ヘビー・クラス・チャンピオン
「・・・・・フェザー氏と陛下が個人的な付き合いが有るのは有名な話です
存じ上げております、 ですがこれは贔屓では?」
エンペスキーが尋ねる。
「妥当だと私は考える、 ワームウッドにも相談したが
フェザーなら問題無いという話だ」
「・・・軍務大臣殿が仰るのならば私は何も言いません」
納得は出来ないが引き下がるエンペスキー。
「しかし政府お抱えの決闘者もいるのに何故フェザー氏を態々?」
「いくつか情報が入っている、 今回の決闘にはアメリカの決闘者も参加する」
「一体誰が?」
「ジョン・L・サリバン」
「「あのサリバンが!?」」
驚愕するエンペスキーとコールスロー。
ジョン・L・サリバン。
素手での殴り合いならば世界で一番強いと称されるAAA級決闘者である。
ヘビー級のボクシングチャンピオンでもあり素手で負けた事は数回しかない。
エンペスキーとコールスローは嘗てサリバンを直に見た事が有る。
アメリカからの農作物の輸入に関して一時期揉めた事があり
決闘で決着を着ける事になった。
ベネルクス王国側からは特命省に所属する決闘者リッスンブールが
アメリカからはサリバンがそれぞれ出されて決闘を行った。
リッスンブールはウィルパワーを帯状にし、 相手の攻撃を受け止め無効化するという
防御に置いてはフェザーにも匹敵し得る男だったが
サリバンに殴り飛ばされ一撃でKOされた。
「サリバン相手では流石にフェザー君でも勝ち目は無いかと」
「では我が国に奴に勝てる人材はいるのか?」
「・・・・・」
思い浮かばない。
「チーズならばどうでしょうか?」
コールスローが問う。
「いや、 無理だな」
「な、 何故? チーズのKATANAビームならば優位が取れるんじゃないんですか?」
ベネルクス95世の否定に戸惑うコールスロー。
「決闘はハワイの現地法律に基づいたルールで行われる
ルールは武器無しの殴り合い、 殺人は厳禁、 5m四方の決闘場から落ちてもアウト」
「殺人は厳禁ですか?」
「ハワイでは残虐な見世物を禁じている、 観光大国だからな
そういうのには気を使うのだろう
それにボクシングのリングは5.5m四方が一般的だからボクシングのルールに近い
素手でも戦えるS級決闘者は少ないから妥当だと思う」
「・・・・・あ、 そうだ、 何故今回アメリカの決闘者が出て来るのですか?」
エンペスキーがふと疑問を口にする。
「件の会社は様々な国から融資を受けている」
「ハワイチケット※1ですか」
※1:ハワイに行く為に仕事と言う名目でハワイに取引相手を配置する事を指す。
「まぁそうなるな、 今回我が国とアメリカの他にメキシコとオーストラリア
そしてハワイ、 五か国が参戦し1VS1の総当たり戦を行う
勝ち星が少ない方から4割3割2割1割と負債を負担する」
「つまりは勝ち星を1番多く取れば負債0と言う事ですね
もしも負債を負った場合、 サン令嬢は負債を支払えるのですか?」
「・・・・・」
エンペスキーの言葉に蔑視を向けるサン。
「エンペスキー、 彼女は既に令嬢では無いよ」
ベネルクス95世の言葉に慌てて頭を下げるエンペスキー。
「それはそれは失礼いたしました、 もう御結婚なさっていたとは」
「結婚じゃない、 受勲よ、 伯爵位を授ける事になった」
「・・・・・はい?」
困惑するエンペスキーとコールスロー。
「お言葉ですがまだベルモンド伯爵はまだ現役なのに
爵位を授けるとは、 少々・・・」
コールスローが戸惑いながらも喋る。
「フェザーの活躍から考えると妥当でしょう」
「でしたらフェザー君の爵位を上げた方が」
「そちらも上げるつもり」
「左様ですか・・・彼も伯爵位ですかな」
「侯爵に上げる」
「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????」」
体に電流が流されるが如くに吃驚するエンペスキーとコールスロー。
「お待ち下さい!! 幾ら何でもそれはおかしいでしょう!!」
「それは流石に上げ過ぎです!! 貴族達の反感も買いましょうぞ!!
貴女の贔屓でそこまでするのは「コールスロー」
ベネルクス95世の言葉に止まるコールスロー。
「私が贔屓で侯爵にすると本気で言っているのか?
私が即位して来てからこれまで私が贔屓を行った事が一度でも有ったか?
乳母だった女も失敗したら切り捨てる位の事はしているから
私がそんな贔屓をする様な女では無いと分かると思うが、 どうだ?」
「・・・・・軽薄な発言でした、 お許しください」
「許そう、 以後気を付けよ」
「は・・・」
今にも死にそうなコールスロー。
「・・・しかしあまりにも地位が高いのは問題かと
今回の件で失敗したら恥が大きくなりますよ?」
「失敗したら、 そうだな・・・上位3位に入らなかったらフェザーとサンの爵位は没収し
損害分私の元で働いて貰おう、 構わないな? サン伯爵夫人?」
「問題有りません」
サンはにこやかに答えた。




