フェザー・テイル・1
後に『第二次ネルネルネルネルネルネ騒乱』として語られる
大規模なネルネルネルネルネルネで起こった騒動に関してベネルクス王国は沈黙を守っている。
近辺に当時有休をとったEHUCの勇者のマモルが居た事が確認され
EHUCを守る為に沈黙を守っているのではないか? とセンセーショナル※1 を巻き起こした。
※1:大衆の興味や関心をあおりたてる物事。
関係者には緘口令が敷かれ一体何が起こったのか知る事が出来ず
唯一分かった事はネルネルネルネルネルネは段階的に解体され廃領にする事だった。
想像の元に様々な憶測が飛び交ったが
後年、 サンが書いた自らの半生を記した書物『フェザーテイル』にて事実が公表された。
以下一部を抜粋す
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人生で初めての地震を体験した私はやや取り乱しはしたがミソカの錯乱を見て理性を取り戻した。
その時に私のフェザーが奇妙な事を言い出した。
「さっきの揺れ・・・地震の揺れ方じゃない
地面が揺れてない、 揺らされている印象が有った」
私には今一つ理解が出来なかった。
他の二人も同様だった。
しかし直ぐに私は理解する事になった。
暫くしてから二度目の地震
そして赤い何かがネルネルネルネルネルネの騎士団詰め所から飛び出した。
もしやこれは火山噴火と言う物なのか?
否、 直ぐに私は【アレ】が何かを理解した。
「赤い竜・・・」
神代の時代に力と王座と大きな権威を持っていた竜。
神話において継承を失敗した怪物※2。
※2:神話の最終章において七つ首の赤い竜が神の時代から人の時代へと移行する際に
自らの力と王座と大きな権威を偽預言者たる二匹の獣に継承する際に
黒い獣が全てを掻っ攫ってしまった。
その際に赤い竜は胴を失い七匹の竜となった。
神話の産物と今まで思っていた。
しかしながらコレは本物だ、 と理解した。
そしてスッ、 と立ち上がるフェザー。
「まさか、 戦うつもり!?」
私は声を荒げた。
「お嬢様、 所詮あの竜は神代の敗走者
それにアレは私は知っています、 赤い竜とは知りませんでしたが」
「どういう事? 説明しなさい」
フェザーの話によると、 彼の育ての親であり英雄として名高いシンゲツ・バロッグ氏が
語った武勇伝の中に何回か赤い竜が出て来たらしい
バロッグ氏は赤い竜の神話を知らないので
赤いドラゴンみたいな物としか認識していなかったらしいが
それでも出くわす度に倒していったらしい。
「だがしかし余りにも危険過ぎるわ!!」
「いや、 多分大丈夫」
ミソカが割って入る。
「何故!?」
「アレが何故今まで動かなかったのか
もしも強大な力を持って居たら遠慮無く動いたでしょう
ならば勝てる、 そもそもフェザーはチーズと同等の力を持っている
チーズはドラゴヴァニア五連星を瞬殺したのだから
フェザーがあの赤い竜程度は余裕で屠れるでしょう」
「・・・・・」
私はこの理論にやや納得がいかなかった。
しかしフェザーの眼が自信に満ち溢れていた。
彼が心配だ、 しかし自分の愛する男を信じられないで如何するか!!
「征って来なさい!! そして帰って来なさい!!」
フェザーは窓から飛び出し赤い竜に向かって行った。
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確かに神代の魔物が現れたという事実が公表されればパニックに至っていただろうが
この書物が世に出た頃には赤い竜が出てきた程度では誰も驚かなくなっていた。
この書物に対する真偽が確かかは証言のみなので怪しい所だが
セルデン侯爵が小鬼の一撃代表のマスク・ザ・コオニから
『何か赤いのがヴァ―と出て飛んでった』と言う要領を得ない証言※3 を得た事から
事の信憑性はあるのではないかと言う説が支配的である。
※3:マスク・ザ・コオニは嘘を吐く性格でも嘘を吐く知恵も無い。
何れにせよ、 この後、 フェザーと赤い竜との激戦が始まるのだろう。
しかしながらこの先、 フェザーが辿る激戦の運命の先触れとしてはほんの些細な出来事であった。




