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クイーンズ・ウィッシュ

再誕歴7701年フェブラリー5日。


N5の騒乱は一応の落ち着きを見せた。

赤い竜の大暴れによる激震の被害で町は甚大なダメージを受けたが

復興が始まり一応の落ち着きは取り戻し始めた。

しかしながら問題や後片付けは山積みだった。



ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセルの

ブリュッセル王宮の謁見の間に今回の件の関係者が集められた。

フェザーとサン、 ツゴモリとクラブ。

小鬼の一撃(コブリン・スマッシュ)のマスク・ザ・コオニと雇い主デンエン

勝彼(カツカレー)のデミグラス。

決闘代行業【ルクセンブルク・インフェルノ・フェニックス】

社内決闘者序列1位AAA級決闘者ポイニクス。

ドラゴヴァニア五連星のレイク。

勇者マモルとマーン。

そしてN5領主のネーデル公爵門閥マーナガルム男爵と彼の付き人ハティ。

彼等の話を順番にベネルクス95世が聞いていた。


「一旦話を整理しましょう、 皆さんは各々目的が有って

マーナガルム男爵が治めるN5にやって来ていて

N5常駐騎士団が匿っていた赤い竜が暴れて酷い目に遭った、 と」

「概ねその通りです」


ベネルクス95世の問いにこの場の当事者で一番身分が高いサンが代表して受け答えをする。


「マーナガルム男爵、 この件について何か釈明が有りますか?」

「有りません」


マーナガルム男爵はまだ若く野望に満ちた表情で

黒い狼と揶揄される独特な編み込みが付いた髪と髭を揺らしながら言い切った。


「どういう事でしょうか?」

「此度の一件は全てN5常駐騎士団に全てを丸投げしていた私の責任です

まさか不正が行われ赤い竜まで居たとは私は全く知りませんでした

その挙句がこの大惨事、 謝罪では最早何も対処出来ないと判断しました

この事態の収拾は謝罪では無く行動で示したいと思います」

「テメェ!! そんな言い分通用すると思っているのか!!

あの街で暮らして来た私達がどれだけ苦しんだ事か!!

