████████ラスト・ディ
再誕歴7703年ディセンバー3日。
ドイツ帝国ミュンヘン、 カタン学園、 職員室。
「退学!? このタイミングで!? もう直ぐ卒業だろう!? ████████君!!」
ミュンヘン学園の職員室で教師のフォッペンは
持ち受けている生徒からの退学届に面食らっていた。
「先日、 受けていた奨学金を出していた
ミュンヘン病院が潰れた上に何だか悪い事していたらしくて・・・」
「そうか、 ████████君は
ラッテンフェンガー奨学金※1を借りていたんだったな」
「はい・・・」
※1:ミュンヘン総合病院が診察した甲斐も無く死亡した患者の息子向けの貸与型奨学金制度。
もしも返せなくなったとしても
病院の下働きとして雇うと謳っているのでそれなりに借りる者は多い。
しかし奨学金として見ると消費者金融よりも金利が高い。
これは知識の無い子供達を搾取する為の仕組みであり。
下働きとしてこき使われるのはまだいい方で実験体として酷い目に遭うケースも多い。
「いずれにせよもう奨学金が借りられないので」
「そうか・・・この学園が私学じゃなかったら良かったのに※2」
※2:ドイツ帝国の国立大学では基本的に授業料は無料である。
学費の払えない家庭でもは学べるようにと言う配慮だが
大抵は貴族しか入れないので平民は相当努力しなければならない。
「しょうがない事ですよ、 今まで先生にはお世話になりました」
「待て、 これから如何するつもりだ? 君は天涯孤独の身だろう?」
「うーん、 そうですね、 手に職を就けようと思います」
「君は優秀で真面目な生徒だ、 他の奨学金を申し込めば・・・」
「実は職の当てが有りまして・・・」
「そうなのか・・・分かった、 じゃあ引き留めるのは止めよう
だが何か有れば私を頼ってくれ、 力になろう」
「本当にありがとうございました」
████████は職員室のドアを開けて出て行った。
「あ、 ████████」
「生徒会長、 どうもー」
カタン学園生徒会長のアレクシアが声をかける。
「████████、 何で職員室から?」
「今日で退学する事になりまして」
「た、 退学!!?」
アレクシアに肩を捕まれる。
「な、 何で!? 問題でも起こしたのか!?」
「お、 落ち着いて下さい!! 奨学金を払ってくれる団体が潰れちゃったんです!!」
アレクシアが肩を離す。
「そ、 そんな・・・良し!! 分かった!! 何とか皆でカンパしよう!!」
「良いですよ、 もう職の当ては有りますし・・・」
「何言ってるんだ!! 学歴の有る無しでは手当ての多寡も変わるんだぞ!?」
「そうでしょうけども・・・もう話は付いていますし・・・」
「じゃあ私が行って断って来るよ!!」
「結構です、 じゃあそろそろ失礼します」
「待って!!」
アレクシアに手を捕まれる。
「お願いだから待って・・・」
「・・・・・」
アレクシアが潤んだ瞳で見つめて来る。
「私は君の事が」
アレクシアの手を強引に払ってスタスタと去っていく。
「待って!!」
アレクシアが追いかけるも居ない。
「え?」
街角の路地裏。
ぽい、 ぽい、 と鞄や学生証やら身分証明書をゴミ箱に捨てていき
制服を脱ぎ着替えるアスペルガー。
「っと、 これで良しと」
制服をゴミ箱に捨てると髪をくしゃくしゃにして
待たせていた馬車に乗り込むアスペルガー。
「お待たせしました」
「遅かったな」
馬車の医者がむくれていた。
「学校に退学届けを出していたんですよ」
「律儀な奴だ」
「そうですか? 適当にやると後が面倒ですし」
「悪人は雑な奴が多いんだがお前は結構マメだな」
「そうですかねぇ、 結構サボりも多いですけども」
馬車が走り出した。
窓の外ではアレクシアが探し回っていた。
「あ、 生徒会長」
「通ってた学校の奴か?」
「えぇ、 さっきまで絡まれてて何か告られそうでしたよ」
「マジでぇ?」
医者がくっくと笑う。
「貴方が用意してさっきまで僕が使ってた戸籍・・・
何て名前だったか忘れましたけども有名女優の遺児の戸籍だったんでしょう?」
「あぁ、 良い女優でたんまり遺産も有ったからなぁ
ちゃっちゃと殺して背乗りさせて遺産全額引き出させたよ」
「遺産目当てだったんですかねぇ」
「案外マジで惚れていたかもしれんぞ」
「まっさかぁ!! 当たり障りの無い事しかしてないですよ!!」
「だな、 見る目の無い女だ
いや、 モーント・ズンディカーズの最高幹部だし見る目が有ったのか?」
「勘弁して下さいよ、 ボクは金さえ有れば良いんです
医者、 悪いですが今回のエメラルド・・・なんでしたっけ」
「タブレットな、 分かってる、 エメラルド・タブレットを回収したら好きにして良い
報酬もちゃんと払う」
「それは助かりますが・・・有るんですかお金?」
「安心しろ、 色んな奴から奪った大量の銀行口座に隠し財産をため込んでいるよ」
「抜け目がない・・・」
アスペルガーは考える。
人の心の中なんて分からない。
人と自分の価値観が同じだとは思わないし思えない。
だからこそ絶対の価値は持っていなければならない。




