龍降特別領
再誕歴7703年オーガスト29日。
セルデン侯爵領とベルモンド伯爵領の領境付近にある小さな領。
龍降特別領、 この領はハウバリン公爵門閥のルン子爵と懇意にしている
ベネルクス華僑の龍降家が治めている土地である。
「その名家が治める土地がこれかい・・・」
「デスネー」
溜息を吐くセルデン侯爵の長子ジョンと
ジョンのフィリピン人付き人のグレゴリオ。
ジョンは剣、 グレゴリオは棒で武装していた。
龍降特別領は随分と寂れている様子だった。
聞いていた話ではこの領地はベネルクス華僑の中でも古くから存在し
巡礼の学者等がやって来たりしているとの話だったが・・・
「気持ちのイイ場所じゃナイデスネ」
「だな、 酷い所だ、 碌に舗装されていない道
雑草があるのは仕方ないがゴミを放置するな拾っておけよ・・・」
うんざりしているジョン。
「道も酷いデスが、 人も酷イ、 目つきがイヤですね」
「フィリピン人が珍しいのか? ここの連中は中国人だし同じアジアだと思うが・・・」
「中国人じゃなくて華僑デス、 中国の血は入っていますが
ベネルクス人デス」
「面倒な・・・しかしベネルクス人ならお前が背負っているノボリを見て
態度を改めると思うが」
グレゴリオはジョンの命令で外に出る時は
『セルデン侯爵長子ジョン麾下』『馬鹿にしたら殺す』と言うのぼりを背負って歩いている。
これは偏見が強い者からの攻撃を防ぐ為である。
堂々とセルデン侯爵家の配下と掲げる事でセルデン侯爵家への侮辱として
決闘を行う事が出来るのだ。
「英語が読めないノデハ? さっきから看板が中国語ばっかりデスよ」
「そんな事あり得るのか? 他の国に行ってその国の言葉知らないなんて
肉を焼くのにフライパンを持ってこないレベルだぞ」
「串で焼きましょう」
「野蛮な調理だな」
歩きながら指定された場所に歩いて行く。
「さっきから着けられているな」
「デスネ」
ジョン達を追っている者達。
住民だろうか。
「金音がするな、 得物を持ってる」
「如何シマス?」
「別に良いだろ」
「ハイ」
放っておきながらもどんどん先に進む二人。
そしてどんどん増える住民。
「・・・・・」
振り返るジョン。
後ろには数十人の男が各々武器を持っていた。
「頭が悪いのか、 頭がイカレてるのかどっちだ?」
「ここまで大勢じゃないと気が付かないアンタも大概だぜ?」
男の1人が笑う。
「グレゴリオ、 お前は如何思う?」
「私だったら、 1000人は連れて来たいですね」
剣と棒を構えるジョンとグレゴリオ。
「大口叩けるとは大物だな、 じゃあ遠慮はしないぜ!!」




