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決闘場に上がったカメハメハとフェザー。
カメハメハはどっしりと構えている。
「相撲に近い構えだね」
「スモウレスラーのパワーは私でも知っている」
サンの言葉にエンペスキーが追従する。
「勝てるんですか? 負けたら貴女とフェザーは一生タダ働きは覚悟して貰いますよ」
「だいじょうぶですよ」
「・・・・・随分と余裕そうですね、 恐らくサリバン戦では負けると見て
出していなかった本気の構えですよ、 勝てるんですか?」
流石に苛立ちを隠せないエンペスキー。
「大丈夫でしょう」
「・・・・・」
即答に激昂しかけたがエンペスキーも若くして大臣に上り詰めた逸材。
|あまりにも余裕過ぎるのだ《・・・・・・・・・・・・》
恋した男を盲目的に信じる小娘の眼でも気配でも無い。
確実に勝てると思い上がっている身の程知らずや世間知らずでも無い。
明らかに勝算を持って戦いに挑む者の気配である。
「・・・・・」
『ベネルクス95世が伯爵位を与えた女』
エンペスキーの脳裏にその単語が浮かんだ。
(以前に王都にこの娘が来た時は我儘な貴族子女だったはずだ
一体何が有ったんだ・・・何を見て来た・・・)
「・・・・・ふっ」
コーススローが笑った。
「・・・何か?」
「いや、 何、 貴方が大臣になった頃の事を思い出しましたよ
『こんな若造が大臣か』とね、 新しい芽が出るのは早いですな」
「・・・・・ですね」
エンペスキーも笑った。
カメハメハとフェザーが相対する。
(・・・・・隙がねぇ)
カメハメハはフェザーを小僧と侮っていたが相対してみると隙の無さに驚いた。
(良い師匠を持った、 良い稽古をつけて貰った、 そして才能が有ると見た
だが場数は俺の方が遥かに上だ)
カメハメハ大王は代々名前を継承し、 先代を倒さなければ継承出来ない。
その為、 代を重ねる毎に強くなっている。
ハワイの男子ならば誰しもが憧れる称号である
それ故にハワイ全ての男子同士で戦いが起こる。
毎日数回、 否、 十数回の全力での戦い。
この世界では一日は8時間、 現実で換算すると24時間で50戦。
その全員が好敵手。
「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ツッコむカメハメハ。
無謀は承知、 カウンターを喰らうだろう。
しかし耐えて見せる。
否、 耐えられる!!
フェザーは強い、 だがしかし今までカメハメハが戦って来た者達の中には
もっと強い者が居た、 ならば耐えられる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
カメハメハの拳がフェザーに迫る。
が激突の一瞬前にフェザーが回転しカメハメハの首に回し蹴りの一撃を叩き込む。
「!?」
カウンター、 ではなく攻撃の直前にカウンター
いや、 攻撃を潰す攻撃を出して来た事に驚きながらも
カメハメハの反撃、 に対してのカウンター、 再度攻撃を叩き込まれる。
「っ~~~!!!」
次々攻撃を繰り出しても攻撃が全て読まれるかカウンターを取られる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
カメハメハもダメージが入っているがフェザーも息を切らしている。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
渾身の一撃を繰り出すカメハメハ。
フェザーは躱し思い切り蹴り飛ばす。
「っぁ!!?」
カメハメハはその時始めて認識した
自分達がリング端に居る事を。
徐々に位置をずらされていたのだ。
結果としてリングアウトでカメハメハの負けだった。
「・・・・・ちょっと待て」
起き上がりながら去ろうとするフェザーを呼び止めるカメハメハ。
「さっきから読みが鋭すぎる、 納得がいかん、 説明を求める」
「陛下の技はカプ・クイアルア※1でしょう?」
※1:古代から伝えられたハワイの武術にヨーロッパ人から受け継いだ砲術を加えて出来ている
格闘技、 戦闘術の事、 格闘、 武器のみならず兵法にも長けている。
「むっ・・・情報が漏れていたか、 しかしそれは周知の事実
知っているだけで回避出来たら私はここに立っていない」
「鍛えられましたから」
「良い師匠がお前に居るのは分かっている、 だがその男がカプ・クイアルアを使っていたというのか?」
「基本的な事は色々と、 ヨーロッパの武術を始めとして色々な事を教えられました」
「確かにカプ・クイアルアはヨーロッパの技術を受け継いでいる面がある
だがそれでもこうまで読まれるかね?」
「無論です、 基礎をしっかりすれば応用は可能です」
言ってみれば当然の事だがそんな簡単に言われても。
そんな事を考えたが、 カメハメハはこれ以上は無粋と去って行ったのだった。
画してフェザーは2位の成績を収める事が出来たのだった。
観客席にてビール瓶を片手に二人の男が笑っていた。
「終わったかぁ・・・つーかサリバン強ぇえな」
「俺の敵じゃねぇよ」
「まぁ実際戦わないからお前の敵じゃないけどな、 でもフェザーは如何思う?」
「あぁー・・・あれも厄介だな、 やはり狙い目はお姫様の方かなぁ?」
包帯を頭に巻いた男が肉串に齧り付く。
「んじゃ分断させておくか?」
「そうしようか」




