兄妹喧嘩①
現れたのは若々しい女性だった。
「お前かドラップス」
ゴディバがうんざりしながら言った。
「何方様です?」
「妹だ」
「妹がいらしたのですか? それは存じ上げませんでした」
ビターが驚きの表情を浮かべる。
「愚昧なる愚妹だ、 隠しておきたかったが・・・」
「隠しておきたいですか、 確かに貴方にとって私は目の上のたんこぶでしょう」
「自覚があるなら直して貰いたいがねドラップス、 で? 何だ?」
「彼等は私のゴディバ公爵領非門閥貴族互助会の預かりとさせて頂きます」
「ゴディバ公爵領非門閥貴族互助会?」
ビターが首を傾げる。
「伯爵以下の下位貴族共の相互組織だよ
門閥貴族にもなれない様な向上意識が無く、 学習しようともせず
ただ家でぐーたらしている怠け者の落ちこぼれの落伍者のどうしようもない
存在である下位貴族共が仲良く傷の舐め合いをしている所だよ」
ゴディバが端的に説明する。
「相変わらずお兄様は辛辣ですね、 眼が曇っていらっしゃります
確かにお兄様から見れば伯爵以下の貴族はゴミに見えるでしょう
しかし貴族は貴族故に尊く美しい存在なのです
向上意識が無く、 学習しようともせず
ただ家でぐーたらしている怠け者の落ちこぼれの落伍者では有りません
平民こそが向上意識が無く、 学習しようともせず
ただ家でぐーたらしている怠け者の落ちこぼれの落伍者なのです」
「お前の平民への苛烈な差別意識は見ていて虫唾が奔る
平民は国家の礎であり、 学習しようとしないが
日々を懸命に生きている彼等を向上意識が無く、 学習しようともせず
ただ家でぐーたらしている怠け者の落ちこぼれの落伍者と称するのは
考えが浅い、 どころか冷酷とすら思える」
「些細な事で一族郎党鏖にするよりはマシでしょう」
「些細な事? お前は他の公爵の部下の娘に非常識な真似をする事を非常識だと?」
「相手は伯爵の娘、 貴方が言う所の向上意識が無く、 学習しようともせず
ただ家でぐーたらしている怠け者の落ちこぼれの落伍者の娘ではありませんか」
「他の公爵の部下に対してそんな態度取れるか?」
「しかし今回は相手も礼節を弁えていない行動を取っていたじゃないですか」
「礼節を弁えない行動?」
「件の決闘の相手は執事だったと聞いています
幾ら何でも執事が騎士とは言え貴族と決闘して勝つのは納得がいかない
失礼極まると思います」
「それに関しては全く持って問題は無い
その執事は平民だったが子爵位を賜ったS級決闘者だ
何一つ無礼に当たらない」
「無礼極まり無いでしょう!!」
激怒するドラップス。




