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9:10

「随分とデカい口を叩くなぁ、 だがしかしお前は自分が思っている程大した事無いぞ?」


ジュンが嗤う。


「あぁ? 随分とデカい口だな、 デカい剣を折られて吹き飛ばされた癖に」


ナンナも嗤う。


「防御したと言う事は当たれば死ぬと言う事だ、 死ぬなら殺せるだろ」


そう言ってエルカーラから拝借した剣を触るジュン。


「と言うか何時もの口調は如何した」

「キャラ作りだ」

「言っちゃうんだ、 そう言う事」

「女の子と仲良くなるなら女の子っぽい口調をすればいい」


後ろから殴りかかるポールを見ずに扇で弾くナンナ。


「・・・かなり強い力だが呼吸もするし汗もかくなら殺せるな」

「根拠が乏しいんじゃないかなぁ?」


煽るナンナ。


「生き物ならば殺せるだろう、 何時かは死ぬんだから今日死ね」

「まだ俺は本気を出していない」

「そうか、 出すなら死ぬ前に出せ、 私は出すぞ」


構えるジュン。


「狙いがバレバレだ、 後ろのポール(こいつ)と連携してやる気なんだろうけど

そんなんじゃあ「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」


ナンナはポールから一撃を貰う前に扇子を投げる。

ポールは即座に上体を倒して回避する、 扇が後ろで音を立てて激突する。

防御していたら恐らく死んでいただろう。


「・・・・・」


ナンナは防御の為に残った扇子を上に掲げていたが、 予想に反して下からの攻撃だった。


「居合か」


上段からの袈裟斬りでは無い『抜き』と呼ばれる抜刀術のような下からの斬撃である。

これは正確には示現流ではなく薬丸自顕流と言う別流派の技なのだが

セルデンの家系ではごっちゃにされており、 『抜き』は正に秘中の秘とされている。

本来ならば下から斬撃を放った後、 通常の袈裟斬りに移行する筈なのだが・・・。


「・・・・・マジで人間じゃないのか」


動かない、 全く動かない、 どんな筋密度だと言うのか。


「残ね」


プシッ、 の音の後にナンナの体は破裂した。


「・・・・・は?」




ワスプナイフと言う物がある。

柄に炭酸のガスボンベが搭載されており標的に突き立てた後に起動させると

刀身から低温のガスが噴き出して刺さった部分の周囲を凍結してガスの膨圧で

木端微塵に吹き飛ばすという代物である。

エルカーラの剣は基本的にこのナイフに酷似した物である。

ただし殺傷能力を只管に上げて有る。

ワスプナイフはガスが逃げるような状況ではあまり意味が無い。

そこで柄に液状になったガスを充填、 機構を操作する事で

液体が熱せられられながら押し上げられ刃の部分にガスが充填される。

ワスプナイフと違い、 この剣には噴射機構が備わっていない為

密閉された刃の中でガスが膨張し破裂すると言う事である。

刺さらなくても炸裂させれば破片が体に食い込み酷い事になる。


この複雑な機構を何故ジュンが理解できたのかと疑問に思う読者諸賢は居るだろう。

理由は簡単である。


「!?」


彼自身、 機構を理解していなかった。

刃先が発射されるスペツナズナイフの亜種か何かだと思っていた。

だがこれでナンナはほぼ死んだ。


「ぐっ、 ああああああああああああああああああ!!!!!」


体の3分の1近く吹っ飛んだナンナが叫ぶ。


「ヴァカなヴァカなヴァカなああああああああああああああ!!!」

「ヴァカはお前だ」


頭をナンナの奥義で刺し貫くジュン。


「ぐあ・・・ぎぎぎぎいいいいい!!」


びち、 とナンナの首から何かが出て来た。

それは触手の様な物だろうが、 それはジュンの首を絞める。

がジュンは構わずナンナの頭に扇子を押し込む、 ジュンの首がみしみしと音を立てる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


ポールはナンナの頭に飛び掛かり扇子に全体重を乗せた。


「ぎ」


と一言声を挙げて触手が力無く解けていった。

咳きこむジュン。


「大丈夫か?」

「心配要らない、 それよりもそれ・・・」


石灰の様に白く砕けて消えゆくナンナの遺体。


「な!? なんだと!?」

「最後の触手と言い如何やら本当に人間じゃあなかった様だな・・・」


倒れるジュン。


「お、 おい!!」


ポールはジュンを介抱するのだった。




その後、 ポールとジュンは共に病院に運ばれていった。

ポールは病院で簡単な事情聴取が行われた。

ナンナの事で|首から触手やら死んだら消えたナンナの死体やら《信じがたい事》が有ったが

立会人達との証言と照らし合わせて真実だと証明された。

ポールとジュンの戦いは終わった。



再誕歴7531年マーチ27日。


レオポルドは目を覚ました。


「・・・・・?」


しかし体を動かせなかった。

文字通り体中全てが拘束されているのだ。

拘束ベルトで文字通り磔にされている。


「な、 なんだこれは!?」

「目が覚めた様ですね」

「準備の手間が省けたよ」


レオポルドの後ろに誰か居る。


「だ、 誰だ!?」

「誰でも良いさ、 では始めるよ」

「何をだ!?」


ポールとジュンの戦いは終わった。

だが【レオポルド王子人生最悪の24時間】はまだ終わらないのであった。

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