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アンインデゥエ・ゲスト

再誕歴7701年ジュニアリー4日。


N5壁面高級住宅地。

嘗て起こった『高級住宅街崩壊虐殺事件』により大部分が破壊され廃墟となっているが

残っている邸にはきちんと住んでいる者達が居る。

マーナガルム男爵に家賃を支払う必要は有るがこの高級住宅地は

N5でも最も治安の良い場所である。

尤も治安を悪くしている騎士団位しか住めないのだが・・・


この高級住宅地でも最も立地が良く、 広い屋敷にN5駐在騎士団団長オダハラは住んでいた。


「さぁさぁ!! もっと踊れ踊れ!!」


オダハラは自分の邸に大勢の踊り子と部下を招き入れて

新年会と言う名目のどんちゃん騒ぎを続けていた。

派手な演奏も相まってまるで何処かのディスコの様だ。


「いやー、 流石ですなぁ!!」

「ほんとほんと!! 流石は貴族の生まれ!! 金の使い方が俺達庶民とは大違い!!」

「実に全く持ってその通り!! 実に豪快ですな!!」

「誠に!! シャンパンタワー※1 なんて初めて見ましたよ!!」



※1:ホストクラブで見かけるグラスにシャンパンを注ぐのではなく

文字通りシャンパンで塔を作っている。



N5駐在騎士団副団長ダンンオウラ、 行動隊長オガサマラ。

第一隊隊長ヴィ、 第二隊隊長ハマは兎に角ゴマすりに勤めていた。


「おい、 アイツは如何した?」

「前副団長殿ですかな? 彼ならば隅っこで潰れてましたよ」

「相変わらずだらしがねぇなぁ!! 所で食いもんが無くなって来たぞ!!

追加はまだか!!?」

「ひっ!! お、 御待ちを!!」


使用人が慌てて何処かに行った。


「全くよぉ!!」


シャンパンをシャンパンタワーから1本引き抜きラッパ飲みするオダハラ。

当然ながらシャンパンタワーは崩れ落ちる。


「おぉ!! これは派手だぁ!!」

「お見事!!」

「流石は貴族!!」

「凄い!!」

「そーだろうそーだとう、 ガハハハハ!!」


笑うオダハラ。


「あんな馬鹿な事は出来るのに俺達の給料渋りやがって・・・」

「しっ、 聞こえたら殺されるぞ」


使用人達が陰口を言っている。

オダハラは使用人に給料をなんやかんや難癖をつけて払おうとしないのだ。



背徳の宴は尚も続くのだったが、 ここで大きなノック音が聞こえた。


「・・・あん?」

「何だ今の音」

「ドアノッカー※2 だろ」



※2:玄関などの扉などに取り付けられている叩き金。

叩くと滅茶苦茶五月蠅いので現在で言う所のインターホンの様な役割と思って貰えれば良い。



ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン


「うるせー!! ちょっと見て来てぶっ殺して来ますわ!!」


オガサマラはダッシュで玄関に向かった。


「おー、 打っ殺して首を持ってこい、 ハンティングトロフィー※3 にするわ」



※3:壁に貼り付けるトナカイの首の剥製。



「好きですなぁ」

「狩りは好きだぜ!! ガハハハハハハハ」


バゴッ!! と大きな音が響いた。


「ハ?」


カツカツと二人の男が現れた。

一人はアフロの黒人。

もう一人はモンゴロイドの中年男性。

二人共スーツを着ていてマーナガルム男爵の家紋が描かれている。


「ごきげんよう」


誰も何も言えない、 踊り子は踊りを止め、 音楽家たちも演奏を止めた。


「俺達が誰かわかるよな、 えーっとオダハラと、 壇ノ浦」

「ダンンオウラ」

「あぁ、 そうかすまない」

「・・・・・アンタ方は・・・まさか噂になっているマーナガルム男爵直属の・・・」

「アフロが特徴的な俺がデビット、 そして」

「ルー・O・スィーバ、 トゥーメンバー合わせて」

「デビルコンビだ」

「だせぇ」


デビットはアフロを取り外しヴィに投げつけた。

アフロに激突しヴィは死んだ。

口は災いの元である。


「あ、 あああああああああああああああ!!」


ハマは立てかけたあった剣を取ってデビットに向かう。

ヴィとハマはしがないチンピラから成り上がった竹馬の友。

仇討ちである。


「・・・あ?」


ハマは死んだ。

ルーに首を捩り取られたのだ。


「"見ても分からない"デビットと”何が何だか分からない”ルー・・・

こ、 これがデビルコンビの実力・・・」


もぞもぞとヴィに投げ飛ばされたアフロが蠢きデビットの頭の上に乗っかる。

これはアフロ虫※4 だ!!



