4800・イヤー・レター
医者は目が資本である。
如何に患者の病気を見抜き診察するかが基本である。
故に医者はジョウゲンの取り出したナイフを見やる。
(金属じゃないな、 石のナイフか?
黒曜石じゃない、 白い・・・まさか!!)
全力で回避する医者。
紙一重で回避に成功、 したはずが
「・・・・・斬られたか」
腕が切断されたのだった。
そして即座に幹部の箇所を自切する。
切られた箇所は一瞬で腐敗するのだった。
「エルダー・ストーンか? そのナイフ」
「あぁ!!」
「なるほどねぇ・・・」
エルダー・ストーンは体の中に入れば強くなれるが化け物になる。
但し量を調整すれば問題は無い。
患者達に投与して能力を覚醒させる薬剤には
微量のエルダー・ストーンが含まれているがこの程度ならば問題は無い事を
医者は夥しい程の人体実験で知っていたのだった。
何故エルダー・ストーンが体内に入ってパワーアップするのだろうか?
話は単純である、 エルダー・ストーンはウィルパワーを通しやすい物質だからである。
体内に取り込まれ体中にウィルパワーを流しやすくする線を作る事が出来る。
平たく言えば電流を流す電線を太くする様なものである。
より多くの電流を流せ宇野は自明の理。
「なるほど、 刀剣にすれば問題は無いか
しかしそんなサイズのエルダー・ストーンを贅沢にナイフにするとはな・・・
と言うか加工できる技術も有るのか、 驚いた・・・
ウィルパワーを流し込んで体を破壊する、 最早毒の域だな・・・だがしかし」
医者の雰囲気が変わった。
「死のリスクがあるのならばこちらも対応を変えよう」
心臓発作の能力を発動して心臓発作を起こさせようとする医者。
しかし視界から逃げられる。
「それを使ってるタルパはもう見たよ!!」
「手の内バレていたか、 まぁ問題無いけどな」
誇大妄想により体中に大量の眼を作り視界を拡げる医者。
ざく、 とナイフが眼に突き刺さる医者。
「!?」
素早くナイフを眼から抜き患部を切断する医者。
「がっ!?」
ウィルパワーは凄まじい勢いで脳に届く。
視神経から脳にダイレクトにウィルパワーが通ったのだ。
複数増やしていても視神経が繋がっている
全ての脳に視覚と共にウィルパワーが伝導し破壊される。
「アマイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
体から大量の針が飛び出し、 体が爆散し周囲に針が飛び散る。
ジョウゲンは全力で回避と迎撃を行い、 針を避けようとするも
肩に深針が突き刺さる。
「っ!!」
痛みが並では無い、 毒と判断して即座に肩を切断する。
「はぁ・・・だがこれで」
「終わったとでも?」
医者は肩で息をしながら再度復活する。
「脳味噌全部打っ壊したと思ったが」
「生憎ながら見たらアウト系とか感じたらアウト系とか
そういう類の代物は沢山有るからな、 神経をシャットダウンしている
スタンドアロンな脳味噌は一個は作ってるんだよ
しかし大分疲れる・・・」
「大分疲れるか・・・」
ジョウゲンは溜息を吐く。
確かに医者は消耗している
しかし消耗を加味しても未だに余力を残している。
ジョウゲンは自身のウィルパワーよりも巨大なウィルパワーを感じていた。
「でもお前、 さっきから能力は強い、 複数の能力を使っているが
俺に出し抜かれまくっている、 さては実戦経験は殆ど無いな?」
「ぬかしやがれ、 お前がどうやっても私は殺されない
そういう確信をもってここに来ているんだ
徹底して危険を避ける、 これが長生きの秘訣だよ」
「危険が無い人生って生きているって呼べるのかよ」
「危険にツッコむ奴は単なるヴァ」
医者に戦慄が走る。
「この悪寒はチーズか!! ちぃ!!」
医者は体を作り変える、 人では無くまるで昆虫の様な体。
昆虫の肉体が人体よりも強いのは最早自明の理。
人体サイズの虫が医者が想定する最強である。
が
「のろま」
遠距離から一気に近付いて来たマカロニに一刀両断される。
「っううううううううううううううううううううううう!!!
何者だ貴様ぁあああああああああああああああああああああ!!」
医者の絶叫と共にマカロニは医者の腹を摩った。
「良し、 これか」
「っ!?」
現れるのは転生の魔法陣、 医者の根幹を成す秘術である。
最悪殺されても転生するから何も問題は無いと医者は思っていた。
「やめ、 やめて・・・頼む・・・」
医者は臆面もなく命乞いをする。
彼の状態を表すのならば腹を割かれ内蔵を掴まれている状態である。
最早命乞いしか出来る事が無い。
「いやだねぇヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアカ!!!」
マカロニは魔法陣を掴むと握りつぶした。
4800年前から生きている怪物はここで絶命したのだった。




