表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/479

カケルズ・パスト・ストーリー

再誕歴7692年エイプリル15日。


ルクセンブルク侯爵領。

欧州勇者組合連合(略称EHUC)ベネルクス王国支部の修練場。

当時勇者見習いだったマモルとカケルは日々鍛錬を行っていた。


「ったくやってらねー」


否、 真面目に鍛錬をしているのはマモルだけでカケルはサボっていた。


「俺は剣道三段だぞ

何時までこんな事させるんだ、 早く魔物を殺させろ」


ぐちぐち修練場の隅で文句を言っていた。


「そう言うけども1日休んだら3日分は衰えるって言うじゃない

真面目にやろうよ」


マモルが剣の素振りをしながらカケルに言う。


「それは筋力の話だ、 休んだら衰えるのは筋力だけ

剣道は筋力じゃなく技術で行う物だ、 技術は衰えない」

「そうは言ってもねぇ、 研修で給料は出るんだから真面目にやろうよ」

「年俸3000ユーロは安いだろ」

「この世界の一日は6時間だから、 一年は大体三か月だ

三か月30万とすると月10万だから初任給としては悪くない額だろう

福利厚生で住む場所と保険料も免除されてるんだから寧ろ良い位だ」

「遊べば一瞬で無くなるだろうが!!」

「遊ぶ? ゲーセンも無いのに? 何処で金使ってるの?」

「いや・・・まぁ・・・うん」


急に尻すぼみするカケル。


「給料も勇者になれば手取り増えて税も優遇されるからちゃんと頑張れば大丈夫だよ」

「なぁんでお前はそう順応出来てるんだよ、 異世界から来た俺達が

この世界で働く必要無いだろ?」

「どっちみち就職はしなくちゃならないんだ

だったら就活の手間が省けたと思えば良い」

「俺は大学進学の予定だったんだぜ?」

「確かに・・・まだまだ学生なのに、 辛いな」


高専※1 のマモルは卒業後就職をすると目標を立てて学生生活を行っていたので

就職の対してのイメージは有ったし、 社会に出ると言う感覚も漠然とあった。

だがカケルは普通の高校生でまだまだこれからの学生だったのだろう。



※1:高等専門学校、 高校と専門学校が一体化したような形態の学業機関。

因みにマモルが通っていたのは5年制の学校だった。



「ったくよぉ、 これから俺の憧れの赤門※2 ライフが待っていたって言うのに」



※2:言わずと知れた日本最高学府の隠語。



「おーっす、 元気でやってるかー二人共」


イヤトゥーハが修練場にやって来た。


「御疲れ様です」

「・・・・・どもーっす」

「まーったカケルサボってるのか」

「良いじゃ無いッスか、 俺勇者ですし」

「まだ見習いだろ、 マモルを見習えよ」

「俺はこう見えても剣道三段ですし」

「まだ三段だろうが、 百段位目指せ」

「剣道は八段までしか無いッスよwww」

「じゃあ八段の13倍くらいを目指せ、 まぁ良い二人に仕事だ」

「おっしゃ!! とうとう勇者としての初仕事っスね!!」

「そうじゃない、 ちょっと力が居る仕事だ」

「うん? どういう事です?」

「所長がドイツに転属だから、 荷物運びだ」

「勇者なのに何でそんな事しなきゃならねぇんだ!!」


叫ぶカケル。


「良し分かった、 じゃあ選ばせてやるよ

ここで俺にボコられるか、 荷物運ぶか、 どうする?」

「ぐっ・・・」


イヤトゥーハにはボコボコにされている為、 カケルは大人しく従った。

荷物を運ぶカケルとマモル。

カケルは大きな熊の剥製を、 マモルは巨大なのっぽの古時計を持っていた。


「ったく、 何で俺がこんな事を」

「まだまだ下積みだし仕方ないよ」

「でも、 俺は勇者だぜ? もっと称賛を浴びる仕事をしても良いじゃねぇか」

「ん」


マモルが顎で示した先には「うわ、 あんな大きい物持ってる」

「異世界人ぱねぇ」と声を上げている事務員が居た。


「いや、 もっとさ、 魔王を倒したりとか色々有るじゃない」

「居ないじゃん、 魔王」

「・・・だったら何で俺達は異世界転生してるんだ・・・」

「ただツイて無かったんでしょ※3」



※3:EHUCの公式見解



「いーや!! 俺が呼ばれたのには理由がある筈だ!! 俺はやるぜ!!」

「がんばってねー」



再誕歴7695年オクターバ―19日。


マモルとカケルは順調に力を付けて一人前の勇者となった。

特にカケルはEHUCベネルクス王国支部支部長ドゥラブ直属の勇者として仕事を熟していった

のだが。


「カケル、 ちょっと良いか?」


EHUCベネルクス王国支部の廊下でカケルを呼び止めるマモル。


「おや? 久しぶりだな、 何の用だ?」

「何の用だ、 じゃない、 君を訴訟すると通達が来てるんだ

一体何をしたんだ?」

「・・・・・訴えられるような事はしていない筈だ」

