パンデミック④
マーマレードは走った。
あの頃の様に、 嘗ての様に、 子供の頃の鬼ごっこの様に。
しかし今は・・・・・
「こんな所で何をしてるの!! ヴォイド!!」
マーマレードは叫んだ。
ヴォイド、 いや、 ヴォイドを模したタルパが振り返る。
「正確には違う、 奴を模したタルパだ」
「・・・・・」
マーマレードも腐ってもS級決闘者、 その事が事実だと認識した。
「・・・・・このタルパの群れも・・・・・モーント・ズンディカーズの奴の仕業?
ヴォイドが・・・・・モーント・ズンディカーズに入ったって・・・聞いたよ?」
「そうだな」
「何でヴォイドは・・・・・モーント・ズンディカーズの下に着いたの?」
「済し崩し的だな」
「あ、 そう」
「あれ? 詳しく聞かないの?」
「もう準備できたし畏み畏み物申す」
二礼二拍手一礼をしながら祝詞を唱えるマーマレード。
「っ!!」
「神謀り 」
注連縄を操作し、 既に領域を区切っている。
個体領域を発動した。
因果律を縛る神を謀る所業が展開される。
「不思議の国」
「!?」
ヴォイドを模したタルパも個体領域を展開する。
「個体領域を展開するタルパ!? 滅茶苦茶じゃない!!」
「侮って貰っては困る、 さぁ領域の押しあいだ」
個体領域の同時展開。
一つの土地に2つ建物が建てられない様に
一つの土地に個体領域は2つ展開出来ない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「はああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
互いに領域の押しあいを続ける。
だが先に限界が来たのはマーマレード!!
「っ!!!!!」
注連縄の補助ありき個体領域。
本物には遠く及ばない!!
だが!!
「これでも喰らええええええええええええええええええええ!!!!!」
「!?」
首絞めの縄をヴォイドのタルパに向かって投擲するマーマレード。
即座に縄をウィルパワーで操りヴォイドのタルパの首が締まる。
タルパが呼吸をするのか怪しい為、 マーマレードは絞殺ではなく
首の骨を圧し折りにかかった!!
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!?」
ヴォイドのタルパは必死に首から縄を外そうとするが無謀である。
アナコンダに締め上げられているのと同じ状況だ※1。
※1:ワニを締め付けて窒息か骨折させる位のパワーである。
「・・・・・」
最早これまでと悟ったヴォイドのタルパは
個体領域を極小に再定義しなおした。
個体領域対策の手法の一つである。
個体領域を狭くする事で強固にする事が出来る。
本来、 敵と一緒に入り戦いやすい環境にするのが個体領域の基本運用だが
個体領域を狭くして強固にする事によって
敵の個体領域の内部に自分の個体領域を展開し
敵の個体領域から逃れる事が出来るのだ。
そして
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「!!!?」
不思議の国の効果を自身に適用させて
自身の力を増強し縄を引き千切る事に成功した。
そして全力で地面を蹴り、 マーマレードに近付き殴りかかる。
マーマレードは咄嗟に縄でガードするも勢いを殺しきれずに殴り飛ばされる。
「がはっ・・・」
大ダメージを受けるマーマレード。
起き上がれない、 何処か骨が折れた様だ。
「っ!! え?」
マーマレードは目を疑った、 ヴォイドのタルパも大怪我を負っている。
手と足がぐちゃぐちゃになっている。
「・・・・・上げたパワーに耐えられない、 って事?」
「本来は自分以外の奴の攻撃力を上げて戦わせる個体領域だからな」
「糞みたいな他力本願ね」
「俺もそう思うよ、 だがまで手足は一本ずつ残っている
これならばお前とも相打ちに持って行ける」
「じゃあやって見ろ!!」
マーマレードは持っていたロープを取り出し周囲に巡らせる。
次の瞬間、 ヴォイドのタルパが全力で突進して来る。
あの頃の様に、 嘗ての様に、 子供の頃のじゃれあいの様に。
だが互いにもう大人である。
ヴォイドのタルパは地面に激突した。
全身がひしゃげて消滅し始める。
一方マーマレードはロープで自らを後ろに全力で引っ張り回避に成功。
「はぁ・・・はぁ・・・」
何とか辛勝した、 と言う所だろうか。
ざっ、 と足音がする。
「・・・ソレデか・・・」
「マーマレード・・・」
現れたのはソレデ・E・ノカだった。
今にも死にそうな眼をしていた。
「ネヨー呼んで来て、 流石にこのままじゃあ死にかねない」
「それは出来ないな」
「・・・・・は?」




