103.東方昔話~姫と王子の遠征記
また一週とんでしまった(泣)
最近ポーランドボール動画が面白すぎるんだ。
閑話2話目、今回は魃姫とタルウィと魔王のターン。
魃姫と魔王軍の過去でちょろっと出て来た、魔王が東方から三人の四天王を連れてきた時のお話しです。
孤独に過ごしていた魃姫と孤立して放り出された魔王子、そして信仰を失っていたタルウィの皆が救われるある意味勇者物語。
「魔王様には、本年もご機嫌うるわしく……」
大砂漠の中央の城で、魃姫は魔王と対面していた。
しかし、立場の差にも関わらず、魃姫は平伏してもひざまずいてもいない。むしろ、対等に向き合って座っている。
……逆に、魔王の方が身を縮めて畏れているようだ。
その原因は、魃姫の膝の上でちょこんと座って足をブラブラさせている少女にあった。
「いえいえ、こちらこそタルウィ様にはご機嫌うるわしく。
……頭が高くて申し訳ありませぬ」
魔王は窮屈そうに頭を下げ、女神タルウィにあいさつした。
これは魃姫の魔王への謁見であると同時に、魔王のタルウィへの謁見でもあるのだ。
いくら魃姫が配下だからといって、魔王が尊大に振舞える訳がない。もっとも、魔王には元々そんなつもりはないのだが。
そしてタルウィにも、そこまで礼を求めるつもりはなかった。
「別に構わんのだ~、もうアタイは天の神でもないただの居候なのだ~」
「しかし、私はあなた様を信じております。
共に、美の横暴に立ち向かう同志として」
魔王は、タルウィの小さな顔をのぞきこんで小声でささやいた。
「最近、使徒をお造りになられたとか。
共に過ごした旅の土産が、役に立ちましたかな?」
「くっくっく……またこのような日が来るとは、思わなかったのだ~!」
タルウィは、面白そうに笑った。
話しているのは、最近タルウィが力を貸して自らの聖騎士としたロドリコのことだ。長く独りで伏してきたタルウィにとって、これは快挙だ。
「ユリエルにも物はやったが、あいつはまだ目立たせると危ういのだ~。
しかし、あの屈強な男ならばそう簡単には倒されまい。
さすがに天使が来ると勝てんだろうが……ロッキードがそうしないと分かっただけでも収穫なのだ~」
安堵のにじむ表情で、タルウィは呟いた。
正直、使徒を作る事は自分の生存を敵に知られるかもしれない賭けだったが、今のところロッキードは何もしてこない。
これなら反撃の機会を掴めるかもしれないと、タルウィは希望を持った。
そして、その元を作ってくれたのが……。
「魔王、おまえには感謝しているのだ~。
おまえがアタイと魃を東方に連れて行ってくれたおかげで、アタイにこれができるだけの力が溜まったのだ。
おまえこそ、アタイの何よりの恩人なのだ~!」
タルウィが魔王に気さくに接しているのは、このためだ。
タルウィは、遠き日を思い出して呟いた。
「アタイも魃も……おまえが来てくれたから、この実りある道が始まったのだ~。
砂漠に引きこもっていたアタイと魃に手を差し伸べ、この不毛の地から引っ張り出してたくさんの仲間と信徒までくれた。
おまえがいなければ、アタイと魃は……」
魔王もまた、タルウィに深い感謝を述べた。
「いえいえ、こちらこそ!
