立ち上がる二人
「どういう事ですか?」
「孤児院からの記録では孤児達は色々な場所に連れていかれたらしい
里親に出されたり、 他の孤児院に移ったり」
「その調査に来たと? 侯爵の貴方がする事ですか?」
「病院に連れていかれたり」
「病院?」
首を傾げるベルモンド。
「病気の子供ですか?」
「知らん」
「知らん?」
「これがその孤児院の記録だ」
そう言ってベルモンドに紙を見せるセルデン。
「?」
ベルモンドは紙を見た。
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今期自動輸送帳簿
ミミヅカ孤児院 男1 女2
カミツキ孤児院 男3 女2
クダンヅカ孤児院 男8 女11
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「・・・・・なるほど、 理解した」
この記録を見てピンと来ない人間は恐ろしく鈍い人間だろう。
これはまさしく帳簿だ、 少なくとも孤児を人間と見ていない人間が書いたと
直ぐに理解出来る。
そもそも孤児の移動が多過ぎる。
1000人は移動している。
恐らくは児童の人身売買だろう。
そして記録の最後の一行、 セルデンが言っていた病院。
「ドイツ帝国のミュンヘン総合病院・・・」
この病院はヨーロッパを中心に活動していたマフィア。
モーント・ズンディカーズの拠点だった。
「子供を奴隷にしているならまだマシだ、 だが・・・」
モーント・ズンディカーズはミュンヘン総合病院で
悍ましい実験を行っていたという記録がある。
更に戸籍を奪い取る犯罪”背乗り”も積極的に行っていた。
個人情報を抜く為に拷問すら行われていたという。
戸籍を奪われ実験材料にされて殺された者が大勢居るだろう。
「・・・・・生存は絶望的ですね」
「だが動かない訳には行かない」
「・・・そうですね、 その通りだ」
立ち上がるベルモンドとセルデン。
「この事はハウバリン公爵は?」
「知っている、 既に王国政府にも通達した
この記録、 いや帳簿にある施設全てに襲撃をかける事が決まった
ベルモンド、 この帳簿にあるお前の領地にある施設と個人に対しての襲撃
任せても問題無いだろうな」
「問題有りません、 侯爵は如何なさいます?」
「私はこのままハウバリン公爵の元に向かう
不手際を詫びるとともに公爵領にも孤児達は送られたから襲撃に向かう
それから話が漏れて逃げられるかもしれないから
襲撃は日にちを合わせて行う」
「結構日は?」
「オーガストの30日」
「分かりました」
セルデンは立ち去りベルモンドは準備に取り掛かるのだった。




