ニュー・ムーン
再誕歴7703年ディセンバー17日。
ヨーロッパ連合本部、 議長宿直室。
リヒャルトはここで寝泊まりをしており基本的に連合から離れない。
「通信モノリスの不調?」
目覚めて直ぐの報告に困惑するリヒャルト。
「はい、 如何言う訳か昨日から動作しません・・・・・」
冷や汗を流している職員。
リヒャルトの脳内に様々な可能性が浮かぶ。
①技術的な問題→メンテナンスはしてあるのでない
②何者かの工作→スパイには細心の注意を払っている情報伝達は重要物保持以上に
警戒している為、 スパイの可能性も無し。
③敵国からの攻撃による妨害→本部にまで状況が及んでいるのならば何かしらの問題が・・・
「信号機は!?」
「信号機もモノリスの不調を訴える物ばかりです!!」
「直ぐに情報の拡散と収拾!! 技術部に状況の収集を図らせろ!!」
「はいッ!!!」
職員は去って行った。
「・・・・・」
外を見るリヒャルト。
「呆けている場合じゃないな、 私も動かなければ」
そう言ってリヒャルトも奔走するのだった。
同時刻、 旧ハートレス領。
旧ハートレス直轄地アメイジングハート。
株式会社アルベド本社の会議室にてカロリングとカリオストロが会談していた。
「・・・よぉ」
何時もに無くかったるそうなチーズが現れた。
「・・・何でさっさと来なかったんだい?」
「寝起きだよ・・・ねむ・・・」
面の下からでも分かる欠伸をするチーズ。
「つーか何だよ、 何か問題でも有ったのか?」
「モノリスが繋がらない」
「・・・・・寝るわ」
チーズは踵を返して去ろうとした。
「待てよ、 この状況が不味い事が分からないのか?」
「はぁ・・・別に問題ねぇだろ、 俺様が居るんだぞ?
・・・・・まぁ今は寝起きだから戦闘能力が少し下がってるが
それでも世界最強の俺様だ、 何一つ問題は無い、 敵が来たら教えろよ」
「チーズ、 真面目にやって下さい、 これは本当に大問題なんですよ?
ちゃんとご理解出来ます?」
カロリングが問う。
「問題だぁ? 何一つ問題ねぇだろうが
情報が届かないだけで空気が止められる訳でも無いだろ?」
「情報は空気と同じです、 良いですか
情報の損失は機会の損失です、 決闘で言うならば攻撃のチャンスの喪失と同義です」
「内部者取引※1 って事か?」
※1:内部のものが未公開情報を使って情報を持たない外部に対して有利な取引を行うこと。
一般的には違法行為では無いが証券市場での取引では違法とされている。
因みにカロリングは証券関係の仕事をしている事が多いので余裕でアウトである。
「そうとは言いませんよ、 マーケティング
つまり顧客が何を求めているかの情報、 何を売れば良いのか
決闘者で言えば「分かった分かった、 で? 俺様は何をしろと?
モノリスを直せと? そんな技術無いって知らなかったのか?
人に知識マウント取るのにそれ位の知恵も「分かった、 何か有れば呼ぶよ
すまなかったな、 起こして」
カロリングの言葉をチーズが遮って更にカリオストロが遮った。
「わかりゃあ良いんだ」
そう言ってチーズが去って行った。
「・・・・・はぁ・・・身勝手な奴め・・・」
溜息を吐くカリオストロ。
「『シンゲツ』に彼は必要か?」
「どちらの意味の?」
「新しい方の」
「・・・・・」
カロリングの言葉に頭を悩ませるカリオストロ。
「彼の力は凄まじい、 外すのは惜しい
そして切るにはすさまじい労力がかかるだろう」
「・・・・・前から疑問でしたがヴォイドは何処からチーズを連れて来たのですか?」
「何処かで呑んでいたら何時の間にか意気投合したとか言っていた」
「チーズが?」
「ノリ自体は悪くないんだよ、 チーズは
だからこれは無くは無い・・・しかし・・・」
コンコンと会議室がノックされる。
「如何しました?」
「失礼します!! 通信用モノリスが回復しました!!」
「回復した? 本当か?」
伝令の報告にカリオストロが困惑している。
「ご苦労様です、 一体どうやって直したのですか?」
「それが勝手に直ったので・・・」
「・・・・・少々お待ち下さい」
「はっ」
伝令を待たせるカロリング。
「如何思います?」
「・・・・・各地のモノリスを回収、 直ぐに点検する必要が有るかと・・・」
苦虫をかみ殺したかのように言うカリオストロ。
「良いのですか? 相当な大金がかかりますよ?
100万や1000万では済みませんよ?」
「分かっている・・・だが点検をしない訳には行かないだろう・・・」
莫大な出費に憂鬱になるカリオストロ。
検査結果は年明けを待つ事になり、 その結果は全ての通信用モノリスは
|全く何の異常が見当たらなかった《・・・・・・・・・・・・・・・》。
このモノリスの不調は人類初の大規模モノリス異常として記録される事になった。
とはいえ当時はモノリスの一般普及はされておらず被害は軽微※1だった。
※1:点検のコストを除いて。
このモノリスの不調に関しての見解が出るのはこれより遥か未来の話になる。
そしてこのモノリス不調により事態は急変するのだった。




