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ウォーター・ヴァーサス・マザーズ・ラブ

ネルネルタワーの地下通路を通って商品と出品者を逃がすモーント・ズンディカーズ。

護衛が大勢居て最後尾にはR・To・Youが歩いていた。


「ちぃー・・・個体空間(パーソナルスペース)使ったから疲れてるのに・・・

もう移動かよ・・・」

「まぁまぁ大丈夫でしょう、 貴方にはアルコール操作の能力があるじゃないですか」


部下が宥める。


「それも万能とは言えねぇ、 酔拳※1 が使えるけども

まぁまぁ疲れてるんだよなぁ・・・」



※1:中国武術の一種。

まるで酒に酔っ払ったかのような独特な動作が特徴的な拳種に冠せられた総称である。

中国の重要機密の為か情報が秘匿されており、 実際に酒を呑んだ方が強くなる説。

酒を呑まなくても良い説、 寧ろ酒でトリップする説など、 様々な説が入り混じっている。



「まぁ一応、 入口には見張りが居ますから何か有ったら知らせると思いますよ」

「そうだな・・・結構揺れているが大丈夫か?」

「この通路、 罅一つ入っていませんよ、 頑丈ですね」

「だな・・・?」


R・To・Youは違和感を感じた。


「・・・・・」

「如何しました?」

「いや、 何だか湿っぽい気が・・・」


異音が響く、 これは・・・


「水!?」

「なっ!?」


水流である、 水が押し寄せて来ている!!


「く・・・!!」


走って逃げるR・To・You。

彼はアルコールを操る能力を持っている。

その為、 対人戦にはとことん強いが今回の様に無生物が突っ込んで来る事態に陥った場合。

逃げる位しか対応が出来ないのだ!!


「ぐは!?」

「!?」


部下の一人が水の球に吹き飛ばされる。

後ろの水流から飛ばしてきているのか!?


「っ!!」


よく見ると水流の中に誰かいる!!

レイクだ!! 即座に全ての酒瓶を開栓しアルコールを水流に叩き込む!!

がっ、 駄目!! どんなに高いアルコール度数でも圧倒的な水量の前に薄まってしまい

まるで効力を発揮しない!! まさに杯水車薪(はいすいしゃしん)※2!!



※2:努力や援助がごくわずかでなんの役にも立たないこと。

火車と呼ばれる燃えた車の妖怪に対して水一杯で挑み敗北したという故事成語から来ている。

逆に水一杯で倒すと宣言して火車を油断させ、 山の様に大きい杯で倒したという

山水鎮火(さんすいちんか)と言う諺もある。



「くっ・・・優生侵(ドミナント・ドミネー)・・・がはぁ!!」


個体空間(パーソナルスペース)が展開しようとしたが

体に無理がたたり血を吐くR・To・You。


「連発は無理か・・・おのれぇ!!」


もしもカケルに対して最初から油断せずに戦っていれば

個体空間(パーソナルスペース)はまだ手札に残っていた・・・

その一念がR・To・Youの胸中に去来したのだった。

そして水流に飲み込まれ粉砕されたR・To・Youだった。

レイクは水流と共に前進したのだった。






一方その頃、 先に進んでいた高額出品者と護衛達は

後ろで起こっている事はつゆ知らず高額商品と共に進んでいた。

だが水流が襲って来たのだった!!


「うお!? 何か来てるぞ!?」

「!?」


ヴォイドの叫び声を聞いて後ろを振り返るドォルオタ。

既に水が迫って来ている!!


「・・・・・」


ドォルオタは頭蓋骨を優しく地面に置いて

優雅にカーテシーを行った。

水流の流れが急速に収まり停止した。


「!?」


レイクは驚愕した。

水を動かそうとしても微動だにしない。

何が起きている?


「|交渉の席は準備してある《テーブル・マナー》

圧倒的な礼儀作法をウィルパワーで強化して暴力的な運動エネルギーをゼロにする

これで貴女は攻撃は出来ません、 こちらも攻撃出来ませんが」

「文脈がおかしい、 何だ圧倒的な礼儀作法って」


レイクがツッコむ。


「まぁ、 昔取った杵柄と言う奴ですね

貴女の目的を言いなさい」

「ドラゴヴァニア五連星スターダストの遺体」

「っ!? こ、 これは渡さ「お前の物じゃない!!!!!」


ヴォイドが叫びを打ち消す様にレイクが叫ぶ。

水飛沫が迸る。


「では私達を見逃して貰いましょうか」

「お、 おい!!」

「スターダストの遺体を盗んだ盗人を見逃せと!?」


青筋を立てて怒るレイク。


「・・・・・」


ドォルオタは頭蓋骨を拾い上げる。


「駄目ならばここでやり合いますか?

私とて人の親、 我が子に怪我はさせたくないのですがね」

「我が子?」

「えぇ、 如何します? 子を守る親よりも強い生き物なんてこの世には居ません※3 が戦って見ます?」



※3:常識。



「・・・・・スターダストの遺体を寄越せ」

「えぇ」

「ちょ、 ちょっと待」


ドォルオタがヴォイドの額に指を当てて昏倒させた。

ウィルパワーの操作に長けていなければ無理な芸当だ!!


「良いの? 勝手に渡して」

「我が子の無事には変えられない」

「我が子って・・・息子なの?

貴女歳が若いから年齢が合わないと思うけど・・・養子?」

「まぁそんな所ね」


ドォルオタはヴォイドを抱えて走り出した。

そしてレイクもスターダストの遺体を抱えて元来た道を引き返し始めたのだった。

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