バルコニー・トーク
第3ダンスホールのバルコニーにて会場を見る
【ベネルクス・ゴールド・ライオン】社内序列5位のB級決闘者アパートメント。
やや中年だが渋いナイスミドルでいわゆるイケオジだった。
「やぁアパートメント」
へらへらしながら現れるのは社内序列2位のカタパルト・ベネングウェイ。
若そうに見えるが実際はアパートメントと同い年である。
更に大量のソーセージやハムを並べて食べながら現れた。
「やぁ、 カタパルト、 喰い過ぎじゃねぇか?」
「これ位軽い軽い」
「・・・・・挨拶とかは良いのか?」
「俺が業界人と仲良くしても意味ねぇだろ」
「いや、 有るんじゃないか? 決闘者辞めた後とかの
セカンドキャリアとかの為にも」
「決闘者辞めるぅ? 何でだよ、 学の無いアンタや
落ち着きの無い俺でも務まる仕事だぞ」
「怪我して再起不能になったらそこでおしまいじゃないか」
「確かにな」
一気に落ち込むカタパルト。
「俺も保険とかに入っているけどさ、 入っている保険を調べたら不払いが結構多いんだよ、 その不払いの原因がもう本当に微小でそんな事で払わない事なんて有る? って思うケースが多いんだよ、 保険料が割高で信用が高いとされる保険でもこれで俺はもう人間不信になりそうだよ」
「そ、 そうか・・・俺も、 今回のコレが終わったら引退しようと思う」
「あれあれぇ? レオ社長に一生ついて行くんじゃなかったのかい?」
落ち込みから一気に煽りに転じるカタパルト。
「レオ社長は俺の一生の恩人だ、 だが最近の社長は決闘者として失格だと思う
権力者に媚を売ってコネ入社とかコネ昇格とか
レオパルドやピューマの序列が正しいと思うか?」
「まぁそうだな、 だが腐っても業界大手だ、 転職するとなると厳しいだろう
給料も下がるだろう」
煽りから心配そうにするカタパルト。
「金の事よりもレオ社長が腐っていくのを見たくない
あのカッコいい決闘者が晩節を腐らせるのを見たくない」
「・・・・・気持は何となく分かるよ、 あの人の現役時代、 カッコよかったもんな」
涙を流すカタパルト。
「現役時代もそうだったけども俺を拾ってくれた時の事は忘れない
弁護士付けてくれて、 その上で俺を鍛え上げてくれたからな」
「その話は知らんが・・・まぁレオ社長も
ゴールド・ライオンも落ち目だ、 何とかしたいが俺やお前では不可能
とは言え金払いは良い」
「上ばかりはな、 昔は下にも良い会社だった
半島戦争での遺族救済雇用※1 とかも積極的にやってた。」
※1:戦争時に亡くなった遺族を雇用する事で生活を保障する為の制度。
「今は貴族達に媚を売って売り上げを上げようとしている
決闘者を使っての訓練と言う名のままごと
決闘の斡旋・・・・・これが決闘者のやる事かよ・・・」
「気持ちは分かるがなぁ・・・・・ぶっちゃけ今回のコレ、 如何思うよ」
「やってられんわ、 何時から決闘者は軍隊の真似事をするようになったんだ?
って言うのが第一印象だ」
「確かにな、 これは決闘者じゃなくて騎士団や軍隊の仕事だろう・・・」
呆れたように溜息を吐くカタパルト。
「立会人達の機能不全が無かったら間違い無く騎士団の仕事だったろうに」
「・・・・・もしや立会人を含めたモノリスの不具合は連中の仕業か?」
震えるカタパルト。
「無くは無いかもしれん・・・だとしたら想像以上の技術力だぞ?
戦争で使えば文字通り戦局がひっくり返る代物だ・・・
それをエメラルド・・・なんたらの為に使うってヤバいだろ
エメラルドなんたらはそこまで重要な物なのか?」
「分からんな・・・エーテルがどうのこうの言ってたが
現在の世の中でそんなに役立つか分からん」
「・・・・・連中が損得分からんヴァカだったと思いたいな」
「だな・・・・・」
カタパルトは向き返った。
「今の内に腹いっぱい食っておくか、 アパートメント、 お前は?」
「俺は良い、 喰い過ぎは体に悪いし好き勝手に喰って強くなれる筈が無い」
嘗て自分がレオに言われた事をカタパルトに言うアパートメント。
「・・・・・相変わらずストイックだなぁ」
「お前は寧ろ喰い過ぎでは?」
「デザートは別腹だよ、 つーか挨拶は良いのかよ
セカンド・ライフは如何した? 人脈作りは?」
「心配するな、 もう次の職は探してある」
「そりゃよかったな、 じゃあな」
カタパルトは去って行った。
画して決起集会は盛況の内に幕を下ろしたのだった。
レオは終わった後に自宅の自室に戻って来た。
今は亡き妻の絵画の前に立つ。
「もう直ぐだ・・・もう直ぐ栄光が帰って来る・・・
俺達がシルバー・コインに負けたのは奴等のマーケティング能力の差だけだ
俺達が力を見せればシルバー・コインになんか負けない・・・
俺達が№1だ・・・俺達がベネルクス最強だ・・・」
涙を流しながら国内最大手の座の奪還に誓うレオであった。




