ダイナー・ドランカー
再誕歴7704年メイ12日。
北太平洋上、 客船メイフラワー22世号。
回想が終わりエンペスキーとコールスローは食堂に居た。
コールスローは2枚目のステーキを食べ始めた。
「太りますよ」
「もう手遅れだよ」
溜息を吐くエンペスキー。
「如何思います?」
「世の中には150kg代の人間も居るし、 私なんかまだまださ」
「・・・・・大臣達の体型規定とか決めた方が良いかもしれませんね」
「何でだよ」
「太り過ぎはみっともない、 病気なら兎も角肥満体ともなると
自己管理能力に疑問があると言わざるを得ない
ってそうじゃなくて、 フェザーの侯爵位の事ですよ」
「・・・・・いっちゃなんだがフェザー君に侯爵の格は無いだろうな
サリバンクラスが出て来るならフェザー君はボロ負け、 はしないだろうが
相当苦戦はするだろう、 良くて3位かな」
「3位か・・・それはそれで不満が残る決着ですね」
エンペスキーが呟く。
「2割でも相当痛いかい?」
「痛いですね
それに今回ベネルクスからハワイに行くまでに大分時間と金がかかっている
割と洒落にならない金額が」
「君は残ってても良かったんじゃないのかね?」
「財務大臣としてこんなに金のかかる案件をほっとけませんよ・・・
サン伯爵令嬢、 じゃなかったサン伯爵夫人は残っていても良かったのですがね」
「ハワイに行きたかったんじゃないの? 行ったとしても付き添いとしてはオッケーだと思う」
「法的に問題無いですがねぇ・・・金がかかりますよ」
水を飲み干すエンペスキー。
「さっきから水を飲んでるのも節約の為か?」
「この食堂8ユーロしますよ、 水」
「高いなぁ・・・」
「そんなもんでしょ、 船上では全てが割高だ」
「酷い話だ」
もぐもぐと50ユーロのステーキを食べるコールスロー。
「陛下は何を企んでいると思う?」
コールスローが問う。
「これまでの功績と今回の件を丸く収めれば侯爵位は貰ってもまぁ許せるだろうとは思う
しかし失敗すればただでは済まない、 陛下の元で働くと言うのは落としどころとしては良いだろう
フェザーの事は前々から陛下をお気に召していたし何だかんだ理由を付けて
フェザーを手元に置いておきたいだけだろう」
「サン伯爵夫人は? 彼女も手元に置きたいのか?」
「悪趣味な話だが見せつけたいのかもしれないな」
沈黙が二人を包む。
「「それはないか」」
流石にそこまで悪趣味では無いと結論付ける二人だった。
「しかしサン嬢に伯爵位とは・・・如何思います?」
「聊か高い気もするなぁ、 ハウバリン公爵が如何思っているのかが気になる」
「流石に高過ぎる気もする・・・噂によると今年に入って陛下は暫くサン嬢と一緒に居たらしい」
「贔屓・・・な訳無いよなぁ」
首を傾げる二人だった。
「と言うか一緒に居て何をしてたんだ?」
「お茶会とパジャマパーティー」
「パジャマパーティー・・・って一体何?」
「友だちの家に泊まり込みでパジャマ姿でうわさ話や遊びに興じるパーティですよ」
「知らんなぁ・・・若い子の中では流行ってるの?」
「私の妻ともやりましたが・・・」
「・・・・・暗に私に友達が少ないと言いたいのか?」
ジト目をするコールスロー。
「じゃあやります?」
「何を?」
「パジャマパーティー」
「・・・・・既婚者と中年のオッサンで?」
「既婚者と中年のオッサンで」
「・・・・・止めよう」
「そうですね、 しかしながらサン嬢にも爵位を与えたのは大きい
先程も言ったが負債2割負担の3位でも納得は出来ない額
3位以上でも良いとは言ったが3位でも負い目に出来る」
「しかしサリバン以外誰が出るか分からないのなら
2位にはなれるのでは?」
「ハワイの代表は恐らくカメハメハ大王が出ると推測される」
「国王自らが?」
「あぁ、 かの大王の強さは凄まじく
ハワイのアメリカ編入を単騎で食い止めたとも噂される人物だ」
「それは興味深い・・・そろそろ部屋に戻りますか」
「ですな」
立ち上がるエンペスキーとコールスロー。
護衛の騎士達も一緒に客室に戻った。
その話を端で聞いていた男二人。
テーブルには大量の酒瓶が既に空いていた。
「聞いたか? サリバンが来るってよ」
カールした髭の男がひっひと笑う。
「所詮はロートルだ、 俺の敵じゃねぇよ」
包帯を頭に巻いた男が酒瓶を一本開ける。
「そんなに呑んで大丈夫かぁ?」
「久々のお祭りよ、 テンションあげてこーぜ」
「良いけど負けたら俺もお前も殺されるからな、 覚悟しろよぉ」
冗談めかして髭の男が言う。
「おっけーおっけーオールオッケーよ」
こちらも冗談めかして更に一本酒瓶を開けた。
「ふー、 しっかし船の上じゃあ女を買えないってのも困りもんだなぁ」
「我慢しろ、 ハワイに行ったらハワイアンガールを思う存分堪能できる」
「そりゃあ楽しみだな」
がはは、 と豪快に笑う二人だった。




