ゾーズ・フー・アー・カット ゾーズ・フー・アーコンスパイア
再誕歴7701年ジュニアリー12日。
N5駐在騎士団詰め所。
「何なんだコレは・・・」
次々と運ばれてくる騎士達を見て絶句するオダハラ。
フェザー達と戦いボコボコにされた騎士達である。
フェザー達の目論見通り、 圧迫され始めている。
「ふざけんな!! 医務室のベッドが足りないだと!?」
「しょうがねぇだろうが!! こんなに一度に大勢がやられるなんて想像してねぇ!!」
「団長!! 如何すれば!!」
「・・・・・街の病院にも運んでおけ」
「無理です!!」
「何でだよ!!」
「この街に病院は無いじゃないですか!! 我々が難癖付けて潰したんですよ!!」
「ぐっ・・・!!」
確かにそうだった。
オダハラは自分の医療費を踏み倒す為に街の病院を廃業させたのだった。
「誰の仕業だ!? まさかモーントの連中じゃねぇだろうな!?」
「余所者だそうです!!」
「余所者ぉ!?」
「だ、 団長!!」
「今度は何だ!?」
「イカレ神父の教会に行った連中が帰ってきました・・・」
「おお!! 良し!! 教会に居た連中は連れて来れたな!!」
「それが・・・」
「あん?」
とぼとぼとやって来る18人の騎士達。
「・・・・・おい、 まさか逃げ帰って来たのか?」
オダハラが手の平を騎士達に見せる。
「ひっ!!」
「ち、 違うんです!! 棍棒を持った連中が押し寄せて来て」
「剣を持った騎士が棍棒を持ったゴミにやられた? ふざけろ」
手の平にライオンのタトゥーが現れ実体化し騎士に襲い掛かった。
「うわああああああああああああああああああああああ!!!」
大型のライオンになす術も無く殺される騎士。
「ひいいいいいいいいいいいいいいい!! お、 お許しをおおおおおおおお!!」
帰って来た騎士達は失禁する。
これは一体どういう事なのか?
オダハラの背中にはライオンのタトゥーが彫られている。
このタトゥーを彫った者は凄まじい技量を持っており
まるで生きているかの様に描かれていた。
オダハラはそのタトゥーにウィルパワーを注ぐ事で実体化させて操る事が出来るのだ。
「ふん、 おい、 こいつ等一番下に連れてって仕事させろ」
側近の騎士に命令するオダハラ。
「仕事・・・?」
「生贄」
ぽつりと呟くオダハラ。
「え」
「何だ?」
「い、 いえ、 さぁ来いお前達!!」
側近の騎士達が逃げて来た騎士達を連れて行った。
「・・・宜しいのですかな?」
テラーが現れた。
「爺さんか、 準備出来たか?」
「気乗りしませんが準備は出来ました、 しかし宜しいのですかな?」
「何が?」
「あの者達は貴方の部下では?」
「使えん部下は要らん」
「失礼、 言葉足らずですな、 貴方が男爵から賜った部下では?」
「どうせ元を辿ればチンピラよ、 使い潰しても構わないと男爵から言われてる」
「皿を数えられなければ良い※1 ですが」
※1:日本の故事成語の一つ、 皿数えに準えた言い回し。
自分の部下や奉公人を大切にしなさいと言う意味がある。
語源は曖昧だが大まかに言うと
『奉公人を無碍に扱った主人が皿を数えられて死ぬ
だがら奉公人を無碍にしてはいけない』と言う訓話である。
皿を数えるのは寿命の宣告とする説。
奉公人が忍びで皿を数えていたのは暗号で聞かれたので殺した説。
様々な説があり今でも語源がハッキリしない。
「何?」
「いえ、 何でもありません、 それよりも先の者達の中に
ワシの教え子が居た筈、 しかしながら帰って来ていない」
「・・・・・逃げた?」
「あり得ませんな、 ベネルクス二刀流を半端ながら学んだ者が
そこらへんの三下には負けませぬ」
「つまり教会に居るのは強者と言う事か」
「そうなりますな、 人攫いはやはり気が引けるので
教会に行って戦おうと思います」
「好きにしろ、 何処のヴァカか知らんが首を取って来い」
「了解しました」
テラーは詰め所から出る、 そしてデビットとルーが入れ替わりでやって来た。
「な、 何の御用件でしょうか?」
震える声で尋ねるオダハラ。
「事の進捗を聞きに来たのよ、 残り20日も無いが大丈夫か?」
「あ、 い、 いえ、 実は少々問題が起こりまして・・・」
「問題ねぇ・・・」
ちらりと横を見るデビット。
大勢の負傷者がそこら中に転がっている。
「なるほど、 如何やらお前達に喧嘩を売っている奴が居る様だなぁ」
「その様でして・・・話を聞くと余所者の仕業の様で」
「ふん、 何処の誰かは知らないが調べる必要が有るらしいな
どう対応するつもりだ?」
「そ、 それは・・・その・・・」
側近の騎士をちらりと見るオダハラ。
「わ、 私!?」
「カートライトは今どうなってる!? 酔いは覚めたか!?」
「い、 いえ、 まだ味噌に漬け込まれているので・・・」
「か、 カートライトの酔いが醒めたらすぐにでも向かわせます!!」
「ふん、 急げよ」
デビットとルーが詰め所から出て行った。
「ちょっと急ぎ過ぎじゃないの?」
歩きながら喋るデビットとルー。
「1000万の大仕事よ、 ヘマは出来ねぇ」
「失敗はあの団長のせいに出来るでしょ
失敗しても俺達には問題無し!!」
「確かに問題はねぇし咎められねぇが俺達にもボーナスが入る
神を信じよ、 しかしラクダをつなげ※2」
※2:トルコの諺、 やる事はやろうと言う意味。
「おい、 そこの二人」
「あん?」
「何?」
デビットとルーが振り返るとそこには一人のマフィアが立っていた。
「モーント・ズンディカーズの奴か、 一人で俺達に勝てると思っているのか?」
「黙りな、 こっちも面子を潰されて黙っている程お人好しじゃねぇ
女から奪った財布を返しな」
「女から奪った財布? 何の事かな?」
「恍けんな、 モーント・ズンディカーズのキャバレーのホステスから
財布盗んで逃げたらしいじゃねぇか」
「おい、 お前滅多な事はいうもんじゃねぇよ」
アフロを外すデビット。
「悪いがアンタから財布を取り戻せばホステスと一晩しっぽりと出来るんだ」
「女の為に命捨てるか、 度し難いな」
「行k」
どしゃ!! とマフィアの腹に穴が空いた!!
「!?」
「何!?」
咄嗟に避けるデビットとルー!!
マフィアの腹を槍が貫通したのだ!!
「きゃああああああああああああああああ!! 人殺しぃいいいいいいいいいいい!!」
女の叫びが響いた。




