シェイムレス・アント
再誕歴7703年ディセンバー12日。
ベルモンド伯爵領、 ベルモンド伯爵邸、 玄関。
ベルモンドは玄関で来客を出迎えた
周囲にはマルガレーテを始めとした騎士達が立っていた。
「何をしに来た、 ベドハンドさん」
「どうもお久しぶりです」
頭を下げる女騎士。
彼女はベドハンド、 元ルクセンブルク門閥貴族、 ハディラス侯爵家の娘だった女である
現在は嘗て所属していたベネルクス女性騎士団で起こした不祥事により
家から絶縁された身の上である。
「この度は時間を割いて頂き有難う御座います」
「貴方の父君とは懇意にさせて頂きましたので、 それで何をしに来た?」
「では人払いを」
「そうですか、 では|お気をつけてお帰り下さい《さっさと帰れ》」
「いやいやいや!! 私を払って如何するんですか!! 御冗談を!!」
はははと笑うベドハンド、 真顔のベルモンド一同。
「・・・・・重要な御話なのでお耳に入れておきたいのですが」
「どうぞ?」
「・・・・・はい?」
「だからどうぞ?」
「ここで言うのは少し問題が有ります」
「いえ、 大丈夫です」
「御内密にしたい御話で」
「大丈夫です」
「・・・これは重要な御話なのです、 あまりふざけないで下さい」
「そうですか、 御客様がお帰りだ」
「はい」
騎士達がベドハンドを掴んで追い払おうとする。
「ちょ、 ちょっと待って下さい!! 分かりました!! 言います!!」
騎士達が止まらない。
「ベルモンド伯爵領にランバルドが来ています!!」
「誰ですか」
「スターダスト評議国の野党、 九頭派の幹事長オードウィンの護衛だった男です!!
オードウィンを殺して彼の財産を持って逃げてこの領に潜伏しています!!」
ベルモンドが合図して止めさせた。
「・・・・・」
ベルモンドは国際手配書帖をぺらぺらと捲って確認してランバルド。
「あぁ、 居ますね、 ランバルト、 それで何処に居るんです?」
「・・・実は私職が無くて・・・」
「職業安定所に行けば良いのでは?」
「いや、 騎士の職に就きたいと・・・」
「そうですか、 それで?」
「えぇ、 私を是非騎士として取り立てて頂きたいと」
「いや、 そうじゃなくて、 ランバルドは何処に居るんですか?」
「私を騎士として取り立てると確約を頂ければ教えますよ」
「追い出せ」
騎士達がベドハンドを屋敷の外まで引きずり出した。
ベドハンドは喚くも抵抗しなかった。
「・・・はぁ・・・」
溜息を吐くベルモンド。
「何なんですか? あの女は?」
「戦友の娘ですよ、 彼女の父が今際まで気にかけていたから会いましたが・・・」
頭を抱えるベルモンド。
「どうやら私が知っている貴族としての誇りを持っていた凛々しい女騎士は死んだようです」
「お気持ちをお察しします」
「死んだ者は仕方がない
直ぐにベドハンドの調査、 彼女のこれまでの足取りを遡ればランバルドの居場所も分かるでしょう」
「分かりました、 しかしそう簡単に行きますかね?」
「どうだろうな・・・」
再誕歴7703年ディセンバー14日。
ベルモンド伯爵麾下エルジェ子爵領クラストネート。
この街は戦争での怪我を負った者達の為に全域バリアフリー※1 になっており
傷病者に優しい街となっていた。
※1:障害者を含む高齢者等が
社会に参加する上で生活の支障となる障害や障壁を取り除くための施策
若しくは具体的に障害を取り除いた事物および状態。
しかしサイプレスがいちゃもんを付け始めて結果、 混乱が起こり
サイプレス失脚後は軽い動乱が起こったが決闘の末に平穏が戻って来た。
「本当に申し訳無いな、 この間も動いて貰ったというのに」
「いえ、 大丈夫です」
そのクラストネートの代官の邸に集まった
ベルモンドとマルガレーテ、 サンとフェザーの4人。
「件のランバルトとやらは民援省の下部組織が有った廃墟に住み着いているらしい
ランバルトを無力化しエメラルドタブレットを回収せよとの事だ」
「なるほど、 ランバルト以外には気を付けるべき者は?」
「ランバルトとやらは実力が有るらしい、 詳しい事は分からないが・・・
それから何人かの兵隊、 ベドハンドを含む白百合騎士団残党が居るらしい」
「白百合騎士団?」
「サイプレスが女性の社会進出の為に立ち上げた女性のみの騎士団だ
初任務で騎士団長のベドハンドが捕虜となり命欲しさに情報を吐いた為
全滅し解散した」
「自分達を裏切った奴と何で一緒に行動できるんですか?」
「生き残りは訓練生だった奴が殆どでベドハンドを信じていたんだろう
正直、 私も公判を見に行くまで何かの陰謀だと思っていたよ」
遠い目をするベルモンド。
「・・・ちょっと待って下さい父上」
「如何した? サン?」
「ベドハンドはランバルトの居場所を父上に密告しようとして追い返されたのに
何故ランバルトの元に再び来ているんですか?」
「ランバルトを売りに来て断られたから戻った、 のか?
何れにせよ、 ベドハンドと取り巻きは戦力にならない
警邏でも十分対応可能だ、 そいつ等は任せてある
フェザーは本命のランバルド、 マルガレーテは外で騎士達と廃墟を取り囲んでくれ」
「「分かりました」」