牢屋にぶち込まれろ!!」


デミグラスがマーナガルムの言葉に噛みついた。


「デミグラス嬢、 お気持ちは分かりますが落ち着いて下さい

マーナガルム男爵には法的には罪は認められないのです」

「何でですか女王様!!」

「マーナガルム男爵の領地は多く視察は代官※1 任せになってしまいます

代官が虚偽報告をした場合、 代官の主君はそれを信じて

実態は非合法な事態になっているというケースには主君は罪に問えません

ハートレス判例※2 と言う前例があります」



※1:主君の代わりとして事にあたる者。

爵位を持つ貴族の代わりとして派遣される事が多い。

大体は貴族に仕える騎士が成る事が多いが

高位貴族の場合は爵位を持つ貴族の場合もある。


※2:ハウバリン公爵門閥ハートレス男爵家(当時は準侯爵家)の代官が

住民達に重税を課して激怒した住民達の反乱を

スペイン帝国のスパイによる先導と偽りハウバリン公爵門閥連合軍に攻め込ませ

住民達の虐殺を行わせた事件に対する責任問題に関する判例。

この件では代官が虚偽説明を行い、 それを信じたハートレスが

ハウバリン公爵に通達してハウバリン公爵が軍を動かしたので

全責任は最初に嘘を吐いた代官だとして処刑が行われた。

トカゲの尻尾切りと揶揄される判決だったが

この判決で代官以外にも責任が発生すると言う判断が下された場合

代官を買収して敵対する貴族の名誉を傷つけると言う事も可能になってしまうと判断され

この様な判決となった。

尚、 代官の上司の貴族には法的な責任に問えないだけで

後々の問題解決などの不手際の後始末は自己責任になっている。



「っ!! じゃあ私達は泣き寝入りしろと!?」

「誠に申し訳無い・・・ハティ」

「はい」


ハティがデミグラスに小切手※3 を渡す。



※3:支払方法の一種、 小切手を銀行に持って行くと

小切手支払いをした消費者の口座から現金が引き落とされる。

貴族が多額の現金を持ち歩くことは治安上危険であり小切手のほうが安全なので

小切手支払いも多い。



「金で解決かよ!! ・・・・・」


小切手をガン見するデミグラス。


「言うまでもないですがN5の復興と酷い目に遭った方々の社会復帰の為に

その額とは別に復興資金を予算立てるつもりです」

「・・・・・」


小切手を仕舞うデミグラス。


「あ、 俺も小切手下さい」

「あたしもー」


マスク・ザ・コオニとポイニクスが不敬罪一歩手前(おねだり)を行う。


「・・・・・ハティ」

「はい」


マスク・ザ・コオニとポイニクスに小切手を渡すハティ。


「おぉ、 結構な額だ」

「もう少しくれても良いのでは?」

小鬼の一撃(コブリン・スマッシュ)さんは騎士団を壊滅させましたので色を付けました」

「ふん・・・」


軽く溜息を吐くポイニクス。


「後に皆さんに国庫からも小切手を出します」


ベネルクス95世の言葉に驚く一同。


「何故?」

「赤い竜は人々にパニックを起こしかねないので言い方は悪いですが・・・」

「口止め料ですね」

「その通りです」


流石にパニックを起こしたく無かったので皆黙った。


「そして言い難いのですが今回の件で赤い竜の事は公表されませんので

公式にフェザー、 殿に表彰を行う事が出来ません」

「構いませんよ陛下」


事も無げに言うフェザー。


「・・・・・本当にすみません」

「大丈夫ですよ」

「そう言って貰えると助かります」

「さて、 次にレイク殿、 其方の身の振り方についてお話があります」

「身の振り方? 如何言う意味ですかな?」


レイクがぴくりと眉を顰める。


「実はドラゴヴァニアから貴方を国外追放とする旨の書簡が届いております

今頃新聞に発行されているかと」

「な・・・!? ど、 どういう事ですか!?」

「スターダストの遺体の紛失と敗北の責任を取らせる形だそうです

つきまして・・・」


レイクは去ろうとした。


「何方へ?」

「ドラゴヴァニアの大使館に行って来ます!!」

「どうぞ」


レイクも立ち去った。


「次に勇者の御二方、 今回回収した聖剣二本はEHUCで管理をお願いします」

「了解しました」


マーンは恭しく聖剣を受取った。


「それではベルモンド伯爵令嬢方とツゴモリ・コングロマリットの方は残って

後は退出して下さい、 ポイニクス殿とマスク・ザ・コオニ殿は後でまた来て下さい」


サンとフェザー、 ツゴモリとクラブが残って後は去って行った。


「フェザー、 本当にごめんなさい」


ベネルクス95世が頭を下げる。


「へ、 陛下!?」

「頭を上げて下さい、 貴女は女王なのですからそんなに簡単に頭を下げないで下さい」


サンが驚き、 フェザーは事も無げにしている。


「ど、 どういう事!? フェザー、 貴方は女王陛下と知り合いだったの!?」

「えぇ、 幼馴染です」

「!!!?」


心底驚いたサン。


「驚く事は有りません、 元々私とヴォイドとは婚約者だったのです」

「ヴォイド・・・フェザーが世話になった人の息子ですね?」

「その通り、 私は本来王位継承順が低かったので女王になれる道理は無かったのですが

継承権が高い王族が様々な事情で継承が出来なかったので私が継承する事になりました

私は王家がシンゲツとの縁を結ぶ為にヴォイドとの婚約を結んだのですが

私が女王になる事が決まったのでもっと国家的な視点が必要なので婚約を解消したのです」

「そうだったのですか・・・」

「モーントとか言うギャング共の支部はレイク殿の活躍で潰されましたが

ヴォイドが見つかっていないのは残念です、 こちらでも秘密裡に調査しておきます」

「ありがとうございます」


頭を下げるフェザー。


「・・・・・フェザー、 私の近衛になるつもりは有りませんか?」

「前にもお断りした筈です」

「そうでしたね・・・」


悲しい顔をするベネルクス95世だった。

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