ブロークンワールド
再誕歴7701年ジュニアリー9日。
襲い掛かるN5駐在騎士団団員やモーント・ズンディカーズのチンピラをボコボコにしながら
N5内を徘徊するフェザー達。
「道を尋ねようとして騎士に声をかけたら襲われるって関ケ原※1 ですかー」
※1:日本人の武人にとってのトラウマ、 関ケ原の戦い。
武に生きる者ですら忌避し勝者である
”ザ・ジャパン・スリーガイズ・ラスト・アンド・ビッグ・ワン”徳川家康ですら
『あの戦いは地獄の具現と言う言葉ですら足りん』と恐怖し
戦い生き残った者は殆ど心に傷を負った。
薩摩の武士ですら心折れた者もおり、 恐怖の記憶は遺伝子にも受け継がれ
今や日本人にとって関ケ原とは地獄と同義であるが
隔世ごとに次第に恐怖が薄れている為、 クラブはヘラヘラと例える事が出来る。
クラブが騎士達をボコボコにしながら軽口を叩く。
「でも大して強くないわね
まさか私程度の空手が役に立つとは思わなかったわ」
サンもチンピラをボコボコにしている。
「中々やる、 見直しましたよサンさん」
チンピラと騎士達をボコボコにして作った山に腰かけるツゴモリ。
「うーん↓ おばあちゃんをスルーしてくれるのは楽だけどちょっと寂しい↓」
「まぁまぁ、 良いでしょう、 あ、 そうだフェザーさんは?」
「ここです」
トコトコと路地裏から歩いて来るフェザー。
何故か二本の刀を持っている。
「騎士の中にベネルクス二刀流の使い手が居ました」
「あの恥知らずの爺の流派ね、 それで?」
「刀奪って両手折って帰した」
「正しい判断ね」
「正しいの?」
「死人はパンを食べませんから※2」
※2:死人は死んでいるので如何する事も出来ないが
怪我人は怪我をしているので治療しなければならない
つまり戦いの際に敵に死者を出すより怪我人を出した方が
敵のリソースを減らす事が出来る。
「まぁ、 良く分からないから任せるわ
それにしてもホテル何処かに無いかなぁ・・・」
「ねぇ↑!! これ見てよ!!↑」
マタが大声を挙げる。
「如何しました?」
「この街の地図よ!!↑」
地図が書かれた立て看板を発見した。
「再誕歴7670年の地図ですか・・・少し古いけど大丈夫かな」
「とりあえず行ってみよう、 他に術も無いし」
画してフェザー一行はホテルに向かった。
地図に有ったホテルと名前は違うが、 ちゃんとホテルは有った。
「ホテル・モーント、 中々立派なホテルね」
「うーん・・・↓ ちょっと高級そうねぇ・・・↓ 大丈夫かしら」
「値段を聞くだけ聞いておきましょう」
ホテルの中に入るフェザー一行。
ホテル内は意外と綺麗に清掃されている、 立派なホテルである。
しかもビジネスホテルだとかそういう系統では無く立派なエントランスのホテルである。
「いらっしゃいませ、 ホテル・モーントにようこそ
私は支配人のヨハンです」
モーント・ズンディカーズN5支部支部長の表の顔。
それはホテル・モーントの支配人であるヨハン。
支配人自らが受付をしていると言うのは奇妙に思うかもしれないが
ホテルと言う外部の人間がやってくる場所に身を置いて
やって来た人間を自分の目で直に判断する為に
こうして自分で対応するのはおかしい事ではない。
「私はベルモンド伯爵令嬢のサン、 私達4人と
このご年配の方に部屋を取って頂戴」
「・・・失礼ですが身分証はお持ちですか?
偽貴族を泊めたとなると後々問題が」
「貴族健康保険証※3 で良いわね」
※3:貴族の特権の一つ。
ヨーロッパでは日本の国民皆保険制度の様な制度はあるが
やはり医療費が高い為、 三割の自己負担でも大きい。
貴族健康保険は全額を国が負担してくれる制度である。
「はい、 はい、 大丈夫です、 それではお部屋ですが如何されます?
鍵付きの部屋と鍵無しの部屋が有りますが・・・」
「普通スイートとかそう言う事を聞くんじゃないの?」
「スイートルームは現在満席となっております、 申し訳ございません」
「・・・こんな物騒な街で鍵無しは考えられないわね、 当然鍵付きの部屋」
「かしこ参りました、 それではご案内します」
ヨハンがカウンターから出る。
「お荷物は?」
「大丈夫、 持って行くわ(フェザーが)」
ヨハンが先導してフェザー達を案内する。
「あぁ↑私は別部屋でお願いしますよ↑」
「別に同じ部屋でも私は良いけどね、 ツゴモリも良いでしょう?」
「構いませんよ」
「うーん↓でも若い女と男、 同じ部屋と言う事は人に言えない事をするつもりでしょ?」
「年寄なのに発言が中学生だなぁ・・・別に構わないでしょ?」
「大丈夫です!! 私おばあちゃん子なので!!」
クラブがにこやかに笑う。
「おばあちゃんが居るとは恵まれてるわねぇ※4」
※4:医療はまだまだ発展途上なので祖父母が居る平民は珍しい。
子と環境に恵まれなければ老人は生きられない。
金持ち等、 例外も存在するが。
「まぁ御祖母ちゃんは技術を身に着けて指導職に就いてました」
「あらそう」
階段を上る一行。
「あら、 良い絵じゃない」
踊り場に飾っている絵に関心するサン。
夜の湖畔に浮かぶ光球が美しく水面に反射している。
「夜に浮かぶ太陽、 中々に幻想的ね」
「それは月ですよ」
ヨハンが説明する。
「ツキ?※5 何それ?」
※5:この世界には月が無い
「神代に空に浮かんでいた夜中の太陽ですよ
神々との戦争で破壊されてしまって今は無くなり
世界のバランスが崩壊し、 時間の概念が可笑しくなったとされています
知っていましたか? 一日って元々24時間だったんですよ?」
「ふーん、 今の一日の4倍の長さねぇ・・・
まぁ神話とかそういうのには興味無いけど夜中の太陽って言うのは面白いわね」
「そうですね」
フェザーもサンの意見に同調する。
「・・・・・この絵は誰が描いた物です?
中々美術的に価値が有ると思いますが」
ツゴモリが尋ねる。
「このホテルを運営している会社のオーナーらしいです
私にとっては雲の上の方なので良く知りませんが」
「あらそう・・・」
ヨハンについて行くフェザー一行だった。




