忘却②
再誕歴7668年エイプリル11日。
ベネルクス王国独立自治区【ベネルクス・スパニッシュ】。
ベネルクス・スパニッシュの片隅にある孤児院【バロッグ・ライン】
孤児だったフェザーは今日は奇妙な訓練をしていた。
「・・・・・」
10m離れた4つのパンを見るフェザー。
「どれにするんだー」
バロッグがパンの傍で声を張り上げる。
「・・・右から二番目!!」
「ほーい」
バロッグが右から二番目のパンを持って来てフェザーに食べさせる。
「辛ッ!!」
「残念だったな、 じゃあ次行くかー」
「バロッグ!! これ何の意味が有るの!?」
パンを吐き出すながらフェザーが尋ねる。
「危険を察知する訓練だ、 どのパンが激辛パンか当てるんだ」
「こんな遠くから見て分かんないよ!!」
「ふん、 甘いな、 良いか? お前が決闘者になった際に
敵さんは素直に全部が全部、 分かり易い攻撃をしてくれない
ウィルパワーで奇怪な技を使って来るかもしれない
だからこそ危険察知は大事だ、 もしも危険を察知出来たら
カウンターも容易になるし、 危険を回避出来る」
「でもこんな匂いも分からないし、 目で見ても分かんない位遠いんじゃあ・・・」
「意識を見ろ、 何かしらの行動
この場合は辛くする為に色々入れている、 この行動に意識は宿る
勘を研ぎ澄ませろ」
「うーん・・・」
役に立つのか分からない訓練だったが何となく分かり始めた頃。
フェザーはパン全てが辛いのだと気が付いたのだった。
現在、 バロッグの訓練が功を奏しフェザーはウィルパワーの流れを見る事が出来る。
忘却の記憶消去もウィルパワーを感知して傍で誰かが何かしている。
とはっきりと認識している。
「・・・・・」
動く事は無い、 これは罠だろうか?
と見守っているとどんどんウィルパワーが乱れて来ている。
忘却が苛立っている。
こうしてウィルパワーを感知出来る物にとっては
否、 あらゆる勝負事では感情を見透かされないように訓練するべきなのだが
忘却は全てを記憶消去で誤魔化し続けて来た女なので
そういった感情のコントロールは一切無かった。
「・・・・・」
態とか? とフェザーは思ったがすぐさま考えを切り替えた。
余りにも稚拙過ぎる、 もしもこの稚拙さを狙って出せるのならば
こんな硬直なんて起こらないレベルのウィルパワー運用の練度の高さである。
「・・・・・」
フェザーは倒した患者から
武器を取ってウィルパワーを流し込み強化し柱に向かって投擲するのだった。




