表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/479

アイボット・アンド・ブレイブメン

再誕歴7701年ジュニアリー6日。


N5のスラム街のレストラン。

レストランと言ってもサービス最悪、 窓は割られて存在しないので夏は暑いし冬は寒い。

料理も鼠や虫※1 でとても不味い、 唯一値段だけはN5では安いのが売りである。



※1:食用の環境で飼育された種類では無く割と危険だが

体長が2,3m有るのでコストは抑えられる。



そんな中一人の男が食事を摂っていた。

彼の名はカボチャ、 しがないチンピラである。

先祖は日本のサムライが口癖だが典型的な欧米人にしか見えない。


「おせぇな・・・」


彼はボックス席に座って待ち合わせをしていた。


「おい、 聞いたかよ」

「うん?」


暇なカボチャは隣の席の会話を盗み聞きする事にした。


「何でもマフィアの闇のオークションにすげぇお宝が出品されるってよ」

「すげぇお宝? 何だそりゃ」

「スターダストとか言うお宝らしい、 詳しくは知らねぇけど」

「知らないって何だよ」

「あのデブの騎士団長の宴会に呼ばれた踊り子が言ってた

何か変な髪型と喋り方の殺し屋コンビがスターダストを取って来いって

そうすれば1000万とか言ってた」

「ふぁ!?」


額に驚いて声を上げるカボチャ。


「そんな事したらマフィアに殺されるじゃねぇか

騎士団なら兎も角俺達がやったら間違い無く死ぬわ」

「だなー、 狙うのは相当なヴァカだろうな」


カボチャは慌てて残りの料理を平らげる。


「ごちそうさん!!」


代金を置いて去って行くカボチャ。


「あ、 かぼちゃん」

「よっちー!! ちょっと場所変えるぞ!!」

「え、 うん」 


待ち合わせて店に入って来た恋人のヨランダを連れて行くカボチャ。


「ん、 おいおい、 そのほっぺた、 また盗ったのか?」


ヨランダの腫れた頬を撫でるカボチャ。


「酷くない? 店の物ちょっと貰っただけで首の上に殴られるなんて・・・」


ヨランダは底抜けのヴァカである。

元々はマーナガルム男爵領の他の街のしがない文房具店の事務員だったが

日常的な窃盗を行っており窃盗を咎められ

文房具店の店長から弁償を要求されたが払わなかった。

マーナガルム男爵領での規定としてこういう事態の際には

マーナガルム男爵が経営する金融グループが加害者に融資したと言う体で

金融グループが代わりに弁償を代済した。

そして融資した金額の利息が支払い切れない位膨れ上がった時に知らせて

借金の片としてN5の風俗店に売られたのだった。

だがしかしここでもヨランダは客の財布を盗み出して逃走。

勿論黙っている訳は無く騎士団の追跡が始まった。

その際にカボチャと出会った、 カボチャの好みストライクで即日交際を始めた。

カボチャが死体置き場の適当な死体にヨランダが盗んだ財布を持たせて

ヨランダの死を偽装するという

カボチャ人生最大の知略によりヨランダは助かったのであった。


その後、 二人共基本的にヴァカなので短期バイトや

強盗等の犯罪行為を行っていた。


「まぁ物を盗むなら仕方ねぇだろ、 それよりもビックチャンス到来だ!!

1000万の大仕事!!」

「ふぁ!? 1000万!?」

「闇のオークションに出ているお宝盗み出すぞ!!」

「盗むのは得意よ!! でもオークションってマフィアが居るんじゃあ・・・」

「俺に考えがあるぜ!! マフィアに成り済ましてお宝盗めば良い!!」

「天才じゃない!!」

「だろ!! 褒めてくれよー!!」

「それでオークションって何時!?」

「あー・・・確か旧正月だ、 つまりはフェブラリーだな

今は・・・」


きょろきょろと周りを見渡す。

広場に剥がし忘れた去年のカレンダーが見える。


「今がディセンバーだからツーマンス後だな!!」

「準備が出来るね!! 所で旧正月の正月って何? 正は分かるけども月って何?」

「俺も知らねぇ!! 兎に角今は急いで準備だ!! 行くぜハニー!!」

「オッケーカボチャ!!」


走り去るヴァカ二人であった。


「・・・・・あの二人、 あんなに大声で犯罪計画喋っててバレねぇと思ってるのか?」

「ヴァカなんだろ、 日付も間違ってるしほっとけ」


通行人が呟いたのだった。




同時刻。


ルクセンブルク侯爵領。

欧州勇者組合連合(略称EHUC)ベネルクス王国支部。


「マモル君、 支部長が呼んでいるよ」

「はい、 っ」


組合員に声をかけられる勇者マモル。


「ICBCと戦おうとする勇気は褒めるけど無謀だったよ」

「まさか牛がここまで強いとは・・・」

「人間は牛には勝てない※2 事を知らないとは異世界人も非常識だねぇ

まだ傷は痛むの?」



※2:真理。



「いえ、 大丈夫です、 支部長はお部屋に?」

「うん」

「じゃあ行って来ます」


マモルは支部長室に向かった。


「支部長、 何か御用ですか?」

「やぁマモル君、 いらっしゃい」


支部長のウルスラが椅子に座っていた。

女性用の騎士服を着用しきちんと髪とメイクが整えられていた。


「・・・何時もと様子が違いますね※3」



※3:普段はネグリジェを着てソファに横たわってぼーっとしている。



「ヨーロッパのセックスシンボル(自称)の

私でもマジにならなきゃならない時はマジになるよ」

「何か有ったんですか?」

「・・・カケルが聖剣※4 を無許可で持ち出した」



※4:剣の形をした大量破壊兵器。

様々な聖剣が有れど効果は個々で全く異なり剣の形をしている武器を

とりあえず聖剣と呼んでいる、 EHUCや各国で所有しているが

聖剣の殆どが神代の時代からの骨董品の為

技術革新が進んだ現代では型落ちしていると言わざるを得ない。

現に聖剣単体でもICBCで勝てるかは怪しい。



「カケル・・・僕と同じ頃にこの世界に来たあの!?」

「そう、 しかも持ち出した聖剣は未鑑定※5」



※5:店売りの商品は大体鑑定済みだが

ダンジョン等で落ちているアイテムは未鑑定が多い。

未鑑定のアイテムは鑑定士に鑑定して貰う必要が有る。



「なんでそんな馬鹿な事を・・・」

「仕事中で出払っているシャープとペンシルの勇者コンビにはとりあえず連絡はしておいた

彼等は仕事が終わり次第向かう手筈になっている

休暇で旅行中のマーンとイヤトゥーハは各々向かっている

マーンが捕捉した所によるとマーナガルム男爵領に向かっているらしいから

君も向かってカケルを捕まえてくれ、 最悪・・・」


そこまで言ってマモルを見つめるウルスラ。


「君は彼と仲が良かったか・・・とりあえず任せる

私は陛下に御報告に向かう」

「・・・・・」


マモルは俯いて震える。

ウルスラはマモルの両肩に手を置く。


「しっかりしろ!! アイツがもしも聖剣を悪用すれば民衆に犠牲が出る!!」

「・・・分かりました・・・」


涙を流すマモルだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