チェコ・アンド・ギリシャ
チェコはヴァリャーグの死の情報を手に入れて直ぐに決闘者の派遣を取りやめた。
派遣の予定だったチェコ決闘局※1お抱えのスプリング、 ショール、 セーターの3人は
抗議に向かった。
※1:チェコでの決闘を取り締まる組織。
とは言っても立会は行わず、 どの決闘者が何処の組織や個人に
雇われているかを把握すると言う組織である。
これにより決闘者達の情報を詳しく知る事により
戦力の大きさを知る事で無用な争いを抑える役割を持つ。
また決闘者の育成も行っている。
「局長!! どういうことよ!!」
スプリングは桃色のツインテールを揺らして決闘局局長のフーララに問う。
「ヴァリャーグが死んだんだ、 君達を無駄死にさせる訳にはいかない」
「そんな弱腰で如何する!! 例のヴァリャとか言う奴の死の情報は出回っているのに
ドイツ、 フランス、 イタリア、 ベネルクスは一向に引かないんだよ!?」
「彼等の決闘者の層の厚さはこちらとは比べ物にならないんだよ」
「こっちと同程度のバルカンですら引いていないんだよ!?」
「勘弁してくれ・・・バルカンの治安悪いから国力は同程度でも
向こうは決闘者はかなり多いんだよ
チェコで君達レベルの決闘者が出るのは本当に100年に1度ってレベルなんだ
失うのは痛い」
「でも!!」
「ボス、 ちょっと待って」
ショールが淡い乳白色のツインテールを揺らしてフーララとスプリングの間に割って入る。
「フーララさん、 問題としてはヴァリャーグが死んで怖気づいて退散
って言うのは聊か体面が悪いんですよ」
「怖気づいたのは私達役人だ、 私達が泥を被る」
「それが駄目なんですよ」
ショールは首を振った。
「決闘局が怖気づく、 と言う事は決闘局の予算は当然ながら減るでしょうね
いざという時に役に立たない決闘者なんて居る価値が無いですから」
「・・・・・確かに予算が減るだろう」
「決闘局の予算が減る事は決闘者達にとって宜しくないと思いますよ
この国の決闘者は破落戸に毛が生えた程度ですからね」
「・・・・・それで如何すると?」
「問題を起こすので私達を謹慎と言う事で如何でしょうか?」
「ちょっとそれは無いんじゃないの? 私の名誉は如何なるのよ」
スプリングが訝しむ。
「名誉なんて興味の無い奴がやります、 セーター君」
「あい」
もこもこの萌え袖のセーターを着たセーターがやって来た。
「ちょっといたみますよー」
「・・・・・あぁそういう事ね、 良いよ、 セーター君
思い切りやってくれ」
セーターがフーララを思い切り打ん殴った為、 セーターと彼とチームを組んでいた
スプリングとショールは謹慎となり、 出撃は不可能となった。
一方ギリシャでは政府の役人が決闘代行業『コリントス』本社ロビーにて受付と
押し問答をしていた。
「ですから困るんですって!! 急なキャンセルは!!」
「しかしながら社長は話が違うと・・・」
受付嬢が役人と口論していると、 二人の男がロビーを通って行った。
「おいおい、 何で政府役人の私が止められて君達は入って来れるんだ?」
「私達は会社役員だよ、 君は何しにここに?」
「決闘を急に取りやめると社長が通達して来てね」
「何故?」
「・・・・・ヴァリャーグが死んだからだ」
「それは当たり前だ、 あまりにもリスクがデカすぎる」
「あ、 おい」
役員の二人は社長室に向かってコリントス社長にしてS級決闘者でもあるペリタスの前に来た。
「やぁ二人共」
ペリタスは40と社長にしては若いが一代でコリントスを
ギリシャ最大手の決闘代行業にした実績を持っていた。
コリントスは丁度珈琲を淹れていた。
「飲むかい? グアテマラの最高級品だ」
「いや、 結構です、 それで社長、 御話とは一体?」
「あぁ、 実は会社を売ろうと思ってね」
「・・・理由をお聞かせ願えますか?」
「もう一生分の金は稼いだからね、 命を張る必要もない
死ねば全部終わりなんだから無理もしたくないからね」
事も無げに言うペリタス。
|年商2500万《現実世界で言うと年商10億円》企業をあっさりと売ろうと言うのか。
「年商は沢山あるけども私の給料はその中の一部だからね
ここらでドカンと稼いで後はFire※2だ」
※2:Financial Independence, Retire Earlyの頭文字を略したもので
「経済的自立と早期退職」を意味する。
経済的に自立することで早期退職の実現を目指し
退職後は資産運用などで生計を立てていく。
「買い手は居るんですか?」
「丁度良い所にな
先方は特に役員や社員の入れ替えをしないようだから
仲良くやってくれ」
「しかし勿体無い・・・社長の才覚ならばもっと稼げますよ」
「欲を張った者からこの業界では死んでいくんだ
『もう少し欲しい』で引き下がるのが健全なのよ」
そう言って珈琲を飲むペリタス。
「秘書ぉぉぉ!! 水が臭い!! 如何なってるんだ!!」
「す、 すみません!!」
部屋の外から慌てて秘書がやって来て謝罪する。
「・・・これは健全か?」
「さぁ?」
役員たちは溜息を吐いた。




