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ブラック・ティー・ボウル

再誕歴7701年ジュニアリー9日。


ベルモンド伯爵領のベルモンド伯爵邸応接室。

そこにはベルモンドとハートレスが居た。


「ベルモンド伯爵、 新年あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとう、 最近は新年のあいさつも無かったみたいだけど大丈夫かい?」

「聊か忙しくて・・・」

「あまり良い噂を聞かないから心配しているよ

いざという時は門閥貴族を辞めると言うのも無くはないんじゃないか?」

「いえ!! 親から継いだ家です、 貶める訳にはいきません!!」

「そうか・・・君が人払いをして欲しいから人は出払っている

一体何の用だい?」


ベルモンドはハートレスに尋ねた、 彼の父親とは戦友であり信頼のおける人物だった。

受け継いだハートレス家を準公爵まで持ち上げた偉大なる男だった。

その男の息子なのでベルモンドは丁重に応対した。

恐らく借金の申し込みだろうと金を準備しているが自分からは言わずにいた。


「実は買って頂きたい物がありまして・・・」

「買って頂きたい物? 一体何ですか?」

「こちらです」


ハートレスは鞄から箱を出した。


「それは!?」


ベルモンドは驚愕した、 その箱に見覚えがある。


「えぇ、 これこそ我が領に伝わる国宝」


箱を開いて中身を取り出そうとするハートレス。


「手袋を着けろ!!」

「え、 あ、 す、 すみません」


手袋を着けて改めて中身を取り出したハートレス。


「おぉ・・・”サウザントマスター”利休が所有していた黒楽茶碗

秘蔵の秘とされていた国宝を見られるとは、 感激だ」


涙を流すベルモンド。


「泣かなくても良いじゃないですか、 それよりもこれを売りたいのですが」

「売る!? 国宝を!? 正気か!?」

「え、 えぇ・・・お金が無いので・・・」

「国宝は金では代えられない物だ!! まさに国の宝!!

それを売ろうとするなんて事は許されない事だ!! 金が必要ならば私が貸そうじゃないか!!」

「・・・・・いえ、 お金を借りる事は有ってはなりません

今回の話は忘れて下さい、 それでは」


ハートレスは黒楽茶碗を持って帰って行った。




再誕歴7701年フェブラリー28日。


ベルモンド伯爵領のベルモンド伯爵邸応接室。

そこにはベルモンドとベルモンドが贔屓にしている茶器商人が居た。


「この度はお時間を取って頂きありがとうございます!!」

「そろそろ参勤交代故に時間が無い、 にも拘わらず私に見せたい商品が有ると言う事だが何か?」

「はは!! 我が人生最高の茶器を入手いたしましたのでベルモンド伯爵に是非とも

お見せしたく持って参りました!!」

「最高、 か、 値段がか?」

「お値段も最高額ですがベルモンド伯爵の手元の茶器の何よりも素晴らしい物を入手出来たと

私は自負しております」

「大きく出たな、 君は大口を叩かない人間だと思っていたが・・・

まぁ良い、 先も言ったが時間が無い、 早急に見せてくれ」

「はい!!」


そう言うと茶器商人は手袋を着けて箱を取り出した。


「!?」


ベルモンドは驚愕した。

茶器商人は箱から取り出した物は・・・


「”サウザントマスター”利休が所有していた黒楽茶碗です」

「これはハートレス家に伝わる国宝では無いか!! 何故ココにある!?」

「ハートレス男爵から買い取りました、 こちら売買証明書※1 です」



※1:売買した事を記す証明書である。

互いに物を買った、 売ったと言う証明書になる。



「見せろ!!」


ベルモンドは売買証明書を引ったくって見る。


「実印もサインも有る、 本物、 か?」

「えぇ、 勿論、 私が鑑定しましたし

他の鑑定士にも鑑定して貰っています

代金の振込証明書も持っていますよ」

「・・・・・100万ユーロ(日本円で1億円)で買ったと? 黒楽茶碗を?」

「えぇ、 私も国宝を100万ユーロで買うのは安いと思いましたが

私も資金が無いので買い渋ったら100万ユーロで良いと」

「ハートレス・・・そこまで目が曇ったか・・・」

「兎にも角にも私が買ったこの黒楽茶碗、 500万ユーロで如何でしょうか?」

「300」

「320でお願いします」

「何の端数だ?」

「ハートレス領は治安が悪くて・・・護衛とかでお金がかかってしまい・・・」

「・・・良いだろう、 全額支払おう」



再誕歴7701年マーチ10日。



「と、 こういう事です

色々調べた結果、 王室に許可無く売却したと言う事で記載しました」


会議室にて黒楽茶碗を出して事情を説明したベルモンド。


「ハートレス、 貴様ッ!! とことん堕ちた様だな!!」


ハウバリンが激怒する。


「な、 何が悪いんですか!! 僕の領はお金が無いんだから仕方ないじゃないか!!」

「金に困ったからと王から賜った国宝を売るヴァカが何処に居る!!

貴様の一存で国宝を売って国外流出したらどう責任取るつもりだ!!」

「自分の物を自分の好きにして何が悪い!!」

「侯爵閣下、 こいつの首落としましょう、 これはもう駄目だ

我が門閥の恥でしかない」


セルデンが冷徹に宣言する。


「皆さん一旦落ち着きましょう」


デトネーターが制止する。


「何故止める?」

「確かにハートレスは死ぬべきでしょうがそれでも手続きはするべきでしょう」

「この恥を世間に晒せと?」

「陛下の御前ですよ、 陛下に知られる以上の恥が有ると?」

「・・・・・」

「陛下!! 助けて下さい!! 今なら貴女と結婚しても良いですから!!」

「は?」

「何を言ってんだ?」


突然の言葉に困惑する一同。


「僕と貴女は元婚約者!! ロザリオが居なくなったから今ならば結婚しても良いですから助けて!!」

「・・・・・ハートレス男爵、 何故私が貴方と結婚したがっていると?」


ベネルクス95世が心底冷たい目でハートレスに尋ねる。


「だ、 だって僕が婚約解消したら準公爵から降格させたじゃないですか!!

貴女が僕の事が好きで婚約解消した腹いせに「私の記憶が確かならば貴方が摂政を拒否から

降格になって、 婚約解消はその後だったと記憶してますが?」

「私もそのように記憶しています」

「そ、 それでも貴方は僕を愛している!!」

「貴方と会ったのは本当に数える程ですよ? 何故貴方に好意を持つと?」

「・・・・・」


ハートレスが冷や汗を流し始める。


「この資料の内容と今のふざけた発言、 斬首が妥当ですが

貴方の為に処刑人を動かすのも嫌なのでお家撮り潰しとさせて頂きます」

「ま、 待って!! 待って下さい!!」

「その平民には牢屋に入って貰って下さい、 詳しい事は後でやります」


ベネルクス95世が手を振るとセルデンとセイバーダーが会議室の外の近衛にハートレスを引き渡した。


「いやだあああああああああああああああああああああああああ!!!」


ハートレスの悲鳴が響いた。

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