「してるだろ、 ボケ」


イヤトゥーハが現れた。


「表沙汰になっているだけで窃盗、 痴漢、 無銭飲食、 暴行

全部ドゥラブさんが示談にしているがそれでも噂は立つんだぞ

勇者全体の悪評に繋がるんだ、 弁えろ」

「俺は勇者だぜ? 些細な事じゃないか」

「あ、 そ」


イヤトゥーハが去って行く。


「あ、 ちょっと!!」


イヤトゥーハを追うマモル。


「良いんですかイヤトゥーハさん!!」

「俺は勇者歴が長いからな、 こういう馬鹿は偶に出て来る

もう知らん、 後は上に任せる」

「そんな・・・彼は如何なんですか!!」

「知るか、 俺はアイツの親でも先生でも無い勝手に堕ちろ」


スタスタと去って行くイヤトゥーハ、 マモルも後を追う。


「・・・・・ふん、 雑魚が僻むな」


カケルは捨て台詞を言って去って行った。



再誕歴7696年フェブラリー磁日。


EHUCベネルクス王国支部支部長室。

新支部長ウルスラはカケルを呼び出した。


「君が前支部長の違法行為を摘発した事に関して色々文句を言う人も居るだろうけども

私は君を解雇するまでは無いと思っている」

「・・・・・」


カケルは俯いている。


「とは言え減給は覚悟して貰おう、 それから今後は経費を自由に使える事も無いと思え」

「・・・・・」

「話は以上だ、 行って良し」


カケルは部屋から出て来た。

部屋から出たカケルを遠くから見るマーンとマモル。


「良くもまぁ、 まだ勇者をやれるとは面の顔が厚い」

「カケル・・・」


ドゥラブ直属となっていたカケルのリークによりドゥラブが

魔族のコロニーを襲撃し生き残った魔族の奴隷化を図り

多額の利益を得ようとしていた事が判明した。

この事によりドゥラブと取引をしようとしていた奴隷商は逮捕され適切に【処理】されたのだった。

コロニー襲撃の実行役としてカケルを動かそうとしていたが

カケルがこの事件を止めた為、 カケルは処罰はされたが何とかなった。


「でもカケルが事件を止めたんだから、 一線は越えなかった」

「だとしてもこれからカケルはヴァカな上司の腹心だった

これから彼が出世するのは厳しいわね」

「それでも仕事は続けられる、 良い事が有る筈ですよ」

「そうだったら良いけど・・・」



再誕歴7700年フェブラリー20日。


「ベルモンド伯爵領に現れた魔王討伐に行かせて下さい!!」


EHUCベネルクス王国支部支部長室にてカケルが叫ぶ。


「駄目、 この案件はマモルに任せる」


ウルスラが却下する。


「何でですか!!」

「マモルも経験を積んで来たし次のステップに進める為よ」

「なっ、 マモルよりも俺の方が強いでしょ!! 俺は剣道三段ですよ!!」

「君はウィルパワーの扱いも殆ど出来ていない

ちゃんと学べば3~4年で出来る事よ、 君がこの世界に来てから早8年

それでも出来ていなのは問題よ、 それにそもそも君は評判が悪い

酒場で酔って暴れるとか、幸いにも一人でぶっ倒れるとか

逆にバウンサー※4にしてやられるとかで済んでるけども

もしもこれで怪我人を出していたら君は解雇よ?

それから勝手に人の家のタンスを漁るのは止めなさい」



※4:用心棒、 騎士崩れや構成した野盗が成る為

それなりに強い。



「くっ・・・俺が燻ぶっているのはアンタが俺にちゃんとした仕事を回さないからだ!!

何だよ魔族の社会参入って!! もっと魔族討伐の仕事を寄越せ!!」

「害獣駆除も偶に失敗する君にそんな仕事を任せたら死ぬかもしれないじゃない

まだまだ経験が足らない、 もっと真面目に修行しなさい」

「もういい!!」


カケルは支部長室から出て行った。


「くそ・・・くそ!! 俺だって功績を挙げれば・・・!!

こうなったら自分で何かやるしかない・・・!!

そうだ、 情報だ、 情報を集めてクズを探してぶち殺していけば・・・」


ブツブツ言いながらカケルは廊下を歩いた。




再誕歴7701年ジュニアリー14日。


N5入口。

見張りの騎士達は欠伸をしていた。


「おい、 サボるなよ」

「悪い悪い・・・!?」


騎士の一人が目を見開いた。

誰かがこっちにやってくる。

暴風が吹き荒れる中、 足を引き摺って来ている。


「お、 おい、 アレ・・・」

「おいアンタ!! 止ま」


制止した騎士の首が吹っ飛んだ。

そして右手が無く右腕から血を流し左足を引き摺っているカケルが現れた。

残った左手には剣を持っていた。


「あ、 ああ・・・助」


全て言う前に騎士は首を刎ねられた。


「やってやる・・・ここからが俺のサクセスストーリーだ!!」


呟きながらN5に入るカケルだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