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ヒー・ザット・ノー・ナッシング・ダウトズ・ナッシング

再誕歴7701年ジュニアリー13日。


ネルネルタワーを散策しているモスキート。


「モスキートさん、 あんまりうろうろするのは困りますよ」

「別に良いだろ、 暇なんだよ

R・To・Youだけなら兎も角何で俺だけ待機なんだよ」


明らかにイライラしているモスキート。

まるでアヒージョ※1 だ。



※1:オリーブオイルとニンニクで食材を煮込む料理。

必然的に物凄い熱い。



「全くよぉ、 恐怖症と潔癖症は何処に行ったんだよ」

「私には支部長の意向は良く分かりませんので・・・」


モスキートの問いに答える下っ端。


「折角呼んだのに放置ってアルミ缶の上にあるミカン※2 じゃねぇか」



※2:日本の諺。

アルミ缶の上にミカンが有ったらジュースが飲めない。

転じて物の配置に気を付けようという意味。

モスキートはヨハンが自分を使えていない事を揶揄して言っている。



「はぁ・・・しかしモスキートさん、 探し回っても何も無いですよ」

「ほっとけ、 暇なんだよ、 俺は」


そう言いながら次々と部屋を開けては覗くモスキート。


「でもここに見て面白い物は無いですよ?」

「オークションの商品とか有るだろ? 俺はそれを見てぇのよ」

「何故?」

「暇だから」

「うーん・・・オークションの会場に有ると思いますよ」

「・・・いや、 だからここじゃねぇのか?

ここは一応モーント・ズンディカーズの支部みてぇなもんだろ?」

「会場は毎年変わりますからねぇ・・・でも例年だともう会場内に商品を置く時期ですけども

ここには来てないです」

「何ィ!? じゃあ俺は無駄な事を今までして来たって事か!?」


下っ端の胸倉を掴むモスキート。


「ちょ、 ちょっと!? モスキートさん!?」

「時間取らせやがって!!」


思い切り下っ端を叩きつけるモスキート。

下っ端は気絶してしまった。


「【Fワード】俺のプランが台無しじゃねぇか・・・」


モスキートのプランは単純である。

スターダストの遺体を盗んで逃げる。

1000万ユーロも有ればこの世の果てまで逃げる事が可能だ。

こんなビッグチャンスを物にしない訳には行かない。


「あのヨハンとか言う奴・・・まさかこれを読んで・・・」

「モスキートさーん!!」


別の下っ端が現れた。


「何だ?」

「騎士団が喧嘩を売って来ました!!」

「何だとぉ!? どういう事だ!?」

「とりあえずこちらに来て下さい!!」


モスキートは下っ端に連れられてネルネルタワーの入口までやって来た。

そこには青い髪が美しいホステスが座り込んでいた。


「お前は?」

「わ、 私はモーント・ズンディカーズのキャバレーに雇われている新人ホステスです・・・

さ、 さっき帰っていたらマーナガルム男爵の家紋の刺繍のスーツを着た二人組が

モーント・ズンディカーズの構成員を・・・あぁ・・・!!」


女は震えた。


「あいつ等、 とうとう喧嘩を売って来たって事か!!」

「上等だ!! やってやろう!!」

「こっちには患者(クランケ)が四人も居るんだ!! 勝てる!!」

「・・・・・」


モスキートは考えた。

騎士団との戦いのどさくさに紛れるのは持ち逃げのチャンスだ。

チャンスを掴む為のチャンスが現れた。

まさにBIGCHANCE!!

脳内に魚群が泳ぐ※3!!



※3:高揚感が凄まじい事の例え。



「まずはヨハン支部長に伝えなければ!! 直ぐに行って来る!!」

「行って来る? おい、 支部長はここに居ないのか?」

「えぇ、 普段は表向きの職場のホテルに居ます」

「・・・・・場所を教えな、 俺が伝えて来る」

「モスキートさんが?」

「お前等雑魚では心配だ、 途中でやられてヨハンに連絡がいかなかったらどうする?」

「そ、 そうですか・・・ではよろしくおねがいします」


下っ端はモスキートにホテル・モーントの場所を教えた。


「分かった、 では行って来る」

「あ、 あの!!」


ホステスが叫ぶ。


「と、 途中までついて行って良いですか?

帰るのが一人じゃ心細くて・・・途中までで良いので・・・」

「・・・・・好きにしな」


本来ならば突き放すがこのチャンスを持って来たこの女は正に幸運の女神。

優しくしておいても罰はあたるまい。

画してホステスと、 傍から見れば同伴出勤に見えなくもない様な形で

モスキートはてくてく歩いて行った。


「それにしてもお若いのに幹部? クラスとか凄いですね」

「ん? まぁな」


ホステスに話を振られて相槌を打つモスキート。


「何と言うか・・・店に来る人とはオーラが違いますよ」

「褒めても何も出ねぇよ」

「いえいえ、 大物の方に顔を覚えて貰うだけでも充分です」

「大物、 ね、 悪くねぇ響きだ」

「ひょっとしてドイツの方?」

「あぁ、 生まれはドイツだ」

「それで幹部としてこちらに?」

「まぁな、 ピンチだって言うから来てやった」

「それは凄いですね!! 信頼されているんですか!!」

「まぁな、 一応真面目に仕事は熟すのが取り得だからなぁ」

「最近ピリピリしている状況を一変させる為に一人だけ派遣されるとか

もうヒーローの域ですよ!!」

「いや俺だけじゃない、 あと3人居るが・・・

まぁまともなのは俺だけだな」

「まとも?」

「あぁ、 他の連中はビビりのおばさんに髑髏と自分の子供の見分けがつかない女に

飲んだくれのおっさん、 まともなのは俺だけだ」

「でも何かしらのスーパーパワーみたいな物は有るんですよね?」

「さぁな、 俺は知らんよ」

「何だか凄いですね!! 所でオークションを最近やるって聞いたんですが

新規のお客さんとかが欲しいので何処でやるのか教えてくれませんが?」

「俺も知りてぇよ」

「そうですか」

「おっと、 そろそろホテルが見えて来たな、 お前は何処で別れる?」

「あぁ、 良いんです」

「うん?」


ホステスは思い切りモスキートを殴り飛ばして壁に叩きつけた。

壁にめり込むモスキート。


「ッ!! 美人局※4!!」



※4:嘗て実在したとされるイギリスの諜報機関の一つ。

女性だけのスパイ機関で諜報活動や暗殺を行っていた。

それが転じてか弱い女性のふりをして色々やらかす女性の事を美人局と呼ぶ。

くノ一とも呼ぶ。



「ウィルパワーで防御したか」

「舐めるなよ、 この俺が女如きに」


顔面を殴られ気絶するモスキート。


「こちらこそ人間如きに後れを取る道理は無い。」

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