パーソナル・コンヴィニヨンス
再誕歴7701年ジュニアリー15日。
ホテル・モーントにて激痛にのたうっていたレイクが漸く落ち着きを取り戻した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「はい、 お水」
フェザーから渡された水を飲み干すレイク。
「さてと、 ドラゴヴァニアのレイクで良かったのよね?
一体ここには何の用で?」
サンが尋ねる。
「スターダストの遺体が持ち去られたから回収に来た」
「それはドラゴヴァニアからの指令ですか?」
「個人的な都合よ」
「便利な言葉ね」
「其方こそ何故この街に?」
「スターダストの遺体を奪った犯人を確保しに」
「それはベネルクス王国政府からの命令ですかね
ベルモンド伯爵令嬢殿?」
「個人的な都合よ」
「便利な言葉だ」
「それよりも私、 名乗ったかしら?」
「隣国の貴族の顔と名前と家族は全部暗記している」
「そう」
対峙するレイクとサン。
「色々含みは有るけども、 私達は遺体を持ち去った男を確保できればいい
互いに相互不干渉で行きましょう」
「・・・・・」
少し考えるそぶりを見せるレイク。
彼女は葛藤している、 ドラゴニュートのプライドから人間と共闘するのは気が引ける
とは言え先程の戦闘能力の高さは無視しがたい。
何とかイニシアチブ※1をとりたいが、 相手から相互不干渉を提言されたとなると
こちらからは言い出しにくい。
※1:主導権の事、 なら主導権って最初から書け。
「・・・相互不干渉ね、 理由を聞いても?」
「信用ならないから」
「・・・・・」
領土問題で国家間決闘をした奴を信用する馬鹿も居ないか、 と内心納得したレイク。
いや、 ならば・・・
「・・・なるほど、 逆に私は干渉したいわね
スターダストの遺体を持ち去られたくないからね」
「まぁ、 口で言っても信用は出来ないわね、 互いに
とは言え、 相部屋の客も居るから貴女にここに居られるのも困るわ」
「相部屋って・・・貴女貴族でしょ? 何でそんな事を・・・」
「成り行きよ」
「面倒な、 ならば私は素直に外に出ているわ
何か有ったらまた来る」
「それが良いわね」
「ではこれで失礼するわね」
レイクはドアを開けて外に出た。
「・・・・・」
素直になって協力を求めた方が良かったか
そう思いながら非常階段から降りようとするレイク。
「っ」
ホテル内にモーント・ズンディカーズの構成員が入って来るのが見えた。
恐らくはモスキートを倒した事への報告だろう。
「騎士団と不和を起こす為に工作もしたし・・・何とかなるかな・・・」
レイクは階段を降りて逃げて行った。
ホテル・モーントのロビーではヨハンの元にモーント・ズンディカーズの構成員がやって来た。
「支部長!!」
「おや、 如何しました? 後ここでは支配人かヨハンさんと呼びなさい」
「え・・・モスキートさんはどちらに?」
「モスキートさん? 彼がこちらに?」
「はい、 報告に来た筈ですが・・・」
「そうですか・・・リトルリトルさん」
「は、 はひぃ!! 何でしょうかぁぁ・・・」
物陰に隠れてヨハンを護衛していたリトルリトルが現れた。
「仕事について来て貰って申し訳ないですが
ネルネルタワーに戻らなければならなくなりましたので付いて来て下さい」
「そ、 それは大丈夫です・・・はい」
「さてと、 じゃあ、 フロントは君に任せます」
構成員の一人を指差すヨハン。
「え? あ、 はい、 分かりました」
「それでは戻りましょうか、 状況は歩きながら説明して下さい」
「分かりました」
ヨハン達はホテルを出て歩き始めた。
「それで一体どういう事ですか?」
「えぇ、 実はマーナガルム男爵の家紋の刺繍のスーツを着た二人組が
モーント・ズンディカーズの構成員を殺害したんです」
「なるほど、 噂の男爵直属の二人組ですかね
殺害された構成員はどんな人です?」
「下っ端ですね」
「そうですか、 直ぐに会見を求めましょうか
まぁ十中八九二人組が嵌められたのが真相でしょうけどね」
「そ、 そうなんですか?」
「下っ端を殺して何になるって言うんですか
恐らくは我々と騎士団を仲違いさせる工作だと判断しますよ
それにそもそも報告出来ている事自体がおかしい
もしも男爵直属の人間が構成員を殺しても確認して報告出来る訳が無い
報告の前に殺されます」
「なるほど・・・じゃあタレこんだホステスが怪しいのでしょうか」
「外部の人間が報告して来たんですか?」
「ウチののキャバレーのホステスらしいのですが・・・
あ、 そのホステスと一緒にモスキートさんはホテルに行ったはずです」
「そのホステス、 怪しいですねぇ・・・まぁ良い何れにせよ
そのホステスを連れて来なさい」
「分かりました」
「ん?」
ヨハンの前方から、 また別の構成員が走って来た。
「た、 大変です!! 騎士団が襲撃を受けています!!」
「!?」
ヨハンの顔が驚愕で歪んだ。