私めも、あなた様がいなければ今の地位にはいなかったでしょう。
あなた様と魃姫殿のお力あってこそ、私は東方から強者を連れて帰り、魔王軍を美王に渡さずに耐えております」
その言葉に、魃姫もかすかに顔をほころばせた。
この三人は、主従よりずっと強い絆と大切な思い出で結ばれている。
「今でも、昨日のように思い出しまする。
魔王様がここを訪れ、わらわと共に東の果てに旅したあの日々を……」
邪魔する者のいない三人だけの空間で、三人は過ぎし日の思い出話に花を咲かせた。
砂漠に追放されてから、魃姫はずっと一人だった。配下はそれなりにいるが、心を許せる者はいなかった。
そのうちタルウィが天から落ちて来て、傷をなめ合う仲間ができた。
だが二人とも、もう自分からこの砂漠を出て何かしようとは思わなかった。そうするには、二人は傷つきすぎていた。
何の変化もない閉ざされた世界で、姉妹のように静かで退屈な生活を続けていた二人。
そこに風穴を開けたのが、西から侵入してきた魔王だった。
「キャーッ!!ひ、姫様、侵入者が!」
ボロボロになって転がり込んできた桃仙娘娘の姿に、魃姫はキッと眉を寄せた。
打ち負かす前は憎き傲慢な美女だったが、桃仙娘娘の強さは知っている。それがこうなって逃げ帰ってくるとは、ただ事ではない。
「に、西から……恐ろしく強い妖魔が攻めて参りました!
わたくしと杏仙が束になっても、敵いません!炎灼殿も、長くはもたないでしょう!
単騎ですが、ものすごい速さでダンジョンを攻略しております。この城に到達するのも、時間の問題かと……」
降ってわいたような災いに、魃姫は毅然と立ち上がった。
「おのれ、わらわの静かな暮らしすら邪魔立てするか!
ここは誰にも踏み荒らさせぬ、わらわが消し炭にしてくれよう!」
魃姫は、誰にも傷つけられない今の生活を守りたかった。誰も自分を拒まないこの世界を、楽園を荒らされたくなかった。
だから、逃げずに立ち向かった。
しかし、撃退できるかはまた別の問題である。
大砂漠に殴りこんできたのは、東方でも見たことがないくらい強靭な魔族だった。
大きく立派な角とひん曲がった牙、人間とは違う横長の瞳を持つ、顔と下半身がヤギで上半身が人間のような異形の巨体。背中には、黒く大きな皮膜の翼。
対峙するだけで、身がすくむような圧。
本能的に分かった……勝負にはなるが、勝てないと。
それでも、魃姫は立ち向かった。
どうせここから逃げたって、東方は自分を受け入れてくれない。さりとて西方は、タルウィが生きるのを許されない。
行き場をなくして苦しむなら、ここで守ろうとして死んだ方がましだ。
魃姫は悲壮な覚悟を決めて、己も異形の姿に変化した。
首だけは人間、されど体は獅子で背中に翼をもつ。キョンシーから変化した、旱魃を起こす魔物の最終形態、犼だ。
この姿になるたび、魃姫は人間の姿からも拒絶されたようでひどく悲しくなる。
だが、大切なものを失う悲しみに比べたら些細なことだ。タルウィを探しに来た忌々しい天使も、この姿で追い払ったではないか。
魃姫は、すさまじい熱波とともに力の限り吼えた。
「カアアアァ!!!」
強大な侵入者は、それを正面から受けた。
そして、フッと殺気を抑えてどかりと腰を下ろした。
「……素晴らしい!このような不毛の地でこれほどの強者に出会えるとは!
驚かせて悪かった、殺し合う気はないのだ。どうかその猛き力、私のために貸していただけまいか?」
突然の申し出に戸惑う魃姫に、強大な侵入者は頼み込んできた。
「信用できぬのは分かる、だが、どうか矛を収めてくれ!
