ブルーチーズ・アドベント
再誕歴7701年ジュニアリー16日。
N5の教会にて。
「人生が転落続きでどうしようもないがダイモス君と出会えた様にやはりと言うべきかそれとも此畜生と思うべきか迷うところだが昨日の大暴れで食べようと思って何処かに無くしたチーズを見つけた運命の神が賄賂を贈っている様で嫌な気分だが今回は素直に喜んでおくとしようしかしながら一体如何すれば良いのだろうか青かびが生えている私はブルーチーズが嫌いなんだがね如何思うデンエンさん」
大きなブルーチーズを持って尋ねるアサフ。
「・・・何て? 喋るのが早くて何も分からん」
「ブルーチーズをどうやって食べるかって聞いているんだよ」
ダイモスが解説する。
「ブルーチーズかぁ・・・そんなにデカイ奴ならば売ったら良いんじゃないのか?
喰えない物を取っておくよりも売った金で他に旨い物を喰えば良い」
「なるほどなるほどしかしながらこの街の買取連中は足元を見て来る上に恐らく私を捕まえに来た暗黒宇宙帝国からの使者ばかりでまるで儲けにならないそんな詐欺師達に騙されたくないここは普通に食べる事を提言しよう」
「だから早くて何も分からん、 もっと落ち着いて会話しろ」
「売っても大して儲けにならないから売りたくないってさ」
「そうか・・・しかしアンタはブルーチーズ嫌いなんだろう? じゃあ食えないだろう」
「確かに私はブルーチーズは嫌いだだが私は1人では無いこの教会に集まった者達の中にブルーチーズ好きの者が居る私はそう信じている私の信じていた物は儚く砕け散ったがこの程度の事位は実現しても良いと思うぞ」
「・・・・・」
ちらりとダイモスを見るデンエン。
「誰か食べれる奴は居るだろ、 って言ってる」
「ふむ、 しかしながらブルーチーズって意味分からん味だから好きな奴なんて居ないだろう
そもそもカビが生えたチーズを食べようと思うなよ」
「いやいや毛豆腐※1 やウイトラコチェ※2 といったカビの生えた食べ物は世界中に有るし発酵も言い換えれば腐敗の一種その発酵を用いた発酵食品も大量にあるから強ちおかしな話ではないそもそも現代では食料の保存技術が発達し尚且つ食料の安定供給も出来ているからカビが生えにくいしカビが生えたとしても捨てても構わない社会になっているが過去の人類において食料の保存が難しく食べ物を捨てる事が禁忌とされていた事からカビが生えた程度では問題無いとして食べる奴が居ても可笑しくないだろう」
※1:毛の様なカビが生えた豆腐。
※2:黒穂病という植物の病気でカビが生えたとうもろこし。
「要約して言ってくれ」
「それよりもさっさと食おうぜ、 腹減っちまったよ」
「ふむ、 ならば簡単に出来るサラダにしようか」
そう言って荷物からベビーリーフを取り出すデンエン。
ベビーリーフと細かく刻んだブルーチーズ、 クルミ
そして塩こしょうとオリーブオイルを混ぜて完成である。
「さぁ出来たぞ食えー」
わらわらと教会内に居た者達に配るデンエン。
「うめー」
「超うめー」
「マジウメー」
「語彙力低過ぎだろお前達・・・」
喜んで貰えるのは嬉しいが語彙力の無さに頭を抱えるデンエン。
「この街では教育とか娯楽が無いからな・・・語彙力が無いのもしょうがないだろう」
「ん? ちょっと待て、 あの神父滅茶苦茶喋っているが・・・」
「アサフさんはよそから来た人だよ、 元々学者だからあぁやって理屈っぽく話しているらしい」
「理屈、 っぽいかぁ? 支離滅裂じゃないか?」
「まぁ、 学者先生なんて大抵は頭可笑しいし※3」
※3:偏見。
「それもそうか・・・な・・・」
「それにしてもこのサラダ、 中々に旨い、 クルミがアクセントになっている」
「セルデン侯爵領にはクルミは結構落ちているからな簡単に拾えるよ」
「それは羨ましい」
「しかし・・・暇だなぁ・・・・・まだ帰って来ないのか」
「騎士団詰め所に向かった連中か・・・・・さっきから騎士が逃げて来ているのは窓から見えるな」
「良い傾向だな、 勝利の美酒でも用意してやりたいが・・・
流石に酒は持って来てない」
「心配要らぬよデンエンさんこの度お世話になりっぱなしですからこちらで赤ワインでも買って来ましょう」
「・・・短くても分かり難い文章だ・・・少しは息継ぎをしたらどうだ?」
「それは出来かねます短い人生何処で終わるか分からないそれならばつらつらと一気に行ってしまった方が理論的に正しい事でしょう無論神の真理とは違うでしょうが例えるならば」
「あぁ、 そこまでで良いよ」




