ミーニングレス・トーク
「セルデン侯爵家は武門の家柄、 つまり強ければ認知して貰える!!」
「そんな訳無いだろ、 強さ云々じゃなくて父上に喧嘩売った時点でアウトだ」
「喧嘩売った事については何度も謝った、 ならば別のアプローチとして強くなった」
「論点がずれてる、 そもそも社会の落伍者が鍛えた所でたかが知れる」
「身分で人を差別するの?」
「鍛えると言う点において、 私には鍛える時間も鍛える用具も
更に言うならば食事にまで気を使える
しかしながら社会の落伍者のお前に鍛える時間が有るとは思えない
残酷な話、 私は男でお前は女、 男女の筋肉量の差は覆らない」
くっく、 とジェーンが笑う。
「ジョン、 魔法ってご存じ?」
「魔法ねぇ・・・古代のウィルパワー運用法だろ?
今じゃあ魔法を習わなくても魔法みたいな事出来るじゃないか
ウィルパワーの究極系で世界を作るとかって出来るとか聞いた事があるぞ?」
「確かに時代遅れと揶揄されている魔法ですが体系されており習得は簡単です
そこから発展も可能、 セルデン侯爵領の示現流と似ていませんか?」
「全然違うだろ? 何で剣術と魔法が関係あると思うんだ?」
「いや、 示現流は思い切り相手に剣を叩き込むじゃないですか」
「”斬り込んで”いるな」
「いずれにせよ、 全力で叩き込むから派生するじゃないですか
魔法も基本から派生するような形となっています」
「・・・・・つまり?」
「いや、 だから魔法と示現流は似てると思います」
「繰り返しになるが剣術と魔法は違うからな
お前が言っている様に魔法=剣術とはならんから」
「ですから魔法と示現流は似てるというだけで
=では無く≒※1 ですから」
※1:ニアリーイコール、 ほぼ等しいを意味する。
「ほぼ等しい? 何処が? 剣術と魔法が何でほぼ等しい?
剣と魔法は鯛とヘアピン位差が有るぞ?」
「だから!! どちらも基本から派生すると言う形で似ているでしょうって!!」
「だから剣と魔法は別物だと言っているだろう
じゃあ聞くがお前は剣の達人か?」
「魔法の達人です!!」
「だろう? 剣と魔法は別物なんだよ」
「あーもう!! 兎も角私は強くなる為に魔法を習得したの!!」
「最初からそう言え、 時間を無駄に浪費するな」
「貴方が一々別物云々言って来るからでしょうが!!」
「お前が同じとかグダグダ言うからだろう、 で?」
「セルデン侯爵の子として認知して貰おうと思って来たけど
強さを証明する必要が有るから、 貴方に決闘を申し込みます」
思い切りジョンに殴られるジェーン。
ジェーンは吹き飛ばされる。
倒れたジェーンを蹴り飛ばし続けるジョン。
「や、 やめ」
「おやおや、 騒々しいねぇ」
ジンが様子を見に来た。
「お爺様助けて!!」
「どうしたんだい?」
「この女が私に決闘を申し込んだのでボコボコにしています」
「何で決闘を申し込んだんだい?」
「父上の子として認められるために強さを証明する為とか」
「ふーん、 まぁボコボコにされる時点で強くないね、 でもそこまでにしなさい」
ジョンはジェーンへの攻撃を止めた。
そして這いつくばりながらジンの元に向かう。
「お爺様・・・!! この男は決闘を拒否した・・・!!
私には詳しい法律は分かりませんが・・・これは決闘法違反では!?」
「強さを証明するのが決闘の目的ならば君の目的は達成された
君はジョンよりも弱いじゃないか」
「卑怯じゃないですか・・・!! いきなり・・・」
「そもそも我が家と無関係の君が
いきなりセルデン家の子供になるって言うのは家の乗っ取りの宣言だろう?
不敬罪及び国家動乱にもなるのかな?」
「家なんか関係無い!! 父に子として認めて貰いたい!! それだけ!!」
ふるふると立ち上がるジェーン。
「・・・・・」
ジンはハンドベルを鳴らして執事を呼んだ。
「この娘を片付けなさい、 邪魔だ」
「ちょ、 ちょっと!?」
執事に引きずられてジェーンは外に放り出されたのだった。
「お爺様、 少し甘いのでは? てっきり手討ち※2 にするのかと」
※2:一定の身分の有る者が自らの手で他人を斬り殺す事。
手打ちうどんと手打ちそばの語源にもなっている。
うどん屋、 そば屋は立地の良さから商売の喰い合いになり
その為、 うどんそば戦争等と呼ばれ正に殺し合いと言っても良い。
「ワシも甘くなったかな、 家なんて関係無いって言葉にときめいたよ」
「え・・・・・」
絶句するジョン。
「何故引く?」
「孫程の年齢が離れている娘にときめく?」
「・・・そこまで年が離れていたか、 まぁ良い
そこも語ってやろう、 今日は飲み明かそう、 酒は大丈夫だな?」
「え、 えぇ・・・まぁ・・・」
一方セルデン侯爵のブリュッセルハウスの裏口ではジェーンが執事に放り投げられた。
「ぐは・・・っ・・・」
ジンの前では虚勢を張ったがかなりボロボロであった。
「このままでは・・・このままでは終わらせない・・・
まずは師匠の元へ・・・」
痛む体を引き摺ってジェーンは歩き始めた。