仲間にならぬなら、ここを通してくれるだけでもいい!私は、仲間を得ねばならんのだ!」
強大な侵入者は、魃姫を害しに来た訳ではなかった。
そいつ自身も何か事情を抱えていて、強い仲間を渇望していた。
魃姫は安堵し、初めて自分を求めてくれた相手に興味を持ち、話だけでも聞いてやろうかと迎え入れた。
強大な侵入者は、西の魔王の息子であると名乗った。
父が率いる魔王軍が性悪な美女吸血鬼に食い荒らされ、乗っ取られそうになっている。古くからの魔の有力者が誘惑されたり罠にはめられたりで次々と倒れ、美女吸血鬼配下のアンデッドばかり増えている。
それに抗おうとする父も多くの旧臣を失い、本人も誘惑を受けて精神を歪められ始めた。
そのため王子は父や側近に殺されぬよう単身で追い出され、魔王軍を立て直すための人材を探して東に旅しているという。
それを聞いて、魃姫は強い同情と怒りを覚えた。
「……何と、苦労なさいましたのう。
どこの世界でも、美に驕る者や惑って好き勝手する者は憎らしい!」
魔王子は、古くからの仲間を守ろうと必死になり、父から託された願いを果たそうとしていた。
その姿は魃姫の中で、何とか認められて皇族の助けになろうと学問を頑張っていた自分と重なった。
そして、力を貸そうと決意した。
人間でなくなっても砂漠に追放されても、まだ自分を求めてくれる者がいる。こんな化け物の力でも、振るって助けられる者がいる。
魃姫は、魔王子を東に連れてくことにし、自らの身の上を伝えて忠誠を誓った。
「ほほう、元は人間の姫君であったか。これは無下に扱えぬな。
それに……神を匿っておられると!その方も同志!?どうかお力をお貸しくだされ!」
「貸したいが、貸すだけの力がないのだ~」
魃姫から離れたくないタルウィも、連れて行くことにした。
東方は天に上らず地に根差した神が多く、人々は多くの神を信仰している。そういう所なら、タルウィが信仰を得られるかもしれない。
こうして、魃姫は魔王子の仲間になり、さらなる仲間を探して旅立った。
東の大帝国の領土に戻ると、魃姫は原初の夫婦神に助言を乞うた。
すると、原初の夫婦神は快く協力してくれた。
「あら~魃ちゃん、お話相手ができたのね。良かったわ。
そっちの子は……ふーん、なかなか強そうじゃない。それに……あら神!でも、千年くらい前の大侵攻じゃ見てない顔ね」
「フン、あんな女のわがまま戦には付き合ってないのだ~。
でも、そのせいでお姉もアタイも……!」
夫婦神は、魔王子とタルウィの正邪を見極めるために記憶をのぞいた。すると、妻の方が冷たく残忍な笑みを浮かべた。
「ふーん、あの雌犬、今そんな事してるんだ。調子に乗りまくってるわねぇ!
ああ、あの雌犬と写し身なら存分に叩いてちょうだい。もう二度と、私の愛しい伏帝様を誘惑しに来られないようにね!」
詳しい事情は分からないが、どうやら魔王子とタルウィのやろうとしていることはこの地の神にも利があるらしい。
夫婦神は、仲間の候補も教えてくれた。
「この大陸は今安定しているけど、ちょうど東の島国に良さそうなのがいるよ。あそこの女神が、今かなり手を焼かされててね。
強いのが二人暴れてるから、遠慮なく分からせて西に連れ去ってやってくれ」
世の中の災厄を取り除く手配をするのも、神の仕事である。
その善行の実行役として、王子と姫と落ちた女神は、勇者一行のように神に導かれて災厄討伐に赴いた。
東の島国は、絶望の争乱の中にあった。
西は暗黒大僧正キヨモリが支配し、天を暗雲で覆って自分の与える光のみで人々が生きるように仕向け、信仰と財を搾取していた。
中部は呪骨大将軍ヨシナカが暴れ回り、人であろうが魔であろうが殴りつけて略奪と闘争を繰り返していた。
人の政府は東北に逃れ、反撃のめども立たない。
元々この国を管理していた女神は、さじを投げて引きこもってしまった。
原因は、女神が力を与えた強力な聖騎士を、その兄の将軍が嫉妬から殺してしまったことだ。
キヨモリもヨシナカも、人間としてはその聖騎士が終わらせた。兄の将軍と側近たちは、これで終わったと思ったのだ。
だから獲物が尽きて猟犬が煮られるように……政権の脅威にならぬよう、人気と力のある聖騎士と仲間たちは排除されてしまった。
……が、キヨモリとヨシナカはアンデッドとなって再び暴れ始めた。
その時、彼らを討伐できる者は残っていなかった。
脅威に晒された人々は初め女神に祈ったが、女神が有効な手を打てないため次第に信仰を失っていった。
だが女神からすれば、きちんと力を与えた聖騎士を追い詰めて殺しておいて、今さら何だという感じである。
女神は人々に失望して引きこもり、女神に見捨てられた政府は保身と粛清ばかりで機能していない。
そんな絶望の島国に、魔の王子と姫は降り立った。
島国に来た三人は、まず引きこもりの女神アマテルヒメを引きずり出した。そして、力を貸すのと引き換えにタルウィへの信仰を認めさせた。
そのうえで、初めにキヨモリの都へと向かった。
キヨモリの支配領域は常に暗雲に覆われており、湿気によりカビや病気がはびこり、人々はキヨモリの与える光に頼って生きていた。
だが、雲や湿気を払うのは魃姫とタルウィの十八番である。
最初に魃姫が放った熱波砲により、一気に都と周辺が温かくなり、厚く垂れこめていた雲に穴が開いて陽光が降り注いだ。
それに驚いて出てきた人々に見せつけるように、アマテルヒメとタルウィが姿を現した。
「皆の者、待たせたな!
