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フェザー・テイル・5

ハワイに向かったフェザーが戻った事を確認されたのは

再誕歴7704年オーガスト30日の事である。


当時の渡航技術では絶対に不可能な筈である

如何考えてもあり得ない。


瞬間移動(テレポート)等の特殊なウィルパワーの運用をしたのだろうか?

明らかに無理である、 瞬間移動(テレポート)に類するウィルパワー運用法は

当時にもあったがこちらも技術体系が確立しておらず

公式的な記録では凄まじい規定動作(ルーティーン)※1 が有って初めて人一人が

数十メートルを移動出来るのみになっている。



※1:人類初の瞬間移動(テレポート)使用者であるチャールズ・Jの

『確実に死ぬけども即死しない状況下でのみ発動』

カナダの自称発明家、 J・ハチソンの『移動先と現在の自分の周囲に生き物が居ない時のみに発動』

アメリカのモーリス・Jの『移動先を指定出来ない』等々である。

因みにモーリス・Jは瞬間移動(テレポート)使用時に壁の中に瞬間移動(テレポート)してしまい死亡した。



ならば一体どういう事だろうか?

この時、 フェザーと同行していたサン伯爵令嬢は

自らの半生を記した書物『フェザーテイル』にてこう述べている。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


フェザーへの愛の告白をした十数分後。

ベネルクス95世陛下が部屋にやってきた。

危うかった、 もしも情欲に身を任せていたら大変な事になっていた。


陛下を見間違う事の無い筈の私だがこれには目を疑った。

一体どうやってベネルクス王国からハワイまでやって来たのか?


最新鋭の渡航技術、 潜水艦であった。

海上を渡航するのではなく海の下を潜水して移動する船。

最新鋭、 と言うのは語弊がある、 過去の技術の再現だそうだ。

航海の過程を5分の1にまで出来るのと言うのは凄まじいの一言だった。

私はベネルクス王国の将来が輝いて見えた。


だがしかし、 この潜水艦はそれっきりであった。

陛下は後にこの潜水艦を破棄したという。


乗って見れば分かるのだが兎に角狭い。

広さはそこそこある筈だが兎に角狭く感じる。

空を見れないという事は思った以上に酷い圧迫感を感じる。

そして暗い、 酸素の節約の為にカンテラ等の火の灯は使えない。

当然、 海の下なので太陽の光も届かない。

酸素を消費しないエーテルライトの輝きも思ったよりも無い。

火の光じゃない灯は人間には違和感を感じるのだ。


そして食料も問題だった。

船の場合は途中で停泊出来たので新鮮な食材を都度買い込めた。

しかしながら潜水艦は、 当時としては一般的では無かった為

秘匿の必要が有り、 補給は不可能であった。

必然的に食料は保存の効く缶詰ばかりである。


極めつけは衛生であった。

排泄等は問題無かったが入浴が出来なかったのは地味に辛い。

臭気も篭るのだ、 肉体的な問題だけでなく

精神的にも辛い、 水中を動くのは潜水艦内に音が響く。

この音も地味に辛かった。

そして精神をやられてうめき声をあげる艦内の操縦員達。


現在は如何なっているのかを知る事は出来ないが

当時の潜水艦は水中を進む棺桶と言っても良いだろう。

いや、 うめき声が有るだけそれより酷いかもしれない。

何時しか父から聞いた野戦病院を思い出した。

其方の方が酷いかもしれないが・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



潜水艦が現実的に海戦兵器として運用されたのは

新暦110年代のイギリス帝国のブルー・スパティントン型潜水艦であり

当時としては随分先を行っていたが、 まだまだ早過ぎた技術だったらしい。

潜水艦の運用に必要な物資やノウハウ

乗組員たちにさせるべき訓練等が確立していなかったのだ。


とはいえ当時の技術で潜水艦が作れたか疑わしい話である。

他国を威圧する為の偽情報ディスインフォメーションの可能性も多聞に有る。

しかしながらエンペスキー大臣とコールスロー大臣が休職する等

異常事態も起こっていた。※2



※2:大臣は休職どころか長期休暇申請だけでも罷免の可能性が出て来る重要職である。

普通だったらやろうとすら思わず、 もしも申請が通っても後々に問題になる。

だがこの件に関しては問題にすらならなかった。



二人の大臣の休職により彼等の管轄だった省庁は政治的混乱が発生するのだが

この常識を遥かに超えたスピードでベネルクス王国に帰国できたのは

後の世に大きな影響を与える事になった。

この二人の休職は潜水艦によるストレスによる体調不良とすれば

辻褄は合う。


長々と話たが、 潜水艦を使うのは結果的に正しかったのだろう。

もしも悠長(ゆうちょう)に船で帰っていた場合。

ベネルクス王国所かヨーロッパ連合その物が無くなっていたかもしれなかったのだから。

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