アレイスター・クロウリー
「・・・・・何者だ?」
「アストロジャー」
無呼吸の問いかけに対して
アストロジャーは杖を構えて光線を発射する。
今までの彼女が扱う魔法とは根本的に異なる物である。
「向かい合っていれば避ける事は訳無い」
スッと避ける無呼吸。
避けると同時にフェザーに斬られる。
「!?」
硬い、 肉を斬っている触感では無い。
即座に距離を取るフェザー。
そのフェザーに向かい光線を放つアストロジャー。
「・・・・・」
光線を掴んで回りながら無呼吸に放つフェザー。
「「嘘ォ!!?」」
流石にこれにはアストロジャーも無呼吸も驚愕する。
無呼吸は光線を受けるも貫通する。
しかし再生する。
「アストロジャー、 如何いうつもりだ」
アストロジャーに問うフェザー。
「私は星が好きだ」
「知ってる」
「だから星占いが好きだ、 大人になれば星や宇宙について調べるのも不思議ではない
その折に月の事を知った」
「君も月の信奉者、 って事か?」
「居るらしいな、 だが私は月の力が欲しい、 エルダーストーンとかな」
「こんな化け物になりたいのか?」
無呼吸を指差すフェザー。
「人を指差すな!!※1」
※1:人を指差す行為は古来から呪いをかける行為に等しく
とても失礼な行為に当たる。
「まさか、 私が注目しているのはその力だ
エルダーストーンには凄まじい力が込められている
その力を利用したのがこの杖と言う事だ」
「通りで、 禍々しいと思った」
「ふふ、 まぁしかし力が強過ぎて制御が殆ど出来ないのが難点と言う所かな」
「その程度の力で苦戦しているのエメラルドタブレットを欲するのか?
扱え切れないのは自明の理だ、 君の様な敏い女がそれを見逃すとは思えないな
何を企んでいる?」
「交換条件と言った所かな」
「誰かとの取引に使うと言う事か、 誰だ?」
「アレイスター・クロウリー」
「「!!」」
”大いなる獣”アレイスター・クロウリー。
イギリス帝国最後にして最強の魔法使いの呼び声高い大魔法使いである。
イギリス帝国は産業革命以前は魔法や魔術等の栄えていたが
近年の魔術や魔法の停滞による衰退により時の権力者が産業に注力する事を決定。
魔術結社【黄金の夜明け団】に参加したアレイスターは科学との徹底抗戦に移る。
科学者と魔法使いの戦闘は熾烈を極め世に名高いブライスロード戦において
魔法使い側はメイザース夫妻、 ”創始者”ウィリアム・ロバート・ウッドマン。
科学者側は”鉄道の父”ジョージ・スチーブンソン、 ”時の裁定者”ジョージ・グラハム
”蒸気の最高の友”ジェームズ・ワット、 初代アームストロング男爵をそれぞれの陣営が失った。
各々凄まじい傑物であり、 主力と言って差し支えなかった。
両陣営大打撃を受けたが人数的には科学者側の方が被害は甚大だった
これに乗じて【黄金の夜明け団】は科学者達の殲滅に移ろうとしたが
甚大な被害の立て直しを図るべきと、 意見は二分した。
この際に殲滅を提言したのは創設メンバーの一人ウィリアム・ウィン・ウェストコット。
立て直しを提言したのはアレイスターだった。
アレイスターと彼に賛同した者達は少数であり彼等は立て直しの為に別行動を取った。
この時にアレイスターもウィリアムも戦力低下した科学者達ならば
片手間でも倒せると踏んでいた。
だが既に技術継承は済んでおり、 戦力の低下は殆ど無かった。
個人の才覚が強く関係する魔法や魔術とは違い
技術は継承できるのだ、 結果としてウィリアム率いる殲滅派は壊滅。
アレイスターは残った仲間達と共に大陸に逃亡するのだったが
ドーバー海峡にてアームストロング男爵の開発したアームストロング砲の弾丸の雨で
大半の仲間は散って行った。
その後、 各地にて信奉者が集まっていたとは聞いていた。
「このタイミングでアレイスターか・・・」
戦慄するフェザー。
「所詮魔法使いなんぞ時代の遺物、 恐れるに足りん」
嘲笑する無呼吸。
「交換条件として法の書を貰える」
「魔導書か、 果たして割に合う取引か? それ?」
「割に合うね、 魔法に関しては君は無知だろう?」
「まぁ、 あんまり知らないな」
「・・・・・おい」
無呼吸がぽつりと呟く。
「無視すr」と言い切る前に光線が無呼吸を包む。
「無駄だって!!」
「いや、 ウィルパワーは減ってるよ、 このまま削り続ければ勝てる」
「年越しまでには終わるかな」
「ざけんじゃねぇ!! お前等二人なんぞに」
燃え上がる無呼吸。
「状況は分からんが、 こいつを殺せば手柄って事か?」
やって来たポイニクスが呟く。
「上等だ!! 二人も三人も変わらねぇ!!
来いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
無呼吸が叫び3人が突撃するのだった。