※4:アフロに擬態した寄生虫。

主に黒人に寄生し、 陽気な性格に洗脳する事で面白黒人を作り出す事で

生存競争に打ち勝っている寄生虫である。

稀に洗脳が効かない者も存在する。



「アフロ虫にウィルパワーを込める事で攻撃力を増しているのか・・・」

「グダグダ説明がうぜぇ!! お前は黙ってろ!!」

「は、 はい、 すみません・・・」


ダンンオウラは黙った。


「旦那様!! お待たせしましたステーキが焼けました!!」


使用人がステーキを持って来た。


「おぉ、 これは旨そうだ、 貰ってもいいか?」

「あ、 あぁ・・・好きに喰ってくれ」


ステーキにフォークを突き刺し被りつくデビット。


「良い肉じゃねぇか、 和牛※5 か?」



※5:和牛は日本原産の牛だが逃げ出した牛が

ヨーロッパまで逃亡するのは良くある話である。

口蹄疫の件と言い牛の管理はちゃんとして欲しい所である。



「あ、 あぁ・・・」

「何か喉乾いたな、 何か飲み物は?」

「シャンパンが」

「仕事中に酒は駄目だ」

「じゃ、 じゃあコーラ・・・」

「おぉ、 ご機嫌じゃねーか」


コーラ瓶を開けて一気飲みするデビット。


「うめぇな!! クラフトコーラ※6 って奴か!!」



※6:1回飲んでみたけど普通のコーラとどこが違うんだろ



「あ、 あぁ・・・」

「そーかそーか、 儲かっている様だな

ところでオダハラよ、 最近この街の上納金が足りねぇんだが如何言う事だ?」

「そ、 それなら」

「だからテメェはペラ回す※7 んじゃねぇよ!! このデブに聞いてんだよ!!」



※7:喋る、 の意



「そ、 それなら会計係が知ってるはずだ!!」

「会計係はお前が知っているって言ってたぜ」

「そ、 そんな事」

(ミー)拷問(トゥーチャー)した、 間違いは 無い(ナッシング)


ルーが変な言葉で喋る。


「帳簿を見ていると如何やら、 会計係にも知らされてねぇ

秘密の収入が有るみてぇだな?」

「そ、 それは・・・」

「まぁ、 俺達はお前が何で稼ごうが知ったこっちゃない

ただ男爵様の看板で商売してるのに上納金足らないって言うのは不義理じゃねぇか?」

「い、 いや!! 俺達も隠すつもりじゃなかったんだ!!

実は新しいヤクを開発してだな!! 試用期間って言うか売れ行きを確かめるプレリリース的な」


バゴッ!! とアフロをダンンオウラに投げつけるデビット。

ダンンオウラは即死である。


「あぁ、 悪い悪い話の腰を折っちまったな、 すまない」

「・・・・・」


オダハラは言葉を失った。


「で?」

「え・・・」

「ヤクを捌こうが何しようが俺達は知らんし男爵様も興味無い

足らない上納金分の金を払って貰おう、 追徴課税※8 って奴だ」



※8:本来納める税金よりも少なかった場合や

納税が遅れた場合に本来の納税額に加えて徴収されることとなる

加算税や延滞税といった附帯税の事。



「い、 幾らになりますか・・・」

「俺達の調べによると、 お前が荒稼ぎした金は200万ユーロ

男爵様へのロイヤリティが30%だから80万ユーロか」

「え、 い、 いや違います、 60万ユーロです」

「そうか、 じゃあ80万ユーロに

追徴課税分の20%分を上乗せだ、 20%は50万ユーロ

合計すると150万ユーロだな」

「あの、 だから計算が・・・」

「あん? 200万の30%+20%だからつまり50%だから

200万の半分の170万だろ?」

「さっきからどんどん値上がりしてませんか!?」

「お前こそさっきから何で値切ろうとしてんだよ

さっきから4人も殺されてるのに度胸有り過ぎだろ、 腹も肝も太い」

待って(ウェイト)、 デビット、 良く考えて(シンク)

俺達(ウィー)二人(トゥー)、 つまり?」

「・・・あ、 そうか倍にして350万か」

「何で倍になる!?」

「そうだよデビット、 キリが悪い(バッド)

「確かに370万はキリが悪い額だ、 ここはキリを良くする為に端数を如何にかしよう

ちょっと値上げして1000万だな」

「ばっ・・・そんな大金払えるかぁ!!」


流石のオダハラも激昂する。

1000万ユーロは大体十億円、 支払える訳が無い。


「ハハハ、 俺達も鬼じゃねぇよ、 お前に1000万ユーロ分の仕事を持って来た」

「仕事!?」

「この街の闇のオークションにこの間おっ死んだ

スターダストって言うドラゴニュートの死体が出品される

それを奪い取って献上だ」

「モーント・ズンディカーズと戦争になりますよ!?」

「じゃあここで死ぬか?」


アフロを外すデビット。


「うぅ・・・」

「それに気負うんじゃねぇ、 オークションが始まる前に事を済ませれば楽勝だ

それにお前の手下には色々ヤバい奴を置いているだろうが

旧N5騎士団最強のカートライトが居るじゃねぇか」

「がういひおgなうぐいおgjさいおあいh!!」


デビットとルーが振り返る。

そこには二本の剣を構えた角刈りの男が何か喚いていた。


「がbふいなんsfびfsdじ!!」


そう言うと男は倒れた。


「誰だアイツ」

「さっき言っていたカートライトです」

「・・・・・とりあえず旧正月にまで何とかしろよ

出来なかったら殺す、 街から出ても殺す」


そう言ってデビットとルーは去って行った。


「はぁ・・・はぁ・・・」


オダハラは一気に捕食者から被捕食者になった事実に戦慄するのだった。

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