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セッティング・サン

再誕歴7701年マーチ31日。


ドラゴヴァニア首都龍の墓場(ドラゴン・グレイブ)

超古代に存在していた龍達の骨が集まり巨大な巣穴を形成しそこを城と城下町にした街である。

下層部と上層部に別れており、 下層部が城下町、 上層部が城の役目をはたしている。

そして龍の墓場(ドラゴン・グレイブ)最上層部の玉座の間にて

ドラゴヴァニア国王レックスはこの上なく混乱していた。


「今何と言った?」

「貴族派閥※1のロックがワイバーンを連れてベネルクスに向かったと言う事です」



※1:ドラゴヴァニア四大派閥の一つ。

貴族の自主性を重視し王の過干渉を嫌う。



王党派閥※2の長スウォードが報告する。



※2:ドラゴヴァニア四大派閥の一つ。

王を頂点とした派閥と言う名目だが実体は王の名で利権を得ようとしている。



「ちょっと良いかな?

ロック君は貴族派閥のフラワー君が次期ドラゴヴァニア五連星に推しているだけで

別に貴族派閥とは関係無いよ、 そうだよねフラワー君」

「えぇ、 その通りですわ、 まさかこんな勝手な事をするなんて・・・信じられません」


貴族派閥の長ディスクとフラワーが反論する。


「知らんと言うのは無責任じゃねぇのかい? 龍としてのプライドは何処に置いた?

人の社会性とやらに毒され過ぎじゃねぇのかい?」


回帰派閥※3の長アースが煽る。



※3:ドラゴヴァニア四大派閥の一つ。

ドラゴニュートと言う種が人間の様な社会を形成するのはナンセンスとして

物理的な力のみを信奉する派閥、 政治力は低いがドラゴヴァニア五連星を多く輩出しており

政治的発言権は他派閥とは同程度。



「・・・・・あの、 とりあえずヨーロッパ連合に申し開きはした方が

良いんじゃないですか?」


無派閥※4 のシャドーが呟く。



※4:ドラゴヴァニア四大派閥の一つ。

と言うよりも他派閥に入っていない者全員がこれに類する。

日和見主義や中立者を気取る者、 中には誰からも相手にされない者等多数。

ドラゴヴァニアの政治ではこの派閥の者を如何に自派閥に取り込むかで決まると言っても良い。



「申し開きだと!? 龍が人にか!?」

「アース君、 そういう龍のノリを続けるのは止めたまえよ

龍に完全に変化出来るドラゴニュートはそんなに多くないんだから

国民達の中には戦闘能力が無い者も居るんだし、 ここは申し開きをしようよ」

「そ、 そうだな!! ディスクの言う通りだ!! 直ぐに」

「失礼します!! 通信モノリスから通信が入っています!!」

「・・・・・」


通信モノリスに手を乗せるレックス。

彼の意識は空を超え、 雲の上を行き、 星の海に入った。


>>ドラゴヴァニア国王レックス さんが入室しました


通信モノリスの通信ルームに入った彼は驚愕に目を見開いた。

そこに待ち受けていたのはヨーロッパ連合に所属する国の各国首脳達だった。


「遅かったですねレックスさん、 今回の件は我がヨーロッパ連合も看過できませんよぉ」


ヨーロッパ連合議長、 リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーがねちっこい口調で言う。


「い、 いや確かにベネルクス王国に我が国の者が勝手に侵入したのは認めるが

こんな大人数で来なくてもいいでは無いか!!」

「何を言うか!! 貴国のロックと言うドラゴニュートは

ドラゴニック・スカイラインを装って侵入して来た!!

これはドラゴニック・スカイラインの航空網があるヨーロッパ連合に対して

著しく信用を損なう行為だ!!」


ベネルクス95世が断言する。


「確かにそうですねぇ、 ドラゴニック・スカイラインは信用が取り戻せるようになるまで

全面的に運休とさせて貰います、 宜しいですねぇ?」

「ちょ、 ちょっと待て!! ドラゴニック・スカイラインは我が国の生命線とも言って良い!!

空輸して食料を調達しなければ我が国の国民達は飢え死にする!!

断固として抗議させて貰う!!」

「何で自国の安全を棚上げして迄、 ドラゴヴァニアの国民を優先しなければならない!!」

「その通り!! ドラゴニュートが攻め入る可能性がある!!

ザウルスの暴挙※5 を忘れな!!」



※5:再誕歴4441年に起こった事件。

当時のドラゴニュート国家【ドラゴン神聖帝国】皇帝ザウルスと

ポーランド王国の姫ミーシャの人間とドラゴニュートの緊張緩和(デタント)が狙いの

政略結婚に置いてミーシャへの嫌がらせとして

ザウルスはミーシャの従者を殺害した事に端を発する事件。

ミーシャは当然の如くポーランドに帰国し事の顛末を話し

ポーランドは当然抗議した。

ザウルスは謝罪と言う名目でポーランドに向かうも謝罪の席で

ポーランド国王に襲い掛かった、 幸いにもその場でザウルスは取り押さえられたが

ザウルスの親衛隊との激戦の末にポーランド王族は逃げ出す事に成功。

ザウルスはポーランド王国の属国化を宣言したが

当然ならばこの義を欠いた行いは人間にもドラゴニュートにも受け入れられる事無く

周辺国は連合軍を結成し攻め込みザウルスは部下に反逆され死亡した。

その後ドラゴン神聖帝国は内乱の末に現在のドラゴヴァニアになったとされる。



「ちょっと待て!! それは終わった話だろう!! 賠償も謝罪も済んだ事を今更持ち出すな!!」

「いや!! ドラゴニュートは危険だ!! そして王族ですらコントロール出来ていない!!」

「そうだそうだ!! ドラゴヴァニアを解体するべきだ!!」


首脳達の発言がエスカレートし始める。

唐突に周囲が静まり返る。


「えー、 あまりに不穏当な発言まで飛び出したので管理者権限で一旦静かにさせましたぁ

レックスさん、 今回の件はヨーロッパ連合に対してドラゴヴァニアの信頼は地に堕ちました

しかしながらこの件を打開する為にもまずはロックと言うドラゴニュートを確保して

ヨーロッパ連合裁判所に連れて来て下さい、 処罰や謝罪や賠償はその後でじっくり話しましょう

まずはアンコントロールな状態のロックを確保ですね」


リヒャルトが淡々と指示を出す、


「わ、 分かった、 直ぐに対応しよう」

「よろしくお願いしますね、 それでは解散」


>>ドラゴヴァニア国王レックス さんが退室しました


「・・・そう言う訳だ!!」


モノリスから手を離したレックスが叫んだ。


「いや、 モノリスの会話はこちらでは分からないので何の事やらさっぱり・・・」

「ロックだ!! ロックを捕まえろ!! 奴を捕えないとドラゴヴァニアが不味い!!

各派閥が擁立しているドラゴヴァニア五連星候補を全て出撃させろ!!

ロックを捕えた功績が強い順から5名が次の五連星だ!!」


わっ!! と歓声が挙がる。

ドラゴヴァニア五連星はドラゴヴァニア最強の5人の戦士と言う事になっている。

その5人に選ばれるとなると政治的な強権を振えるのは想像に固くない。

もしも自分が擁立する者がドラゴヴァニア五連星に選ばれるのならば

自派閥の権力も増大するだろう、 ならばこれは大チャンスである!!


「なんだかおっかない事になりそうだなぁ・・・」


シャドーは不安な声を出したが歓声にかき消された。

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