忘却③
再誕歴7680年エイプリル11日。
ドイツ帝国、 ミュンヘン病院。
ここはドイツ有数の病院だが
その実態はモーント・ズンディカーズの本拠地である。
「納得がいかねぇ!!」
院長室で叫ぶ忘却。
「落ち付きたまえ」
この病院の院長でもあるモーント・ズンディカーズ首領医者が呟く。
「俺の実力ならば重篤患者になっても可笑しくない筈!!
それをポッと出の奴に奪われるなんて!! その上にアフリカ支部に出向!?
何の冗談だ!!」
「落ち着きなさいよ、 モーント・ズンディカーズの勢力拡大の為
各国支部を強化しなければならない」
「ヨーロッパの守りをもっと固めるべきだろう!!
新興勢力も増え始めている!! お前も何か言え!!」
忘却が自分と同じ立場である患者
暴食に同意を求める、 彼はむしゃむしゃと骨付き肉にかぶりついている。
「・・・・・何がぁ?」
「何がじゃねぇ!! 俺もお前も重篤患者に匹敵する力を持っている!!
なのにこの扱いは何だって言うんだ!! お前もヨーロッパから追い出されるだぞ!!」
「・・・・・」
ごくん、 と肉を飲み込む暴食。
「良いだろ、 別に」
「何でだ!? 俺達は軽んじられてるんだぜ!?」
「腹いっぱい食えるなら文句は無い」
「お前なぁ!!」
「それに俺達じゃあ医者には勝てないんだし、 大人しく従った方が良いでしょ」
「・・・・・」
苛立ちながら部屋を出ていく忘却。
「クソがっ、 絶対何時か目に物見せてやる・・・」
現在
「”何時か目に物見せてやる”・・・・・か」
あの日の屈辱を思い出す忘却。
「・・・・・」
如何に強くとも自分が得た力は医者が与えた物だ。
暴食が言う通り、 患者は医者に従うしかない。
「・・・・・」
悪態を吐きたいが口から言葉が出ずに血が溢れる。
フェザーが柱を折ったので天井が崩れてその下敷きになっている。
忘却させれば力は不要と鍛えなかったので如何にも出来ない。
大人しく潰されるしかない。
「・・・・・」
「やぁ」
フェザーが話しかける。
じゃぎ、 と剣を握る。
「・・・・・べ」
嗤おうにも声が出せない。
悪態すら吐けない。
舌を出す忘却。
「・・・・・」
じゃぎん、 とフェザーは忘却の首を刎ねた。
介錯である。




