スタンド・スティール
一息吐く無呼吸は異変に気が付いた。
「・・・個体空間が解除されない?」
既に嵐は収まり、 水面は凪いでいる。
ヴァリャーグは倒れた筈、 あの怪我ではまともに動く事は出来ない筈。
「・・・・・駄目だな、 トドメを刺さないと」
水落は生存と同義。※1
※1:確認もしないで状況を判断するのは危険と言う意味の諺。
日本の武将”モロダ”は頻繁に自らの部下を崖から落とし
積極的に水に落として生死をあやふやにすると言う。
無呼吸は水面に触れる。
「!?」
水面が突如せり上がり激突する!!
しかも水面に潜れない!! 水がまるで硬質のガラスの様に硬くなっている!!
「っ~~~~~!!」
無呼吸は急ぎ浮遊して水面から離れる!!
「なっ」
空も下がって来ている!!
個体空間故に端のある空間だ!!
恐らくヴァリャーグは水面下で個体空間を操作して
無呼吸を押し潰そうとしている!!
幾ら何でもこれでは一巻の終わり・・・
「優生侵攻!!
白々々々々しい!!」
無呼吸が個体空間を展開する!!
先程の押しあいは発生しなかった。
今のヴァリャーグは絶命寸前であるのだ。
「・・・・・」
ヴァリャーグは周囲を見渡した。
無呼吸は個体空間は
真っ白い部屋、 その部屋の中の瓶の中に自分達が居るのだと認識した。
「!!」
ヴァリャーグは異変に気が付く、 息が出来ない、 体が沸騰し始めている。
苦しむ、 しかし倒れない、 一秒ごとに体は崩れ始める
ならば崩れる前に叩き潰す。
「 」
叫び声は上がらない、 何故だろうか
疑問を捨ててヴァリャーグは全力で頭突きを放つ。
その頭突きに対してのカウンターをこれ以上ないタイミングで無呼吸は放った。
決まり過ぎる位のカウンター・・・・・
(ってそんな訳有るか!!)
すんなり決まったカウンターに対して違和感を覚えた無呼吸は
カウンターの後に身構えると同時に渾身の蹴りが飛んで来た。
文字通りの渾身、 ウィルパワーを、 否、 魂諸共全てを込めた一撃
無呼吸は両腕で咄嗟にウィルパワーを込めてガードする。
受けごと吹き飛ばされ両腕と背中を強く打った。
しかし文字通りの全力にヴァリャーグの足は、 否全身が砕け散った。
「・・・・・」
その様を見て無呼吸は『きつかった』と言う事が出来なかった。
余りにも凄惨な場面を見て暫し硬直、 警戒せざるを得なかった。
また逆転するのではないかと戦慄したのだ。
「・・・・・」
10秒か、 1分か、 それ以上の時間を無呼吸は佇み
個体空間を解除したのだった。
「ご、 御無事でしたか?」
ブラムが尋ねる。
「皮一枚の勝利だった・・・両腕と背中、 かなり打ったな」
「な・・・だ、 大丈夫ですか?」
「怪我の治療に専念する・・・暫く一人にしてくれ」
「は、 はい・・・」
「あ、 そうだ・・・」
無呼吸は兜を指差した。
「この兜を表に掲げて置いてくれ」
「え?」
「じゃあ私は休むから・・・」
無呼吸はふらつきながらも自室に戻って行った。
ヴァリャーグの兜をVHOを表玄関に出した効果は覿面だった。
既に間近に迫って来ていた、 ハンガリー王国のS級決闘者クリック・クリック・クリック。
そして彼の共をしていたハンガリー王国のA級決闘者ブタベストは驚愕したのだった。
「おいおいおいおいおいおいおいおい・・・・・俺の目はおかしくなっちまったのかブタ君
あの兜はヴァリャーグの物じゃないのか?」
クリック・クリック・クリックは汗を流しながら尋ねた。
「クリックの旦那、 俺の頭がおかしくなったんじゃなければ
あれはヴァリャーグのおっさんの兜ですね」
ブタベストが脂汗を流して答えた。
「如何するよ?」
「逃げましょう」
「いやいやいやいやいやいやいやいや・・・・・ここで逃げたら俺臆病って事にならないかブタ君」
「クリックの旦那、 逆に考えましょうぜ
ヴァリャーグのおっさんがやられた事を報告しに行くって考えれば良いんですぜ
これは他の連中と情報共有の為に一旦引いたって事になりますから
臆病って事にはならんでしょう」
「そ、 それもそうだな!! 確実に情報を持ち帰った方が有益だろうしな!!」
二人は帰還しヴァリャーグの死を伝えたのだった。
これによりチェコとギリシャの決闘者は今回の件から手を引くのだった。
事態は更なる混迷に突入するのだった。




