体的に示されると実感が変わってくる。
人間同士の戦争だって、日常があまり変わらず話だけ聞くのと、街の周りが防衛設備で囲まれるのとは気分的に大違いだ。
「え……でも、いざとなったら魃姫様の援軍が……?」
すがるように聞く神官に、ユリエルは難しい顔で首を横に振った。
「今までみたいに来られるとは、限らないんだよなぁ。
こうなっちゃうと魃姫様は、本格的に美王の動きに目を光らせなきゃいけないし。
人間の方でも、うちから支援を引きはがすために大砂漠を攻めようって話があるみたい。逆に魃姫様も、うちやロドリコに向かう戦力を減らすために大砂漠から圧力かけようかとか言ってるから。
戦線がうちだけじゃないから、あんまり甘いこと言ってられないよ」
そう、もう戦いはユリエルだけの問題ではないのだ。
ユリエルが中心にいるかもしれないが、人間と魔族、魔族同士の戦線が複雑に絡み合い、いつどこで戦端が開かれるか分からない。
だからこそ、どこから何が来ても大丈夫なように防備を固めるのだ。
もっとも、今のユリエルたちの力では、できる限り固めても絶対安全とは程遠いのだが……。
それでも、拡張されたダンジョンは容赦なくユリエルの体に負担を強いる。
「うっ……!」
ひとしきり説明を終えてダンジョンの監視をしようとしたところで、ユリエルは思わずふらついてたたらを踏んだ。
「ちょっと、大丈夫ですの!?」
「ああ、うん……ちょっと情報量が多かっただけ」
口ではこう言いながら、ユリエルは己の器の限界をひしひしと感じていた。
(くう~キツいな、このままだと頭も魔力回路もパンクしそう。
一気に広げたせいかもしれないけど、これで20階層か……確かにこのままだと、十分管理できなくなるかも。
前魃姫様に言われた通り……やるしかないのかな)
ユリエルに守りたいものがあっても、戦は待ってくれない。その守りたいものも、今は優先順位がだいぶ落ちた。
(やったら、戻れない……でも、真実と今のダンジョンと引き換えるくらいなら!)
守りたいたくさんのものを前に、ユリエルは静かに重い覚悟を決めた。
能力は強いが日光に弱い吸血鬼に対抗するために、「日焼けしろ!!」な階層ができました。
これまでは対人ばかりでしたが、対吸血鬼となると人間とは戦略が全く違ってきます。既に死んでいるから対人の戦略が役に立たないのは、アンデッドのお約束。
隣のダラクもアンデッド重視なので、アンデッド対策は急務でした。
そして、以前魃姫がユリエルに言ったことを覚えていますか?
これで20階層突破、すると種族的に器の限界が……次回、タイトル回収。
三連休だけど月曜日に投下できるかはちょっと自信がない。