大陸から太陽神の仲間を連れて来たぞ。崇めよ、タルウィ大明神である!」
アマテルヒメに紹介され、天の陽光に手を掲げる着物姿のタルウィ。
その姿に、人々は一斉に平伏した。
崇めぬ訳がない、自分たちを救ってくれる新しい神が現れたのだ。アマテルヒメも、自分たちを見捨てたのではなく援軍を呼びに行ってくれていたのだ。
「うおおお!!タルウィ大明神!!アマテルヒメ様、万歳!!」
たちまち、二人の女神への信仰心が爆発的に盛り上がる。
太陽神であるアマテルヒメと、恐るべき日照り神タルウィ、そして大陸東方を大干ばつに陥れた魃姫。
この三人が力を束ねれば、キヨモリの操る暗雲など屁でもない。
あっという間に、空は雲一つない快晴になり、ドロドロにぬかるんでいた地面もカラッと乾いて固まった。
人々はもう、大歓喜のお祭り騒ぎである。
キヨモリは驚いて迎撃しに出てきたが、もう遅い。
配下を招集しようにも、周りにいるそこそこ強い魔物は、女神たちが人々の気を引いているうちに魔王子が軒並み倒してしまった。
「なっ……こ、この強さは!どこから来おった!?」
「大陸からじゃ。
貴様、民から召し上げた美女を骨女にして侍らせておるそうじゃな。わらわも同じにできるか、試してみるか?」
あっという間に、キヨモリは魃姫の獅子の脚で踏みつけられた。
「ぐっぬううぅ……生意気な美女を堕とすのは楽しいが、こんなドブス相手に……!
儂の権勢、こんなものと引き換えてたまるか!!」
なおも悪態をつくキヨモリに、魔王子は持ち掛けた。
「ほう、美女をしつけるのが好きか。
では、こんなちっぽけな国よりずっと手ごわい美女が西にいると言ったら?奴に言うことを聞かせられるなら、この女より上の位をやろうぞ」
その言葉に、キヨモリの食指は少なからず動いた。ちょうど、弱い女ばかりを相手にして退屈していたところだ。
それに、逆らえば死ぬこの状況で選択肢などない。生きることを許されるなら、新しい世界でも成り上がってやる。
キヨモリは、生き残っていた配下と共に魔王子の軍門に下った。
ヨシナカの方は、もっと簡単だった。
武力で白黒つけるのをよしとするヨシナカは、魔王子が一騎打ちを挑むと武者震いして打ちかかって来た。
そして、正々堂々と敗北して臣従を誓った。
魔王子は、ヨシナカにもこう持ち掛けて闘志を煽った。
「そなたの武、見事である。もっと鍛え上げれば、砕けぬものはなくなるであろう。
だが、西には軟弱の極みながら私でも砕けぬ卑劣な輩が存在する。武を誇りとするなら、いずれ奴を打ち砕いて私に見せてくれ!」
課せられた試練と寄せられた期待に、ヨシナカは胸が躍った。
元々、自分の武を世の中に讃えてほしくて暴れていたのだ。
自分より強い者に認められ、さらなる高みに昇るための目標までもらっては、もう燃え上がるしかない。
ヨシナカの配下も強さが全ての奴らが集まっていたため、魔王子の武勇に惚れてすんなり軍門に下った。
ついでに、ヨシナカから人々を救うフリをしてヨシナカと手を組み、マッチポンプ式に暴れて人々を困らせながら信仰を搾取していた、アマテルヒメの弟も成敗した。
弟神スサオは酒好きに付け込まれ、毒を権能とするタルウィ謹製の毒酒を飲まされ、激しい嘔吐下痢のうえ体外に出た途端に溶岩に変わる汚物に炙られてのたうち回った。
「うごぉっ許し……許じで姉ちゃん!
