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「この無礼者共!! 俺が誰だが分かっているのか!!」
ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセルのブリュッセル王宮
レオポルドはポニカと共にやって来たのだが、 文字通り拘束されている。
やり過ぎと言う位に縄でぐるぐる巻きにされポニカは酸欠で気を失いかけている。
「・・・・・」
レオポルドが騒ぐ中、 警護の騎士達は文字通り絶対零度の眼で二人を見ていた。
「なんとか言え!! 父上がこの事を知れば・・・」
「おい」
ライトブルーの整った顔の男が現れた。
「フラマン兄様!! この者達を何とかして下さい!!」
彼はフラマン、 ベネルクス93世の長男である。
しかし今一つパッとせず情熱も無い、 昔は王太子確実と言われるカリスマ性を誇っていたが
何故か今では地味な男である。
「お前自分が何したか分かってるのか?」
フラマンも絶対零度の瞳でレオポルドを見る。
「婚約破棄の件ですか?」
「違う」
「え? じゃあ何の件ですか?」
「既にお前の手下は吐いた」
「え? 何の事ですか?」
「・・・・・まぁ、 俺はな、 と言うかもう全員はお前はただ単に担がれただけだと思っているよ」
「え?」
「お前には能力も無いし、 やる気も無いし、 性根も最悪だし
王家に生まれた事だけがお前の唯一の美点だ」
「そんな事無いですよ!!」
「じゃあ何かあるか? 言ってみろ、 お前の美点は?」
「次期王太子としての輝かしい未来です!!」
「一体何時お前が王太子になるって決まったんだよ」
「え? いやだって皆言ってました!!」
「皆って?」
「ナンナやミュー、 ダーロングやラーカーからです!!」
「お前、 それは取り巻きのおべっかだろうが
お前がやらかした事は騙されていたとはいえ、 もう助ける事は出来ないんだよ」
「だから何の事ですか!?」
「もう良い連れてけ、 そっちのは始末しろ」
「え?」
「はっ」
訓練された動きでレオポルドを立たせて歩かせる騎士達。
「お、 おいポニカ!! ポニカ!! ポニカあああああああああああああああああああ!!!!!」
レオポルドは奥に連れていかれた。
ポニカも運ばされて行った。
「娘の死体は如何しましょう」
「生ごみにでも出しておけ、 不愉快だ」
「殿下!!」
外から一人の騎士がやって来た。
「外側エリアにてレオポルド配下のナンナが
ベルモンド準伯爵三男のポールが交戦中です!!
助太刀したくても外側エリア在中の騎士では太刀打ちできません!!」
「では内側エリアの騎士も投入すれば良いでは無いか
宮殿の許可は要らん」
「それが外側エリアと内側エリアを分断する
【ウォール・ネーデル】の出入り口が崩されました!!」
「なんだと!?」
これにはフラマンも眼を見開く。
「信号で情報がこちらに来ましたが、 一体如何すれば!?
入口は崩壊していて撤去に時間がかかります!! 壁を壊して別の入口を作りますか!?」
「壁を壊す方が時間がかかるだろうが!!」
「で、 では壁を乗り越えますか!?」
「如何やって昇り降りする気だ!? 壁は昇り降りできる機能は無い!!」
「ではどうすれば!!」
「・・・・・陛下に伝えて来る!!」
フラマンは即座にベネルクス93世の元に向かった。
「陛下は何方に!?」
「知らない方が良い」
フラマンはそう言うと即座に向かった。
「知らない方が良いって・・・まさか」
「恐らく地下最下層、 噂に聞く王族の実が立ち入れる場所か・・・
王族の墓地と聞いていたが・・・」
「・・・・・」
ごくり、 と生唾を呑む騎士であった。
一方その頃、 ブリュッセル・ターミナルでは遠くの破壊音にメリーとシャンが震えていた。
「な、 なぁ、 あっちの方ですげぇ音が鳴っているし見に行った方が良くないか?」
「・・・・・あんな凄い破壊音の戦場で私達活躍できる?」
「・・・まぁ、 無理だろうな、 しかしここに居るS級決闘者のレオなら・・・」
「動かないみたいね」
「何でだよ!! 普通見に行かないか!?」
「陽動かと思っているんじゃないの?」
「・・・・・」
確かにこの物音が陽動でブリュッセル・ターミナルから離れた瞬間に
レオポルドがやって来てブリュッセルから逃げ出すと言う事も考えられる。
ならば動けない、 今レオポルドはブリュッセル王宮に居るのだが
それを皆は知る由もない。
「・・・・・俺達、 居る必要有るか?」
ぽつりと呟く、 メリー。
「・・・・・気持ちは分かるよ、 私も武術で身を立てようと思ったけど・・・
最近は力量の差にうんざりする、 女でも滅茶苦茶強い女も居るしね・・・」
「俺もブリュッセルに来て世界の広さを知ったよ・・・」
見つめ合うシャンとメリー。
「終わったら飯でも行こう」
「そうね、 ご一緒するわ」




