パーティ・イン・ザ・ミートイーター
ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセル。
内側エリアにある第3ダンスホールにて
【ベネルクス・ゴールド・ライオン】の決起集会※1 が行われていた。
※1:ある物事に向けて行動を起こす際、 勢いを付けるために催す集まり。
ベネルクス・ゴールド・ライオンの決起集会は業界屈指とされており
その豪華さは目を見張る物である。
ダンスホールには【ベネルクス・ゴールド・ライオン】社員。
【ベネルクス・ゴールド・ライオン】関係者。
各報道機関がひしめき合い、 大盛況だった。
料理も酒も豊富な立食パーティなのだから集まらない方が可笑しいか。
「諸君!! 良く集まってくれた!! 私はとても嬉しく思う!!」
【ベネルクス・ゴールド・ライオン】代表、 元S級決闘者レオ・ベスカーマンが檄を飛ばす。
「我が社は国内最大手決闘代行業の座を【シルバー・コイン】に奪われてしまったが
それでも尚!! これほどまでに集まって頂き!! 我々もまだ捨てた物では無いと実感できた!!
我々は今回の戦いを機に!! 再び国内最大手に戻る事を目指す!!」
レオの言葉に歓声が挙がった。
「それでは乾杯!!」
「「「「「乾杯!!!!!」」」」」
一斉に酒を飲んで、 飲食を楽しむ一同。
「父上、 先程の御話、 胸を打たれました
このレオパルド感激の極みです」
【ベネルクス・ゴールド・ライオン】社内序列1位の決闘者のレオパルド・ベスカーマン。
彼はレオの実子でもあり、 A級決闘者だが国内のA級最強と称されている。
またダンディな髭が似合う男でもあり
国内の抱かれたい決闘者ランキング※2 で1位に選ばれている。
※2:ベネルクス・ウーマン紙が主催するアンケート。
各職業ごとに抱かれたい男、 抱かれたくない男と集計を取っている。
「いえ、 全く持ってその通りです、 はい」
黒髪のダンディな髭の彼は社内序列3位の決闘者のカタストロフ・ピューマ。
王室御用達の靴職人であるピューマ家の人間であり
ベネルクス王家とは遠縁にあたる男である。
レオパルドと同じ美容院に通っている為、 仕上がりが似ている。
「『国内最大手に戻る事を目指す』、 素晴らしい言葉です
額縁に入れて飾りたい言葉です」
社内序列4位の決闘者のメタング・ジャガーも追従する。
彼は元々はルクセンブルク家の騎士の家系だったが没落し
レオに拾われた過去がある。
「うむ!!! 分かっているでは無いか!! ・・・・・レオパルド
カタパルトは何処だ?」
「飯にがっついていますよ
彼は『今度の戦いで死ぬからせめてたらふく食っておきたいと』」
「まーた、 奴の心配性が始まったか、 あんなんで我が社の二番手を張るとは
我々の品性も疑われますよ」
「そう言うなピューマ、 奴は我が社の№2
彼が居なければ事業に問題が起こる」
「だがしかし、 それを知っていて奴は調子に乗っているのではないですか?
私もジャガーも奴の専横には納得がいきません」
「ですね、 レオパルド様を差し置いてS級決闘者になるとは・・・
信じられないですよ」
「全く全くその通り」
「・・・・・二人共、 それは俺をヴァカにしてるのか?」
グラスを握りつぶすレオパルド。
「「は・・・はい?」」
汗を流すピューマとジャガー。
「俺が何時までもS級決闘者になれないってヴァカにしてるのか?」
「い、 いえいえ!! そんな事はありません!!」
「レオパルド様は多忙故に試験に望めない事を知っているのに
S級になったという道理を弁えない、 あの男が悪いのです!!」
慌てて弁明するピューマとジャガー。
「もう良いじゃろ、 レオパルド、 弁えないカタパルトが悪いんだ」
「しかし父上」
「|ワシがもう良いと言っておるぞ《・・・・・・・・・・・・・・》?※3」
※3:訳.止めろ。
「・・・それは失礼しました」
「宜しい、 ではワシは客人に挨拶に向かうから、 お前達も楽しめ」
「「「はっ・・・」」」
レオは去って行った。
「・・・・・」
レオパルドは忌々しそうにグラスを握りつぶした手を見る。
手からは血が溢れていた。
そのままそそくさと退散してしまった。
「・・・・・はー、 やっと行ったか」
「ご機嫌取りも疲れるわぁ」
溜息を吐くピューマとジャガー。
「下で機嫌を取って上に行く度に更に機嫌を取らなきゃいけないって何だよ」
「世界の不条理って奴だな、 カタパルトみたいに自力のある奴は
派閥作れて良いな、 俺達もそっちに行くか?」
「経費の使用制限がキツくなって生活が大変になるぞ」
ピューマとジャガーは肉を取って食べながら話し始めた。
「金が有ればなぁ・・・こんな所止めてやるのに」
「文句を言うな、 しゃあねぇだろう、 俺は没落貴族で
お前は家を継げない三男、 好き勝手出来る訳じゃねぇ」
「はぁ・・・・・そう言えば平民のアイツは何処に行った?」
「カタパルトと一緒じゃねぇの?」
「アイツ位下だったら構われねぇのかな?」
「いや、 アイツは平民だから構われねぇだけで
貴族だったら5位でも構われるんじゃねぇのか?」
「せちがらいなぁ・・・」
尚も肉を喰う二人だった。




