フェザー・テイル・4
ベルモンド伯爵領黄金狂と称されたその騒動の事は
詳しくは語られていない、 そもそもベルモンド伯爵領からは黄金は産出されないのだ。※1
※1:断言をしたが有る可能性もある、 白いカラスと同じ様に
ベルモンド伯爵領には黄金があるかもしれない。
無い事を証明するのは有る事を証明するよりも難しい。
しかし何故か『ベルモンド伯爵領から黄金が採掘された』と言う怪情報は瞬く間に広がった。
情報の出所は不明だが【クレーター】と言う独立国家地域が怪しいと目されていた。
情報の一つに『クレーターからの亡命者が金を持っていた』
『その金をベルモンド伯爵がハウバリン公爵に献上した』と言う噂が有った。
事実としてベルモンド伯爵はハウバリン公爵と面談している事が事実として明らかになった。
ベルモンド伯爵側は『ハウバリン公爵の書物の中に茶道古書が有った為に鑑定を依頼された』と
説明しているも、 疑惑を晴らす事は出来なかった。
画してベルモンド伯爵領に大量の金を目当てにした者達が集まった。
これによりベルモンド伯爵領は大混乱に陥り【クレーター】への入国者も爆発的に増え
更に密入国者まで現れたのだった。
この事態に対して【クレーター】と接地しているサン伯爵令嬢は
自らの半生を記した書物『フェザーテイル』にてこう述べている。
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ゴールドラッシュと言うアメリカで起こった乱痴気騒ぎは私も知っていた。
アメリカを侮っていた、 議会制民主主義をヴァカにしていたが
こんな大人数の移動を仕切っていたと思うと尊敬に値する。
寧ろ、 貴族の誰かが短気を起こして虐殺でも始めるんじゃないかと心配になる。
大勢の逮捕者も出ているので刑務所も一杯になってしまった。
父ことベルモンド伯爵も出来る限り自領で起こった犯罪は
自領で裁きたかったが渋々外部へ輸送する事にした。
株式会社アルベドとやらにも囚人達を譲渡したらしい。
そのアルベドとやらも今回の事態に関しては初耳であり
強いて言えば『つるはしの消費量、 購入量が多くなっていた』
事を察知していたがここまでの大事とは理解していないらしい。
そこでふと思い出した事が有る。
『ゴールドラッシュで一番儲けたのはつるはし製造会社』と言う話だ。
気になったので調べた所、 一番儲けたのは運ぶインフラを作った連中と言う話
だったが、 金を採掘して果たして儲かるのかという疑問が浮かんだ。
そもそも金を採掘した際に発生する税金。
採掘者が金を採掘しても許可が無ければ犯罪であり、 許可を得る為には金がかかり。
更に金を採掘しても加工しなければ売り物にはならない。
加工するのにも、 加工しても売る為の販路が無ければ・・・
ごちゃごちゃしたが金で儲けるには
金を採掘→金を加工→加工した物を販売と言う工程が入るのだ。
そしてその工程全てに税金や使用料等が必要になる。
果たして今、 殺到している連中がその事実を理解しているのか?
甚だ疑問である、 ただの考え無しのヴァカ共が集まって来ているんじゃないかと
私は不安でしょうがない。
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彼女の疑問は全く持って正しかった。
事態は最悪の一途を辿ったのだった。
再誕歴7703年ディセンバー3日。
【クレーター】国家運営顧問として在籍していたサンジェルマン伯爵が
【クレーター】政府から離脱。
理由としてサンジェルマン伯爵は
『次々とやってくる黄金熱に浮かされたヴァカ共を制御する所が助長している』
『国内に来るヴァカ共から金を毟る為に金貸しと酒場や女衒を誘致し
最早国では無く単なる歓楽街を作っているに等しい』
『国造りに来ていて意見を求められていた筈なのに最近は金の工面ばかりさせられて
この有様に失望した』
『そもそも黄金狂に関して一切説明されておらず
金の産出の有無について否定も肯定もされていないちぐはぐな態度を取らされている』
『挙句の果てに一緒になってヴァカ騒ぎする者が大勢出ている』
※2:女性を売春労働に斡旋することを業とした仲介業者である。
歴史は古く古代からこのような職業が存在していたと考えられており
元々は神殿娼婦を巡礼に連れて行く従者が原型だったという説が有る。
この騒ぎに対して【クレーター】内に元々住んでいた人間は
『国民議会』ボンタナを始めとした高年層グループを中心にベネルクス王国に帰還するのだった。
【クレーター】の経済状況は良くなっているが、 誰もそれを成長だと思わず
膨張して言っているだけの歪な経済だと語っていた。
恐らく2,3年内には破綻すると推測され近辺にある軍務大臣の基地も警戒を強めていた。
だがその推測より早く事は運ぶのだった。
誰にも熱は制御できないのだ。