これがらぁ……おぶっ熱いいぃ!!力、合わせるからぁ!!」
必死で許しを乞うスサオに、タルウィは怒りを込めて言い放った。
「貴様、姉弟のありがたみが分からんか?
失って分からされる前に孝行しないと、アタイが許さんのだ!!」
体験したが故の重さと悲しみの詰まった叱責に、スサオははっとして姉との仲直りを誓った。
かくして、魔王子一行は極東の島国を救って仲間を手に入れた。
西に戻った魔王子は、東の砂漠平定と強者を三人連れて帰った功により、晴れて魔王の位についた。
父の旧魔王は息子の頼もしい姿を見て、せめて息子の邪魔をせぬようにと、弱った体で人間の勇者に挑み散っていった。
結果、魔王軍は美王による乗っ取りを免れた。
連れてこられた東方の強者三人は、そのまま四天王に収まった。
美王は、キヨモリとヨシナカも誘惑しようとしたが、うまくいかなかった。
民族と文化による美的感覚の違いが大きいうえレベル差も大きく、キヨモリは女に従う性ではなく、ヨシナカは脳筋過ぎて美王に価値を見出さなかった。
魃姫は言わずもがな、表面上大人しいが内面は美王絶対殺すウーマンである。
この布陣で、魔王は古くからの魔族の尊厳を守り続けている。
この体制を築く力になってくれた魃姫とタルウィには、いくら感謝しても感謝しきれなかった。
一方のタルウィも、この件でロッキードの知らぬ極東で信徒を得た。
極東の島国では、元からいた神を祀る社に、『垂井大明神』が加わった。
極東の人々は、自分たちを救ってくれた神としてタルウィを崇め信仰心を捧げ続けてくれる。
距離があまりにも遠いせいで届くまでに減衰するうえ、タルウィはあれから極東に何もしていないが、信仰心はわずかずつ溜まっていく。
そのうえ、時々アマテルヒメとスサオが感謝と信仰心を送ってくれる。同じ神からの信仰心は、格別だ。
こうして、タルウィは聖騎士を一人作れるほどの力を取り戻した。
「ここから……ここからなのだ!」
タルウィは、夕日に焼ける西の空を眺めて呟く。
「見ておれよロッキード、貴様の栄華も長くは続かん!
アタイからお姉を奪った報い、地上でたくさんの女の子を陥れて嘘で塗り固めた報い、残らず貴様に降りかかるのだ~。
どんなに泣いて後悔したって、もう遅いのだ~!」
魔王が、魃姫が、ユリエルが、砂漠から戻れない自分に希望をくれる。
ロドリコに力を貸してユリエルを助けていれば、きっと教会が弱ってこの状況に風穴が開くはずだ。
その日はきっと遠くないと、タルウィは真冬の夕焼けに亡き姉の姿を重ねた。
お察しの通り、日本です。
時は源平合戦の後、聖騎士ヨシツネが兄ヨリトモに妬まれて殺された後、キヨモリとヨシナカがアンデッドになって源平延長戦で国がめちゃくちゃになってしまったよ。
国を救った英雄を殺したら、後で国が滅んでざまぁななろう系のパターンです。
でも仲間がほしい魔王子と魃姫とタルウィが、暴れていた二人を力で分からせて西に連れ去ってくれました。良かったね()
日本は水害が多く湿気に満ちた国なので、熱と渇きの権能は救いと見られがちです。
ゆえに、ここではタルウィは救いの神として信仰を得られました。適材適所。
次回から、また本編に戻ります。