観客席
再誕歴7703年オーガスト26日。
決闘場所である広場。
そこに現れるフェザーとザンゲツ。
周囲にはサンとマルガレーテ。
ドラップス。
他にも見物人がちらほらと見える。
「一体何処から聞きつけて来たやら・・・御同業がちらほらと」
日傘を差しながらブラック・シンゲツ・コーポレーションの
社内決闘者7位、 アストロジャーがぼやく。
彼女はムラが有り過ぎてB級決闘者から上に行けないが
それでも十分な実力を持っている。
「シンゲツ家の怪物の決闘はレアだからねぇ、 話題にもなるさ」
ベネルクス国内最大手決闘代行業【シルバー・コイン】
社内決闘者序列1位のS級決闘者、 ジョウゲンがアストロジャーの隣に座る。
「貴方クラスが出て来ますかぁ・・・」
「ザンゲツは今世代のシンゲツ家唯一のS級だからね
見ておくべきだろう」
「シンゲツ家が評価されていたのは過去の話でしょう
A級の在籍数が多くてもシステム化された決闘代行業には遠く及ばない」
武家と呼ばれる武術の家柄は数多いが
独立性を保って居られる家柄はヨーロッパでも稀有な例である。
シンゲツ家はベネルクス王国どころか
ヨーロッパで最も栄えている武家と言って良いだろう。
それでも彼等の稼ぎ高は有名な決闘代行業には周回遅れと言った所だろうか。
「連中は決闘の腕前だけで経営がまるでなっていない」
「お詳しいですね・・・」
「私の生家はシンゲツ家の分家の分家だったらしい、 まぁ生家も潰れたがね
それよりも豪華な観客じゃないか
老舗決闘代行業【ベネルクス・ゴールド・ライオン】の代表のレオ・ベスカーマン
外国資本の決闘代行業【カッパー・インターナショナル】最強の決闘者、 エッフェル
そして・・・彼女はお忍びだから止めよう」
「お忍び? あのローブを纏った人ですか?」
アストロジャーが指差すが慌ててジョウゲンが止める。
「止めなさいって、 君の会社には私も投資してるんだから
揉め事は起こさないでくれ」
「はぁ・・・確かに護衛が沢山ついていますけどもあの人は一体・・・」
「それよりも始まるぞ」
立会人が降り立った。
「立会人は№009が行います、 が!!
S級同士の決闘の為安全のために観客席との間に結界を張らせて頂きます!!」
ズン、 と黒い膜が周囲を覆ったと思ったらすぐに消えた。
恐らく見える様になっただけで存在はしているのだろう。
「では、 両者名乗りを!」
「ベルモンド伯爵が長子の執事、 フェザー」
「ザンゲツ」
フェザーとザンゲツは互いに構えたのだった。




